ネタバレあります、注意!!
<あらすじ>
2010年秋公開予定の映画「十三人の刺客」の原作小説。同映画は1963年に工藤栄一監督、片岡千恵蔵主演で製作され、ラスト30分の集団殺陣シーンは、日本映画史に残る名場面としても有名。
さて今回の新作映画は、三池崇史監督、役所広司主演、松本幸四郎、稲垣吾郎共演と、話題も満載。今作品は工藤版に脚本家として加わっていた著名な時代劇小説家・池宮彰一郎氏(当時は池上金男名義)の脚本を谺氏が小説化したもので、映画に描かれていない多くのエピソードや後日談が明らかにされている。残忍な藩主の暗殺を命じられた個性の強い十三人の侍たちの戦いぶりに加え、藩主の所業に憤りながらも主君に忠義を尽くす家臣の悲哀さが心を打ちます。時代劇ファン、サラリーマン必読の一冊。
(小学館公式HPより)
<感想>
映画「十三人の刺客」のリメイクを機に小説化された本作。
「映画ノベライズ版 十三人の刺客」(大石直紀著、小学館刊)はリメイク版のノベライズ。
こちらはオリジナル版のノベライズ。
したがって、ストーリー展開が微妙に異なる。
例えば、斉韶と斉宣。
例えば、生き残る刺客の人数。
例えば、新左衛門と半兵衛の対決のくだり。
例えば、浅川の露出度などなど……。
「映画ノベライズ版 十三人の刺客(以下、ノベライズ版と記載)」については以前にネタバレ書評(レビュー)がありますので、そちらと本作ネタバレ書評(レビュー)を比較してみても面白いかも。
・「映画ノベライズ版 十三人の刺客」(大石直紀著、小学館刊)ネタバレ書評(レビュー)
さらにはコミック版もあります。
・コミック版「十三人の刺客」(森秀樹画、池宮彰一郎原作、小学館刊)ネタバレ批評(レビュー)
そういえば、落合宿の三州屋徳兵衛が登場するのも本作の特徴。
ちなみに管理人の印象は本作がシナリオ重視のリアル系、「映画ノベライズ版 十三人の刺客」がアクション系かなぁ。
<ネタバレあらすじ>
本作と「ノベライズ版」には共通部分(物語の発端、刺客の数など)も多いので、もっとも差異の多いラスト付近をネタバレします。
オープニング部分等、設定が気になる方は「ノベライズ版」のネタバレをどうぞ。
ちなみにリメイク映画版は「ノベライズ版」のシナリオに沿っている模様。
落合宿を決戦の地と定めた島田新左衛門一行総勢13人は落合宿に罠を仕掛け準備を整える。
対する斉宣一行は53人。
人数では有利な斉宣側だが、側用人・鬼頭半兵衛と近習頭・浅川十太夫の間に権力争いがあり、連携面で難があった。
互いに不安を抱える中、ここに53対13人による決戦の火蓋が切って落とされる。
堂々たる戦闘が繰り広げられ、そこかしこで剣戟の音が響く。
罠と化した落合宿を突破すべく火をかける半兵衛。
だが、浅川の独断により肝心の斉宣が振り回されたため、人数の利を上手く活かせず次第に刺客勢に追い詰められていく。
とはいえ、刺客勢も無傷では無い。
半兵衛と立ち会い斬られた平山九十郎を始め8人ほどの犠牲者を出していた。
浅川の判断は裏目に出続け、斉宣は死地へ死地へと誘導されていく。
それが分かっていながらどうしようも出来ない半兵衛は焦りからついに判断ミスをおかす。
半兵衛の提案で斉宣が逃げ込んだ先こそが新左衛門が待ち構える路地だったのだ。
ハッと半兵衛が気付くがもう遅い。
斉宣は半兵衛の目の前で新左衛門の手にかかってしまう。
怒り狂った半兵衛は新左衛門へと斬りつける。
黙って親友・半兵衛の一刀をその身に浴びる新左衛門。
驚く半兵衛に「おめおめと主君を討たれた半兵衛の武士の一分を立たせるにはこうするしかない」と語る新左衛門。
友の心情を察した半兵衛は放心。
そこを後ろからやって来た倉永左平太に斬られ絶命する。
斉宣の死を確認し、左平太や甥の新六郎に看取られたまま息を引き取る新左衛門。
浅川は斉宣を失ったショックで狂気に陥る。
こうして、多くの犠牲を払ったものの戦闘は終結した―――。
生き残った刺客は左平太、新六郎、日置八十吉に、重傷を負ったが木賀小弥太も一命を取り留めた。
江戸幕府が倒れるのはこの23年後のことである―――エンド。
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