2010年12月03日

「赤い指」(東野圭吾著、講談社刊)

「赤い指」(東野圭吾著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)です!!

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

赤い指1


どこの家でも起こりうること。だけどそれは我が家じゃないと思っていた。
平凡な家庭で起こった、2日間の悲劇

人は事件の裏側にある別のものを隠し、苦しんでいる。加賀恭一郎は、その苦しみから救済し、人の心を解きほぐす。
「刑事の仕事は、真相を解明すればいいというものではない。いつ、どのようにして解明するか、ということも大切なんだ」

少女の遺体が住宅街で発見された。捜査上に浮かんだ平凡な家族。一体どんな悪夢が彼等を狂わせたのか。「この家には、隠されている真実がある。それはこの家の中で、彼等自身の手によって明かされなければならない」。刑事・加賀恭一郎の謎めいた言葉の意味は? 家族のあり方を問う直木賞受賞後第1作。
(講談社公式HPより)


<感想>
加賀恭一郎シリーズ7作目。

シリーズには他に「卒業」、「眠りの森」、「どちらかが彼女を殺した」、「悪意」、「私が彼を殺した」、「嘘をもうひとつだけ」、「赤い指」、「新参者」がある。

・シリーズ最新作「新参者」ネタバレ書評(レビュー)はこちら。
「新参者」(東野圭吾著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)

東野圭吾さん「赤い指」がミリオン突破!!

2011年1月4日追記:シリーズ最新作(9作目)のタイトルが判明しました。
東野圭吾先生による加賀シリーズ最新作(9作目)タイトル判明「麒麟の翼」に!!よりどうぞ!!

さて、そんな「赤い指」。
“家族愛(親子愛)”を描いた作品です。

まずは主人公・加賀父子。
傍目には険悪のように見えながら実は強い繋がりを持つ親子。
相互に想い合っています。

そして、前原家の昭夫&八重子と直巳。
一見何事も無いように見えるものの……父・昭夫と息子・直巳の間は愛情では無く、事なかれと甘えに溢れています。
それは昭夫の妻・八重子と直巳の間も同じ。
親から子へ一方通行の状態です。

被害者・春日井家。
娘を失った父ともはや帰っては来ない娘その人。
決して何かが欠けていたわけではないのでしょうが、結果として関係性は永遠に失われてしまいました。

さらに、もう一組の親子の存在……。
これこそが本作最大の特徴にしてテーマ。
このもう一組の親子の流れがラストでふと浮かびあがることで全体が俯瞰でき、加賀父子のエピソードに繋がり、それまでの各親子の繋がりも強調される効果を示しています。

やっぱり、東野先生はストーリーテリングが上手いなぁと唸らされる作品です。

ちなみにこの「赤い指」。
2011年1月3日にTBSさんにて「新参者」同様、阿部寛さんを主演に迎えスペシャルドラマ化されるとか。

タイトルは「赤い指〜“新参者”加賀恭一郎再び!」。
他のキャストも「新参者」と同じとのこと。

・ドラマ版「新参者」ネタバレ批評(レビュー)はこちら。
「新参者」(TBS、2010年)

「赤い指」がシリーズ7作目、「新参者」がシリーズ8作目だけに、ドラマ版「赤い指」は「新参者エピソードゼロ」と言われています。
楽しみですね〜〜〜。

2011年1月4日追記東野圭吾ミステリー 新春ドラマ特別企画「赤い指 シリーズ人気No.1ドラマ化最愛の人が殺人を犯したら!?加賀が解く涙の連鎖・家族の絆とは “新参者”加賀恭一郎再び!」(1月3日放送)ネタバレ批評(レビュー)追加しました。リンクよりどうぞ!!

<ネタバレあらすじ>
登場人物一覧:
加賀恭一郎:主人公、刑事
加賀隆正:加賀の父
松宮脩平:加賀の従兄弟、捜査一課の刑事
前原昭夫:照明器具メーカー勤務。
前原八重子:昭夫の妻。
前原直巳:昭夫の息子、中学三年生。
前原章一郎:故人、昭夫の父。
前原政恵:昭夫の母
田島春美:昭夫の妹
春日井優菜:被害者、小学二年生。

前原昭夫には同居している家族がある。
妻・八重子と息子・直巳、そして母・政恵である。
だが、家庭内は昭夫にとって落ち着ける場所ではなかった。

息子・直巳は自分の殻に閉じこもってしまっており、会話も無い。
そんな息子を心配する妻・八重子は息子にかかりっきり。
母・政恵は亡くなった父と同じく認知症を患っており、家庭内で特に軽んじられていた。

そんなある日、直巳が殺人を犯してしまう。
被害者は春日井優菜という少女。
直巳を自首させようとするが、八重子の思わぬ抵抗に遭う昭夫。
結果として直巳を庇うために優菜の死体を遺棄することに。

以降、保身からか普段は考え付かないような酷薄な行動を取り続ける昭夫と八重子。
直巳は自身の仕出かしたことでありながら他人事のように無関心を決め込む。

そんな昭夫の心を掻き乱すのは母・政恵の姿。
昭夫が何事か決断し実行に移そうとするたびに政恵が必ず傍に居るのだ。
やがて、昭夫は政恵に苛立ちをぶつけるようになる。

一方、公園の男子トイレでは、無惨にも捨てられた優菜の遺体が発見され事件が発覚する。
この捜査に乗り出しのが加賀恭一郎。
加賀は自身の父・隆正が体調を崩し入院していた。
隆正の快復は見込めないままだが、加賀はあえて面会に行かない。
そんな加賀に対し隆正を実の父のように慕う従兄弟の松宮は苦い思いで眺めていた。

やがて、捜査線上に前原家が浮上。
それと察した昭夫は、直巳を庇う最後の手段として身代わりを立てることを決意。
身代わりとして認知症の母・政恵を選ぶ。
行動に責任を負わない人間の犯行ならば罪も軽いと考えたのだ。
そんな政恵の指には赤い化粧品がべったりと付着していた。
唯一、政恵とコミュニケーションをとることが出来る昭夫の妹・田島春美によれば、政恵は最近になって化粧品遊びを始めたらしいが……。

昭夫は計画を実行し、政恵を身代わりに立てる。
しかし、加賀は政恵の姿を見て昭夫の嘘を看破する。
あえて、昭夫にチャンスを与える加賀。
昭夫自身の行動で昭夫の過ちを正させようとしたのだ。

加賀に見抜かれていると理解している昭夫だが、その行いを改めようとはしない。
たとえどんなに疑われようとも証明する方法が無い限り無意味だと考えたのだ。

そこへ、春美が加賀に連れられてやって来る。
春美は唯一、政恵とコミュニケーションがとれる人間だった。
春美から政恵の宝物を渡される昭夫。
それは昭夫のアルバムだった。
母・政恵の愛情を思い出し胸を詰まらせる昭夫だが、それでも真実を口にしない。

そんな昭夫の前で政恵を連行しようとする加賀。
政恵の杖を渡すよう春美に促された昭夫は、杖に自らが幼い時分に作った政恵の名札を見出す。
それでも、変心しない昭夫。

今度は政恵に手錠をかけようとする加賀。
弱弱しく両手を差し出す老母の背中に自分を慈しんでくれた母の姿を見出した昭夫は今度こそ崩れ落ちる。
「これ以上は無理だ……」
八重子に謝罪し、すべてを明らかにする昭夫。
直巳の犯行とその後の死体遺棄について告白するのだった。

直巳は自身を警察に引き渡す両親に抵抗、部屋に籠り悪態を吐く。
そんな直巳を無理矢理引きずり出し連行していくよう指示する加賀。
八重子は息子・直巳について行く。

残された昭夫は春美に謝罪するが拒否される。
春美よれば別に謝罪するべき相手がいると言うのだ。
それは政恵だった。

理解に苦しむ昭夫に驚愕の事実を告げる加賀。
実は政恵は認知症を患ってなどいなかった。
精神的には健全だったのである。
だが、自分を疎かにする八重子やそれに同調する昭夫、両親の姿を見て育った直巳に軽んじられう疎まれるうちに、認知症を演じるようになっていったのだ。
春美だけはその事実を知っていた。

春美は言う。
「普段から見ていれば演技だとすぐ分かった筈だ」と。

そして、政恵はそれゆえに孫・直巳の犯罪とそれに伴う息子・昭夫の隠蔽工作すべてを理解しており、それとなく警告するべく事あるごとに昭夫の前へ姿を見せた。
だが、それでも昭夫は変心しなかった。
そこで、春美経由で加賀に今回のテストを依頼したのだ。

アルバムと杖の二つを見せてなお、政恵を犯人に仕立て上げようとしたならばその時はある事実をもとに昭夫を告発する―――優菜の死体遺棄前日に政恵は化粧品で手を汚していた。
政恵が優菜を殺害したのなら優菜にも化粧品の跡が残る筈だった。
その化粧品は昭夫の立てたシナリオとは明らかに食い違う証拠品。
そして、政恵の指に付着した化粧品……つまり、赤い指。
それこそは、昭夫の証言の虚偽を暴きたてる物だったのである。

加賀もそれに気付いており、昭夫の嘘が暴かれるのは既に時間の問題だった。
しかも、加賀は一目見て政恵の演技も見抜いていた。
そこで加賀は前原家の自浄作用に賭けたのだ。

加賀の賭けは奏功し、ギリギリで昭夫は親子の情を取り戻し自らの行いを悔い改めた。
連行された直巳は自身の罪を認めず、両親を責めるばかりで反省の色は見られない。
後味の悪さを残しつつ、こうして事件は解決した。

その頃、隆正に死期が迫っていた。
松宮は病室の隆正を見舞う中、加賀が病院の外から眺めていることに気付く。
隆正はそのまま病没。

松宮は隆正に姿を見せなかった理由を加賀に尋ねるが……。
加賀は言う。
「政恵が認知症の演技をしたのは亡き夫の気持ちを知りたいとの願望があったのかもしれない。父は母をひとりぼっちで死なせたことを後悔していた。父は自分を許せなかった。そこで父は自身も母と同じくひとりで死ぬことを望んでいた」と。

加賀は隆正の望みを正確に見抜いた上で適えようとしていた。
しかも、加賀は看護師を間に挟みメールを駆使することで陰ながら隆正と将棋を楽しんでいた。
隆正もそれを理解し、黙っていたのだ。
加賀と隆正……父と子は確かに繋がっていたのである―――エンド。

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