2010年04月27日

「ホロー荘の殺人」(アガサ・クリスティー著、中村能三訳、早川書房刊)

「ホロー荘の殺人」(アガサ・クリスティー著、中村能三訳、早川書房刊)ネタバレ書評(レビュー)です!!

ネタバレあります!!注意!!

<あらすじ>

ホロー荘の殺人1

アンカテル卿の午餐に招かれたポアロを待っていたのは、血を流している男と、その傍らでピストルを手にしたままうつろな表情をしている女だった。それは風変わりな歓迎の芝居でもゲームでもなく、本物の殺人事件だった! 恋愛心理の奥底に踏み込みながらポアロは創造的な犯人に挑む。(解説 はやみねかおる)
(早川書房公式HPより)


<感想>
トリックよりも複雑に絡み合った人間関係が見所の本作。
男女の機微がグッときます。
男女の愛は時代を越えても変わらないものなのでしょうか。

気にかかったのはラスト付近の手袋のくだり。
あれはつまり後片付けする気だったんだろうなぁと考えると……。
なかなか考えさせられます。

ジョンは罪作りな男です。世の男性諸氏はご用心!!

「ホロー荘の殺人」映画化されました。タイトルは「華麗なるアリバイ」!!
関連情報は下記よりどうぞ!!

アガサ・クリスティ作「ホロー荘の殺人」映画化!!その名も「華麗なるアリバイ」!!

ちなみに映画版と原作版では登場人物名に違いがあるようです。
ストーリーにも改変あるのかも。
期待大!!

<ネタバレあらすじ>

主要登場人物一覧
ヘンリエッタ:女性芸術家
ジョン:カーダの夫、被害者
ガーダ:ジョンの妻
ヴェロニカ:女優
ミッジ:一途な女性
エドワード:男性
エルキュール・ポアロ:探偵

とある席で一堂に会した複数の男女。
ジョン&ガーダ夫妻、ヘンリエッタ、ヴェロニカ、ミッジ、エドワードたち。

有能な医師ジョンと女性芸術家のヘンリエッタは互いに想い合っていた。
ジョンの妻ガーダは夫ジョンを崇拝の対象として愛していた。
ヴェロニカとジョンは過去から男女関係を続けていた。
エドワードはヘンリエッタに恋していた。
ミッジはそんなエドワードが好きだった。

ジョンはヘンリエッタへの愛からヴェロニカに別れを切り出す。
事態はそれぞれの思惑もあり、波乱含みの展開を迎えることに―――。

そんな中、高名な探偵として知られるエルキュール・ポアロが訪れる。
ポアロの耳に銃声が響き、慌てて音の発信地であるプールへと駆けつけてみたところ、そこには血を流し倒れたジョンとその傍で銃(リボルバー)を手に立ち尽くすガーダの姿が。
自分に向けての悪趣味な芝居だろうかと考えたポアロだが、それにしては様子が変だ。
奇妙な緊迫感に誘われ、倒れ伏すジョンの確認をしてみたポアロ。
ジョンは「ヘンリエッタ」と云う言葉を残すと本当に絶命してしまう。
呆然としているガーダ。
その手からリボルバーをもぎ取ろうとしたポアロだが、先にヘンリエッタが銃を奪う。
しかし、何を誤ったのかプールへとリボルバーを落としてしまうヘンリエッタ。
謝罪するヘンリエッタにポアロは興味を抱く。

地元の刑事たちも到着し、捜査が開始。
ポアロも独自の捜査を始める。

捜査の焦点は「ガーダ」から「ヘンリエッタ」へ移動。
だが、調べれば調べるほどヘンリエッタのみならず他の人物にも不審な手掛かりが湧いて出て来る。
その度に捜査は右往左往。

プールのリボルバーからは証拠が検出されず。
しかも、リボルバーは別にもう一丁存在し、こちらが実際の犯行に使用されていたものと判明。

ポアロは「事件自体は単純なものだが、何者かが複雑にしてしまっている」と発言。
真相を見抜いた素振りを見せる。

実は陰で工作していたのはヘンリエッタ。
それに他の人々が協力し、容疑をひとりに集中しないように動いていた。
真犯人を看破したポアロはその人物と接触すべく動き始める。

その頃、ヘンリエッタはジョンのリボルバーにはホルスターが存在していたことを思い出し、そこから真犯人が暴露される可能性に気付く。
ヘンリエッタもまた真犯人の元へ―――。

同時刻、エドワードが自殺未遂を図ってミッジにより助けられていた。
ヘンリエッタへの愛ゆえに迷ったエドワードだが、ミッジの献身的な姿にうたれミッジへの愛に目覚める。

ヘンリエッタはガーダの家を訪れていた。
ホルスターの行方を尋ねるヘンリエッタにガーダは刻んで革の籠に隠したと教える。
安堵するヘンリエッタ。
ガーダは「馬鹿にしないで欲しい」と憤慨。
「わざわざリボルバーを二丁用意し、あえて使用しなかった一丁を手に警察の疑惑の矢面に一度立つことで容疑から恒久的に逃れることを狙った。ヘンリエッタたちが考えているほど私は間抜けではない」と計画的な犯行を強調した上で、「自分はジョンとヴェロニカの不倫を知っており許せなくなってジョンを殺した」と明かす。
ヘンリエッタは「それは誤解だ、ジョンはあなたが一番だった。ヴェロニカには別れ話を切り出していた」と説明。
納得したのかしないのかガーダはヘンリエッタにお茶を勧める。
お茶を残し奥へと消えたガーダのことを考えながらティーカップに口づけようとしたそのとき!!

ポアロが登場。ヘンリエッタを制止する。
奥から戻って来たガーダは手に手袋を着用していたが、ポアロを見ると一息にお茶を飲み干した。
直後、眠るように意識を失いそのまま死亡してしまう。
お茶には毒が含まれていたのだ。
「助けようとしたのにどうして……」驚くヘンリエッタ。
「罠にかかった犬が相手をみて噛みつきますか?彼女は猜疑心に囚われていたのです」ポアロが指摘する。

ヘンリエッタはガーダを庇ったのは故人の意志であると語る。
「ジョンにとっては盲信的な愛を注いでくれていたガーダを愛していたのだ」と。
「ヘンリエッタ」と言い残したジョンの言葉は「ヘンリエッタに対して残されたガーダを助けて欲しい」という意味だったのだ。
そのために捜査を暗礁に乗り上げさせるべく、容疑をあちこちへと向けさせた。

ポアロはすべてを見抜いていた。
だが、警察に告げることはない。
ジョンを亡くし、錯乱したガーダが発作的に後追い自殺した―――今回の事件はそれで終わりだった。
それがジョンとガーダの間に残された子供の為。
真相を知るのはほんの数人、加えるならば、数年後、ジョンとガーダの子供にも真相を知らせねばならないと云う。
知らないことが知ることよりも不幸な場合もある―――そう語るポアロだった。

ヘンリエッタは愛するジョンの為にようやく泣くことが許された。
自身のアトリエへと赴く彼女だが、涙は出ない。
私はこんな女だったのだろうか―――芸術家としての本能のままに感情を作品へとぶつけていく。
やがて、それは名作として世に出されるのだろう―――エンド。

◆関連過去記事
ポアロシリーズ最終作「カーテン」ネタバレ書評(レビュー)はこちらから。
「カーテン」(アガサ・クリスティー著・中村能三訳 、ハヤカワ書房刊)

イベントも開催中!!
アガサ・クリスティー生誕120年展覧会開催中!!

早川書房、アガサ・クリスティー賞を新設!!

◆関連外部リンク(外部サイトに繋がります)
・「華麗なるアリバイ」(シネマトゥデイさん)
http://www.cinematoday.jp/movie/T0008729

・「華麗なるアリバイ」(シネマカフェさん)
http://www.cinemacafe.net/movies/cgi/21664/

・「華麗なるアリバイ」(Gooさん)
http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD14257/index.html

・フランスの名脚本家は監督としてはまだまだ未熟?女優の突っ込みに真面目に反省(シネマトゥデイさん)
http://www.cinematoday.jp/page/N0017329

映画原作「ホロー荘の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)」です!!
ホロー荘の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)



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posted by 俺 at 22:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評(レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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