2011年03月17日

「弁護側の証人」(小泉喜美子著、集英社刊)

「弁護側の証人」(小泉喜美子著、集英社刊)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

あっと驚くどんでん返し!
財閥の放蕩息子に見初められ結婚した蓮子は、慣れない生活に息苦しさを感じていた。そんな折、財閥当主が殺される。殺人罪の裁判の行方は? 驚愕のどんでん返し、ミステリの金字塔!(解説/道尾秀介)
(集英社公式HPより)


<感想>

今回に限り感想より先に本作それ自体を読む事をオススメします。
それが不可能ならば先に<ネタバレあらすじ>を読む事をオススメします。
本作はそれくらい絶妙なバランスの上に成り立っています。
ネタが割れると普通の物語としてしか楽しめません。
もっとも、それでもかなりのレベルの社会派サスペンスが楽しめます。
とはいえ、このトリックを楽しまないのは非常に損です。
先に本作をじっくり読むか、ネタバレあらすじを読むかすることをオススメします。

では、ネタバレあらすじを目にされたことを前提に話を進めましょう。

本作のトリックが何処にあるか、お気づきでしょうか?
そうです、叙述トリックなんです。
しかも、被告人と思われている人物の錯誤。

ネタバレあらすじでは余り功を奏していませんが(これはあらすじでは成立させ難い類のトリックなのです)、読者は事前情報抜きで本作を読む限り次のような錯誤を引き起こします。

「被告の立場に居る人物は杉彦なのだ」と。

しかし、これは誤りです。
終盤に至るまで被告席に座っているのは漣子なのです。
ここら辺が作者により非常に巧妙に仕組まれています。
特にアガサ・クリスティ『検察側の証人』を既読の方はこの錯誤を強調されることでしょう。
だからこそタイトルが『弁護側の証人』。

それでいて、杉彦が真犯人であることにより読者の錯誤は最終的に正しいことになります。
本当にバランスが絶妙です。
現代でこそ、類型的な作品が多くみられることで読者側にも幾分耐性が存在しますが、叙述トリック自体があまり存在していなかった(少なくとも多くは無かった)当時において、このトリックはもの凄いサプライズだったことでしょう。

さらに、この『弁護側の証人』はトリックのネタが割れても充分に再読に耐える作りなのも驚きです。

初読時に上記の叙述によるサプライズが存在し、再読時には高度な社会派サスペンスとして楽しめる……まさに、一粒で二度美味しい作品となっています。

社会派サスペンスとしては、冤罪を阻止する為に自らの誤りを認める捜査官の存在が特筆。
このメッセージ性の豊かさも見逃せません。

叙述ミステリを語るならば外せない一冊でしょう。

◆関連過去記事
・本作が一部モチーフを提供したと思われる作品です。
「最後の証人」(柚月裕子著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

<ネタバレあらすじ>

漣子の目の前には杉彦が居た。
この夫婦二人の間には、格子窓が無情にも横たわっている。
殺人犯として収監されているのだから当たり前だった。

杉彦は言う。
「もう、僕には何も出来ないんだ」と。

そんな杉彦の目を見て漣子は思う。
「こんな目をした人が殺人を犯すなんて」と。

時は事件前に遡る。
ヌードダンサーのミミイ・ローイこと漣子は八島財閥の御曹司・杉彦と恋に落ち、玉の輿に乗った。
しかし、幸福な新婚生活は長くは続かなかった。
とある夜、義父である当主・龍之助が何者かに殺害されたのだ。
真犯人は誰なのか?

事件当夜、龍之助と杉彦が会っていたことが判明。
その事実を知る漣子は杉彦を救うべく証拠隠滅を図っていた。
しかし、事件はそんな漣子の意図を遥かに超えた展開を見せ始める。

八島家の人間たちの証言により浮上したある容疑者。
捜査担当刑事はその人物を逮捕、起訴することに。
結果、窮地に陥ったその人物は弁護士に助けを求める。

弁護士の必死の弁護活動が行われるが危機は脱しえない。
だが、最後に現れた「弁護側の証人」が事態を打開する。

それは、当の捜査担当刑事だった。
彼は自身の捜査の結果、誤認逮捕だったことを認める。
龍之助の文箱が二重底になっており、そこから被告人を助ける決定的な証拠が出て来たのだ。
それにより、被告人は動機が消滅する。
代わりに浮上するある人物の影。
八島家の人々はその人物の為に偽証していた。

結果としてその人物、つまり、真犯人は逮捕されるのだった。
そして、被告人・漣子は釈放された。

漣子の目の前には杉彦が居た。
この夫婦二人の間には、格子窓が無情にも横たわっている。
この光景は以前と同じである。
しかし、今は立場が入替っていた。
以前は漣子が、今は杉彦が殺人犯として収監されているのだ。

杉彦は言う。
「もう、僕には何も出来ないんだ」と。
以前の漣子を罠に嵌めたときのような芝居では無く今度は本気の台詞。

そんな杉彦の目を見て漣子は思う。
「こんな目をした人が殺人を犯すなんて」と。
だが、漣子は知っている。
彼こそが龍之助を殺害し、その罪を漣子に着せようとした殺人犯であることを―――エンド。

「弁護側の証人 (集英社文庫)」です!!
弁護側の証人 (集英社文庫)





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