2010年12月06日

「折れた竜骨」(米澤穂信著、東京創元社刊)

「折れた竜骨」(米澤穂信著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)です!!

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

折れた竜骨


ロンドンから出帆し、波高き北海を三日も進んだあたりに浮かぶソロン諸島。その領主を父に持つアミーナはある日、放浪の旅を続ける騎士ファルク・フィッツジョンと、その従士の少年ニコラに出会う。ファルクはアミーナの父に、御身は恐るべき魔術の使い手である暗殺騎士に命を狙われている、と告げた……。
自然の要塞であったはずの島で暗殺騎士の魔術に斃れた父、「走狗(ミニオン)」候補の八人の容疑者、いずれ劣らぬ怪しげな傭兵たち、沈められた封印の鐘、鍵のかかった塔上の牢から忽然と消えた不死の青年――そして、甦った「呪われたデーン人」の襲来はいつ? 魔術や呪いが跋扈する世界の中で、「推理」の力は果たして真相に辿り着くことができるのか?
現在最も注目を集める俊英が新境地に挑んだ、魔術と剣と謎解きの巨編登場!
(東京創元社さん公式HPより)


<感想>

「ファンタジーテイストのミステリ」よりは「ミステリテイストのファンタジー」。
ファンタジーもの好きなら抵抗なく読めます。
オススメです。

しかも、米澤先生、ストーリーテラーの面目躍如でしょうか。
スルスル読めます。

ラスト付近、犯人断定時の消去法も見事。
8人のうち7人が物語中の伏線で次々と消去されていく手法には圧倒された。
次いで怒涛の勢い(どんでん返し)で真犯人が明かされるラストも良かった。
タイトル「折れた竜骨」の意味も面白い。

ミステリとしての骨組みが、割とポピュラーな点(倉知淳先生「星降り山荘の殺人」や麻耶雄嵩先生「隻眼の少女」に近い、もちろん、同種の作品は過去にも例がありそれらの場合も同じ)について気にする旨もあるかもしれない。
これらを既読ならば早期に真犯人に気付くと思われるからだ。
だが、それも心配ない。

真犯人に気付いてしまうと“魔法の世界”だけに何らかの魔法の関与を疑うワケで……伏線が本編から見えて来る筈。
こうなるとミステリ部分は除外され、残されたのはファンタジー部分なワケだが、それもひとつの作品として成立している為に充分面白いから瑕疵にはなりえないからだ。

ちなみに上述の2作のどこが「折れた竜骨」と近いかはあえて伏せる。
既読の方は両者の共通点を想起されたし。
未読の方で気になる方はこのまま「折れた竜骨」ネタバレあらすじを読むか、「隻眼の少女」ネタバレ書評(レビュー)を読む事。
未読の方でネタバレを避けたい方はここまでで本記事を読むのを止め、このまま見なかった事にするのが吉。

本書を読んで、昔あったテーブルトークRPGのシナリオを思い出した。
「ロードス島戦記」のTRPGシナリオに収録されたミステリ調のあの短編も面白かったな。

ちなみに管理人によるネタバレあらすじはかなり端折ってるので注意。
本作「折れた竜骨」を読む方が絶対イイ。

<ネタバレあらすじ>

登場人物一覧:
アミーナ:ソロン領主・ローレントの娘。
ファルク:聖アンブロジウス病院兄弟団に所属する騎士。宿敵である暗殺騎士を追う。
ニコラ:ファルクの従者(弟子)。
ローレント:ソロン領主、“走狗”に殺害される。
エンマ:ローレントの雇った傭兵。
エドリック:暗殺騎士。ローレント殺害の首謀者。
走狗:エドリックに魔法で操られた者。ローレント殺害の実行犯。

聖アンブロジウス病院兄弟団に所属する騎士ファルク・フィッツジョンと、その従士の少年ニコラにより、ソロン領主である父・ローレント・エイルウィンに命の危険が迫っていると教えられたアミーナ。
だが、警戒した甲斐もなくローレントは何者かの手により殺害されてしまう。

ファルクによれば、殺害の首謀者は彼の宿敵である暗殺騎士・エドリック。
実行犯はエドリックの魔法により操られた“走狗(ミニオン)”だと言う。

“走狗”にされたものはその意に関係なく術者の指定した標的を殺害する。
ただし、“走狗”とされるには“走狗にされる本人の血”が必要となる。
暗殺騎士はその血の収集の為に虫を飼っており、これを回避できるのは団から護符を貰っているファルクたちのような一握りの者だけらしい。

果たして魔法により“走狗”とされた者は誰か?
こうして犯人探しが始まる―――。

犯人を捜す中、ファルクが毒に倒れたエドリックの弟子の襲撃や、デーン人の襲来などを退けたアミーナたち。
なかでもデーン人の襲来においては、生前にローレントが雇い入れた傭兵のひとり、ハール・エンマの活躍が素晴らしく誰もが畏怖の念を抱かずにはおれなかった。

そして、いよいよファルクによるローレント殺害犯―――すなわち“走狗”を指摘する日が来た。
ファルクは8人の容疑者から7人をそれぞれの事情で消去する。
残されたのは先の襲来で手柄をたてたエンマのみ。

誰もがエンマが“走狗”かと身構えるが……ファルクの弟子・ニコラは何やら思い詰めた面持ちのままだ。
彼は、エンマがデーン人相手に奮闘できたのはエンマ自身がデーン人であると主張。
デーン人には暗殺騎士の魔術も通じないことからエンマの無実を証明する。

実はエンマこそローレントの主筋にあたる人間だったのだ。
デーン人襲来を予期したローレントの要請により、助けに来たのだった。

さらに、ニコラは告発を始める―――その相手は師匠であるファルク。
ニコラは現在ファルクを名乗る者こそ暗殺騎士・エドリックだと弾劾。
彼がローレント殺害犯であるとし、その場でファルクを討つ。

事件が終わりを告げ数日後。
エンマはあれだけの大功を挙げたにも関わらず、周囲に危険視された為追い出されることに。
アミーナは再びデーン人の来襲があることを予測しているがどうしようもなかった。

一方、ニコラから事の真相を聞くことに。

ファルクはエドリックでは無かった。
だが、ローレント殺害犯は間違いなくファルク。
そう、ファルクはエドリックにより“走狗”にされてしまったのだ。

ファルクは、暗殺騎士に対して常に上位を誇らなければならない聖アンブロジウス病院兄弟団の名誉と安全を守るために“走狗にされる失敗”を犯した自身をあえて暗殺騎士として処分したのだ。
これにより、今後ソロンを訪れる仲間の身を守ったのだった。
ニコラはそれに協力した。

だが、護符により“走狗”にならない筈のファルクが何故、走狗にされてしまったのか?
疑問に思うアミーナに苦々しく答えるニコラ。

ソロン以前、ニコラの知らないどこかでファルクとエドリックは戦闘を行ったに違いないと言う。
そこで、傷を負ったファルク。
傷を負わせたエドリックはファルクの血液を手に入れ“走狗”の魔法を施した。
ファルクに傷を負った記憶が無かったのは“忘却の魔法”をかけられた為だった。

ファルクの仇・エドリックの所在を気にかけるアミーナだが、これにもニコラは答えを持っていた。
おそらくその戦闘でエドリックも致命傷を負い、既に故人となっていると言う。
ファルクとエドリックの技量はほぼ互角。
戦えばどちらかが死ぬのは確実だった。
ファルクが生きている以上、エドリックは死んでいる。
エドリックは死してなお、ファルクに呪いをかけ操ったのだった。
この推理は、エドリックの弟子が危険を押して襲撃をかけたことからも証明されていた。
あれは、弟子がエドリックの仇討ちを図ったのだ。

アミーナに別れを告げるニコラ。
そんなニコラに再会を約束するアミーナ。
暗殺騎士の雇い主が存在する以上、それは確実に思えた。

二人はいずれ来る再会の日へ向け、合言葉に「折れた竜骨」を選ぶのだった―――エンド。

◆関連過去記事
【「折れた竜骨」関連】
米澤穂信先生最新作「折れた竜骨」が東京創元社さんより発売決定!!

米澤穂信先生最新作「折れた竜骨」(東京創元社刊)は11月27日発売決定!!

米澤穂信先生最新作「折れた竜骨」(東京創元社刊)発売日迫る!!なんだかスゴイことになりそうだ……

【米澤穂信先生著作】
「インシテミル」(文藝春秋社)

「儚い羊たちの祝宴」(新潮社)

「追想五断章」(集英社)

オール讀物増刊「オールスイリ」(文藝春秋社刊)を読んで(米澤穂信「軽い雨」&麻耶雄嵩「少年探偵団と神様」ネタバレ書評)

[小市民シリーズ]
「夏期限定トロピカルパフェ事件」(東京創元社)

[古典部シリーズ]
「氷菓」(角川書店)

「愚者のエンドロール」(角川書店)

「クドリャフカの順番」(角川書店)

「遠まわりする雛」(角川書店)

「ふたりの距離の概算」(角川書店)

[アンソロジー集]
「蝦蟇倉市事件2」(東京創元社)
(ナイフを失われた思い出の中に)

◆映画情報
米澤穂信さん原作の「インシテミル」映画化!!

「折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア)」です!!
折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア)





◆米澤穂信先生の作品はこちら。



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