ネタバレあります!!注意!!
<あらすじ>
溜め池近くの植え込みから、ビニールシートに包まれた男の惨殺死体が発見された! 警視庁捜査一課の警部補・姫川玲子は、これが単独の殺人事件で終わらないことに気づく。捜査で浮上した謎の言葉「ストロベリーナイト」が意味するものは? クセ者揃いの刑事たちとともに悪戦苦闘の末、辿り着いたのは、あまりにも衝撃的な事実だった。人気シリーズ、待望の文庫化始動!
(光文社公式HPより)
<感想>
作者の誉田哲也さんは先頃映画になった「武士道シックスティーン」の原作者。青春小説から警察小説まで手広く扱う作家さんです。
姫川玲子シリーズは現在までに4冊刊行されています。
本作「ストロベリーナイト」に始まり、「ソウルケイジ」、短編集「シンメトリー」、「インビジブルレイン」がそれ。
注:2011年にはスピンオフ「感染遊戯」とシリーズ最新短編「アンダーカヴァー」が発表されています。
本作「ストロベリーナイト」はシリーズの始まりに相応しく、各登場人物のキャラクターが色濃く出ていてなかなかの良作。
ただし、一部グロテスクなシーン等があり、映画ならばR15指定は堅い。
意外な犯人とその結末が切ない……。
<ネタバレあらすじ>
登場人物一覧:
姫川玲子:主人公、女性刑事
勝俣:刑事、通称「ガンテツ」、玲子と捜査方針で対立する
北見:刑事、警視庁第三方面本部長を父に持つ若手エリート
大塚:刑事、玲子の初めての部下
井岡:刑事、玲子の同僚
日下:刑事、玲子と別班の班長
深沢由香里:虐待をきっかけに精神の均衡を崩した少女
エフ:「ストロベリーナイト」の主役
マコ:ストリートギャング時代のエフの仲間、故人
佐田:婦警、故人
溜め池近くの植え込みから、ビニールシートに包まれた男の惨殺死体が発見された。
捜査に当たった警視庁捜査一課の警部補・姫川玲子は、これが単独の殺人事件で終わらないことに気づく。
それを証明するように管轄をまたぎ、11件の殺人が起こっていた。
「ガンテツ」と呼ばれる勝俣と対立しつつ、日下、井岡や玲子に初めて出来た部下・大塚、警視庁第三方面本部長の息子であるエリート北見と共に捜査を続ける。
捜査線上に浮かんだのは「ストロベリーナイト」という単語。
「ストロベリーナイト」はショーの名前―――インターネットで参加者を集め、参加者の中からひとり犠牲者を決めるとその犠牲者を他の参加者の前で惨殺して楽しんでいたのだ。
そのショーの主役こそ“エフ”と呼ばれる謎の人物だった。
過去―――“エフ”はひとりだった。
エフは、ひょんなことから知り合ったストリートギャング“マコ”と親しくなり、彼女の為に闘うナイトになった。
だが、マコは3人組の暴漢に襲われ殺害されてしまった。
暴漢は大学生だったらしい。
マコの仇を追ったエフは遂に仇を追い詰め、そのひとりを一刀のもとに殺害する。
そんなエフに仇が話しかけて来た―――。
姫川玲子には過去のトラウマがあった。
それは17歳の夏の出来事。
暴漢に襲われたのだ。
身体を汚され、ナイフで腹部を刺され、意識を失った。
たまたま通りすがった通行人に助けられたらしく、気がついたときには病院のベッドの上だった。
彼女は外界に対し心を閉ざした。
そんな彼女を励ましてくれた人がいた。
佐田という名の婦警である。
彼女は熱心に玲子をフォローした。
やがて玲子は微笑む事が出来るようになった。
ある日、玲子は佐田が死亡したことを知る。
玲子の犯人を捕まえた際、犯人に刺された傷がもとで死んでしまったらしい。
玲子は佐田の母より託された佐田の日記を目にし、佐田の意志を継ぎ闘う覚悟を決める。
玲子の証言により、犯人は裁判にかけられることに。
裁判で佐田を貶める発言に憤った玲子は反論。
そんな玲子をその場に居た警察官たちは敬礼で迎える。
警官たちの連帯を目にした玲子は仲間入りを切望。
現在に至ったのである―――。
玲子の捜査に不安を口にする日下。
玲子に反撥する勝俣。
玲子の行きすぎた捜査の結果、大塚が「ストロベリーナイト」の犯人により殺害されてしまう。
責任を感じた玲子は北見と共に本部とは別に捜査を始める。
勝俣は「ストロベリーナイト」の参加者から話を聞き出すことに成功。
それによれば「参加し犠牲者にならずに済む事で生きている奇跡・ありがたさを感じ、生きている実感を得る為に参加している」と云う。
そこから“エフ”の存在を知る勝俣。
(エフは男性なのだろうか?)
“エフ”の写真は女性らしい凹凸のない平板な身体だった。
彼は裏ルートを用いて更なる情報収集に励む。
玲子と北見は大塚の捜査の痕跡を追っていた。
その過程で北見の異動先と死体の遺棄先が合致していることに気付く。
カマをかけた玲子に北見は豹変。
玲子は北見に拉致されてしまう。
その頃、勝俣はエフの正体が深沢由香里だと突き止める。
由香里の入院先によれば、由香里は義父に性的虐待を受けており精神のバランスを崩していた。
その為、自身の女性を憎んでおり両の乳房を自ら切断したらしい。
エフのシルエットが男性的だったのはこの為だったのだ。
更に裏ルートで調べた結果、「ストロベリーナイト」の真の主催者が北見であることを知る。
玲子を気にかけていた井岡が玲子と北見を尾行していたこともあり、勝俣は玲子の危機に気付く。
現場へ急行する勝俣。
同時刻―――玲子の前には北見とエフが居た。
北見によれば「上だけを見続けるのに疲れたので、下を支配する必要があるのだ」と云う。
「ストロベリーナイト」はその為のショーだったのだ。
過去、北見と仲間たちはある女性(マコ)を凌辱し誤って殺害した。
仇討ちに現れたエフにより仲間が殺害された姿を見て、この思想が芽生えたらしい。
北見に乱暴されそうになる玲子。
だが危機一髪、エフが玲子を助ける。
「違う」エフは呟く。
「僕は下で生き続けてきた。下に居る他の人間が僕と同じか確かめる為に殺したんだ……」
エフと北見の信条には大きな齟齬があったのだ。
隙を見て逃げ出す玲子。
銃を発砲する北見。
駆け付けてきた勝俣たち。
発砲音、怒声、叫び声―――。
いつの間にか、玲子の目の前にはエフが居た。
玲子の手を掴むエフ。
「マコ……今度は助ける……」
エフの身体には北見による銃創があった。
玲子を庇い、北見に立ち向かい撃たれたのだ。
北見もまたエフにより首に傷を受け、勝俣に逮捕されていた。
エフの出血は止まらない。
事件はこうして解決した―――。
玲子は北見に撃たれた際に、鼓膜をやられ入院していた。
そこへ訪ねて来る日下。
「ストロベリーナイト」の運営は主催者の北見、実行犯のエフ、システム管理を担当していた大川の三人によるものだった。
三人は全員捕まったという。
尚、大川は逃走中に警察車両を破壊するなど相当派手に暴れたらしい。
第三方面本部長である北見の父は息子の罪を悔い自殺。
エフこと由香里は命は助かったものの意識不明の重体。
看護師の目を盗んでは点滴を外しているらしい。
死のうとしているのでは……ということだった。
日下より、勝俣がガンテツと呼ばれる理由を教わる玲子。
過去、勝俣は「頑固一徹」な人柄だったらしい。
裏ルートを使うのも捜査の為で私利私欲に使ったことは一切ない。
公安に異動して後、人柄に変化が訪れたが根本は変わっていないと云う。
日下が帰った後、こっそりやってくる勝俣。
勝俣は玲子の捜査手法を危惧していた。
玲子は被疑者に肩入れしすぎていると云うのである。
被疑者に同調してしまっているのだ。
玲子は思う―――過去の自分の事件、その犯人に対してどこかで持ち続けている復讐心こそがそれを為さしめるのかもしれない。
玲子は北見とエフの「上から下を見たものと、下から上をみようとしたもの」の話をする。
それを聞いた勝俣の答えは簡潔だった。
「上も下もねぇよ。前を見りゃいいんだ」と―――エンド。
◆「誉田哲也」先生関連過去記事
【姫川玲子シリーズ】
・シリーズ2作目「ソウルケイジ」はこちら。
「ソウルケイジ」(誉田哲也著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・シリーズ3作目、短編集「シンメトリー」はこちら。
「シンメトリー」(誉田哲也著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・シリーズ4作目「インビジブルレイン」はこちら。
「インビジブルレイン」(誉田哲也著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・シリーズスピンオフ作品「感染遊戯」です。
「感染遊戯」(誉田哲也著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『ブルーマーダー』(誉田哲也著、光文社刊『小説宝石』連載)まとめ
・『インデックス』(誉田哲也著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)
【ジウシリーズ】
・『ジウ 1〜3』(誉田哲也著、中央公論新社刊)ネタバレ書評(レビュー)
【その他】
・『ヒトリシズカ』(誉田哲也著、双葉社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『三十九番』(誉田哲也著、双葉社刊『痛み』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『帰省』(誉田哲也著、小学館刊『東と西 2』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『ドルチェ』(誉田哲也著、新潮社刊)ネタバレ書評
【ドラマ版】
・土曜プレミアム ストロベリーナイト「大ベストセラー小説初ドラマ化!!連続猟奇殺人事件のカギを握る感染死体…真相に迫る孤高の女刑事悲しみの過去と驚愕の結末!!」(11月13日)ネタバレ批評(レビュー)
・連続ドラマ「ストロベリーナイト」(フジテレビ系、2012年)まとめ
・土曜プレミアム「ストロベリーナイト〜アフター・ザ・インビジブルレイン〜女子高生転落死から始まる官僚連続殺人!!携帯に残された暗号、顔無き真犯人?絡まる5つの謎と共に解ける真実とは!?本日公開の映画と連動する衝撃のミステリー(アンダーカヴァー、東京、サイレントマーダー/沈黙怨嗟、左だけ見た場合、プロバブリィギルティ/推定有罪)」(2013年1月26日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・金曜プレステージ「特別企画 ドルチェ ストロベリーナイトの誉田哲也傑作原作を初映像化!重体の幼児消えた母親…白骨死体その女は聖母?魔女?嘘つく女VS心を読む女、女の壮絶取調室開幕」(10月12日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・金曜プレステージ「壮絶!女のミステリー第3弾 強行犯係・魚住久江〜ドルチェ2 夫は判ってくれない…刺した妻!涙の告白の裏に廃工場の変死体と老舗酒造の悲劇!所轄駆ける女の捜査日誌」(11月15日放送)ネタバレ批評(レビュー)
【コミカライズ】
・『ストロベリーナイト―見えない雨―』第1部(第1話から第11話)まとめ(誉田哲也原作、桑村千宏作画、講談社刊『週刊ヤングマガジン』連載)ネタバレ批評(レビュー)
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結末が知りたく検索していたのですが、
結末だけでなく全ての大まかな流れを掴むことが出来ました
ありがとうございます
コメントありがとうございます(^O^)/。
管理人の“俺”です!!
こちらこそありがとうございます。
まだまだ原作の良さを伝えるには未熟なまとめだったと思いますが、褒めてもらえると嬉しいです(^O^)/。
次の記事への励みにします。
姫川玲子シリーズは上記記事にある通り他に3作存在するので良ければそちらもどうぞ!!
今日、放映されていたドラマを見て
原作のストーリーが知りたくて、ここにたどり着きました。
にわか評論家的な文章の紹介文が多かったのですが
こちらのページは、シンブルに、かつ具体的に書かれていて
とても、参考になりました。
ドラマを見て、何となく後味が悪かったのですが
この文を読んで、少し救われたような気がします。
ありがとうございました。
管理人の“俺”です!!
Re:けいこさん
こちらこそはじめまして!!
褒めて頂きありがとうございます(^O^)/。
そこまで褒めてもらうと未熟なまとめなだけに面映ゆいほどです。
でも、正直大変嬉しいです。
次の記事への励みにさせてもらいます!!
Re:さん
参考になれば幸いです!!
ちなみに2010年11月現在、「姫川玲子シリーズ」には他に3作品がありますのでそちらも読んでみるとより理解が深まるかも……です!!
金曜日のストロベリーナイトを観て、とても違和感があったので、原作を知りたくて検索していたらこちらにたどり着きました。
やはりドラマ化するといろんな伏線が消えていきますね。
正直、ドラマは急展開過ぎて、すごく薄っぺらかったなあと感じていました。善人が急に悪人になるなんて、ミステリーの常套手段ですよね。そこの背景や、悪人になるに至った理由が重要なのに、ただ自分の快楽の追及のために悪人になった北見を見ていて「なんじゃそりゃ」と思っていました。
北見がなぜああいう思想に至ったのか、ガンテツが「前だけを見ていろ」と言った意味が理解できました。ガンテツも本当はいい人なのに、それが感じられず終わってしまったのは残念。ドラマではもう少し、深く描いてほしかったなあ。
ありがとうございました。
コメントありがとうございます(^O^)/。
管理人の“俺”です!!
原作の良さを伝えるには未熟なまとめでしたが、褒めて貰えると凄く嬉しいです(^O^)/。
励みになります!!
興味を持たれたら、是非原作である「ストロベリーナイト」も読んでみてください。
管理人のまとめよりも、数百倍もイイです!!