日本で100番目に早い(たぶん)、「相棒season9」第8話「ボーダーライン」(12月15日放送)ネタバレ批評(レビュー)。
<ネタバレあらすじ>
柴田(山本浩司)という男性が転落死体で発見された。
腕には刃物による防御創が残されていたことから何者かによる殺人と思われた。
柴田の所持品は期限切れ間近の保険証と大中小3つの鍵のみ、所持金も無し。
胃の内容物から肉やワカメ、パンなどメニューが想像できないような統一感のない食品が検出された。
興味を持った右京(水谷豊)と神戸(及川光博)は捜査に乗り出す。
柴田が以前住んでいたアパートの管理人によれば柴田は今年の1月に寮付きの仕事が決まり引っ越したと言う。
その部屋にも新しい入居者が決まっていた。
以降11カ月、柴田の足取りは杳として知れず。
右京たちは生前の柴田の行動を追う。
柴田の兄・裕史(中野英樹)は、柴田が1月に金の無心にやって来たので自分の現在の状況を伝え追い払ったと言う。
以降、連絡を取っていなかったようだ。
3つの鍵の内、大きい鍵がレンタルコンテナのものと判明。
柴田はコンテナを借りていたが、中で寝泊まりした為、契約を解除されていた。
寮付きの仕事が決まっていた筈なのに何故コンテナで寝泊りを?
小さい鍵が私書箱のものであることが判明。
そこから、柴田がハローワークに通っていたことが分かる。
ハローワークの担当職員は柴田から生活相談を受けたと証言。
その際には柴田は元気だったらしい。
真ん中の鍵がハローワークのロッカーのものと判明。
そこには柴田が医療事務の資格を取得した際に勉強したノートや未届けの婚姻届、プリベイド式携帯が残されていた。
ノートには医療費の不正受給の具体例が記されていたが……。
婚姻届をもとに婚約者を訪ねる右京たち。
柴田は今年1月に正社員になれると語り結婚を考えていたが、直後に婚約者に捨てられたらしい。
原因は正社員の話がフイになり、柴田の生活が不安定になったことに婚約者が難色を示したため。
婚約者は柴田に「あなたは価値が無いと判断された」と別れを切り出していた。
柴田の元の勤め先であるイベント会社を訪ねる右京たち。
この不景気で仕事が減り、契約社員だった柴田たちが派遣切りにあったのだ。
正社員の話をフイにしたのもこの会社。
悪びれもせず次の職を用意したので問題は無いとイベント会社担当者は語る。
そこでイベント会社が紹介したと言う建設会社を訪ねることに。
ところがそこはとんでもない会社だった。
派遣社員たちの足元を見て上前をはねる悪徳会社だったのだ。
事前説明で寮完備とあったのも嘘。
柴田がアパートを引き払った後、住居に困ることになった理由はコレだった。
しかも、日給からのピン撥ねも日常化していたと判明。
さらに、一定の期間雇い終えると勝手にクビにしていた。
柴田が雇われていた期間は1カ月程度だったのだ。
イベント会社は実態を知った上で、都合よく解雇する為だけにこの会社に柴田を送り込んでいた。
他にも余罪が明らかになり、建設会社社長は労働基準法違反で逮捕される。
この社長から柴田が生活保護の申請を行おうとしていたことが分かる。
だが、生活保護の申請もハローワークの担当職員により申請それ自体を拒否されていた。
受理すらされなかったのだ。
以前の生活相談の件も嘘。
柴田は医療事務資格をもとに就職斡旋を願っていたが実務経験がネックで面接まで至らず。
担当職員にも軽くあしらわれていた。
ハローワーク担当職員は不景気が悪い、自分は上からの命令に従っただけだと開き直る。
憤りを感じる右京たち。
プリベイド携帯の履歴から柴田が古物商の資格を持っていることが判明。
しかも、古物商として現在営業中だと言う。
調べたところ、名義貸しの事実が明らかに。
柴田の名義を騙っていた男は盗品を扱っていた為に逮捕される。
男によれば、資格保持者は誰でもよくたまたま金の無さそうな柴田を利用したとのこと。
資格を取得すれば10万円の報酬で柴田は乗ったと言う。
この古物商の経験が柴田にコンテナに住むアイデアを与えたらしい。
以後、就職活動の傍ら報酬10万円でたびたび名義貸しを行っていたという柴田。
しかし、個人の名義貸しの限界まで至った柴田は「お前の名前に価値は無い」と切り捨てられていた。
その他の履歴からも柴田が就職活動に熱心な様子が覗えたが、すべて断わりの電話。
追い詰められ、切羽詰まり、さらにジリジリと消耗していく柴田。
手元の金も尽き果てた柴田はその日その日を生き抜くことで精一杯になる。
それからは試供品や試食品を食べてまわり空腹を凌ぐ毎日。
胃の中のバラバラな内容物はコレだった。
だが、それすらも顔を覚えられ日々難しくなっていく。
そして、柴田が死亡した当日。
アパートの近くのパン屋。
その試食で事件が起こった。
店員に顔を覚えられていた柴田は「美味しかったら買って下さいね」と声をかけられてしまう。
それにショックを受けた柴田はその場にあった試食品をすべて奪い逃走。
その日の晩に死亡していた。
右京と神戸は「誰が柴田を殺害したか分かった」と頷きあう。
柴田の兄・祐史を前に柴田殺害犯を断定する右京。
それは柴田自身だった。
医療事務の勉強中、防御創について学んだ柴田。
それを活用し防御創に見える傷を自身でつけたのだった。
柴田は自殺だった。
医療事務の資格を持ちながら実務経験が無いため雇用に繋がらず。
就労意欲はあるものの、雇ってくれる会社は無い。
会社には裏切られ、婚約者には捨てられ、頼った行政には手酷く追い払われた。
家族にもすがれない。
名義貸しという犯罪にまで手を染めるもそこでも必要とされなくなった。
命を繋ぐ為に食べることに追われ、その食べ物も買えない。
唯一の儚い希望は就職することだが、それすらもアパートに新たな入居者が来たことで履歴書の住所を失い適わなくなった。
その時の柴田の胸に去来した気持ちはいかばかりか。
そう、傷つき疲れ果てた柴田は自身を殺したのは「社会そのもの」であると告発して死亡したのだ。
真相は重く辛いものだった。
「世知辛い」と語る神戸。
そんな神戸を「花の里」に誘う右京、応じる神戸―――8話了。
<感想>
シーズン9第8話。
脚本はシーズン8で7、12、19話、シーズン9では4、6話を担当した櫻井武晴さん。
基本傾向として、あるひとつの時事ネタや新しい法案、新しい技術などワンテーマを中心に深く掘り下げることでそれが抱える矛盾や弱点を浮かび上がらせるシナリオを得意とする方。
特徴として、科学技術による物的証拠が犯人断定の決め手となることも多い。
ちなみに、情報量や伏線、シーン転換が他のライターさんに比べて圧倒的に多いことも特徴。
その本領は1時間よりも2時間のシナリオに活かされるのかもしれない。
そんな櫻井武晴さん担当作品のネタバレ批評(レビュー)はこちら。
・相棒season8 7話「鶏と牛刀」(12月2日放送分)ネタバレ批評(レビュー)
・相棒season8 12話「SPY」(1月20日放送分)ネタバレ批評(レビュー)
・相棒season8 19話(最終話・最終回)「神の憂鬱」(3月10日放送分)ネタバレ批評(レビュー)
・「相棒season9」第4話「過渡期」(11月17日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・「相棒season9」第6話「暴発」(12月1日放送)ネタバレ批評(レビュー)
さて、今回はというと……。
胸を突かれる展開でした。
柴田がじわじわと追い詰められ、消耗していき、限界を感じたことは間違いありません。
それでも、自身の身を削る名義貸し以外の犯罪を行わなかったことは柴田のプライドだったのでしょうか。
そのプライドも、最期のパン屋の試食品強奪で奪われた。
仕事、金、恋人、名前、プライドと自身の価値を次々と奪われ、残されたのは傷つき果てた自身の身体のみ。
こうして柴田は絶望し、自ら命を絶ってしまう。
柴田は11ヶ月の内に次々と自身を構成する要素(プライドやアイデンティティー)を奪われ、最期に残された自身の身体だけは誰にも奪わせないよう命を絶ってしまったのかもしれません。
タイトル「ボーダーライン」の意味は思いの外に深い。
そんな柴田。
救いは柴田のメッセージを正確に読み取ってくれる人(右京&神戸)が居たことぐらいか。
ただ、ラストで神戸には花の里に行って欲しくなかったなぁ。
重いテーマだけに、もうちょっと柴田に救いを与えて欲しかった……。
こんなところが「相棒」らしさなんだろうけど、複雑。
元日スペシャルの情報が出てますね。
ゲストは南果歩さん、白石美帆さん。
脚本は古沢良太さん。
監督は和泉聖治さんだそうです。
楽しみ。
そうそう、12月23日より公開される「相棒-劇場版II-」。
サブタイトルが発表されました!!
「相棒−劇場版U−警視庁占拠!特命係の一番長い夜」だそうです。
「一番長い夜」……意味深ですね〜〜〜。
「相棒-劇場版II-」についてはノベルス版ネタバレ書評(レビュー)ありますね。
この通りならば劇場版も相当期待できそう!!
・「相棒 ―劇場版2―」(大石直紀著、小学館刊)ネタバレ書評(レビュー)
他にもオリジナル小説も。
ただ、こちらはオススメしかねるかも……。
・「杉下右京の事件簿」(碇卯人著、朝日新聞出版刊)ネタバレ書評(レビュー)
関連書籍も多数登場。
興味のある方はチェック!!
・「相棒」関連書籍続々発売!!あなたはどれを読む!?
<キャスト>
●杉下右京(水谷豊)
警視庁特命係・係長。あまりにも切れ過ぎる頭脳と、何を考えているのか判別できない素行から変人扱いされ、窓際部署の特命係に追いやられた経緯が。しかし、その人事すら本人はまったく気にしてない様子。常に冷静で、どんな相手でも論破できるが、論客が元妻のたまきだと、高確率で敗北。動揺することもしばしば。
●神戸尊(及川光博)
警視庁特命係員。警察庁上層部からの密命の真実を知り、自ら特命係に残ることを志願。
(MSNエンタメさんより)
◆関連過去記事
・「相棒-劇場版II-」ゲスト発表される!!
・すぐそこに近付くあの二人の足音……「相棒-劇場版II-」前売り券が8月14日より発売開始!!
・「相棒season9」&「相棒-劇場版II-」制作決定!!
「相棒season8」やその他の「相棒」情報はタグ「相棒」よりどうぞ!!
◆関連外部リンク(外部サイトに繋がります)
・相棒-劇場版II-(シネマトゥデイさん)
http://www.cinematoday.jp/movie/T0009098
「相棒 -劇場版- 絶体絶命!42.195km 東京ビッグシティマラソン 豪華版BOX (数量限定生産) [DVD]」です!!
相棒 -劇場版- 絶体絶命!42.195km 東京ビッグシティマラソン 豪華版BOX (数量限定生産) [DVD]
相棒 -劇場版- 絶体絶命!42.195km 東京ビッグシティマラソン 豪華版BOX (数量限定生産) [DVD]
◆「相棒」に関連した商品はこちら。
【関連する記事】
- 「相棒season14」最終話(第20話)「ラストケース」(3月16日放送)ネタ..
- 「相棒season14」第19話「神隠しの山の始末」(3月9日放送)ネタバレ批評..
- 「相棒season14」第18話「神隠しの山」(3月2日放送)ネタバレ批評(レビ..
- 「相棒season14」第17話「物理学者と猫」(2月24日放送)ネタバレ批評(..
- 「相棒season14」第16話「右京の同級生」(2月17日放送)ネタバレ批評(..
- 「相棒season14」第15話「警察嫌い」(2月10日放送)ネタバレ批評(レビ..
- 「相棒season14」第14話「スポットライト」(2月3日放送)ネタバレ批評(..
- 「相棒season14」第13話「伊丹刑事の失職」(1月27日放送)ネタバレ批評..
- 「相棒season14」第12話「陣川という名の犬(アンフォゲタブル)」(1月2..
- 「相棒season14」第11話「共演者」(1月13日放送)ネタバレ批評(レビュ..
- 「相棒season14」元日スペシャル第10話「英雄〜罪深き者たち」(1月1日放..
- 「相棒season14」第9話「秘密の家」(12月16日放送)ネタバレ批評(レビ..
- 「相棒season14」第8話「最終回の奇跡」(12月9日放送)ネタバレ批評(レ..
- 「相棒season14」第7話「キモノ綺譚」(12月2日放送)ネタバレ批評(レビ..
- 「相棒season14」第6話「はつ恋」(11月25日放送)ネタバレ批評(レビュ..
- 「相棒season14」第5話「2045」(11月18日放送)ネタバレ批評(レビ..
- 「相棒season14」第4話「ファンタスマゴリ」(11月4日放送)ネタバレ批評..
- 「相棒season14」第3話「死に神」(10月28日放送)ネタバレ批評(レビュ..
- 「相棒season14」第2話「或る相棒の死」(10月21日放送)ネタバレ批評(..
- 「相棒season14」初回2時間スペシャル第1話「フランケンシュタインの告白」..