2010年10月22日

「見えない復讐」(石持浅海著、角川書店刊)

「見えない復讐」(石持浅海著、角川書店刊)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

見えない復讐


投資家・小池の前に大学生・田島が現れる。彼の謎めいた行動から、田島が母校・東京産業大学に対して復讐心を抱いていることに気付く。小池も田島と同じく大学への恨みを抱えたまま生きていた−−。傑作サスペンス!
(角川書店さん公式HPより)


<感想>

田島と小池……ダブル主人公な本作。

田島と小池はコインの表と裏の関係。
常に対立軸。
消極的で安全地帯から事を見守る小池。
積極的で自らも手を汚す田島。

彼らは一見、復讐というキーワードで共通していますが立ち位置が全く違います。
そんな小池が積極的に事に介入した矢先、悲劇が起こり彼は命を落としました。
復讐について考える者は復讐により身を滅ぼすのでしょうか?
この作品はそんなことについても考えさせられます。

ここからはあえて婉曲的な表現にとどめます(ネタバレあらすじを読んでもらえれば分かると思います)。

作中のある人物は人を利用し駒のように扱った為に身を滅ぼしました。
そして、それはある意味、地位を築くために彼よりも多くの者を屠っただろうあの人にも繋がるのかもしれません。
「一将功なりて万骨枯る」彼の事業の成功には多くの者の血と汗が流れたに違いありません。
第一、彼には既に直接手をかけた者たちが居ます。
その遺族にとっては彼もまた復讐対象と成りえるでしょう。
彼が復讐を行う側だとどうして言い切れるでしょうか?
彼もまたいずれは復讐される側になるかもしれないのです。
身を滅ぼした者も身を興した者も「復讐を肯定してしまえば復讐からは逃げられなくなる」のではないでしょうか?
あの結末に続きがあるとすれば……そう思うとあの華やかなラストは全く違った意味を持ちそうでなりません。

本作を読んでみていろいろ考えさせられました……。

◆石持浅海先生関連過去記事
「温かな手」(石持浅海著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)

「ミステリ愛。免許皆伝!メフィスト道場」&「ミステリ魂。校歌斉唱!メフィスト学園」(講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)

<ネタバレあらすじ>
大学院生の田島は仲間2人と共に起業するために出資を求めエンジェル投資家の小池のもとを訪ねた。
小池は田島と同じ東京産業大学の卒業生。この点でも目がある筈だった。
田島によれば、ジャンルを選べないでプレイさせられる携帯電話のゲーム配信を行うという。
面白いとは思ったものの一過性に過ぎないと判断した小池は投資を見送ろうとする。

田島に一週間後の返答を約束した小池。
ふと思い立って母校・東京産業大学を訪れる。
そこには蝉の死骸を拾い続ける田島たちの姿があった。
(なんのために?)疑問に思う小池だが後に理由が判明する。

それは学内でも投身自殺の名所と言われる階段に理由があった。
そこに先程の蝉の死骸がばら撒かれていたのである。
小池と共に居た秘書は自殺者への無常感を誘う警告になっていると評価するが、小池は違った。
彼はこれを田島たちの大学への復讐と見たのだ。
自殺者は夜に現れる。
ならば視覚的なものはなんら意味を持たない。
さらに蝉の死骸は滑りやすい。
誤れば転落事故にも繋がりかねない。
つまり、これは自殺者を増やし大学側を困らせようとの田島たちの計画的犯行だった。
この田島たちの計画は小池の意に沿っていた。

同志を得たと考えた小池は田島たちへの投資を決める。
実は小池には大学側への恨みがあった。
過去、小池の命の恩人が同じ自殺の名所で手すりが低かったために転落事故死していた。
彼は大学側に抗議したが受け容れられず、以降、消極的ながら復讐心を募らせていたのだ。
そこに積極的な活動を行う田島たちが現われた。
当然、今回の田島の起業も大学側へ何らかの復讐意図が隠されている筈だった……。

田島たちは起業を通じ資金調達を目論んでいた。
すべては彼らの憧れだった人の復讐に起因していた。
その人……女性は彼らの研究室の教授に従い秘書をしていた。
田島たちの想いは恋に近かったのかもしれない。
だが、彼女には恋人が居たのである。
その恋人は東京産業大学の事務員だった。
彼は横領の罪で自殺へ追い込まれ、その恋人であった彼女もまた大学当局……特に理事たちの激しい追及により自殺へ追い込まれた。
そこで田島たちは理事たちを仇と思い定める。
だが、理事は単なる人的要因に過ぎないと考えた彼らは“大学そのもの”への復讐を決意したのだった。
その計画は大学を爆破すること。
計画遂行後には国外へ逃亡し、一生をそこで暮らせねばならない。
そこで資金が必要となり、その資金調達に起業を利用したのだった。

つまり、田島たちにとっては業務内容は一過性のブームでも構わない。
一時的に資金を調達できれば目的は達成されるのだ。

しかし、軽く考えていた起業が思いの外に困難を伴っていた。
何事もやり遂げるにはそれなりの苦労が必要となるのだ。
こうして次第に経営に没入していく田島は経営自体を楽しいと思えるようになっていく。

そんな中、ゲームのプログラムを組める人材として弦巻を雇い入れる。
弦巻の作ったミニゲームを通じて彼が父親に憎悪を抱いていることを見抜いた田島。
自分たちと同じく憎悪を抱いて生きている弦巻にシンパシーを感じた田島は、自分たちと違い彼から復讐心を捨てさせるべく導こうと考えたのだ。

起業は成功し、順調に業種を増やしつつ規模を拡大していく。
弦巻も個人的な復讐心を捨てつつあった。
それと同様に田島たちも少しづつ復讐に躊躇いを覚えるようになる。

大学爆破からサイバーテロに―――そんな提案がなされた折、憧れの人の死の真相が明らかになる。
理事たちも横領に関与していたのだ。
その為にこれ以上の不正追及を怖れて憧れの人に罪を押しつけたのだ。
ここに再び復讐の矛先は理事へと向かうこととなる。

小池はといえば、田島たちが遅々として復讐を進めないことに苛立っていた。
そして同時に「それはそれで良いのではないか」と相反する感情を抱き始めていた。
彼自身決めかねた挙句、弦巻を使い田島たちに揺さぶりをかけることに。
弦巻の復讐心を呼び起こし、田島たちを焚きつけようと言うのだ。
それで復讐しようがしまいがそれはそれで結論として納得しようと考えていた……。

小池から食事に誘われた弦巻は小池の母を称えることにより相対的に父を貶めるという巧みな誘導により父への恨みを募らせる。
弦巻の父は母へ日常的な暴力を奮っており、弦巻はそんな父が殺したいほど憎かったのだ。
小池と別れ帰宅した弦巻は発作的に父を殺害してしまう。
それは結果として母の自殺に繋がってしまった。

自首する前に田島たちへ挨拶に来た弦巻から小池のことを聞いた田島は事の真相を正しく見抜く。
経営者としてのセンスが磨かれた田島にはある程度の背景が見えていた。

あの東京産業大学の自殺の名所で対峙する二人。
さすがに殺害までは想定していなかったが、と指摘を認める小池を田島は転落死させる。
復讐を肯定した小池へ、弦巻のための復讐であった。
転落する中で復讐について考え自らを諦観する小池。

後日、小池の死が自殺と判断されると共に東京産業大学の理事が揃って焼死するという奇怪な事件が新聞紙上を賑わせることになる。
その頃、田島は世界でもっとも影響力のある経営者のひとりとして選ばれるほど企業を大きくしていた。
その傍らには真相を知らない小池の秘書も生涯のパートナーとして連れ添っている。
田島は大きく成功していた―――エンド。

「見えない復讐」です!!
見えない復讐





◆その他の石持浅海先生の作品はこちら。





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