2011年01月09日

「完全なる首長竜の日」(乾緑郎著、宝島社刊)

「完全なる首長竜の日」(乾緑郎著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

完全なる首長竜の日


自殺未遂により植物状態となった弟の過去を探るうち、
少女漫画家の姉は記憶の迷宮に迷い込む。
意外な結末と静謐な余韻が胸を打つ
サスペンス・ミステリー。

『チーム・バチスタの栄光』(海堂尊著)以来の、選考委員が満場一致で選んだ第9回『このミス』大賞受賞作です!朝日時代小説大賞でも『忍び外伝』で大賞を受賞。新人賞二冠を果たすという大型新人の登場です。
少女漫画家の和淳美は、植物状態の人間と対話できる「SCインターフェース」を通じて、意識不明の弟と対話を続けるが、淳美に自殺の原因を話さない。ある日、謎の女性が弟に接触したことから、少しずつ現実が歪みはじめる。映画「インセプション」を超える面白さと絶賛された、謎と仕掛けに満ちた物語。
(宝島社公式HPより)


<感想>

第9回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作。
第9回優秀賞は「ラブ・ケミストリー(「有機をもって恋をせよ」改題)」と「羽根と鎖」。

第9回「このミステリーがすごい!」大賞が決定!!栄冠は「完全なる首長竜の日」に

「ラブ・ケミストリー」(喜多喜久著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

テーマは「存在の意味」か。
存在のみで知られる「恐竜」を要所に用い、現在に生きる我々の「存在の意味」を問うたものと思われる。

内容は「小説」よりは「シナリオ」っぽい。
心理描写もあるんだけど、それが「小説」でなければならないほどでもない。
期待に比べると小さくまとまった感じ。
決して悪くは無いが、ずば抜けて良いとも思えなかった。
モチーフ自体もオチも映画で割と見かけるし。

これらはアシモフから受け継がれたSFマインドの系譜に連なっていくから一概には言えないが、敢えて言えば、「攻殻機動隊」とかに近いんじゃないかなぁ。
特にモチーフが映画版の方「GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊」に近い。
“人形使い”みたいな存在も出て来てるし。

他に宣伝文を意識すればするほど本編との違和感が目についた点もなぁ……。

これならば、同じバーチャル世界をテーマにしている寵物先生の「虚擬街頭漂流記」の方が圧倒的に完成度では上。

「虚擬街頭漂流記」(寵物先生、ミスターベッツ著、玉田誠訳、文藝春秋社刊)ネタバレ書評(レビュー)

ひょっとして、事前情報からハードルを上げ過ぎたのかもしれないなぁ。

良い点は構成力。
これは凄いと思う……が、面白さはやっぱり惹句ほどでは無い印象。
「このミス大賞」ならば第8回の「さよならドビュッシー」の方が面白かった。

「さよならドビュッシー」(中山七里著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

結論として文章として発表するより、映像化すべき作品のように思う。
映像化するには映えそうだ。

<ネタバレあらすじ>

少女漫画家の淳美は「SCインターフェース」を通じて自殺未遂により意識不明状態の弟・浩市と交流していた。

「SCインターフェース」は相手の深層心理に入り込み、記憶に依った世界を構築。
まるで現実世界に居るかのようなリアルさを提供する機器の名称。
これにより、意識不明状態の浩市とも意思疎通が出来るようになったのだ。

だが、ある日を境にこの世界に翳りが生じて来る。
理由を追求するうちに淳美が知る驚愕の事実。

それは、弟・浩市が既に死亡しており浩市として接しているのは淳美に憑依した自殺者の意識であること。
この世界を構成するその他の人物は浩市や数名を除き、“フィロソフィカル・ゾンビ”と呼ばれる淳美の記憶を元に作られた“魂のない人々”であること。
何より、意識不明状態に陥って世界を構築していたのは淳美自身であること。

「インターフェース」を用い淳美の意識に介入してきた医師・相原からそれらを知らされた淳美。
浩市を名乗っていた自殺者の意識により、外界との接触を遮断されこれらの事実を忘れていたらしい。
すべてを思い出す淳美の前で浩市を名乗る意識は拳銃自殺し、消えて行く……。

こうして現実世界へと帰還した淳美だったが、すべてを思い出した淳美にとって現実世界は厳しかった。
淳美が意識不明状態に陥ったのは自殺未遂が原因。
妻子のある当時の担当編集者に一方的に想いを募らせ、半ば強引に関係を持った淳美。
しかし、これまでの関係を壊したくないと考え身を引き仕事に専念することに。
ところが、直後に編集が交代。
それに伴い、それまで上手くいっていた仕事が躓き始める。
業界内ではこれまでの成功は編集のおかげと揶揄され、必死に巻き返しを図るもその最中に原因不明の体調不良に。
実は淳美は編集者との関係で妊娠しており、気付かぬうちに流産していた。
すべてをふっ切るべく転居を考えるが矢先に親を亡くしてしまう。
ショックを受けた淳美はマンションのベランダから身を躍らせたのだった。

現実を生きる淳美にいつかの浩市を名乗る者の言葉が甦る。
誰かの記憶に残ることこそが生きること……。

インターフェース世界。
そこで淳美は浩市が使い自殺した拳銃を用い自身も―――エンド。

2012年7月18日追記:本作の映画化が発表されました。
詳しくはリンクをどうぞ!!

乾緑郎先生『完全なる首長竜の日』(宝島社刊)が映画化!!タイトルは『リアル〜完全なる首長竜の日〜』とのこと!!

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