2010年10月02日

「隻眼の少女」(麻耶雄嵩著、文藝春秋社刊)

「隻眼の少女」(麻耶雄嵩著、文藝春秋社刊)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

隻眼の少女


新本格界のプリンスが放つ超絶ミステリーの頂点

寒村でおきた殺人事件の犯人と疑われた大学生・静馬を救った隻眼の少女探偵・みかげ。事件は解決したが、18年後に再び悪夢が…

自殺する場所を求め寒村の温泉宿を訪れた大学生の種田静馬は、少女の首切り事件に遭遇する。犯人の罠により殺人犯と疑われた静馬を見事な推理で救った、水干姿の隻眼の少女探偵・御陵みかげ。静馬は助手見習いとして、みかげと共に事件の謎に挑む。みかげは父を失いながらも難事件を解決するが、18年後に同じ村で再び惨劇が……。本格ミステリ界のプリンスが放つ、超絶の問題作登場です!(AK)
(文藝春秋社さん公式HPより)


<感想>

某十戒とかに代表されるようにミステリには禁じ手とされるものが幾つかあります。
そんな中でも特に気をつけたいのが次のような禁じ手。

ひとつ、登場人物全員が犯人。
ひとつ、語り手が犯人。
ひとつ、探偵が犯人。
ひとつ、真相解明において真犯人が作中未登場の人物―――などなど。

もっとも、このタブーを上手く処理して名作と呼ばれるようになった作品も数多くあり一概に禁じ手とは呼べないかもしれません。
寧ろ、昨今のミステリにおいてはこのタブーを如何に逆手にとり回避するかこそがテーマといえるでしょう。

例えば綾辻行人先生のあの作品、倉知淳先生のあの作品、問題提起ならば東野圭吾先生のあの作品など、他には叙述系に多いかもしれません。
振り返れば、このタイプは講談社系の書籍によく見られるパターンかも。
やはり“新本格”と“メフィスト”が貢献してるのかもしれない。
禁じ手回避の方法としてはメタ的な手法が多いのも関係してるかも。

さて、ここで「隻眼の少女」。
ネタバレあらすじをご覧頂ければ分かるように上の禁じ手のうち「○○が犯人」をやってます。
本作では、この処理法が探偵役が交代するという手法をとっています。
これ自体は上で挙げた倉知淳先生のあの作品と同じですね。

しかし、後発である以上はここで止まらないのが麻耶先生。
交代に加え、あるトリックとインパクトある設定を用いてさらに工夫を凝らしています。

ただし、その分ちょっと大人しめになってしまった印象。
その特異な設定に反し、ぶっ飛んだ感じはしません。
代わりに続編が可能な終わり方になっています。
みかげと静馬のコンビで麻耶先生なら充分次作も可能だと思う。

ある意味ここで完結していますが、是非続編を読みたくなる……そんな作品に仕上がっていると言えましょう。

<ネタバレあらすじ>

保険金目的で母を殺害した父を事故とはいえ殺意をもって殺してしまった種田静馬。
彼は自殺する場所を捜して彷徨っていた。

とある寒村に辿り着いた静馬だったが、そこで春菜という少女の殺人事件に巻き込まれる。
犯人にされかけた静馬を救ったのは水干姿で現れた隻眼の少女探偵・御陵みかげだった。
父親同伴で現れた彼女は死亡した隻眼の探偵・御陵みかげの名を継ぐ二代目。
奇しくも母と同じ隻眼である二代目みかげは初代同様の推理力を発揮し事件の核心へと迫る。

その後も連続殺人の嵐吹き荒れる中、推理を巡らせたみかげは犯人を指摘、拘束することに成功。
こうして事件は解決したかに見えた……が、悲劇は終わらなかった。
みかげの父が殺害されてしまったのだ。
真犯人は別に居る―――探偵とはいえ17歳の少女であるみかげはショックを受ける。
そんなみかげとみかげに惹かれていた静馬は一夜の関係を持つのだった……。

気丈に振舞うみかげと共に遂に真犯人を追いつめる静馬。
真犯人・スガルは静馬の目の前で真相すべてを語り自らの罪を認めると服毒し果てた。
事件は解決し、みかげは静馬の前から去って行った―――。

それから18年。
名を変え生きていた静馬はみかげの面影を追い求め再びあの村へやって来る。

またも発生する殺人事件。
そこへ現れたのは当時と寸分違わぬ水干姿の隻眼少女探偵・御陵みかげ。
彼女は三代目みかげ。二代目みかげの娘だった。
ただひとつ二代目と違いがあるとすれば、三代目みかげは隻眼ではなくコンタクトにより擬似的に隻眼になっていることだった。

三代目みかげと調査を進めるうちに、母親同様に惹かれるものを感じた静馬はみかげの年齢が16歳と聞き肩を落とす。
三代目みかげが自分の子供ではないと分かったからだ。

一方、三代目みかげは18年前の先代の推理に間違いがあったと指摘。
先代の轍を踏まぬよう推理した結果、犯人を突き止める。
それは三代目にとって認めがたい相手だった。
こうして、三代目みかげはあえて18年前と似た状況を作り犯人を罠にかける。

やって来た犯人は哀れな被害者を殺害しようと襲いかかる―――その被害者は静馬!?
だが、それを予期していた三代目みかげにより犯行は阻止されることに。
逃げる犯人の後姿は三代目みかげと同じ水干姿だった……。

犯人の居場所を推理していた三代目みかげと共に追い掛ける静馬。
そこで明かされる犯人の正体。それは先代みかげだった。
つまり二代目みかげ。

三代目みかげによれば今回の事件はすべて先代みかげの犯行だと言う。
しかも、18年前の事件もまた先代の犯行だった。

18年前、先代みかげは父を殺害する機会を窺っていた。
だが、首尾よく父を殺害したとしても殺害犯を指摘出来ない限り少女探偵として黒星になってしまう。
つまり、自分以外の偽犯人を用意する必要があった。
そこで、みかげとしての派手なデビューと一石二鳥を兼ねてもともと内訌のあった家を利用し殺人を繰り返したのだ。

だが18年前の事件は、スガルが犯人だった筈。
実はそれにも裏があった。
静馬が見たスガルは既に死亡していたのだ。
みかげは腹話術を使い死したスガルを生きている様に見せかけたのだった。

こうなってしまっては静馬も先代みかげの犯行を認めざるを得ない。
「父親1人を殺すために何人も……」
18年前の真実を知り、絶句する静馬。
そこに居る先代みかげは静馬の知るどのみかげとも違っていた。

初代みかげを敬慕していた二代目みかげの父は母である初代の推理能力を娘に求めるあまりに暴走。
隻眼だった母に似せるために二代目が幼児期に片目を潰したのだ。
狂気とも言えるその行動に遺恨を含んだ二代目みかげは父を殺害する機会を求めていた。
そして18年前、ついにその機会が巡って来たのだった。

当然、父が殺されショックを受けたのも芝居。
すべては憎い父を殺害し、静馬と関係を持つための計画的な行動だった。

だが、18年もたった今になって何故また殺人を繰り返したのか?

その理由は静馬が現われたためだった。
先代みかげにとって18年前の父と同じく本命はひとり、今度のみかげの狙いは静馬の命だったのだ。

「みかげに父親はいらない」と主張する先代みかげ。
静馬と関係を持ったのもいずれ自殺するであろう静馬なら後腐れなく子種を貰えると考えたからだった。
「種田静馬で省略すれば種馬だったし」と揶揄するみかげに静かな怒りをぶつける三代目みかげ。
そう、彼女はやはり静馬の娘だったのである。
実は17歳だった三代目みかげは、年齢を偽っていたことを静馬に詫びる。
静馬を父と知っていたからこその嘘だったと言う。

全てを解明したみかげに合格点を与えると今後の探偵としての心構えを説く先代みかげ。
そのまま服毒して果ててしまう。

残されたのは父と娘。
三代目みかげは静馬に「父さまと呼んでいいですか?」と尋ねる。
拒否する静馬。
「父さまじゃない、お父さんと呼んでくれ」照れながら歩み寄る父と娘。
今回の事件により苦境に立たされるであろう三代目みかげと共に生きて行くことを決めた静馬だった―――エンド。

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「隻眼の少女」です!!
隻眼の少女





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