ネタバレあります!!注意!!
<あらすじ>
「おれには声が色に見える。
あの子の声にはエネルギーに満ちた色が見えた。
生きることを望んでいた声だ」
「新人作家とは思えぬ筆力」「醜悪なテーマを正統派のサスペンスに仕立て上げた腕前は見事」と、茶木則雄、吉野仁両氏がそろって大絶賛!応募総数が過去最高を記録し、大激戦となった第7回『このミステリーがすごい!』大賞の大賞受賞作がついに文庫化です。
新進気鋭の臨床心理士・佐久間美帆と、神から与えられたともいわれる「共感覚」を持つ青年・藤木司が、声の色で感情を読み取る力を使い、知的障害者施設で起こった少女の自殺の真相を追う!
「共感覚」
声、数字、音、文字に色を感じる能力。
「神に与えられた感覚」とも言われる。
真実を話していると白、嘘をついていると赤……臨床心理士・佐久間美帆の担当患者・藤木司は、「共感覚」によって声に色彩を感じるため、嘘を見破ることができた。その上で彼は幼なじみの少女が自殺するはずがないと力説。信じがたい話だったが、美帆は司の治療のためにも調査を決意。知人の警察官・栗原の協力を得て、2人が暮らした知的障害者施設を探り始めるが、次第におぞましい出来事が明らかになる。第7回『このミス』大賞受賞作が文庫化!
(宝島社公式HPより)
<感想>
モチーフが「キョウカンカク」に似てますね。
目で見て言葉に色がつく共感覚や、犯人の正体、ミスリードの仕方などなど。
こちらが先行作なので本作にロジックを加えたものが「キョウカンカク」になるのかな。
素材は同じ、調理法&味付けが別という感じ。
どちらかといえば「共感覚」というモチーフの処理法については本作は活かされていません。モチーフの紹介レベルに留まっています。その点では「キョウカンカク」の方が優れていると云えるでしょう。
本作はストーリー展開的にも微妙です。
ただし、原作を活かしたドラマ化が可能(映える)なのはこちら。
個人的には「キョウカンカク」の方を推します。
◆関連過去記事
・佐方シリーズスタート!!
「最後の証人」(柚月裕子著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・佐方シリーズ続編です。
『検事の本懐』(柚月裕子著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『心を掬う』(柚月裕子著、宝島社刊『しあわせなミステリー』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・「キョウカンカク」(天祢涼著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)
<ネタバレあらすじ>
登場人物一覧:
佐久間美帆:主人公、臨床心理士
司:患者、共感覚者
彩:患者、自殺したと思われる少女
可奈:患者
安藤:施設責任者
高城:精神科医
栗原:刑事
内田:看護主任
佐久間美帆は臨床心理士。
看護主任の内田とは感情の対立が見られていた。
そんな折、彩という少女が自殺した。
佐久間は藤木司という彩の幼馴染から「彩は誰かに殺された」と告げられる。
司は共感覚の持ち主だった。
共感覚とは二つ以上の感覚が密接に結び付き、常人にない別の感覚を生みだすこと。
司の場合は人の口にした言葉が色で視えるというもの。
真実なら白、嘘ならば赤。
これによりその人物が嘘をついているか分かるのだと云う。
その司が彩には自殺する気がなかったと主張したことをきっかけに、佐久間は刑事の栗原と共に真相を追うことに。
彩と司の所属する施設に不穏な空気を感じ取る佐久間。
その矢先、施設の責任者・安藤が死亡する。
いよいよもって疑念を深くした佐久間。
調べて行くうちに精神科医・高城の怪しさに気付く。
高城は佐久間を拉致して自分の犯行を誇る。
高城によれば、安藤は施設の患者・可奈を使って売春をやらせていたらしい。
それに気付いた高城は黙っていてやる代わりに彩を好きにさせるよう要求。
安藤の患者の要介護度を上げる約束で彩を弄ぶ。
だが、表向き高城の出した診断とは違い彩の失語症は快方に向かっていた(介護度を上げる偽の診断を下していた為、事実と相違した)。
しかも、彩と司は施設を出ると云う。
自らの不祥事が明るみに出ることを恐れた高城は安藤を抱き込み彩を自殺に見せかけ殺害。
安藤もまた口封じに殺害した。
そんな高城を批難する佐久間。
だが、高城は意に介するでもなく、佐久間に自らの性欲を解消することを要求する。
渋々従う佐久間だったが欲求を果たした高城の隙をつき逃亡。
駆け付けた栗原と司の協力もあって高城を逆に捕まえる。
こうして事件は解決。
司は「共感覚」を見込まれ警察に協力することを条件に施設を出た。
佐久間はといえば看護主任の内田と同様、身内に支えていかなければならない存在があることで和解。
互いの立場を理解する。
そして、今後も頑張っていこうと誓うのであった―――エンド。
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