ネタバレあります!!注意!!
<あらすじ>
絵を描くことが好きな少女・さくらには、不思議な力があった。空想で描いたはずの場所や物が、そのまま実在しているのだ。ある日描いたのは、月光に照らされ、夜の池に浮かぶ美しい女性の姿。大人になったさくらは、祖母から叔母の話を聞いて愕然とする。女優だった叔母・ゆう子は、20年前、京都の広沢池で刺殺されたというのだ。その死の様子は自分が昔描いたあの絵とそっくりである。さくらは、ゆう子が当時下宿していたというペンションを捜し出し、部屋を借りて叔母の死の謎を探ろうとする。次第に明らかになるゆう子の凄絶な人生。そして驚くべき死の真相とは……?
京都を舞台に、究極の愛と絆を描く、渾身の書下し長編ミステリー
(徳間書店公式HPより)
<感想>
割とシンプルな構造です。
トリック自体も余りありません。
驚かされるのは岩沢の死の真相くらいかな。
それもいい意味ではなく、「えっ、嘘」という感じ。
さくらの能力についても、うーん。
悠斗と真犯人の意外な関係についても、うーん。
いろいろと面白そうなモチーフを積み重ねてはいるんだけど……コレという決め手に欠ける感じか。
これは物語としてはちょっと厳しいかもしれない。
あっ、ピエールの名前についての由来は良かった。
ああいう稚気のある試みは好き。
ちなみにあらすじを見て、記憶の謎をテーマにしているのかと思いきやそれほどでもありませんでした。
<ネタバレあらすじ>
さくらには昔から不思議な力があった。
それは空想で絵に描いたものが実在しているという能力。
過去、さくらはある絵を描いた。
月光に照らされ、夜の池に浮かぶ美しい女性の姿。
そして現在、さくらは、祖母から叔母の話を聞いて愕然とする。
自分が昔描いたあの絵とそっくりそのままに女優だった叔母・ゆう子が、20年前、京都の広沢池で刺殺されたというのだ。
真相を突き止める為、さくらは当時の叔母が下宿していたペンションで生活を始めるのだった。
そこで踝に奇妙な痣を持つ悠斗達と出会う。
いとこのピエールの思い出などを散りばめながら、仲間と共に真相究明へと調査を始めるさくら。
次々と事実が明らかになる。
叔母・ゆう子の死の直後、岩沢という叔母と親しかった人物が叔母の死んだ同じ池で自殺と思われる死に方で発見されたこと。
叔母・ゆう子は何かに追われており、身を守る為に岩沢以外の人物との接触を避けていた。そのため、叔母を殺害できるのは岩沢ぐらいなものだったこと。
さくらの能力は“絶対記憶能力”。
つまり、絵にしたものはすべて過去にどこかで目にしていた光景。
空想を絵にし、実現させるわけではなかった。
さくらの記憶によれば、幼児期に岩沢に抱かれどこかへ運ばれていたこと。
さくらは実は叔母・ゆう子の娘・ハルだった。
さくらの母は本当のさくらを過失で死なせており、そこへ岩沢から預けられたハルを引き取りさくらとして育てたこと。
従兄弟のピエールはさくら(ハル)の実の兄弟であること。
叔母・ゆう子は子供を二人生んでいたのだ。
ピエールの本名は貴石。
転じてピエールになった(ギリシア語で石の意味)。
後にさくらは悠斗に「奇跡、貴石、ピエール」と実の兄弟を紹介する。
岩沢は自殺ではなく、池の中に勾玉を取りに入った際に起こったショック死だったこと。
当の勾玉はさくらの手に戻った。
さくらにはゆう子の死の真相は分からない。
だがその頃、弁護士殺害容疑でとある男性が逮捕されていた。
彼こそはゆう子殺害の犯人。
元「Mの会」、今では「神の源」と名乗る集団のメンバーだった。
彼にとって所属する組織の壁になる者はなんでも排除してきた。
当時、ゆう子は「Mの会」から自身の持ち物だった勾玉を手に逃げ出しており、追手がかかっていた。
ゆう子は岩沢以外の人間に会おうとせず、警戒厳重、手も足も出なかった。
そんな中、ゆう子が岩沢にハルを預けた日があった。
事前にハルの泣き声をテープにとっていた男はそれを使い、ゆう子を誘き出し殺害。
勾玉は身の危険を感じたゆう子が事前に池の中へ隠しており見つからなかった。
ゆう子の味方だった岩沢は勾玉を回収しようとして誤って死んでしまったのだ。
男は思う―――後継者はいる、と。
ゆう子は裏切り者だが、その生んだ子供は後継者に足る。
そして、踝に神の印をつけられた悠斗―――彼こそが後継者だと。
だが、男は間違っていた。
彼の云うゆう子の子供とはピエールでありさくらのことなのだから。
だが、そんな男の希望も儚く散る。
取り調べは続き、彼の精神は限界を迎えようとしていた。
やがて、男は取り調べの中で自分を見失い、あれだけ守ろうとした会もなにもかもを気にかけることすら億劫に感じられるようになる。
男は苦痛に苛まれていくのだった。
一方、さくらはピエールとの再会を楽しみにしていた―――エンド。
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