ネタバレあります、注意!!
前半は獲得の物語、後半は喪失の物語。
<あらすじ>
生れながらに人の心を読むことができる超能力者、美しきテレパス火田七瀬は、人に超能力者だと悟られるのを恐れて、お手伝いの仕事をやめ、旅に出る。その夜汽車の中で、生れてはじめて、同じテレパシーの能力を持った子供ノリオと出会う。その後、次々と異なる超能力の持主とめぐり会った七瀬は、彼らと共に、超能力者を抹殺しようとたくらむ暗黒組織と、血みどろの死闘を展開する。
(新潮社公式HPより)
<感想>
1970年代に刊行された「家族八景」「七瀬ふたたび」「エディプスの恋人」の「七瀬三部作」からなるシリーズ2作目。
「家族八景」から一転、アクションサスペンステイストを盛り込んだ作品になりました。
しかも、ラストは―――気になる方はネタバレあらすじをどうぞ!!
このラストからどう3作目に繋がるのか?
明日更新予定の「エディプスの恋人」ネタバレ書評(レビュー)をお楽しみに。
衝撃の結末が待っています。
ちなみに「七瀬ふたたび」のラストですが、学生運動等当時の時代背景を象徴しているのかもしれませんね。
大きな力に翻弄される辺りは象徴しているようにも感じられます。
2010年10月には芦名星さんを七瀬役に「七瀬ふたたび THE MOVIE」として映画公開予定。
ちなみに「七瀬ふたたび」はNHKやテレビ東京などで都合4回ドラマ化(あの多岐川裕美さんが七瀬役のものも!!)されていますが、映画化は今回が初。
また、七瀬役の芦名星さんは8月28日公開の「KING GAME」にも出演されています。
◆関連過去記事
【七瀬三部作】
・「家族八景」(筒井康隆著、新潮社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・「エディプスの恋人」(筒井康隆著、新潮社刊)ネタバレ書評(レビュー)
【その他関連過去記事】
・あの筒井康隆さんの名作が映画に……。
・漫画家・江川達也先生4年ぶりの映画監督作品は「KING GAME」!!
・筒井先生といえば、2010年には「時をかける少女」映画化の話題もありました。
こちら。
<ネタバレあらすじ>
登場人物一覧:
火田七瀬:人の心を読むテレパス
岩淵恒夫:予知能力者
ノリオ:七瀬と同じくテレパス
漁藤子:時間移動能力者
ヘンリー:念動力者
ヘニーデ姫:中盤、七瀬と行動を共にするが……
七瀬はテレパス。
人の心を読む事が出来る超能力者だ。
彼女はこの能力の為に一箇所に定住しないですむ家政婦を続けていたが、自身が女性として成熟するにつれ男性たちに狙われるようになったために家政婦をやめ、旅に出た。
旅先の列車で出会ったのは岩淵恒夫という青年とノリオ少年。
ノリオは七瀬と同じテレパス。
岩淵恒夫は予知能力の持ち主だった。
恒夫の予知能力により落石事故を免れた七瀬たちはそのまま恒夫と別れる。
人目を忍び生活を続ける七瀬とノリオは、念動力者ヘンリーを旅の仲間に加えたり、時間移動能力を持つ藤子との出会いを体験する。
七瀬はこれまでの孤独を同胞と分かち合うことにより癒されるのだった。
だが、そんな七瀬の前に暗雲が。
七瀬たちのような超能力者を排除しようと目論む組織が彼らを抹殺しようと動き出したのだ。
電話で教えられた岩淵の予知に従いヘニーデ姫と行動を共にする七瀬だったが、組織の襲撃に遭いヘニーデ姫が射殺されてしまう。
岩淵の予知はあくまで七瀬を救うものでその犠牲としてヘニーデ姫が選ばれたのだ。
岩淵のやり方に憤りを抱きながら七瀬はヘニーデ姫の仇を討とうとする。
だが、相手の組織は強大で警察権力にまで及んでいた。
しかも、訓練により擬似的なテレパス能力まで備えていたのだ。
追い詰められていく七瀬はノリオたちと共に最後の砦である別荘に逃げ込む。
しかし、そこへもやって来る組織の魔の手。
予知能力を失った恒夫は七瀬に危機を伝えようとするが、それがもとで命を落とす。
恒夫の予知能力が失われたのは自身の命が失われたためだった(死後は予知できない)。
恒夫は最後の力を振り絞り、七瀬に敵の正体を報せるべく呼びかける。
恒夫が見た最期の光景と共に「ケモノノヨウニウチコロサレタ」と訴える恒夫。
そして七瀬へのほのかな恋心もまた……。
そのメッセージは七瀬に届いたが、恒夫がそれを知ることは無かった―――。
一方、ノリオとヘンリーを残し藤子を迎えに出かけた七瀬は嫌な予感を覚える。
予感は的中。
留守を組織に襲われ、焼き討ちに遭うヘンリーとノリオ。
藤子は未来へと時間移動し、事態をいち早く察知するものの深手を負って死亡してしまう。
七瀬はそんな藤子の最期の言葉「ひとりでも逃げて」に逆らい、ヘンリーとノリオの下へ向かう。
ノリオを通じ連絡を取り合う七瀬とヘンリー。
だが、油断していたヘンリーは裏口から脱出しようとして射殺されてしまう。
七瀬が辿り着いた時にはノリオもまた……。
敵と対峙した七瀬はその異様に驚く。
襲撃者は組織の催眠により操られており自我が存在しない人間だった。
そのためテレパスの七瀬やノリオにも見つからなかったのだ。
怒りのまま闘おうとする七瀬だったが、ヘンリー、ノリオ、藤子の遺志を聞き生き延びる為に逃げ出す。
後方から迫る襲撃者の群れ。
雨のように撃ち込まれる銃弾。
そのひとつが七瀬を貫く―――その傷は致命傷だった。
それでも走り続ける七瀬。
もはや、死を免れ得ないと覚悟した七瀬だったがひたすら逃げ続けるのだった。
その命の火が燃え尽きるまで―――エンド。
◆さまざまなドラマ版「七瀬ふたたび」はこちら。
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