2010年08月28日

「映画ノベライズ版 十三人の刺客」(大石直紀著、小学館刊)

「映画ノベライズ版 十三人の刺客」(大石直紀著、小学館刊)ネタバレ書評(レビュー)です!!

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

十三人の刺客


三池崇史監督の本格時代劇映画ノベライズ本

2010年9月25日公開予定の映画『十三人の刺客』の完全ノベライズ!
原作は時代劇小説の大御所として知られる池宮彰一郎氏。
三池崇史監督、役所広司、稲垣吾郎、山田孝之、伊勢谷友介、伊原剛志、松本幸四郎、ほか超豪華出演陣で話題を呼ぶ時代劇大作が小説版で一足早く登場。
暴虐の限りを尽くす将軍の弟の首を獲るべく、密かに集められた十三人のサムライたち。それに対し、主君を守る軍勢は300人超。江戸から岡山へ向かう参勤交代の途中で首尾良く密命は果たせるのか・・・・
(小学館公式HPより)


<感想>

前半は頭脳戦、後半は剣劇アクションと一冊でニ度美味しい作品。

土井大炊頭と松平斉韶の対立。
その決着はついに二人の男に委ねられた。

道理を重んじ情義に生きる男・島田新左衛門。
主君への忠義に生きる男・鬼頭半兵衛。
この二人の男の対決を軸に物語は進んでいく。

ふたりの道は決して相反するものでは無かった筈だ。
賢君による治世であれば……。
だが、現実は非情である。
天は二人を対立する陣営に身を置かせてしまった。

大を生かすために、刺客として死を選んだ島田新左衛門。
彼は組織を守る為の犠牲である。

主君を護る為には手段を選べない鬼頭半兵衛。
半兵衛が武士として忠義を全うし斉韶を生かそうとすればすれるほど、当の斉韶により半兵衛の信じる武士道が汚されていく皮肉。
それを打破するには斉韶を討たせるしかないが、それでは武士道が貫けない。
唯一の解決法は主君を護るべく全力を尽くした上で、半兵衛に匹敵する親友・新左衛門の手にかかり果てることだった。

筋を通し、道を貫けば貫くほど失うものもまた大きいこの二人の対決は結局、何を残したのだろうか?
ラストまで読み進めた読者は無情感に捕らわれてしまう筈である。
唯一の救いはただ一人の生き残りが新左衛門とも半兵衛とも違う価値観“愛”に生きようとしていることだろうか。
現在の価値観で当時の価値を計るのは愚かだがそれでもあれこそが救いだと感じられてならない。

蛇足@:公式のあらすじだと斉韶勢は300超となってるけど、作中ではたしかに200と書いていることが謎。
飛び道具と火薬で70人減った後、130人を1人10殺したものと理解してるんだけど本当は300人以上だったのかな?
これもミステリーだ……。

蛇足A:どことなくストーリー展開(刺客の描写)が「四十七人の刺客」に似てるなぁと思ったらオリジナル版「十三人の刺客」の脚本は当時、池上金男を名乗っていた池宮彰一郎先生でした。
漢と武士を描かせたら五本の指に入る先生だけにオリジナルもそれをもとにしたこのノベライズ版も流石の出来です!!
これはまさに骨太の“漢たち”によるドラマだ!!

◆ノベライズ版の著者・大石直紀先生関連過去記事
「交渉人 THE MOVIE」(大石直紀著、小学館刊)ネタバレ書評(レビュー)

2010年9月11日追記:もうひとつの「十三人の刺客」こと「『十三人の刺客』(谺雄一郎著、小学館刊)ネタバレ書評(レビュー)」追加しました。
リンクよりどうぞ!!

コミック版「十三人の刺客」(森秀樹画、池宮彰一郎原作、小学館刊)ネタバレ批評(レビュー)

<ネタバレあらすじ>

時は幕末。

明石藩江戸家老である間宮が、老中土井大炊頭の門前で切腹自害を果たした。
明石藩主・松平斉韶は生来の残虐な性格で罪なき民衆に殺戮を繰り返す稀代の暴君。
間宮は死して、藩主・松平斉韶を諌めるよう幕府に訴えたのだ!!

しかし、斉韶は十一代将軍・徳川家斉の弟。
しかも、翌年には老中への就任が決まっていた。迂闊には手を出せない。
このままでは幕府の存亡に関わると判断した土井大炊頭はここに斉韶暗殺を決意する。
間宮の死に関してはお咎めなしとした上で、刺客を選び出すことに。

こうして凄腕の御目付役・島田新左衛門を中心とした十二人の侍たちが極秘裏に集められた。
その中にはこの一挙の為に芸者・おえんと別れた新左衛門の甥・新六郎の姿もあった。

土井より密命を受けた島田は江戸から明石への参勤交代の道中を狙うことに決める。
だが、明石藩には新左衛門の親友にしてライバルとも云うべき鬼頭半兵衛がいた。
ここに新左衛門と半兵衛による頭脳戦が繰り広げられることになる―――。

半兵衛は今回のお咎めが不問に付されたことを警戒。
土井家の出入りを調べ、秘密裏に新左衛門が呼ばれたことを察知。
土井の狙いを看破する。
とはいえ、参勤交代を取り辞めるわけにはいかない。
参勤交代の供廻りを70人の明石藩精鋭で固めた上で、集められた刺客の力を削ぐべく金で雇った浪人を暗殺集団として送り込む。
小手調べとばかりに襲われる新左衛門の仲間たちだが、あっさりとこれを撃退。
精鋭ぶりを見せつける。

だが、この活躍により半兵衛はさらに警戒を強めると共に刺客の数が少ないことに気付く。
半兵衛の次なる手は襲撃に絶好と思われる渡し付近で罠を張り待ち伏せすることだった。

しかし、こちらは半兵衛の実力を知る新左衛門により見透かされ回避される。
逆に新左衛門は相手の移動コース上から襲撃場所を選ばず、自ら相手の移動コースを変動させることにより有利な状況を作ろうと目論む。

そこで、以前に斉韶により息子夫婦を面白半分に殺害された尾張藩木曽上松陣屋詰・牧野靭負の力を借り、尾張藩主の命という形で尾張領通行止めを果たす。
これにより、斉韶は迂回コースを余儀なくされる。
通行止めは牧野の独断でありこの直後に牧野は腹を斬る。

落合宿にて決着を図ると決めた新左衛門たちは移動に際し半兵衛の追跡から逃れる為に山間のけもの道を選択。
その途中、体格に優れた大男で山窩(山の民)である小弥太と出会い十三番目の仲間とする。

迂回コースを取った斉韶一行は落合宿へと歩を進める。
だが、新左衛門たちの姿を見失った半兵衛は危険を察知。
とある策略を巡らし、一行を街道脇に伏せる。

斉韶一行を見失い焦る新左衛門たちに驚愕の情報がもたらされる。
なんと、70人だった筈の供廻りが200人に増大していたのだ。
半兵衛は新左衛門たちがどんな策を打ってこようとビクともしない人数の力で押し切ろうとしていた。
13人対200人……息を飲む新左衛門。

その頃、半兵衛は半兵衛で頭を悩ませていた。
数を集めたはいいが所詮は寄せ集め、どこまで対抗できるか信頼が置けなかったのだ。
しかも、主である斉韶は人の命を軽視しわざと危険な行動を取ろうとしている節があった。
「もはや、あの御仁は人ではない。魔物だ……」その様子に恐怖すら感じる半兵衛だった……。

斉韶一行は落合宿へと差し掛かろうとしていた。
ここで異変を感じる半兵衛。
宿場の住人が逃げるように去って行くのだ。
はたと気付いた半兵衛は慌てて脱出を目論むが……遅かった。

落合宿は新左衛門の手によって必殺の罠と化していた!!

あっという間に雨のように矢が射かけ込まれ周囲に負傷者の山が築かれる。
「殿をお守りしろ」と声を枯らして叫ぶものの混乱は激しく止みそうにもない。
そうこうしているうちにあちこちで爆音が鳴り響き、吹き飛ぶ藩士たち。
反撃は散発的に過ぎず、組織だった反抗も碌に出来ずみるみる数を減らしていく。
わずか数瞬の間に立っている者が130人ほどになろうかとしていた―――。

この血塗られた光景を見て喜ぶ斉韶。
半兵衛は心底、斉韶を護っていることを後悔するが今更仕方がない。
そこへ矢が尽きたのか直接斬りかかって来る新左衛門ら刺客たち。
半兵衛も応戦。新六郎と激しく斬り結ぶ。
だが、決着はつかない。

その間にも喉を斬られ、腕を斬られ、そこかしこで藩士が犠牲になり、死体の山が築かれていく。
ある者は錯乱し斉韶へと斬りかかる始末。

一方で刺客たちも敵の多さに疲弊しつつあった。
ひとりまたひとりと力尽き脱落していく新左衛門の仲間たち。
このままでは五分五分だと判断した半兵衛は斉韶と数の少なくなった供廻りを連れ脱出を図る。

ついに落合宿の外へと出た半兵衛。
だが、何度も斬り合いを経て斉韶の周囲にはわずかに4人しかいない。
そこへ追いついてくる新左衛門と新六郎。
刺客ももはやこの2名を残すのみとなっていた。

斬りかかる新左衛門に迎え討つ半兵衛。
道場では互角の二人だったがここは屋外。
前日の雨がぬかるみを作っており、新左衛門が跳ね上げた泥が半兵衛の視界を塞ぐ。
この一手が勝敗を分けた。
半兵衛はここに命を落とす―――。

新六郎は残りの二人を相手に優勢。

忠臣・半兵衛の死にも冷笑を浮かべる斉韶に激昂した新左衛門は斉韶へと斬りかかる。
新左衛門の態度に喜びを顕わにする斉韶。
こちらも刀を抜き応戦する。
飛んだ新左衛門の胴に致命的な隙を見つけた斉韶はついに新左衛門を斬る。
が、斬ったことにより斉韶もまた隙を作っており、新左衛門に組み伏せられ致命傷を負う。
痛みを訴える斉韶だったが死を悟ると満足したように微笑んで逝った。
怪物は最期まで怪物だったのである―――。

二人を斬り伏せ駆け付けた新六郎に斉韶の死を確認すると新左衛門もそのまま死亡する。

こうして新六郎ひとりを残し、敵味方ともに全滅した。
新六郎は武士に嫌気がさしたものの、今回の闘争を通じて己のうちに流れる武士の血を知ってしまった。
やがて、新六郎もまた武士として生きて行くのであろう。
そんな想いを抱く新六郎の傍らには愛する芸者おえんの姿があった―――。

幕府が倒れたのはこの25年後のことである。

「映画ノベライズ版 十三人の刺客 (小学館文庫)」です!!
映画ノベライズ版 十三人の刺客 (小学館文庫)





谺雄一郎先生による「十三人の刺客」です!!
十三人の刺客





漫画化もされました!!
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