2010年07月19日

「かいぶつのまち」(水生大海著、原書房刊)

「かいぶつのまち」(水生大海著、原書房刊)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります!!注意!!

<あらすじ>

かいぶつのまち2

後輩たちの活躍を観ようと演劇全国大会に集まった、元「羅針盤」メンバー。翌日の本番を控えるなか、出演者たちが次々と体調を崩してゆく。だれかが故意に仕掛けたのか。現役部員との心の壁に戸惑いながら、その隙間に巣くう「かいぶつ」を探す。心に刺さる青春ミステリー。
(原書房さん公式HPより)


<感想>

映画化で話題の「少女たちの羅針盤」続編。
バタの名前が光石要(前作のかなめから)だったり、瑠美が事件に率先して関わる理由が前作の事件にあったり、蘭の家庭の事情など、本作だけでは理解が難しいポイント多数あり。前作を読んでおくべき。

ただし、前作を読んでおけば楽しさは倍増。
ストーリーに力があり、グイグイ引き込まれる。
ここら辺は流石の一言。
ミステリとしては弱いが「少女たちの羅針盤」を読んだならばこちらも読む事をオススメする。

<ネタバレあらすじ>

登場人物一覧
瑠美:元「羅針盤」のメンバー、大学に進学後、劇団にて舞台に励む。
蘭:元「羅針盤」のメンバー、親が世界有数の資産家、前作ラストにて海外に渡った。
バタ:元「羅針盤」のメンバー、現在は売れっ子脚本家・光石要。
渡見:女性、橘高演劇部顧問。瑠美の恩師にして宿命のライバル。
野ノ蕗:男性、橘高演劇部副顧問。
柳:女性、橘高演劇部3年。通称“おかん”。
仙国:女性、元橘高演劇部、柳の同級生。不祥事にて退部。
糸川:女性、橘高演劇部2年。渡見教諭曰く「憑依型の天才」。
高見澤:男性、橘高演劇部長、2年。
赤月:女性、橘高演劇部2年。糸川の親友、香西の彼女。
香西:男性、橘高演劇部2年。赤月の彼氏。

前作「少女たちの羅針盤」から数年。
瑠美、バタ、蘭の3人は全国高校演劇大会の会場にいた。
瑠美とバタの母校・橘高校の演劇部が瑠美の脚本「かいぶつのまち」で全国大会に出場した為だ。

「かいぶつのまち」は瑠美の所属する劇団で演じられた本。

その内容は―――

とある街に住むトキという少女。
少女は街の人々から迫害されていた。
少女の母は流れ者だった。
そして、少女の父は不死身の男。
母もトキ同様に迫害され死亡、父は街の人間に騙され不死身のもととなっていた短剣を奪われ殺された。
トキが今も生きていられるのは父が死の間際に残した言葉―――「トキが成長すれば宝になる」のおかげだった。

トキは父の言葉通り、美しい女性に成長し街中の男性の視線を集める。
嫉妬した街の女性たちはトキの容姿を醜いと罵り、トキ自身もそう思い込むように。

ある日、街にかいぶつがやって来る―――。
かいぶつは街にある“美しいもの”を差し出すよう要求。
街の人々はある者は戦いを挑み、ある者は宝物を差し出し、ある者は説得を試みた。
それらの試みは悉く失敗。
かいぶつと対面した人間は誰ひとり帰って来なかった。

街の人々はトキを生贄にしようとする。
自分を醜いと思い込んでいるトキは自分よりも美しい女性はたくさんいるとそれを拒否。
街の女性は生贄にされては堪らないと仮面で顔を隠すようになる。
仮面の女性は日に日に増え続け、街の人々はかいぶつの恐怖に押し潰されそうになっていた。

そんな中、街の有力者の息子がトキに駆け落ちを申し込む。
彼はトキの父を殺した仇の息子。
疑うトキに嘘をついていない証とトキの父の短剣を差し出す。
短剣を受け取ったものの彼の言葉を信じきれず躊躇うトキ。
直後、二人が逃げ出そうとしているのがバレてしまい息子はかいぶつの生贄にされてしまう。

彼の言葉を疑ったことを後悔するトキ。
手元に残された短剣を使い両親の復讐を始める。
その度に短剣を捨てるのだが、短剣はいつもいつのまにかトキのもとへ戻って来た。
自分の罪をまざまざと見せつけられたトキは日に日に憔悴。
美しかった容貌も衰えて行った―――。

街の人々はついに無理矢理トキをかいぶつに差し出す道を選ぶ。
だが、トキからは既に過去の美しさは失われていた。
トキは思う―――
もし、かいぶつに認められなければこの街は滅ぶだろう。
もし、認められたならばこの街を滅ぼすようお願いしよう、と。
そして、トキは生贄に差し出された。

後日、現代のとある高校。
そこでは隣町がかいぶつに滅ぼされた話題で持ちきりだった。
実はこの物語は現代の話だったのである。 終


この脚本に惚れ込んだ柳が瑠美に頼み込んだのが事の発端。
そこからとんとん拍子で進み、橘高校演劇部は全国大会へと勝ち進んだ。
顧問の渡見女史イチオシの逸材で主役のトキを演じる糸川の存在も大きいらしい。
しかし、瑠美は橘高校が演じる「かいぶつのまち」から短剣のエピソード一切がごっそり省略されていることが気にかかっていた……。

全国大会初日、橘高校の舞台を明日に控えた大事な時期にトラブルが多発。
教頭、渡見女史、赤月、香西らが謎の腹痛に倒れた上、糸川が送りつけられたカッターナイフを見て卒倒する騒ぎが起こったのだ。
代役を立てるよう主張する部長の高見澤、続行を命令する病身の渡見が対立する中、八方美人的な対応に終始する頼りない副顧問の野ノ蕗。

その場はなんとかなったものの、翌日に糸川が自殺未遂を起こす。
バタの機転で事なきをえたものの、糸川は誰とも知らない人物からカッターナイフを送りつけられ続けた為に精神的に追い詰められたらしい。
「かいぶつのまち」の脚本から“短剣”のエピソードが抜かれていたのはこの為だった。

OBとして、また脚本を提供した立場として、そしてかなめを助けられなかった者として見過ごしに出来なかった瑠美たちはこの事態を収拾すべく動くことに。

その過程で薬による腹痛事件を仕掛けたのが高見澤、赤月、香西だと判明。
精神的に追い詰められ続けていた糸川が舞台に立たずに済むよう助けようとしたのだった。
本気で糸川を助けたがっていた高見澤たち。
ところが、糸川の母親が娘の自殺未遂の責任を学校側に問うたことと腹痛事件の不祥事が重なり、演劇部が廃部の危機に。

ここに瑠美たちは一時対立していた高見澤たちと和解。
カッターナイフの犯人を捜すことに。
外部の瑠美たちならではの視点で野ノ蕗こそが犯人であると見抜く。

事の真相はこうだった―――

喫煙という不祥事によりトキ役を追われた仙国。
彼女の不祥事を告発したのは高見澤だったのだが、糸川だと誤解した仙国は最初の一回だけカッターナイフを送りつけた。
不安に駆られた糸川は渡見と野ノ蕗に相談。
渡見は超然としていればよいと相手にせず、野ノ蕗は口だけの心配をする。
渡見はともかく野ノ蕗に呆れた糸川は相談相手を高見澤に変更する。
相手にされなくなった野ノ蕗は怒り、偶然、赤月の筆箱に入っていたカッターナイフを糸川のものと勘違いし、からかわれたと憎悪。
糸川に嫌がらせのカッターナイフを送り続けたのだった。
しかも、今回の自殺未遂と腹痛事件に便乗し顧問の渡見を追い出した上、2年生も追放、比較的自分に従順な1年生による新たな演劇部作りを狙っていた。

動機を突きとめたもののあくまでシラをきる野ノ蕗に罠をかける瑠美たち。
舞台中、衆人環視の前で犯人のものと思われる髪の毛を拾ったとカマをかけ自白させる。

だが、裏にはもう一幕あった。
野ノ蕗をそれと知られずに影から操っていた人物が居た、柳だ。
柳は糸川の才能と恵まれた環境に嫉妬していたのだった。
面倒見がよく部員たちから“おかん”と慕われていた柳だが、彼女も高校3年生、年相応の少女だ。彼女も誰かに救いを求めていた。
「誰もがかいぶつを心の中に飼っている、だからこそもっと早くに本音をぶつけていれば」バタが呟く。

こうして、高見澤たち腹痛事件の実行犯は演劇部を去り、野ノ蕗は免職。
糸川も転校を決め、柳は卒業までの期間を白い目で見られることになった。
渡見はといえば、瑠美が呆れる行動力で糸川に芝居を続けるよう説得し追いかけているらしい。

蘭がアメリカに戻る当日。
見送りに集まった瑠美とバタ。
全員の顔が晴れやかだった。

実は全員がそれぞれに悩みを抱えていた。
蘭はアメリカでティーン役しか演じられず悩んでいた。
バタは性同一性障害から男性になったが、家族との壁に悩んでいた。
そして瑠美は自身の所属する劇団の古参メンバーと若手メンバーの対立に悩んでいた。

だが、今回の事件の中で―――

蘭は渡見の強さを見せつけられ演劇を続ける“覚悟”を得た。
ちなみに蘭にはこの年になって弟が出来た。
これが蘭にとって追い風か逆風かは分からない。
バタは医者である兄や母が自分を応援してくれている事を知った。
とはいえ、一朝一夕で解決する悩みではないが。
瑠美はといえば、「羅針盤」創設時の情熱を思い出し、流されることなく自らの道、すなわち独立の道を決意したのだった。

それぞれがそれぞれの道へと旅立っていく。
だが、彼らには遠く離れていても互いに支え合う仲間たちが居る―――エンド。

◆関連過去記事(上から時系列順)
・原作「少女たちの羅針盤」ネタバレ書評(レビュー)はこちら。
「少女たちの羅針盤」(水生大海著、原書房刊)

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映画「少女たちの羅針盤」撮影快調!!&原作者・水生大海先生が描く続編「かいぶつのまち」情報!!

「少女たちの羅針盤」続報(地元よりの支援編)

本作「かいぶつのまち」です!!
かいぶつのまち





前作にして映画原作にもなった「少女たちの羅針盤」です!!
少女たちの羅針盤





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