ネタバレあります!!注意!!
「『朱都の記憶』が添付された『奈良歴史ロマンを歩く―平城遷都1300年祭公認ガイドブック』」
<ネタバレあらすじ>
登場人物一覧
森田:(影の薄い)主人公、考古学専攻の大学教授
千恵によれば長屋王の生まれ変わりらしい。
ゆか:森田の教え子、学生
石橋:森田の大学時代の同級生、現在は政治家
千恵によれば藤原四兄弟の生まれ変わりらしい。
藤田:森田の大学時代の同級生、現在は高校教諭
千恵によれば藤原四兄弟の生まれ変わりらしい。
杉本:森田の大学時代の同級生、現在は家業を継ぎ工務店の社長
千恵によれば藤原四兄弟の生まれ変わりらしい。
請川:森田の大学時代の同級生、森田とは別の大学の教授(考古学)
千恵によれば藤原四兄弟の生まれ変わりらしい。
千恵:請川の姪、長屋王に連なる者の生まれ変わりを名乗る。
聡美:故人。森田の恩師の娘であり婚約者、十五年前に阪神淡路大震災で被災し死亡したと思われていた。
明美:聡美の妹、現在は森田の助手。今回の被害者。
ではネタバレあらすじを……
主人公・森田は大学教授。
彼には悲しい記憶があった。
恩師の娘であり森田の婚約者でもあった聡美を十五年前の阪神淡路大震災で失ったのだ。
現在ではその記憶を振り切るように、助手である聡美の妹・明美や教え子のゆかたちと共に考古学に打ち込んでいた。
聡美と明美の父である森田の恩師の一周忌の日。
明美が何者かに殺害されてしまう。
死体の第一発見者は森田。
そこを森田の同窓生・石橋に目撃され、警察に疑われることに。
これにより史実の“長屋王”と同じく苦しい立場に追い込まれてしまう。
その頃、森田の研究室に居たゆかのもとへ明美から荷物が届けられる。
それは明美の姉・聡美の遺品だった。
中に五時四十六分で止まった大きな目覚まし時計を見つけたゆかは驚く。
一方、疑われ困り果てた森田の脳裏にある人物の言葉が甦る。
「先生(森田)は藤原四兄弟に殺される!!」
その言葉の主こそ石橋と同じく森田の同窓生・請川の姪である千恵だった。
森田には過去に聡美という婚約者があった。
森田と大学の同級生だった他の4人―――石橋、藤田、杉本、請川は彼女を巡って争った。
結果、森田が聡美と婚約することに。
聡美が電話で森田のプロポーズを了承したのは彼女が亡くなるわずか6時間前のことだった。
その後、森田は恩師と同じく考古学の研究者の道を進み、石橋は政治家に、藤田は高校教師に、杉本は家業の工務店を継ぎ、請川は森田と同じく研究者になっていた。
そんなある日、請川の姪・千恵が自分は過去の誰かの生まれ変わりであり、その記憶が甦ったので確認して欲しいと依頼してくる。
彼女によれば甦った記憶の多くは平城京に関するものだった。
千恵の言葉は理性的で妄想や虚言癖に類するものではないと森田には思われた。
そのうちに森田は彼女を吉備内親王の生まれ変わりではないかと考え始める。
だが、森田は唯物論者にして極度のリアリスト。
生まれ変わりを認めることは出来ない。
そこで、千恵の記憶の真偽を確かめるべくテストを行う。
そのテストとは、千恵と共に実際に平城京の史跡を巡り彼女の知識に誤りが無いかを確認するというものだった。
立会人として石橋、藤田、杉本、請川、ゆかを連れて行く森田。
テストは順調に進み、千恵の言葉には一点の非もないかに思えた。
第一次太極殿へと足を運んだ一行。
そこで森田は千恵の言葉にある“矛盾点”を見出す。
その頃、一周忌の準備を進めていた明美は姉の遺品を整理していて“妙な物”を発見していた。
それは姉・聡美が事故死ではなく、何者かに殺害されたことを示すものだった。
明美はその犯人と思われる人物に真相を確認しようとする。
千恵のテストを終え、彼女の記憶に矛盾を見つけたと考えていた森田。
彼女がなぜこんな芝居をうったのか……理由が思いつかなかった。
千恵は「先生(森田)は長屋王の生まれ変わりで、今生でも藤原四兄弟に弑されようとしている」と告げる。
そして、その藤原四兄弟とは森田の同級生―――石橋、藤田、杉本、請川だとも。
そして、一周忌当日。
明美が何者かに殺害されてしまう。
だが、明美は自分の見つけた“妙な物”を森田の研究室に届けていた。
聡美の遺品の中に埋もれていた“ソレ”を見つけたゆかは明美が聡美を殺害した同一犯により殺されたと看破。
聡美が殺害された当時の同級生4人のアリバイを確認する。
それによれば―――
石橋は前日に虫垂炎の手術で入院しており、当日は地震の為に手術痕が裂け出血に悩まされていた。
藤田はロスの学会に出席、震災の報を聞き付け慌てて帰国していた。
杉本は信州旅行に出ており、こちらも慌てて戻って来ていた。
請川は前日から森田と酒を酌み交わしており、聡美が森田のプロポーズを受け入れた電話を近くで聞いていた。
震災後は森田と共に行動し、聡美の部屋へ駆け付けた。
とのことだった。
ここからゆかは論理的に犯人である人物を導き出す。
後日、科学捜査の甲斐があって犯人は逮捕された。
事件が解決し、千恵と会う森田。
森田は千恵を嘘吐きであると弾劾。
千恵は自らが“長娥子の生まれ変わりである”こと、“今度こそ守りたかった”と言い残すと姿を消す。
森田はその言葉を聞き、愕然。
自らの過ちに気付いた森田は「元正朝賀儀」という資料にあたり千恵の言葉の真実を突きとめる。
謝罪に赴くものの、千恵はサイクリング旅行に出かけており留守だった。
森田はやきもきしながら千恵の帰宅を待つことに―――エンド。
ここまでが「小説部分」です。
これに対し、「朱都の記憶」出題は次の2問。
1.明美殺害犯は誰か?
2.森田はなぜ、千恵が嘘を吐いたと判断したのか?
これを解決しなければなりません。
では、ここからお待ちかねの推理です!!
あらすじはほぼ上記のとおり。
ただし、明美殺害犯の選定に際し聡美殺害犯を利用した点は「朱都の記憶」にはありません。
そこは管理人の推理にもとづき補完した点です。
したがって、ここからの推理にも管理人の先入観が多分に働いております。
ご了承ください。
さらに「朱都の記憶」でも触れられていますが、本作では犯人を断定する大きなヒントのひとつが欠けている状態とのこと。
そのヒントは2010年7月20日より第一次太極殿付近で公開されるとのこと。
詳しくは下記「平城京ミステリークエスト」公式HPにて確認下さい。
http://www.1300.jp/mystery/index.html
では、改めて推理開始!!
1.明美殺害犯は誰か?
まずは情報整理から。
・聡美は何者かに殺害された。
・明美は聡美殺害犯に殺害された。
・犯人は石橋、藤田、杉本、請川の中の誰か。
・明美とゆかの云う聡美の遺品=“妙な物”とは五時四十六分で止まった大きな目覚まし時計だろう(ただし、朱都の記憶ラストのメモでそれと断定はしていない。ラストのメモでは手鏡とか、本とか他にも候補が出た。ここが7月20日公開のヒントの可能性あり)。
ここで管理人は「明美殺害は聡美殺害犯を指摘し同一犯であることをもって断定すべき」と考えています。
明美殺害時は全員に犯行のチャンスがあるためです。
とりあえず、上記あらすじに補足しておくと明美は殺害当日も直前まで生きていたとの描写があるので時間錯誤のトリック等は用いられていない様子。
むしろ、時間錯誤のトリックが用いられているのは聡美殺害の方か。
あくまで本文のみに拘れば「五時四十六分で止まった目覚まし時計」がすべてを表しているかと。
ただし、五時四十六分は阪神淡路大震災の日時ぴったり。
不思議はありません。
なので、この目覚まし時計をもう一捻りする必要があるかも。
ここが7月20日公開のヒントかな〜〜〜と疑っていますが、つまりこの目覚まし時計の指していた時刻が問題ではなく五時四十六分を指せていたことが問題なのかと。
管理人は「この目覚まし時計は予め壊れていた」か「電池が入っておらず動く筈の無いもの」だったのでは……と疑っています。
つまり聡美殺害当日時点で目覚ましは用を為さないものになっており、それが聡美の死亡推定時刻を指していた為に“妙な物”になってしまったのではないか?と考えています。
つまり、阪神淡路大震災があったことを知る何者かが「それを利用し時計を工作、聡美を事故に見せかけ殺害した」ことになります。
で、このアリバイトリックを利用できるのは阪神淡路大震災の事後に聡美を殺害できる人物。
事前の人物ならば五時四十六分の時間設定が思いつかない。
さらに“科学捜査”の結果、犯人が捕まった点にも注意が必要だろう。
裏を返せば崩すのに科学捜査の裏付けが必要になるアリバイだったということだ。
で、これに各人のアリバイを照らすと―――
石橋は前日に虫垂炎の手術で入院しており、当日は地震の為に手術痕が裂け出血に悩まされていた。
藤田はロスの学会に出席、震災の報を聞き付け慌てて帰国していた。
杉本は信州旅行に出ており、こちらも慌てて戻って来ていた。
請川は前日から森田と酒を酌み交わしており、聡美が森田のプロポーズを受け入れた電話を近くで聞いていた。
震災後は森田と共に行動し、聡美の部屋へ駆け付けた。
石橋:アリバイが余り意味無い。科学捜査が関係するとすれば出血関係か?
藤田:ロスは遠距離すぎる、不可能。科学捜査も関係ない。
杉本:信州は遠い。事後に戻れるとも考えにくい。科学捜査も……。
そんな中、事後にトリックを仕掛けるメリットが生ずるのは請川。
森田と酒を飲んでいたアリバイが活きてくるのは彼だけ。
他の3人はアリバイにもならない。
科学捜査とは指紋のことか?
したがって管理人が犯人と考えるのは請川。
ストーリーとしては―――
聡美が森田のプロポーズを受けたことを目の前で知らされた請川。
ショックを受ける。
そこへ阪神淡路大震災が発生。
森田と行動を共に。
聡美宅にて気絶した聡美を発見。
嫉妬と怒りが芽生え森田に隠れて聡美をその場で殺害。
それと知らず目覚まし時計を工作。
それが明美に露見し口を封じた―――というのはどうだろう?
まぁ、根拠も薄弱かなぁ……。
2.森田はなぜ、千恵が嘘を吐いたと判断したのか?
まずは情報整理から。
・森田が千恵を嘘吐きだと思った理由には第一次太極殿が関わっている。
・当初、森田は千恵を「吉備内親王の生まれ変わり」と思っていた。
・だが、実は千恵は「長娥子の生まれ変わり」だった。
・森田は「元正朝賀儀」を見て自らの過ちに気付いた。
これらから、「森田は第一次太極殿に関して千恵が吉備内親王の生まれ変わりならばありえない発言を行っており、そこで嘘吐きと断定した」と考えられます。
ところが「後に千恵が長娥子の生まれ変わりだったと分かり、元正朝賀儀にあたったところ上記発言は長娥子ならば自然なものだったために過ちに気付いた」という流れなのかなと。
ここから「第一次太極殿に吉備内親王は赴くことが出来なかったが、長娥子ならば赴くことが出来た。そして『元正朝賀儀』に赴いた記録があった」という理解でいいのかな〜〜〜と思うが。
考えられるのは吉備内親王と長娥子の没年の違い。
たしか、吉備内親王は長屋王と運命を共にしており、長娥子は生き残っていた筈。
それと、第一次太極殿の使用年数を勘案すると答えが出るのかも?
で、肝心の「元正朝賀儀」にあたりたいところですが史料がない。
京都大学附属図書館に所蔵されているみたいだけど……。
う〜〜〜ん、わからん!!
教えて、詳しい人!!
と、ここまで管理人は推理してみました。
とはいえ、これは推理というより妄想に近いものです。
そこで……
「朱都の記憶」に関する推理や情報提供をコメントにて募集しております。
「朱都の記憶」をみんなの力で解決してみませんか?
あなたのコメントがこの謎を解決するかもしれません!!
「私はこう思う」、「僕の推理はこうだ」、「ヒントはコレだった」等、コメントお待ちしております!!
2010年11月22日追記:
2010年11月15日、ついに「朱都の記憶」の結果が出ました。
果たして解答や如何に?
・「平城京ミステリークエスト」その結果は!?
上記リンクよりどうぞ!!
◆関連外部リンク(外部サイトに繋がります)
・「平城京ミステリークエスト」公式HP
http://www.1300.jp/mystery/index.html
・<平城遷都1300年祭>推理小説ヒント、会場に(読売オンラインさん)
http://osaka.yomiuri.co.jp/nara/news/20100527-OYO8T00449.htm?from=iphoto
・平城宮跡会場で事件の謎を解くミステリークエスト−正解者には特大せんとくん(奈良経済新聞さん)
http://nara.keizai.biz/headline/407/
◆関連過去記事リンク
平城京遷都1300年祭といえばこんなドラマも。
・土曜ワイド劇場「広域警察・ふたりの刑事 遷都1300年奈良、飛鳥、平城京をめぐる連続殺人事件!阿修羅と美少女に秘められた驚愕の真実!!」(5月8日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・平城遷都1300年祭にもミステリイベント発見!!その名も「平城京ミステリークエスト」!!
・「平城京ミステリークエスト」攻略のカギになるかも?「朱都の記憶」作者・石井敏弘先生記者会見!!
「朱都の記憶」が添付された「奈良歴史ロマンを歩く―平城遷都1300年祭公認ガイドブック (SAN-EI MOOK)」です!!
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