2010年06月01日

「貴族探偵」(麻耶雄嵩著、集英社刊)

「貴族探偵」(麻耶雄嵩著、集英社刊)ネタバレ書評(レビュー)です!!

「貴族探偵」以外に「富豪刑事」、「屍の命題」についてネタバレあります!!注意!!

<あらすじ>

貴族探偵1

自称貴族が活躍する、異端の本格ミステリー
自称「貴族」、趣味「探偵」の謎の青年が、生真面目な執事、可愛いメイドなどの召使いとコネを駆使して、難事件を華麗に解決! 知的スリルに満ちた本格ミステリー。
(集英社公式HPより)


――著者コメント――

『貴族探偵』は一作目から足かけ十年を要して完成した短編集です。
十年の間に本格ミステリーに対する作者の考えや嗜好もいくらか変わり、結果的に様々な傾向を持った作品集になりました。
そんな変わった部分、逆に何も変わっていない部分を楽しんでいただけたらと思います。

――巽昌章氏書評より――

人形芝居がただ人の所作の模倣にすぎないのなら、そんなものはとうに滅びていただろう。
私たちがいまなお人形たちの動きに惹きつけられるのは、彼らの「人間そっくり」な演技につきまとうカクカクしたぎこちなさが、
そこで描かれている悲喜劇をいったん突き放し、抽象化してしまう力を秘めていればこそである。
麻耶雄嵩の小説にはいつも、そんな人形芝居を思わせる抽象性の魅力が横溢している。
(アマゾンドットコムさんより)


<感想>
ほぼ10年に渡る作品をまとめた一冊。
麻耶雄嵩先生ファンならば買い!!
内容は死体移動に意外な犯人など。
ある短編のトリック自体は「屍の命題」に近いものがありますね。

既に前例があるなどトリック自体が古いという向きもあろうがこの作品の良さはトリックではなくその特異な設定にあると思う。

タイトルから推察される通り、主人公は「貴族探偵」その人。
だが、実際に推理を行うのは彼が抱える特異な才能を持つ使用人たち。
貴族探偵は嘯く―――「自身の所有物が推理した以上、それは所有者の行為に他ならない」と。

まさに人を使うブルジョアの発想。
「推理など貴族の仕事ではない」と云う探偵は探偵小説においては珍しい(皆無ではないが)のではないか?

ブルジョア探偵(刑事)というと筒井康隆先生の「富豪刑事」を想起するが、「富豪刑事」はブルジョアの特権として捜査法に資金力や人的コネクションを用いながらも自ら陣頭に立っているのに対し、「貴族探偵」は“高度な推理能力を持つ使用人”に推理一切を任せ自らは後方から眺めるに徹しており、大きな特徴になっている。

これは、自らは王として宮殿に坐し、将軍に前線を任せるに似ている。

推理力とは一種の才能。
それを持っているのは一握りの優秀な人間。
その優秀な人間を使いこなせる才能を持つのが「貴族探偵」なのである。

ここら辺は“将の将たる器”である漢の高祖・劉邦を彷彿とさせる(劉邦は前線に立ったが)。
人を使うことが才能であることは本編でも端的に現わされている。
そして、貴族探偵は人を使うことが間違いなく巧みなのだ。
最後の短編において皐月が貴族探偵をして「(己の非才を知った上で)分をわきまえた人物」と評した。
このように彼は非才を知っている。

しかし、これは凄い能力である。
まず「無知の知」よろしく、自らの非才を自覚すること。
次に人物鑑定眼をもって人の才能を見抜くこと(貴族探偵は弥生や皐月の力に気付いている)。
見抜いた上で相手の実力に絶対の信頼を置くこと。
貴族探偵はこれらを満たしているのだ。

自覚がなければ自分がしゃしゃり出て失敗する。
相手の力を知らなければ雇えない。
相手の能力に絶対の信頼を置かなければ使えない。

これだけでも「貴族探偵」がいかに素晴らしいかわかるだろう。

ここまで来ると「ひょっとすると」と疑念が湧かないだろうか?
「もしかして、貴族探偵は減らず口ではなく本当に推理能力があるものの使用しないだけなんじゃ……」と。
だからこそ、事件の現場に参加でき、あれだけの使用人を雇い続けることも出来るのかもしれない……。

ちなみに「貴族探偵」は過去記事「『ミステリ通信 創刊号』管理人がオススメする2010年これだけは読んでおくべきミステリとは!?」にて取り上げた作品です。

<ネタバレあらすじ>

とある資産家―――その後継者として目されていた弥生。
彼女には親友・皐月がいた。
ある日、資産家の命令により弥生の花婿候補3人が館に招待される。
だが、彼ら3人は次々と死亡してしまう。

捜査に乗り出したのは「貴族探偵」。
3人の殺人に3人の使用人を割り振り、結論を導き出させる。
その結論は3人がそれぞれを狙い結果として全滅したことだった。

皐月は資産家も弥生も犯人ではなかったことに安堵。

「貴族探偵」はと云えば資産家が花婿候補3人の排除を画策したかもしれなかったこと、弥生が意識せずに人に何かをさせる才能に長けていること、皐月がそんな弥生に誠心誠意尽くしていることを見抜いているのだった―――エンド。

関連過去記事
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「貴族探偵」(麻耶雄嵩著、集英社刊)昨日発売!!

「メフィスト 2010 VOL.1」より「メルカトルかく語りき 第二篇 九州旅行」(麻耶雄嵩著、講談社刊)

「屍の命題」(門前典之著、原書房刊)ネタバレ書評(レビュー)

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