ネタバレあります!!注意!!
<あらすじ>

<探偵倶楽部>――それは政財界のVIPのみを会員とする調査機関。会社社長が風呂場で感電死した。電気コードを用いた家政婦の犯行と処理されるが、疑問を感じた社長夫人は探偵倶楽部に調査を命じ…。傑作ミステリ!
我々は無駄なことはしない主義なのです― 冷静かつ迅速。セレブ御用達の探偵が不可解な謎を鮮やかに解き明かす!
「お母さん、殺されたのよ」― 学校から帰ってきた美幸は、家で母が殺害されたことを知らされる。警察は第一発見者である父を疑うが、彼には確かなアリバイがあった。しかしその言動に不振を抱いた美幸は、VIP専用の調査機関〈探偵倶楽部〉に調査を依頼する。探偵の捜査の結果、明らかになった意外な真相とは?冷静かつ迅速。会員制調査機関〈探偵倶楽部〉が難事件を鮮やかに解決!傑作ミステリー!!
(角川書店公式HPより)
<感想>
表向きの事象の数々から意外な裏の事象を導き出す―――ガリレオシリーズや加賀恭一郎シリーズ同様の東野圭吾的ストーリーテリングは健在です。
短編のひとつひとつのレベルがそれ相応に高いので楽しめます。
独特な設定と併せて読む価値あり。
そこで本作を読んでもらいたいという気持ちも込めて、ネタバレあらすじも固有名詞をあえて使わない方法にしてみました。
2010年10月22日追記:ついにドラマ化されました。
金曜プレステージ 東野圭吾スペシャル 探偵倶楽部「大ヒット原作ドラマ化!名探偵最強コンビ誕生!大物社長突然の失踪に隠されたセレブ一族の醜い骨肉の争い…消える死体…驚愕密室トリックを暴け!」(10月22日放送)ネタバレ批評(レビュー)追加しました。リンクよりどうぞ!!
◆関連過去記事リンク
東野圭吾先生の作品書評です!!
・「新参者」(東野圭吾著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・容疑者Xの献身(文春文庫版)&映画版
<ネタバレあらすじ>
【偽装の夜】
会社社長が密室から失踪。
家族は警察に届けるべきか届けないべきかで悩む。
そんな中、社長秘書の前に現われる黒服の男女。
彼らはVIP専門の探偵会社「探偵倶楽部」の誇る探偵だった。
社長失踪の真相を探っていたが、これ以上調査が出来なくなったと秘書に告げる彼ら。
そこで現在までの調査結果を最適と思われる秘書に預けたいと言うのだ。
なぜ、自分なのか―――?
疑問に思う秘書だが資料に目を通した結果、理由が判明する。
実は社長は既に死亡していた。
しかも、今回の社長の行方不明には秘書も関与していたのだ。
実は行方不明の夜に、社長の首吊り死体を発見した秘書。
死の事実を遺族に告げ、対処を遺族と検討しているうちに社長の死体が消えてしまった。
探偵によれば「この謎は2つの『なぜ』を解き明かせば分かる」らしい。
なぜ1:なぜ死体は消えたのか?
なぜ2:なぜ部屋は密室だったのか?
その「なぜ」はすぐに解けた。
犯人は社長の娘婿だったのだ。
「探偵倶楽部」の調査結果から、横領と使用人との浮気の事実を突き付けられた娘婿は父を殺害。
首吊りに見せかけた。
だが、遺族で検討中に自殺に見せかけることが不可能であると知らされた娘婿は路線を変更。
こっそりと死体を隠した。
その後、使用人と話を合わせ密室のように見せかけたのだ。
こうして真相を知った秘書。
さて、この重要な情報をどう活かすべきか考えた末、自身の身の立つ方法を考えた。
すなわち、社長の娘婿を見切り、社長の実の息子に乗り換えることだった―――エンド。
【依頼人の娘】
少女の母親が殺害された。
母親の死亡時刻、容疑者とされた夫にはアリバイがあり不可能だった。
そもそも、殺害当日には親族の来訪が相次ぎ事件を起こすことなど考えられない状態だったらしい。
少女は父と親族の様子がどこかおかしかったことから、父が利用していた探偵倶楽部に調査を依頼する。
少女の父親のもとを訪れる探偵。
探偵は少女の知らない情報を最初から握っていた。
あえて少女に知らせなかった情報とは―――。
それは母親の不倫だった。
実は少女の父親は探偵倶楽部に妻の不貞を調査してもらっていた。
結果、殺害当日に妻が浮気相手と駆け落ちすることを掴む。
娘が母に捨てられたことを知ればどれだけショックを受けるか計り知れないと考えた父は親戚に相談。
当日に母親を1人にしないよう常に親戚が見張ることとなった。
それに気付いた母親は駆け落ちの失敗を知り、絶望。
傷心のままに自殺してしまったのだった。
自殺のままでは動機が問われてしまうと考えた父は殺害されたように工作。
こうして、自殺は殺人事件となった―――。
探偵は報告だけを済まし、娘に真相を明かさないことを約束して去っていく。
だが、娘は父の工作を疑っている。
警察の追及も厳しい。
いずれそう遠くない未来、娘に真実を明かさなければならないだろうと父は考えるのだった―――エンド。
【薔薇とナイフ】
教授には娘が二人いた。
ひとりは妻との間に出来た娘で生まれた時から育てていた。
ひとりは血の繋がりはあるものの最近引き取った娘だ。
教授は育ててきた娘はともかく、最近引き取った娘に申し訳なく思っていた。
教授は心中で前者を温室育ちの薔薇、後者をトラブルを起こしかねないナイフだと考えていたのである。
薔薇だと思っていた娘にストーカーがつきまとう事態が発生。
ところが、ナイフだと思っていた娘が殺害されてしまう。
状況からストーカーは薔薇とナイフを取り違えてしまったらしい。
教授は薔薇が無事だったことに安心するとともに、娘を殺害した犯人探索を探偵倶楽部に依頼する。
後日、薔薇のストーカーと思われていた人物が死亡。
自殺と思われた。
娘には残念に思いながらどこかホッとする教授。
そこへ探偵たちが真相を携えやって来る。
真相は教授にとって青天の霹靂だった。
ナイフを殺害したのは薔薇だったのである。
しかもストーカーとみられる男を殺害したのも彼女。
実は、薔薇は教授と血縁関係に無かった。
教授の妻と前の彼氏との間の子供だったのだ。
それを知っていた薔薇は正式な血縁であるナイフを危険視。
排除する計画を練る。
教授は知らなかったが、薔薇は素行の悪い野心家。
ストーカーとされた男の対抗馬を手を結び、共に障害となる人物を消すよう運んだのだった。
教授は本当の意味で薔薇とナイフの認識を間違えていたのである。
放心する教授を残し、部屋を後にする探偵たち―――エンド。
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