<あらすじ>
【特集】「ゼロ年代」(2000年〜2009年)の名作100 【新連載小説】山本兼一/山本弘/乾くるみ【連載小説】宮部みゆき「桜ほうさら」/中村彰彦「花ならば花咲かん」/あさのあつこ「当世侠娘物語」/朱川湊人「箱庭旅団」 ほか 【連載エッセイ】赤瀬川原平「墓活のこと」 ほか
(PHP研究所公式HPより)
<感想>
管理人の通う書店では女性作家の棚に並ぶ乾くるみ先生。
で・す・が、れっきとした男性です(これもある意味叙述か)!!
乾先生、市川尚吾名義で評論もされてます。
その著作のひとつにして、意外なサプライズでラストを締め括った「カラット探偵事務所の事件簿」がシーズン2を迎えました。
そう、乾くるみ先生「カラット探偵事務所の事件簿 Season2」が「文蔵」にて連載中です!!
しかし、「事件簿1」を知る身としてはあの壮大なラブレターオチ(詳しくは本記事最下部にネタバレあり)がある限り続編は難しいのではないかと考えていただけにこのシーズン2自体が大きなサプライズ!!
早速読んでみましたが軽妙な語り口やストーリー展開は健在。
拍子抜けするようなラストもこのシリーズに限ってはアリかな。
むしろそれが味になってるし、シリーズを通じての伏線にもなってる。
早く次の話が読みたい!!
<ネタバレあらすじ>
今回の依頼人は三郎青年。
恋に恋するお年頃の彼はある犯人を捜していると言う。
それは三郎にハート型の日焼け痕を残した人物。
三郎が言うにはとあるパーティの席上、一人肌を日に焼いていたらしい。
そのまま不覚にも眠りこけてしまった三郎青年が目覚めたそのとき!!
腕にハート型の日焼け痕が残っていた。
これは誰かからの愛のメッセージに違いないと主張する彼。
是非とも愛に応えたいと切望した彼はそのシャイな相手を探偵に探し出して欲しいと依頼に来たのだ。
その剣幕に押されたわけではないだろうが、依頼を引き受けてしまった古谷。
早速、調査に乗り出す。
三郎の兄・次郎にも事情を聞くが聞けば聞くほど犯行(?)は不可能。
誰も三郎のもとへ近付けない状態。
三郎のもとへ向かうには鉄格子などを擦り抜ける神の如き力が必要だった……。
調査結果が出たと知り喜び勇んで現われた三郎に告げられた真実は非情だった。
古谷は「犯人はマイマイかぶりです」といつもの調子で口にしたのだ。
そう、寝ていた三郎の腕にハート型のマイマイかぶりがくっついた為にその部分が日焼けせずハート型の痣になったのだ。
誰かの故意(恋)では無く、単なる偶然の産物。
現実はいつだって非情である……そんなお話でした―――エンド。
◆「カラット探偵事務所の事件簿1」のラストについて
注意、ネタバレです!!
上にラブレターオチとあるけどその通り。
実はこの事件簿自体が壮大な告白の一環だった……とのラスト。
これに男性だと思われていた記録者こそが実は女性だったとの叙述トリックが絡む。
多少、蛇足気味ではあるが結構効果的だった。
ある意味、乾くるみという女性的なペンネームで実は男性というのに通じている。
【関連する記事】
- 『どこかでベートーヴェン』(中山七里著、宝島社刊)
- 『通いの軍隊』(筒井康隆著、新潮社刊『おれに関する噂』収録)
- 『クララ殺し』最終話、第6話(小林泰三著、東京創元社刊『ミステリーズ!vol.7..
- 『自殺予定日』(秋吉理香子著、東京創元社刊)
- 『タルタルステーキの罠』(近藤史恵著、東京創元社刊『ミステリーズ!vol.76 ..
- 『歯と胴』(泡坂妻夫著、東京創元社刊『煙の殺意』収録)
- 『迷い箱』(長岡弘樹著、双葉社刊『傍聞き』収録)
- 『噂の女』(奥田英朗著、新潮社刊)
- 『追憶の轍(わだち)』(櫻田智也著、東京創元社刊『ミステリーズ!vol.69 F..
- 『コーイチは、高く飛んだ』(辻堂ゆめ著、宝島社刊)
- 『恋人たちの汀』(倉知淳著、東京創元社刊『ミステリーズ!vol.75 FEBRU..
- 『東京帝大叡古教授』(門井慶喜著、小学館刊)
- 『傍聞き』(長岡弘樹著、双葉社刊『傍聞き』収録)
- 『動機』(横山秀夫著、文藝春秋社刊『動機』収録)
- 『愚行録』(貫井徳郎著、東京創元社刊)
- 『転生の魔 私立探偵飛鳥井の事件簿』(笠井潔著、講談社刊『メフィスト 2016v..
- 『声』(松本清張著、新潮社刊『張込み』収録)
- 『黒い線』(横山秀夫著、文藝春秋社刊『陰の季節』収録)
- 『図書館の殺人』(青崎有吾著、東京創元社刊)
- 『陰の季節』(横山秀夫著、文藝春秋社刊『陰の季節』収録)