日本で100番目に早い(たぶん)、「相棒season9」第14話「右京のスーツ」(2月2日放送)ネタバレ批評(レビュー)。
<ネタバレあらすじ>
新帝都銀行支店長・樋村(津村和幸)が何者かに殺害された。
偶然、証拠品の整理作業に駆り出された鑑識課で樋村のスーツを見掛けた右京(水谷豊)は、一目でオーダーメードと見抜く。
それは、東京・銀座で三代続く老舗テーラー「古谷洋服店」のものだった。
樋村の自宅を調べた右京と神戸(及川光博)は、殺害されたときに着ていたスーツだけがクラシカルな3つボタンのスタイルであることに着目。
樋村が普段は「英国堂」の2つボタンを愛用していたと聞いた右京は疑問を覚える。
テーラーと客の関係は親密であるがゆえに、そうそう乗り換えることは出来ない筈なのだが?
そこで、スーツを仕立てた「古谷洋服店」を訪ねることに。
樋村を担当したテーラーの笹原真紀(青山倫子)に話を聞く右京たち。
「私のお客様です、1着だけですが……」
樋村について尋ねられそう答える真紀。
樋村の死については知らなかったと言う。
しかも、樋村が殺害される直前に店に来ていた事は認めたものの、殺害時刻には真紀も三代目店主・古谷(小松政夫)も店で仕事をしていたとアリバイを主張。
古谷は店舗に、真紀はフィッテングルームにそれぞれ居たらしい。
ただ、それぞれが違う部屋で作業をしており、顔を突き合わせていたわけではなかった。
右京は真紀にささやかな疑惑を抱き、スーツを仕立てて貰うことにする。
紹介制だと拒否する真紀を諌め請け負うように促す古谷。
こうして真紀にスーツを仕立てて貰うことになった右京。
チャコールグレイのスーツを依頼する。
そのやりとりの中で、真紀のメジャーが仕舞われていたことから「仕事を辞めるか、休むつもりだったのでは?」と気付く右京。
それに加え、右京がひっかかりを覚えたのは真紀の次の一言だった。
店を訪ね樋村について聞いた右京に真紀はどう答えたか。
「1着だけですが……」そう過去形で応じたのだ。
その時点では樋野が死んだことを知らなかったにも関わらず。
こうして右京は真紀が何かを隠していると確信する。
樋村が真紀に融資を検討していたことがわかった。
額は年間1億円。
資料によると、真紀は独立を考えていたようだが、最終的に融資は中止に終わったようだ。
2人の間に何があったのか?
再度、「古谷洋服店」に赴く右京。
袖を伸ばしたまま、「最初に学び手に慣れた道具だから」と見慣れぬ鋏を使い裁断作業を行う古谷。
真紀のことを聞くと「紳士服に女性のテーラーとは珍しいだろう」と語る。
それに対し「女性の目から見た紳士服の可能性」を語る右京。
「真紀にとってはハンデにしかならない」と応じる古谷。
真紀によれば笹原は「女がテーラーになるなんて」と否定的らしいが……。
真紀は亡き父が語るスーツに憧れてこの仕事に就いたらしい。
だが、女性テーラーはやはり珍しく雇い先は見つからなかったと言う。
そんな中、「古谷洋服店」のみが古谷の妻の口添えで雇ってくれたと述べる。
真紀の表情はどこか寂しげだった。
ここで本題に触れる右京。
新店舗の件について話をふると真紀の表情が変わる。
真紀によれば新店舗の話は樋村から持ちかけられたものであり断わったと言うが……。
特命係では角田課長が上機嫌で待っていた。
新しくスーツを仕立てたためだ。
「スーツのキムラ」二万九千八百円也と聞いた神戸は樋村のスーツの値段を語って聞かせ、角田課長をがっかりさせるのだった。
その頃、伊丹たち捜査一課は「安藤総合ビル」の社長にして大手デベロッパーの安藤総一郎(森次晃嗣)を追っていた。
安藤が300億円の融資を急に樋村の銀行に決めたことが判明したためだ。
右京たちは安藤の写真からスーツが3つボタンであると気付く。
それは「古谷洋服店」の仕様だった……。
伊丹たちが安藤を追及するその場に現れる右京たち。
確認したところ安藤のスーツが「古谷洋服店」のものであると分かる。
だが、安東によれば樋村は「英国堂」でしか作らない筈だと言う。
樋村が調査会社・池田リサーチの池田憲明と接点があったと明らかに。
当初は信用調査の依頼と言い張る池田だったが、実は安藤個人の脅迫ネタを調べる為だったと分かる。
樋村は安藤の弱みを握り融資させるつもりだったのだ。
だが、有効なネタは見つからなかったと言う。
樋村が「古谷洋服店」に客としてやって来たのは池田が不首尾に終わった12月。
この符号は偶然か?
右京は客の個人情報が詰まった「採寸表」こそが樋村の狙いだったと推理。
真紀にぶつけるが「安藤の担当は古谷であり、採寸表を見ることは出来ない」と否定される。
右京は安藤に直接揺さぶりをかける。
安藤が3つボタンスーツを着始めたのは5年前。
当時、安藤は妻を亡くしていた。
以降、安藤にはある秘密があったのだ。
そう、安藤は妻を亡くした後、女性用下着を身に着けるようになっていたのだ!!
その秘密を樋村に知られた為に融資を決めたのだった。
樋村が安藤以外にも同様の手段で脅迫していたと判明。
捜査一課がその中に犯人が居ると考える中、右京は樋村の脅迫材料の中から「昭和45年の採寸表」を見つけ出す。
それこそは安藤のもの。
指紋から安藤の情報を樋村に流したのが笹原真紀だと判明。
真紀は情報を流したことを認める。
樋村からあった独立資金の提供を条件に応じたらしい。
しかし、右京はそんな真紀の言葉を否定する。
右京は古谷を見詰める。
裁断中、ある鋏を「最初に学び手に慣れた道具」と語った古谷。
その鋏に右京は注目した。
それはロンドン帰りの人間ではありえないことだった。
古谷が裁縫を学んだのはロンドンでは無く刑務所だったのである。
古谷は婿入りしてからの姓。
以前は竹下勲と名乗っていた。
傷害罪で懲役3年の刑に服していた過去があったのだ。
池田の調査は、安藤については失敗したが古谷には成功していた。
過去の傷害罪について脅迫をかけた樋村。
古谷は拒否したが、真紀は応じてしまった。
真紀は古谷を庇うために敢えて情報を流出させたのだ。
過去に傷を負った古谷だからこそ女の自分を育ててくれたと恩義に感じていたのだ。
それは、古谷を救おうと考えた末の行動。
そして、シャツガーターを使わず作業していた古谷。
それは袖を下ろし腕を隠すことに他ならない。
樋村の殺害状況から犯人も手傷を負った筈、つまり……。
案の定、腕に怪我があった古谷。
樋村殺害は古谷の犯行だったのだ。
安藤から樋村に脅迫されたと報された古谷。
どこから、何故、情報が洩れたか察した古谷は樋村に詰め寄り殺害してしまった。
何より樋村が真紀を中傷したことが大きな要因だったのかもしれない。
もともと自首するつもりだった古谷は素直に罪を認める。
実は真紀の将来を考え「英国堂」に次の職場を用意してあるらしい。
「プライドの高い古谷が頭を下げたので驚いた」との「英国堂」の証言を神戸から伝え聞いた真紀は涙を流す。
そんな真紀の横から「何故、僕の仕立ての依頼に応じたのか」尋ねる右京に古谷は答える。
「もう一度、笹原の仕事が見たかった!!たとえ女だろうが笹原のテーラーとしての実力は本物だ!!」と。
古谷は真紀の職人としての腕を信じていたのだった。
こうして事件は解決した。
その帰り道。
真紀に今後も仕事を続けて欲しいと語り合う右京と神戸の姿があった―――14話了。
<感想>
シーズン9第14話。
脚本はシーズン8で5、8、17話、シーズン9では7話を担当された徳永富彦さん。
基本傾向として、“意外な犯人”が多い作風。
劇中序盤に登場する証言者が犯人の場合も多い。
他には、シナリオ中になにかひとつ意外なモノを盛り込むことが特徴。
例えば「背信の徒花」では意外な殺人方法、「消えた乗客」では意外な関係、「怪しい隣人」では意外な展開。
作品中で必ずひとつ見所を作るそのシナリオは安定感があります。
そんな徳永富彦さん担当作品のネタバレ批評(レビュー)はこちら。
・相棒season8 5話「背信の徒花」(11月18日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・相棒season8 8話「消えた乗客」(12月9日放送分)ネタバレ批評(レビュー)
・相棒season8 17話「怪しい隣人」(2月24日放送分)ネタバレ批評(レビュー)
・「相棒season9」第7話「9時から10時まで」(12月8日放送)ネタバレ批評(レビュー)
さて、今回はというと……。
扱っている素材(職人としての技量に技の上下はあれど、男女差はない。)は良かったのですが、ところどころ味付けが微妙かな……。
極端すぎるかも……。
特に安藤関連で「5年前に妻を亡くした」=「女性下着を身に着ける」は極論。
ロジックが飛躍し過ぎではないでしょうか。
ここらは減点かなぁ。
ストーリー自体は納得できないわけでもないが……。
女性用下着を身に着ける男性と言えば、「猫丸先輩」シリーズでお馴染み倉知淳先生の短編「Aカップの男たち」が思い起こされますね。
ネタバレ書評(レビュー)があるので興味のある方は是非!!
・「ミステリ愛。免許皆伝!メフィスト道場」&「ミステリ魂。校歌斉唱!メフィスト学園」(講談社刊)
(倉知淳先生「Aカップの男たち」にてネタバレレビュー)
「Aカップの男たち」は現在では東京創元社さん「こめぐら」にも収録されているのでそちらもチェック!!
他の短編も粒揃いですよ。
・倉知淳先生の作品集「なぎなた」&「こめぐら」は東京創元社さんより9月30日発売!!
テーラーがテーマでした。
テーラーといえば、スーパージャンプ連載の漫画「王様の仕立て屋」を思い出します。
「王様の仕立て屋」は衒学的な遊びに満ちている作品で一度嵌まれば病み付きになる作品。
良ければ読んでみて!!
そうそう。
現在、映画版「相棒−劇場版U−警視庁占拠!特命係の一番長い夜」が公開中です。
劇場ノベルス版のネタバレはこちら。
・「相棒 ―劇場版2―」(大石直紀著、小学館刊)ネタバレ書評(レビュー)
ノベルス版は劇場版とは異なるラストとのこと。
CMや予告を見るに途中まではほぼ同じらしいが、ある一点で違う。
それが小野田のこと。
なんでも、劇場版では小野田の身に重大なことが起こるらしいのだ。
シーズン9に小野田が登場しないのも伏線らしいが……。
これについては「粋ダネ 相棒」で検索すると詳細が分かる。
(「粋ダネ」とはBS11にて放送の「柳家喬太郎の粋ダネ!」のこと。
番組中で、あるゲストが内容に関わるネタバレをしたらしい)
気になる方は、上記ノベルス版ネタバレ書評(レビュー)にもそれについて補足しているのでどうぞ。
劇場版に関連して2010年12月26日には「相棒シリーズ 鑑識・米沢守の事件簿」が放送されました。
・「相棒シリーズ 鑑識・米沢守の事件簿」ネタバレ批評(レビュー)
他にもオリジナル小説も発売中。
ただ、こちらはオススメしかねるかも……。
・「杉下右京の事件簿」(碇卯人著、朝日新聞出版刊)ネタバレ書評(レビュー)
関連書籍も多数登場。
興味のある方はチェック!!
・「相棒」関連書籍続々発売!!あなたはどれを読む!?
<キャスト>
●杉下右京(水谷豊)
警視庁特命係・係長。あまりにも切れ過ぎる頭脳と、何を考えているのか判別できない素行から変人扱いされ、窓際部署の特命係に追いやられた経緯が。しかし、その人事すら本人はまったく気にしてない様子。常に冷静で、どんな相手でも論破できるが、論客が元妻のたまきだと、高確率で敗北。動揺することもしばしば。
●神戸尊(及川光博)
警視庁特命係員。警察庁上層部からの密命の真実を知り、自ら特命係に残ることを志願。
(MSNエンタメさんより)
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