<あらすじ>
東京・西新宿のビルから、大手商社『校倉商事』の若き部長・高坂真也(奥田達士)が転落死する事件が起きた。遺書はなかったが、現場にも遺体にも不審な点はなく、新宿西署の牛尾刑事(片岡鶴太郎)らは自殺と断定する。
ところがその1年後、高坂の妻・昌子(遊井亮子)が西新宿のホテルの一室で絞殺死体となって発見される!
昌子は夫の死後、派手に遊び歩くようになったらしく、事件当日は自動車ディーラー・笹村慎介(本宮泰風)とホテルで一緒に過ごしていたとわかる。笹村によると、その日、昌子は自分と別れた後、ホテルの上階で催される知人のパーティーに出席する予定だと話していたという。その知人とは、有名ヘアデザイナーの長井真美子(いしのようこ)。彼女のパーティーは、ちょうど昌子の死亡推定時刻である夜7時から9時に開催されていた。
そんなとき、牛尾のもとに『週刊エピソード』の記者・緒方浩平(船越英一郎)から連絡が入る。浩平は、高坂夫妻の死に校倉商事の背任横領がからんでいると主張する。校倉商事は大掛かりな背任横領の疑いで警視庁捜査二課から内偵が入っており、その横領の中心人物と目されているのが専務取締役・山原良信(国広富之)で、彼は死んだ高坂の直属の上司だったという。浩平は、高坂は自殺に見せかけて殺害されたと考えており、妻の昌子もまた夫の死の真相に気づいたため殺されたのではないかと推理していた。
それを聞いた牛尾は1年前、昌子が夫の遺体にすがりながら「許さない…!」とつぶやいていたことを思い出す。几帳面な性格だったという高坂が遺書をのこしていなかったことも、今となれば腑に落ちない。牛尾はさっそく警視庁捜査一課の那須警部と共に山原に話を聞きに行くが、彼はやましいことはないと突っぱねる。
そんな中、昌子が夫の生命保険金にまったく手をつけていなかったことがわかる。では彼女の派手な生活資金の出所はどこなのか…!? 誰かを脅して金を巻き上げていたのだろうか…!? 新たな疑問を抱えた牛尾は、昌子の部屋から、本棚に隠されていたクリアファイルを見つけ出す。そこには1枚の写真と、週刊誌から切り取られた1ページが入っていた。写真には、17歳頃の昌子と、もうひとりの同年代の少女、そして20歳くらいの若い男の計3人が写っていた。そして記事のほうは、“今週の1冊”と題された書籍紹介ページだった。
やがて、若い昌子と共に写っていた少女が、なんと山原の妻・知子(原沙知絵)だと判明する。知子によると、昌子とは昔の遊び仲間で、一緒に写っていた男は当時、昌子がつきあっていた予備校生の粕谷勇(林剛史)だという。だが、粕谷は16年前の雨の夜、ひき逃げに遭い、死亡していた。そして昌子が殺された夜、知子も現場のホテルで真美子のパーティーに出席していたこともわかる。
その矢先、なんと笹村が富山・神通峡で刺殺される事件が発生。神通峡は、粕谷の故郷・八尾町と程近い場所だった。気になった牛尾は八尾に向かい、そこで『週刊トピックス』の記者・川村冴子(水野真紀)と遭遇する。冴子は連載中の記事の取材のため、この地を訪れていたという。
冴子が手がけている記事のタイトルを聞いた牛尾は、ハッとする。昌子が写真と共にファイルに入れていた記事“今週の1冊”の裏が、冴子が書いた記事の前半部分に相当していたのだ。冴子の記事は、16年前、八尾町の祭“おわら風の盆”の夜に河原で生み捨てられた赤ちゃんのことを取り上げていた。
いったいこの記事と、昌子の殺人事件、16年前のひき逃げ事件はどう結びつくのか…複雑に絡み合った事件のナゾはさらに深まっていき…!?
(土曜ワイド劇場公式HPより)
では、続きから……(一部、重複あり)
冴子の記事の後半部分が切り取られていたことから、冴子は割符を疑う。
昌子ともうひとりの同志が記事を分け合って保持している可能性に思い至ったのだ。
ちょうどその頃、長井真美子と知子が富山に滞在していた。
冴子を通じその事実を知った牛尾。
一方、冴子は長井と知子のどちらかが生み捨てられた赤ん坊の母親ではないかと思い定める。
牛尾はそんな冴子の勘を支持、捜査方針をこの二人に絞る。
昌子殺害当日、知子と長井が共に長時間にわたり会場を離れていたことが判明。
二人はそれぞれちょっとしたことで席を外したと証言するが証明できない。
にも関わらず、知子は思わせぶりにパーティーでの写真を提供するが……。
その頃、笹村の部屋から割符こと後半部の記事が発見される。
しかも、山原と長井が愛人関係にあることが判明。
殺された昌子が何者かを脅迫していたのは、ほぼ間違いない。
笹村はその後を引き継ぎ殺害された。
この時点で昌子が脅迫のネタにしそうな案件は4つ。
1.山原の背任横領
2.夫・高坂真也の死の真相
3.粕谷のひき逃げ事件
4.16年前に生み捨てられた赤ん坊の件
牛尾は確実な3から当たることに決める。
冴子は4の真実を追う。
その頃、緒方浩平は昌子の死の原因を3ではなく1と見定め、ある事実を発見していた。
牛尾の捜査の結果、粕谷の恋人が昌子ではなく知子と明らかに。
しかも、当時の知子は粕谷と別れたがっていたらしい。
冴子は長井が粕谷をひき逃げしたと疑っていたが、当時の長井の車と昌子が証言したひき逃げしたとされる車の色が違うことから自説を断念しようとしていた。
しかし、それを聞きつけた牛尾は冴子の着眼点は間違っていないと語る。
牛尾は何気なく妻・澄枝に見せたパーティー会場の写真から、長井がパーティー前後でメイクを変えていると教わる。
長井の口紅の色が席を外した前後で変わっていたのだ。
その意味を探ると共に、昌子の安らかな死に顔に注目する牛尾はある仮説を立てる。
牛尾は長井こそが犯人だと指摘。
昌子の口紅から昌子以外の人物の皮膚片が検出されたことを理由に長井に迫る。
16年前、粕谷をひき逃げしてしまった長井。
捕まるかと怯えていたが不思議と追及の手は伸びなかった。
ところが、16年が過ぎすっかり安心していた所へ脅迫者がやって来る―――昌子だ。
昌子は粕谷のひき逃げについて脅迫。
しかも、脅迫のネタはそれだけでは無かった。
高坂は自殺に際し遺書を残しており、そこには山原と長井の不倫のことから横領した金が長井へと流れたことなどが詳細に記されていたと言う。
長井への憎しみを新たにした昌子は遺書を握り潰し、長井を脅迫し復讐することを選んだらしい。
昌子は長井を圧迫していく。
怯えた長井はそれとなく昌子の人となりを知子に尋ねる。
返って来た答えは恐ろしいものだった。
知子によれば「昌子は凶悪な性格で、高坂の死後はその地が表に出て来ている」らしい。
焦った長井に知子はパーティーを開くことを提案。
その最中、昌子に呼び出された長井は侮蔑の言葉を吐かれ逆上し殺害してしまう。
殺害後、冷静になった長井は昌子の指示で自身がメイクを落としていたことに気付く。
そこで慌てて昌子の口紅を使ったのだった。
その後、笹村の脅迫にあった長井は知子の提案で温泉へ行くことに。
長井はその機会を活かし笹村を殺害する。
16年前、粕谷のひき逃げの際に自首していればと後悔を口にする長井。
同日、山原も背任横領の罪で逮捕される。
一安心する捜査本部。
だが、牛尾は「真犯人は別にいる」と呟く。
牛尾の向かった先は知子のもと。
「完全犯罪を成し遂げた者が居る」
牛尾は知子に告げる。
16年前、子供を生み捨てにしたのは知子。
知子は粕谷と交際し妊娠、出産するも育てることが出来ず捨ててしまっていた。
粕谷のひき逃げにも知子が絡んでいた。
知子が粕谷を長井の車の前に突き飛ばし殺害したのだ。
知子に同情的だった昌子は知子を庇うべく偽の証言を行った。
以後、知子と昌子は互いに結婚し互いに静観を貫いていた。
そして現在。
高坂は自殺前に知子に相談を持ち掛け山原を止めるよう頼んでいた。
だが、知子は無視。
結果、高坂は自殺してしまう。
遺書により、知子の行動も知った昌子は復讐に動く。
山原には1.背任横領で脅迫。
長井には3.粕谷のひき逃げで脅迫。
知子には2.高坂の死の真相、3.粕谷の死の真相、4.赤ん坊の生み捨てで脅迫。
脅迫された知子は長井を心理的に操り昌子を殺害させた。
ほっと一息ついた所へ今度は笹村から脅迫を行われるハメに。
そこで、笹村に長井のことを教え脅迫するよう奨めた。
一方で、またも長井を心理的に操り笹村を殺害させたのだった。
牛尾が長井と知子の二人を疑い続けたのは、実行犯・長井の裏に知子の暗躍があったからだった。
牛尾の疑惑を感じた知子はパーティーの写真を渡し、長井の犯行を報せたのだ。
知子は自分が完全犯罪を成し遂げた以上、捕まらないと笑う。
そんな知子に牛尾は「完全犯罪を成し遂げた人物は別に居る」と語る。
知子は使者に過ぎなかった。
真に完全犯罪を成し遂げたのは昌子だったのだ。
穏やかな昌子の死に顔。
それは夫・高坂を死に追いやった人物の手にかかり夫のもとへ行くとの目的を果たした顔だった。
だが、山原や知子は殺人を行うタイプでは無い。
そこで知子を経由して長井の手で死ぬことを計画し実行に移した。
牛尾は言う。
昌子は知子を憎み切れてはいなかった。
昌子は親友・知子の裏切りに心を痛め、だからこそこんな方法を取ったのだと。
常に知子の味方だった昌子。
知子はそんな昌子の姿を思い出し嗚咽する。
冴子に事の顛末を聞かせる牛尾。
冴子は昌子の後追い心中説を口にする。
その説にひとつ疑問を投げかける牛尾。
「なぜ、笹村と関係を持ったのか?」
冴子は「たぶん」と前置きした上で述べる。
「“悪女”を演じる為に必要だったのでは?」と。
その頃、知子は真相を告白する決意を固めていた―――エンド。
<感想>
「終着駅の牛尾刑事vs事件記者冴子」シリーズとしては、前作「灯」(2009年12月12日放送)よりおよそ一年ぶりとなるシリーズ第10弾。
「終着駅」シリーズとしても第24弾「新宿着あずさ22号の殺人同乗者」(2010年7月31日放送)より半年ぶりとなる。
それぞれ過去記事があるので興味のある方はそちらをどうぞ。
・土曜ワイド劇場「森村誠一の終着駅〜新宿着あずさ22号の殺人同乗者・消えた姉と三千万の行方…顔のない脅迫者を追う!!」(7月31日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・土曜ワイド劇場「森村誠一の灯〜終着駅の牛尾刑事vs事件記者冴子!!バス事故から生還した3人新宿〜妙高高原に運命の連続殺人!?」(12月12日放送分)ネタバレ批評(レビュー)
ドラマ原作は森村誠一先生「完全犯罪の使者」。
カッパ・ノベルス版が1987年9月、光文社文庫版が1991年4月、角川書店版が1996年3月、祥伝社版が2005年10月発売。
驚愕の真犯人、そしてさらなる瞠目の結末。
名手が送る傑作本格推理。
ニュースを見ていた笹村慎介は息が止まるほどの衝撃を受けた。昨晩ともに過ごした不倫関係の昌子が、彼の帰宅後ホテルで絞殺(こうさつ)されたのだ。重要参考人としてマークされ、家庭も職も失った慎介は、新聞記者の清原らとともに自ら真相究明に乗り出した。ところがその直後、清原も渥美(あつみ)半島伊良湖岬(いらこみさき)で水死体に! 度肝(どぎも)を抜く圧巻の結末と、意想外の「真犯人」とは?
(アマゾンドットコムさんより)
これを見る限り、ドラマ版はかなり改変が加えられてるのかな?
主人公は牛尾ではないみたいだし、昌子の名前以外は別物の印象だが……。
原作については祥伝社版のアマゾンリンクを下記に用意したので興味のある人はこちらもどうぞ。
さて、ドラマ本編。
途中でダレ気味でしたが、後半一気に取り戻しました。
良かったぁ〜〜〜。
これぞ、2時間ドラマというイイものを見たっ!!という感じ。
まず、タイトルに偽りなし。
「完全犯罪の使者」とかなり仰々しいタイトルでしたが、内容に相応しいものでした。
過不足なく内容を伝えてもいるし、良かった。
そして、どんでん返しに次ぐどんでん返し。
ある意味、被害者3人(粕谷、昌子、笹村)に対し、犯人も3人(長井、知子、昌子)と豪華(?)でしたね。
可哀想なのは長井かなぁ。
知子に人生弄ばれてるよ……。
彼女の殺人はすべて知子の罠に嵌まってるもんなぁ。
まぁ、高坂自殺の原因ではあるのでそこはそれなんだろうけど。
年末を飾るに相応しいドラマでした。
2010年もあと少しですが、2010年の土曜ワイド劇場はコレで締め。
2時間サスペンス系ドラマ全体としては24日放送予定の金曜プレステージで締めとなりますが、今日のこれで締めた人も多いかも。
それだけ良い出来でした。
ただ、割符は意味無かったね。
本来の意味でも無いし。
あれは蛇足かなぁ。
普通に「前後に切り取られた記事」でいいのになぁ。
思わせぶりです。
それと、浩平が途中で消えちゃったなぁ。
彼は何に気付いたのだろう……これは謎が残されているぞ……。
そうそう、森村誠一先生のドラマ化といえば「正義の証明」がドラマ化されるそうです。
こちらは牛尾&棟居の豪華共演作。
・森村誠一先生「正義の証明」(幻冬舎刊)ドラマ化!!
このドラマにも期待です。
◆森村誠一先生関連過去記事
【関連ドラマ】
・土曜ワイド劇場「森村誠一の棟居刑事 愛犬が暴く不倫四重奏!」(11月21日放送分)ネタバレ批評(レビュー)
【アタミステリー紀行関連】
・「熱海の靴屋」(森村誠一著、アタミステリー紀行2010より)3つのミスにチャレンジ!!
・近付く「アタミステリー紀行2010」の足音……
・アタミステリーへの誘い……
(アタミステリー紀行2009について触れた過去記事です)
【その他】
・森村誠一先生「義仲・巴ネットワークフォーラム・イン・富山」にて講演
・クリスマス(12月24日)の森村誠一さん!!
(「森村誠一 謎の奥の細道をたどる」についての過去記事です)
<キャスト>
牛尾正直:片岡鶴太郎
川村冴子:水野真紀
牛尾澄枝:岡江久美子
緒方浩平:船越英一郎
那須警部:辰巳琢郎
坂本課長:秋野太作
山原知子:原沙知絵
高坂昌子:遊井亮子
長井真美子:いしのようこ
山原良信:国広富之
吉田刑事:佐藤二朗 ほか
(順不同、敬称略、公式HPより)
◆森村誠一先生の作品はこちら。
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