<あらすじ>
ヘンテコな方言を使いながらも天才的な推理力で難解な事件を解決する警視庁捜査一課の警部補、野呂盆六(橋爪功)の活躍を描く「天才刑事・野呂盆六」シリーズ。第5弾は、トロッコ列車が走る富山県の黒部・宇奈月温泉を舞台に、美術館で起きた館長殺害事件に盆六が挑む。
富山県の宇奈月温泉を訪れていた盆六(橋爪功)は、旅先で知り合った千鳥夏生(さくら)ら鉄道マニアの一行をセレネ美術館に案内する。美術館には盆六がお気に入りの美人画家、伊岳綾見(とよた真帆)がトロッコ列車を描いた作品が展示されていた。その隣には、5年前に宇奈月で亡くなった、三笠五郎画伯(黒部進)の大作も飾られている。学芸員の田渕三美子(遠山景織子)から、ちょうど綾見が宇奈月に来ると聞き、心躍る盆六。だが、館長の土橋大造(名高達男)に挨拶をしている間に、何者かが綾見と三笠の絵に悪質ないたずらをしていた。2つの作品の前面ガラスいっぱいに赤いマジックで書かれた「いい死」「旅立ち」という文字。この件で盆六たちが騒いでいるところへ、ちょうど綾見が美術館に現われる。盆六は、彼女の右手についた赤いマジック跡を見逃さなかった。
自作にいたずらをされた綾見だったが、「被害届は出さない」と告げ、美術館をあとにする。実は、三笠画伯と綾見は名字が違うものの、実の父娘だった。
一方、美術館でのいたずらはそれだけにとどまらず、土橋館長の周囲にクマのぬいぐるみやこうもり傘、壺など意味不明な物と一緒に写真が次々と現われ、一同を不思議がらせる。現場をデジカメに次々と納める盆六の捜査に、夏生は興味津津。何か捜査の手助けをさせて欲しいと盆六に頼み込む。
宇奈月の宿を訪れた盆六は、女将の高柳小春(山口美也子)から、三笠画伯が宿の常連で、娘の綾見を可愛がっていたこと、そして、明日11月4日が三笠の命日だと知らされる。実は三笠は、5年前に宇奈月からほど近い山奥で遭難事故に遭い、亡くなったのだった。天候が急変した山で三笠を含む5人が死亡し、瀕死の状態で救出された女将の弟も2日後に死亡したという事件。女将によれば、急変した天候のなか、近くの山小屋に避難しようとした一行を、山に詳しい土橋が強引に下山を強行、一人が滑落し、助けようとした結果のことだったという。土橋は一行から離れ、救援を呼びに一人下りたため助かったのだった。事件後、土橋は自分は山小屋に避難しようと言ったが、皆に反対されたのだと、事実とは正反対のことを警察に話したという。遭難事故で亡くなったのは、女将の弟と綾見の父、三笠をはじめ、宇奈月東署の鍋島警部(中原丈雄)のいとこ、美術館に務める小森信世(宍戸美和公)の幼なじみの女性のほか、三美子の婚約者だった久間木という男性、坪田という女性の計6名。当時の事故を伝える新聞記事を見ていた盆六は、一連のいたずらが5年前の土橋に対する復讐予告だと気づく。
11月4日の命日当日、美術館には犯人からの殺人予告らしきメッセージがあった。警察と盆六は美術館で土橋を警護すると同時に、彼に恨みを持つ三美子や信世を見張る。だが、復讐できるものならやってみろと強気な土橋は、警備の目をすりぬけ、ホールで一人になったところを殺害されてしまう。
そのとき、三美子は盆六と、信世は鍋島警部とともにいた。そして、綾見はトロッコ列車に乗り、終点の齦ス駅にいた。盆六が夏生に、綾見を見張るように頼んでいたのだ。さらに、女将も旅館での目撃証言があり、土橋に恨みを持つ人物には皆、崩し難いアリバイが・・・。はたして、盆六は真犯人にたどりつけるのか!?
(あらすじ・写真共に公式HPより)
では、続きから……。
土橋は密室ともいうべき場所で殺害され、その傍らには目隠しされたクマの縫い包み、こうもり傘が転がっていた。
そして死因はトリカブトが染み込んだ吹き矢による毒殺。
土橋殺害時、綾見には夏生と共にトロッコ列車に乗車していたアリバイがあった。
確固たるアリバイに守られる彼女たちだったが、その全員が実は遭難事故の遺族であることが判明。
三笠の娘が綾見。
久間木の婚約者が三美子。
坪田の妹が夏生。
捜査を続け遂に真相に辿り着く野呂。
まずは「いい死」「旅立ち」の謎を解き明かす。
「いい死」とは「114」。
つまり、三笠らの命日「11月4日」のことだ。
そして「旅立ち」をローマ字に置き換えて「tabidachi」。
これを3箇所に区切ると「tab ida chi」。
それぞれ田淵(tabuchi)、伊岳(idake)、千鳥(chidori)の名字に繋がっていた。
現場に残されたアイテム。
しかも、そのすべてにアナグラム(並べ替え)のメッセージが残されていたのだ。
三笠吾朗(mikasagorou)はこうもり傘(koumorigasa)。
久間木(kumaki)は黒い眼隠し(kuroimekakusi)。
坪田理子(tubotariko)はトリカブト(torikabuto)。
殺害方法は舞台外から通気窓を使いトリカブトの吹き矢を射かけたというもの。
殺害後、小道具を放りこんだ。
今回の犯行は、綾見、三美子、夏生3人の共謀だったのだ。
実際の実行犯は夏生。
夏生は綾見を残し途中で下車、犯行後最初からトロッコ列車に乗っていたように取り繕ったのだった。
夏生は自分の携帯で撮った写真を列車に乗っていた証拠として主張するが、撮影日時がファイル名となるタイプの携帯ではファイル名を変更してしまえばその日に撮った証拠にはならないと論破される。
逆に野呂はその写真にこそアリバイを崩す証拠がないか注目。
夏生が写った写真の左胸の「金ぴかの紙切れ」。
犯行当日以前に撮影したと思われる写真にはその数日前にトロッコ列車記念式典でばら撒かれたくす玉の紙きれが付着していたのだ。
つまりアリバイ用の写真は殺害当日ではなく、別の日に撮影されていたことになる。
それでも証拠にならないとシラを切る3人に、野呂は正真正銘、最後の切り札を切る。
夏生の撮ったアリバイ写真に式典に参加していた別の親子連れやカップルが写り込んでいたのだ。
これでは式典の日に撮ったものだと認めないわけにはいかない。
事ここに至っては是非も無く犯行を認める3人。
それぞれが野呂に謝意を述べ連行されて行く。
「11月7日事件解決」レコーダーに声を録音する野呂―――エンド。
<感想>
アナグラムのために作られた登場人物名。
なぜ、ローマ字の上にアナグラムでなければならないのか?
そして、捻りに捻りを加え過ぎてしまい結果から導き出しているとしか思えない説得力のない推理。
仕方がないので後付けの証拠(それも説得力に欠けるし……)。
なにより、複数犯とは―――凝りに凝り過ぎ、足下をすくわれた印象。
「正直、やりすぎかな」と思うところもありましたが、ここまでくればこれはこれで“ある意味”アリかもしれません。
とはいえ、今作は初期の野呂盆六シリーズ(1話目、2話目)とは別物と見た方が楽しめそうです……(泣)。
そういえば、前作もアナグラムに拘ってたような……何か意味があるのだろうか。
ひょっとして、これこそ何かの伏線なのかも……。
<キャスト>
野呂盆六:橋爪功
伊岳綾見:とよた真帆
田渕三美子:遠山景織子
千鳥夏生:さくら
土橋大造:名高達男
鍋島道三:中原丈雄
三笠五郎:黒部進
高柳小春:山口美也子
小森信世:宍戸美和公
赤井刑事:小川信行
青田刑事:石原由宇ほか
(公式HPより、敬称略)
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