ネタバレあります、注意!!
<あらすじ>
キミが遺してくれた謎は、切なく、ちょっぴり苦い。 青春ミステリー!!
函館に住む高校三年生の真乃。東京の大学に進学が決まった彼女の前に、小学生のときに死んでしまった幼なじみ・速人によく似た青年が現れた。それから真乃の回りでは不思議なことが起きはじめ――!?
(角川書店公式HPより)
<感想>
「成風堂書店事件メモ」シリーズで知られる大崎梢先生。
その作品のひとつにして鮮烈な青春ミステリが、この「スノーフレーク」です。
あらすじはこんな感じ。
「主人公・真乃は過去に幼馴染みの速人を一家心中で亡くしており、今も彼のことを想っていた。
何故なら、不思議なことに速人の遺体だけはまだ見つからないからだ。
これこそ生きている証拠ではないか?
だが、東京への進学を控えたことで真乃は区切りをつけるべく、ネット上で『速人を忘れる』宣言を行う。
直後から起こる不思議な出来事の数々。
やはり、速人は生きているのか?」
中心となるのは「速人は生きているのか?」。
これが本作のテーマ。
その真相はネタバレあらすじをどうぞ!!
とはいえ、謎よりも「どうしてそうなったのか?」との話の繋がり方、転がし方が上手い。
ここらは流石「成風堂書店事件メモ」シリーズの作者。
グイグイ読ませますね〜〜〜。
読んでみて思ったのが全体的な甘酸っぱさ。
まさに青春ですね……。
今まさに青春時代を生きている方はもちろん、既に大人になってしまったあなたにもオススメの一冊です。
自身の学生時代を思い起こす方も多いかも……。
ちなみに、「スノーフレーク」はモデルで女優の桐谷美玲さん主演で映画化されるそうです。
詳細は下記過去記事よりどうぞ!!
・「成風堂書店事件メモ」シリーズで知られる大崎梢先生「スノーフレーク」が映画化!!
<ネタバレあらすじ>
函館に住む高校三年生の真乃。
幼馴染みの男子・享と離れ、東京の大学に進学が決まったある日、彼女は過去の想い出に別れを告げるべくネット上で「速人を忘れる」と宣言する。
速人とは真乃が小学生のときに死んでしまった同い年の幼馴染みのひとり。
両親による一家心中で、祖母や妹と共に車で海に飛び込み死亡したと思われていた。
しかし、速人だけは今も死体が発見されていない。
真乃は速人が生きていると信じ、その帰還を待ち続けていたのだが、遂に想い出に区切りをつけようとしたのだ。
直後、真乃の前に速人によく似た青年・勇麻が現れる。
彼は速人の年上の従兄弟。
彼によれば速人はまだ生きていると言う。
それから真乃の周辺では不思議なことが起こり始めるのだった。
そのどれもが速人の生存を指し示すものなのだが、本当に速人は生きているのだろうか?
真乃の心は千々に乱れる。
そんな真乃を支える勇麻。
真乃を心配し、勇麻を警戒する享。
やがて、真乃は速人がやはり死亡していたと知る。
心中場所から遺体が発見されなかったのは、当時子供を失ったばかりのある人物が速人の遺体を連れ去ってしまったからだった。
その人物の友人であった医師は友の心的バランスを重んじ、引き離すようなことはせず、速人の遺体を丁重に葬ったのだ。
そのため、速人のみ遺体が存在せず生存説が流れたのだった。
今回、真乃の周辺で速人が生きているかのように思えた出来事の一端はこの医師が行ったことだった。
医師自身に悪気はなかったものの当時のことを覚えていて欲しいとの気持ちから来る行動だったらしい。
そして、真乃はその影で当時から子供ながらに真実を胸に抱き沈黙を続けていた人物の存在を知る。
それは、享その人だった。
享は、当時から真乃のことが好きだった。
しかし、真乃の視線はいつも速人を向いている。
そこで心中事件が起きた。
嘆き悲しむ真乃を見た速人は真乃の為に速人を捜しついに見つけ出した。
だが、それは医師により埋葬される直前の速人の遺体だったのである。
真乃を絶望させるよりは……と考えた享はこうして秘密を抱えることになったのである。
それを知った真乃は自身が昔から享を好きだったことに気付く。
真乃にとって速人は親友だったが恋愛対象では無かったのだ。
真相を知った真乃は今回の騒動の首謀者と対決することに決める。
勇麻と対峙する真乃。
首謀者は勇麻だった。
勇麻もまた心に重い傷を抱えており真乃に理解して欲しかったのだ。
過去、勇麻は真乃に恋しており速人を通じて情報を欲しがった。
しかし、速人はある一線以上には情報を教えてくれない。
勇麻は速人もまた真乃を好きなのだと考えた。
そこで、勇麻は心中事件の前日に速人たち家族の留守を狙い速人宅を訪ねる。
速人の部屋から真乃についての情報を引き出そうとしたのだ。
しかし、そこで勇麻は恐ろしい光景を目にしてしまう。
それは、留守の筈の速人の両親が祖母を殺害している姿だった。
当時、速人の両親は生活に困っており祖母の保険金でやり直すつもりだったのだ。
そこで、留守を装い祖母を殺害した。
だが、ここで誤算が生じる。
よりにもよって兄の息子である勇麻に犯行を目撃されてしまったのである。
こうして絶望した速人の両親は家族を連れ一家心中の道を選んだのだった。
以後、勇麻は速人の家族の死にずっと責任を感じていた。
自分があの日、あの場所へ行かなければ速人も死なずに済んだ……そんな自責の念から自身を責め続けていた勇麻は真乃の「速人を忘れる」宣言を目にし、阻止する為にやって来たのだった。
精神の均衡を半ば崩した勇麻。
そんな勇麻を真乃が呼んだ勇麻の父が説得。
親子で苦しみを分かち合うことで解決を迎えるのだった。
後日談。
速人の遺体が掘り出された。
速人の遺体は小高い丘の上、街が見渡せる花畑に埋められていた。
速人はこうして家族のもとへ戻った。
どうやら勇麻は勘違いしていたようだが、速人が真乃の情報を出し惜しみしていたのは速人も真乃が好きだったからでは無い。
速人は年上の従兄弟である勇麻が好きだったのだ。
真乃にとって速人はあくまで親友だったのである。
なぜなら、速人の心は女性だったから。
速人は性同一性障害だった。
その悩みの相談にのっていた真乃は、今回の事件で登場した男性的な速人の行動に違和感を抱き真相に辿り着いたのだった。
そして、真乃が本当に好きだったのは享だった。
真乃は享に気持ちを告げ、「遠く離れても心は同じ場所にある」と約束するのだった―――エンド。
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