2010年11月10日

「漫画サンデー」(実業之日本社)連載「監禁探偵」(我孫子武丸原作、西崎泰正画)12話(最終話)ネタバレ批評(レビュー)

「漫画サンデー」(実業之日本社)連載「監禁探偵」(我孫子武丸原作、西崎泰正画)12話(最終話)ネタバレ批評(レビュー)です!!

監禁探偵1
「手前がアカネ、奥が山根亮太」


<登場人物>
山根亮太:コンビニでバイト生活を送る性的倒錯者
里見玲奈:亮太が目星をつけていたターゲットの女性、1話で何者かにより殺害される
谷田進:亮太のバイト先のコンビニ店長
野田春美:亮太のバイト先であるコンビニの同僚
アカネ:亮太に監禁されている女性、19歳
亮太の友人:2話で亮太と飲み会をしていた男性、彼女が居るらしい
山根博子:亮太の母、フラフラしている息子・亮太を心配している。55歳。
山根浩一:亮太の父、7話にて登場
高柳:亮太の住むマンション302号室の住人、8話にて登場
坂本:亮太のバイト先の同僚20歳、1話から登場(9話にて名前判明)

<ネタバレあらすじ>

アカネが春美に殺されるギリギリで現われ春美を昏倒させた亮太。
実はアカネは亮太が家を飛び出す直前、揉み合いの最中に亮太に相談を持ちかけていた。

その内容は大体次のようになる―――

その春美という女性が私(アカネ)を犯人だと言ったのならば、私が犯人でない以上、その春美が嘘を吐いていることになる。
嘘を吐かなければならないからには理由がある筈でその女性が犯人の可能性が高い。
どうかここは私を信じて一旦外へ出てから少しして戻って来て欲しい……。

その結果がコレ(春美の襲撃と亮太の迎撃)だった。
一体どうして……床に倒れる春美に唖然とする亮太。
そんな亮太にアカネが推理を開陳する。

まず、春美がアカネが犯人であると嘘を吐いたこと。
これは本人であるアカネからしてみれば明らかに怪しむべき証言だった。

そして、春美が亮太に証言した内容についての疑問。
なぜ、春美はアカネの特徴をツインテールだとしか伝えなかったか?
そう、アカネにはツインテール同様ゴスロリファッションという大きな特徴があるではないか。
つまり、春美がアカネを初めて見たのは拘束を解かれた後に服を着替えて以降―――亮太と共に出かけたとき以外にない。

これらのことからアカネは亮太が玲奈のストーカーだったように春美もまた亮太のストーカーだったと看破。
玲奈殺害の動機が嫉妬であり、アカネに罪を着せようとした以上、今現在もどこかから見張って居る筈で亮太が出かければ必ず様子を窺いにやって来ると予測し、現場を抑えようと計画したらしい。

それを認めるかのように意識を取り戻した途端、アカネに対して罵り喚き散らす春美。
結局、春美を捜査当局に引き渡すことにした亮太。

「いいの?これまでやってきたこといろいろバレちゃうよ……」
アカネの問いに頷く亮太。
そんな彼を見てアカネは明るく微笑む。

身繕いをするアカネ。
亮太はその間に警察を呼ぶ事にする。
だが、捜査員を呼んで戻って来た亮太が見たものは、何も言わず姿を消したアカネだった……。

時が過ぎ―――心を入れ替えた亮太は就職活動に励む。
その道は容易ではない。
だが、彼にはあの体験がある―――。

見違えた亮太の目にツインテールにゴスロリファッションで身を固めた少女が映る。
一方、アカネの前に一人の男性が現われた。

亮太の目の前の少女は格好は同じもののアカネとは全くの別人。
亮太は薄く笑うと力強く前へと歩き出した。

アカネの前に現れた男性も亮太では無い。
「良かったら遊びに行かない?」
「私、あなたに興味が無いの!!」
アカネに手酷く振られた男。
アカネはそのまま空を仰いで走り出す、どこかへと向かって―――エンド。

<感想>

安易に亮太とアカネがくっつくことなくちょっとほろ苦な最終回でした。

アカネについては正体不明。
ただし、亮太についていったのには彼女なりの理由があったということらしい。
これはメルカトル鮎みたいな事件を嗅ぎ付ける嗅覚でしょうかね?

でもって、犯人は野田春美。動機は亮太のストーカーであった春美の玲奈への嫉妬。
大体、予測通りでしたね。満足です。

しかし、春美断定のロジックが実質、9話から出た春美自身の偽証にのみ基づくのがちと辛いか……。
多少、とってつけたような感が拭えず。
アカネがゴスロリファッションである必然性もこのロジックにて使用されましたが、これも弱いか。
玲奈殺害より遡ること3日前の時点でアカネが拘束されていたことは分かっていた筈。
その時点でアカネの衣装は脱がされており拘束から抜けられるのならば別の服で行動した可能性もある、春美がゴスロリに言及しなかったから犯人というのも蛇足のような気がします。
究極的には春美が偽証したことが全てなのでしょう。

ただ、これは読者にとって犯人候補を狭めてしまうことになりました。
春美の偽証時点で犯人候補はほぼ二人になってしまったのです。
すなわち、アカネか春美か……二者択一。
こうなれば春美犯人説をとるのも自然過ぎるほど自然。
ちょっと終盤勢いが無くなった印象もここからかもしれません。

それと洗濯物は結局アリバイ作りにのみ使用されたとのことでこれも寂しい限り。
もう一捻り……例えば管理人提唱の洗濯物ロジックがあれば面白くなったかもしれないと思ったり。
そうでなくても、もうひとつ欲しかったところです。

全体として設定はぶっ飛んでいたのにストーリーが進むにつれて小さくまとまった印象。
ラストも安易に亮太とアカネがくっつかなかったのは高評価(出会い方がアレなので……)ですが、これならば「亮太もストーカー、春美もストーカー」と来たので「実はアカネも亮太のストーカーだった!!」とかにした方がインパクトはあったかな、と。
勿論、ラストはアカネの俯き加減からの口元アップで「ニヤリ」で締め。
後味の悪いダークなエンドの方が設定上合っていたのではないでしょうか?

あるいは、上と反対のことですが、これ以上ないくらい亮太とアカネの絆を深めてラブラブにしてしまう……とか。
読んでるこっちが頬を赤らめてしまうような熱々ぶりでも良かったかな、と。
個人的には「うん?」と首を捻るかもしれませんが作品的には良かったのでは?

それらを考えれば考えるほど、「監禁探偵」は漫画よりもロジックや伏線強化して小説化した方が素材的に向いていたのかもしれないなぁ……と思う。

最後に、3ヶ月間楽しませてもらった我孫子先生&西崎先生に読者の1人として感謝を!!
ファンとして御二人による次の作品を心待ちにしています!!

蛇足:8話のガーデナー・高柳の謎が残ったままだった……気になる……。

◆我孫子武丸先生関連過去記事
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我孫子武丸先生の「殺戮にいたる病 (講談社文庫)」です!!
殺戮にいたる病 (講談社文庫)





同じく「弥勒の掌 (文春文庫)」です!!
弥勒の掌 (文春文庫)





◆原作の我孫子武丸先生のその他の作品はこちら。




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