2010年08月20日

双葉社刊「漫画アクション」連載「シャーロッキアン!」第7話「大空白時代の真実」ネタバレ批評(レビュー)

双葉社刊「漫画アクション」連載「シャーロッキアン!」第7話「大空白時代の真実」ネタバレ批評(レビュー)です!!

シャーロッキアン!1


<7話ネタバレあらすじ>

村野老人は元警官。
彼にはあるトラウマがあった。

現役時代の村野の前に現われる凶悪犯。
凶悪犯は片手に凶器を持ち、今にも人質を害そうとしている―――そんな光景が老いた村野の脳裏に浮かぶ。
村野の手には一丁の拳銃。
抜き差しならない状況に陥った村野は人質を助ける為に発砲する―――。

一方、愛理は友人に頼まれ老人介護施設へ慰問に訪れていた。
愛理はある本を朗読することに。
もちろん、その本とは「シャーロック・ホームズ」シリーズの一冊「シャーロック・ホームズの思い出(回想)」だ。

愛理の朗読は思いの外盛り上がり、老人たちはホームズの活躍に一喜一憂し感嘆の溜息を洩らす。
そんな中、ついに「シャーロック・ホームズの思い出」最後の一篇「最後の事件」へと差し掛かる。

「最後の事件」とは、あのホームズの宿敵・モリアーティ教授とホームズがライヘンバッハの滝へと消えて行った事件だ。
消えていったホームズについて愛理が語ると、周囲の老人たちがホームズの安否を気にかけた。
安心させるべく「シャーロック・ホームズの帰還(生還)」について話す愛理。
ホームズが生きていたと知り、ほっと胸を撫で下ろす老人たちの中、たった一人複雑な表情をする人物が居た。
村野老人である。

「そのモリアーティとかいう犯罪王は具体的に何をやったのかね?」
「具体的には記録されていないんです」
村野の質問に答える愛理。
「なんだ!!それじゃぁ、どれだけの人物か分からんじゃないか!!」
愛理の返答に気分を害した様子の村野老人は質問を重ねる。
「なんでホームズはワトスンに連絡を取らなかったのかね、おかしいじゃないか!!そもそも他にもおかしな点がいくつもある!!」

対応に窮した愛理。
村野老人は周囲の顰蹙をものともせず「所詮物語だ!!」「子供騙しだ!!」と言い募るや、ぷいと自室へ戻ってしまった。
しょげかえる愛理に周囲の老人たちは「あの人は偏屈だから……」と慰めの言葉をかけるのだった。

翌日、村野老人のことを車教授に相談する愛理。
車教授は村野老人を肯定する。
そもそもシャーロッキアンの間でも大空白時代については物議を醸すことがあると云う。
ホームズがライヘンバッハにてモリアーティの部下に目撃されたにも関わらず生存を隠し続けたのはおかしいと云うのだ。
それだけにワトスンの記述も何かを故意に隠していると考えるシャーロッキアンが多いらしい。
車教授は「登場人物を血の通った人間として駒のように考えられない人にとってはそこが我慢ならないのだろう」とまとめるのだった。

車教授の言葉を胸に考え続けた愛理は自分なりのある解答に辿り着く。
愛理は再び村野老人を訪ねることに。

不機嫌そうな村野老人に愛理は自分の仮説を話す。
それは「『最後の事件』から『空き家の冒険』までの時間こそが、ホームズが巨悪・モリアーティとはいえ殺人を犯してしまった自責の念から立ち直るのに必要な期間だったのでは」というものだった。
ホームズが人間だからこそ自らの罪に怖れ悔いることもあるのではないか。
ワトスンは友人としてホームズのそんな姿を描くことが偲びなく、筆を故意に曲げたのではないか……。
愛理の仮説を聞いた村野老人は深く頷く。

彼もまた自らのトラウマと向き合う人間だったからだ。
凶悪犯とはいえ人を殺してしまった罪はいつまでも消えない……村野の言葉に愛理ははっとするのだった―――エンド。

<感想>

村野老人の後悔とホームズの人間らしさが上手くマッチしていて、読後に考えさせられました。
ただし、ラストがちょっとあっさりしすぎていた感があり。
村野のトラウマは愛理の仮説の後に明かされた方が読者の胸にもっと訴えられたのではないかと思います。

とりあえず7話までですが、「シャーロッキアン!」はストーリー展開とラストのインパクトがちょっと弱いかなと。

ストーリー展開については各エピソードは良いと思うのでエピソード中の展開順を変えた方がより映えるのになぁと思うことが多々。

ラストについても読者に余韻を残そうとしているのだと思いますが、それが上手く機能していないかな。
どこか途中で投げ出されたように感じてしまいます。
キャラクターの淡白さもそれを手伝っているのかもしれません。
ただ、キャラクターの淡白さについては「ホームズ譚」を前面に押し出す必要性上、あまりインパクトを出すわけにもいかず今ぐらいがベストなのが難しいところ。

とはいえ、「シャーロッキアン!」は発展途上の作品。
これらについては今後変わるかもしれないし、逆に持ち味として定着し読者を魅了するかもしれません。
今後も目が離せそうにない「シャーロッキアン!」、8話が楽しみです。

◆関連外部リンク(外部サイトに繋がります)
・WEB漫画アクション
http://webaction.jp/

◆関連過去記事
双葉社刊「漫画アクション」にてホームズミステリー「シャーロッキアン!」(池田邦彦作)連載中!!

双葉社刊「漫画アクション」連載「シャーロッキアン!」第4話ネタバレ批評(レビュー)

双葉社刊「漫画アクション」連載「シャーロッキアン!」第5&6話ネタバレ批評(レビュー)

3話&4話作中で引用された「シャーロック・ホームズ―ガス燈に浮かぶその生涯 (河出文庫)」です!!
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