2011年03月12日

「慟哭」(貫井徳郎著、東京創元社刊)

「慟哭」(貫井徳郎著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

連続する幼女誘拐事件の捜査が難航し、窮地に立たされる捜査一課長。若手キャリアの課長を巡って警察内部に不協和音が生じ、マスコミは彼の私生活をすっぱ抜く。こうした状況にあって、事態は新しい局面を迎えるが……。人は耐えがたい悲しみに慟哭する――新興宗教や現代の家族愛を題材に内奥の痛切な叫びを描破した、鮮烈なデビュー作。
(東京創元社公式HPより)


<感想>

今回は感想部分にて、作品自体に関わる大きなネタバレがあります。
本作のトリックを純粋に楽しみたい方は先に本作自体を読むか、次善としてネタバレあらすじを読まれた方が良いかと思われます。
ご了承ください。


警視庁捜査一課長・佐伯とある教団の信者・松本との交互の視点で進む物語。
ここに大きなトリックが隠されています。

それは佐伯と松本が同一人物なこと。
つまり、時間軸を錯誤させるという叙述による二人一役です。

これだけ聞くと割とありふれている様に思えますが、本作の特徴はこの二人一役が作中の人物により意図して行われているワケでは無いこと。
つまり、何らかの犯行動機や目的に沿っての二人一役ではないことが面白い。

何しろ、行動順に偶々時系列を入れ替え交互に並べたら二人一役になっただけ(もちろん、偶然では無く作者という作中世界の神の業ですが)なのですから。
ただし、これは裏を返せばこの二人一役が読者を誤認させる以外に役目を果たしていないことにも繋がるので両刃の剣かもしれません。
もう少しこの二人一役が作中内の何らかのトリックに関わるようなことがあればさらに良かったのかも。

とはいえ、やはり、読者に時間軸が同一と思い込まさせる手腕は見事。
それと、ラストに訪れる追う者と追われる者が同一人物であるサプライズに加え、実は松本の娘を殺害した真犯人がまだ逮捕されていない作中事実は痛切です。
この二つの驚きが読者を待っているだけでも一読の価値はあるでしょう。

◆貫井徳郎先生著作ネタバレ書評(レビュー)
「乱反射」(貫井徳郎著、朝日新聞出版刊)ネタバレ書評(レビュー)

「光と影の誘惑」(貫井徳郎著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)

<ネタバレあらすじ>

連続幼女誘拐事件が発生。
捜査の指揮を執るのは警視庁捜査一課長・佐伯だが、犯人の行方は杳として知れない。

一方、松本という男は心に虚無感を抱えていた。
彼はとある教団に入信し、ある目的に向けて奔走する。
その目的の為に彼は幼女を誘拐し殺害していた。

佐伯は功を奏さない捜査に焦りを募らせていた。
松本は目的に向け犯行を繰り返す。

捜査が行き詰まりを見せた為に佐伯は犯人を挑発する。
松本は捜査一課長に敵意を燃やし、その娘を次のターゲットに狙う。

佐伯の娘が誘拐された。
狼狽する佐伯に最悪の報が届く。
娘は殺害されてしまったのだ。
放心した佐伯は職を辞すと婿養子先の妻とも離婚する。

そして、佐伯は旧姓に戻るととある教団に入信し自身の娘を復活させるべく幼女誘拐殺人を行うことに。
そう、松本は佐伯の旧姓。
同一人物だったのだ。

佐伯が捜査本部で指揮を執った時代と松本が犯行を行っていた時代には一年のブランクがあった。

自身の後任の捜査一課長に娘が居たことを思い出した松本は襲撃を計画、実行に移す。
そこへ現れたのはかつての部下。
松本は自身の凶行を制止するべく彼に逮捕される。

そこで、未だに当時の殺害犯、つまり、娘の仇が逮捕されていないとの事実を知り、慟哭するのだった―――エンド。

「慟哭 (創元推理文庫)」です!!
慟哭 (創元推理文庫)





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