日本で100番目に早い(たぶん)、「相棒season9」第15話「もがり笛」(2月16日放送)ネタバレ批評(レビュー)。
<ネタバレあらすじ>
ガス漏れ報知機が警報を響き渡らせる。
原因は炊事場のガスにあった。
刑務官が飛び込むと、其処に居た戸村は動揺と共に首を振った。
不思議がりながら、ガスのスイッチを消す刑務官。
ほっと胸を撫で下ろす……直後、警報ベルが鳴った。
こちらは房に異変があったことを報せるものだ。
慌てて駆け付けた刑務官の目に血に染まり倒れ臥した男の姿が映った。
殺害されたのは、大野医療刑務所の重病懲役囚・浪岡(赤星昇一郎)。
死因は刺殺。凶器は炊事場の包丁。
事件発生時に部外者がいなかったことから、刑務所内にいる何者かによる犯行と思われた。
浪岡は肝硬変から回復し元の刑務所に戻る矢先の出来事だったらしい。
この事件、司法警察捜査員以外は捜査に従事することは出来ないが、今回に限り捜査一課の担当に。
しかも、なんやかんやで右京(水谷豊)と神戸(及川光博)も参加することに。
浪岡が居たのは重病人の房。
だが、ひとりで移動できない受刑者以外の房には基本的に鍵がかかっている。
当然、浪岡の房にも鍵がかかっており出入りは不可能の筈だが……。
実は浪岡が殺害される直前まで教戒師の佐野(遠山俊也)がその場に居た。
その為に鍵がかかっていなかったのだ。
しかも、事件は佐野が例の報知機騒ぎの際に席を外した隙に発生していた。
犯人は報知機騒ぎを起こし、目をそちらに向けさせて犯行を為したのだ。
さらに、鑑識の米沢の報告により、炊事場付近ではガススイッチと包丁付近の指紋が綺麗に拭きとられていたと判明。
明らかな計画的犯行である。
早速、刑務官に事情を聞く右京たち。
受刑者フロアと職員フロアの間には鍵のかかった仕切りがあり自由には移動できないと説明を受ける。
唯一、戸村という刑吏夫が炊事場に居たらしいが……。
殺害された浪岡は暴力団員。
10年前に喧嘩をし、仲裁に入った重田という男性を刺殺し刑に服していた。
先頃になって離脱届も出し、仮釈放も認められようとしていたがある理由で取り消されていた。
浪岡は内縁の妻を身元引受人にしていたが、その女性が浪岡の所属する暴力団員の妻だったことから虚偽が明らかになった為だ。
つまり、浪岡は偽装離脱だったのである。
仮釈放が取り消しとなり、浪岡が激怒し房で暴れることがあったと判明。
さらに、浪岡をあざ笑うなど対立していた重病懲役囚の江田(火野正平)の存在が浮上。
医療刑務所でがんの手術を受けた江田だったが、既に手の施しようがなく、今は死を待つのみらしい。
江田によると浪岡は最近「殺してやる」と叫んでいたが、誰を殺すのかは分からないと言う。
刑務官に確認したところ、「もがる」という言葉が飛び出す。
刑務官によれば受刑者が叫ぶ様子を示した言葉らしい。
所内を吹く風が格子を通る際にたてる音を「もがり笛」と呼ぶが、それをもじったものだった。
さらに、江田の部屋にあった1通の封筒に注目する右京。
刑務官によれば、一週間ほど前、江田に便箋2枚と封筒1通を遺族に宛てた手紙を書くべく渡していた。
結局、送られなかったらしいが……。
江田に興味を持った右京。
江田の罪状は勤め先を辞めさせられた際にカッとなって相手を刺殺したというものだった。
しかも、江田はこちらも一週間前に教誨を希望していた。
手紙も教誨もともに一週間前の出来事である。
「何かあったのでは?」と考えた右京は佐野に尋ねることに。
佐野によると一週間以上前にある事件があったと言う。
事件の内容は「江田がベッドで苦しんでいたが、介護士の洋子(つみきみほ)が何もせず見下ろしていた」というものであった。
洋子に確認すると、医師を呼ぼうとしたが江田に制止された為らしい。
一方、江田に渡された筈の便箋が一枚消えていることに気付いた右京。
捨てたと語る江田だが、ゴミから便箋が検出された記録は無い。
しかも、車椅子が動いていたことに注目した右京は江田がひとりで移動できるのではと考える。
江田が移動できるならば浪岡殺害も可能である。
しかし、凶器の調達は江田では不可能。
当然、凶器を用意した共犯者がいる筈だが……。
一方、捜査一課は戸村を取り調べていた。
戸村はデザートを浪岡に譲っていたらしい。
食べ物の譲渡は処罰の対象になる、それを押してとなれば戸村が浪岡に何かの弱みを握られているに違いないと考えたのだ。
しかし、戸村は否定し続ける。
職員を調べた右京と尊は、江田と洋子の意外な関係を知ることに。
江田が服役する原因となった事件の被害者は洋子の父だったのだ。
洋子によれば、当初は復讐目的で近付いたが、江田が罪を悔い、医者を呼ばず苦痛を自らに課すなど自身に罰を与えている姿を見て今は最期を見届ける気だと言う。
右京は江田が一週間前から教誨を希望していることから、洋子の素性に気付いたのも一週間前だと推理する。
戸村と接触する右京たち。
戸村によれば、自分が疑われるのは見当違いもいい所で別に疑うべき人物がいると言う。
その人物は佐野だった。
なんでも、佐野が手紙らしき物を隠す所を目撃したらしい。
もしや、それが江田の消えた便箋では……。
再び江田から話を聞く右京たち。
江田は佐野に手紙を預けたことを否定するが、その態度から嘘だと無抜く右京。
そこへやって来た佐野は自身が宗教家であることを理由に便箋の提出を拒む。
浪岡が過去に殺害した被害者の妻・重田早苗に謝罪の手紙を送っていたことが判明。
どうも、仮釈放の為のポーズらしい。
同時に早苗から浪岡宛てに返事が届いていたことも分かる。
一見、普通に見えた早苗の手紙。
しかし、注意深く確認したところ「出所したら殺す」とのメッセージが隠されていた。
この手紙は浪岡が「殺してやる!!」と騒いだその日に届いている。
浪岡はこの手紙を見て返り討ちにしてやると叫んでいたのだ……。
浪岡の偽装離脱が発覚したのは、保護観察官が再調査した結果と判明。
何でも保護観察官宛に身元引受人の素性について匿名の告発文が届いたらしい。
重田早苗を訪問する右京たち。
早苗によれば、浪岡に手紙を出した覚えは無いと言う。
筆跡を確認したところ、確かに早苗を騙った手紙とは別人だった。
しかし、早苗の筆跡は別のある手紙と一致。
それは、保護観察官に宛てた匿名の告発文。
そう、告発文の主は早苗だった。
早苗によれば調査会社に調査を依頼し浪岡の偽装離脱を見抜いたらしい。
早苗はそんなことまでする浪岡が許せなかったと語る。
早苗を騙った手紙に隠れたメッセージを残すことが出来るのは刑務所内の人物のみ。
右京は佐野を疑うが……。
江田がシーツで首吊りを図る。
遺書が残され、そこには浪岡殺害犯は自分であると記されていた。
それを見た右京は「僕とした事がとんでもない勘違いをしていました……」と呟く。
早苗が教誨を通じて佐野と関係があったことが判明。
早苗から浪岡のことを聞いた佐野。
早苗は浪岡を殺害するかもしれないと佐野に語っていた。
このままでは早苗にも容疑がかかると聞かされた佐野は渋々江田の手紙を引き渡す。
そこには、自分が洋子に殺害されたなら洋子の情状酌量を認めて欲しいと綴られていた。
つまり、江田が庇う相手は洋子しかいないのだ。
今回、江田が誰かを庇ったとしたら洋子しかいない。
右京たちは洋子を問い詰める。
浪岡へ早苗を騙った手紙を送りつけたのは洋子だった。
当初は江田への復讐を目的にしていた洋子。
だが、江田は罪を悔い苦しんでいた。
一方、浪岡は姑息な手段に及び罪から逃れようとしていた。
浪岡も反省するべきだと考えた洋子は早苗を騙り手紙を送った。
ところが、洋子の意に反し、その手紙を見た浪岡は「殺してやる!!」と叫んでしまう。
このままでは、いずれ早苗が殺害されてしまうと思った洋子は浪岡殺害を決意。
実行に移したのだった。
江田は一命を取り留めた。
事情を尋ねる右京にすべてを告白する江田。
江田は洋子が被害者遺族だと気付いた。
そこで、自身が洋子に復讐されることを考慮し便箋を入手、洋子への情状酌量を綴ると教誨を口実に佐野に委ねた。
当初は口実だったが、佐野の人柄に初めて人を信じたと言う。
それから数日間、何も起こらなかった……が、浪岡が殺害されてしまい犯人が洋子であると知った江田は自分が洋子を追い込んだと悔い、罪を被って自殺しようとしたのだった。
そんな江田に洋子が彼を必死に救おうとしていたことを伝えた右京は、江田の行為が洋子を救うことにはならないと諭す。
「どうすれば良かったんだ!!」と問う江田に佐野を引き合わせる右京。
江田は佐野の姿を確認すると涙を流し続けるのであった。
洋子が連行され事件が解決した。
もがり笛を背にその地を後にする右京と神戸の姿―――15話了。
<感想>
シーズン9第15話。
脚本はシーズン8で7、12、19話、シーズン9では4、6、8話を担当した櫻井武晴さん。
基本傾向として、あるひとつの時事ネタや新しい法案、新しい技術などワンテーマを中心に深く掘り下げることでそれが抱える矛盾や弱点を浮かび上がらせるシナリオを得意とする方。
特徴として、科学技術による物的証拠が犯人断定の決め手となることも多い。
ちなみに、情報量や伏線、シーン転換が他のライターさんに比べて圧倒的に多いことも特徴。
その本領は1時間よりも2時間のシナリオに活かされるのかもしれない。
そんな櫻井武晴さん担当作品のネタバレ批評(レビュー)はこちら。
・相棒season8 7話「鶏と牛刀」(12月2日放送分)ネタバレ批評(レビュー)
・相棒season8 12話「SPY」(1月20日放送分)ネタバレ批評(レビュー)
・相棒season8 19話(最終話・最終回)「神の憂鬱」(3月10日放送分)ネタバレ批評(レビュー)
・「相棒season9」第4話「過渡期」(11月17日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・「相棒season9」第6話「暴発」(12月1日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・「相棒season9」第8話「ボーダーライン」(12月15日放送)ネタバレ批評(レビュー)
さて、今回はというと……。
キャラクター間の心理描写は良かったと思います。
洋子は江田への復讐心を糧に生きていたのではないでしょうか。
ところが、江田は罪を悔い、自身に罰を与えていた。
そんな江田の姿に憎むべき父の仇を見失った洋子は、それを浪岡に見出したのでしょう。
「江戸の仇を長崎で」ではありませんが、行き場を失った洋子の復讐心は浪岡へと向かった。
しかも、浪岡は洋子の望む理想の仇像を見事に満たしてしまった為に殺害されたような気がします。
江田が「洋子の罪は自身に責任がある」と考えた理由が此処にあるのでは。
辛いですね……。
ただ、ロジック的にちょっと話の運びが強引だったかな……。
「思い違い」でそれまでの推理を一方的にリセットされるのはアンフェアかなぁ。
実質、それ以降の推理のみ(「江田が庇うのは洋子だけ」のひとつ)で洋子を摘発してるし……。
さらに、一部に???と思う箇所もありました。
ネタバレあらすじを読んで貰えれば、その辺りは分かって貰えるかも。
総合的には、話の出来は「ちょっとあんまりかな……」との評価でした。
次週に期待。
ぼつぼつ最終回情報が出てますね。
まず、ビッグゲストの存在が示唆されています。
公式ツイッターによれば、久しぶりの登場の方だとか……しかも、鉄の魂の持ち主とされています。
ひょっとして津川雅彦さん演じるあの方?
いや、別のあの方の可能性も……。
次に、撮影場所は埼玉だそうです。
埼玉に関連ある話になるのかな?
さらに、劇場版との関連も想像されます。
シーズン9最終話のシナリオは戸田山雅司さん、輿水泰弘さん。
つまり、劇場版と同じコンビです。
この意味するところは劇場版と最終話がリンクしているということ?
とすれば、小野田官房長関連にも繋がるかも。
ちなみに劇場版はシーズン9の1話よりも過去の物語となります。
そして肝心の劇場版ですが。
現在、映画版「相棒−劇場版U−警視庁占拠!特命係の一番長い夜」がロングラン上映中です。
本来は2月4日までの公開だったんですね。
そんな劇場ノベルス版のネタバレはこちら。
・「相棒 ―劇場版2―」(大石直紀著、小学館刊)ネタバレ書評(レビュー)
ノベルス版は劇場版とは異なるラストとのこと。
CMや予告を見るに途中まではほぼ同じらしいが、ある一点で違う。
それが小野田のこと。
なんでも、劇場版では小野田の身に重大なことが起こるらしいのだ。
シーズン9に小野田が登場しないのも伏線らしいが……。
これについては「粋ダネ 相棒」で検索すると詳細が分かる。
(「粋ダネ」とはBS11にて放送の「柳家喬太郎の粋ダネ!」のこと。
番組中で、あるゲストが内容に関わるネタバレをしたらしい)
気になる方は、上記ノベルス版ネタバレ書評(レビュー)にもそれについて補足しているのでどうぞ。
劇場版に関連して2010年12月26日には「相棒シリーズ 鑑識・米沢守の事件簿」が放送されました。
・「相棒シリーズ 鑑識・米沢守の事件簿」ネタバレ批評(レビュー)
他にもオリジナル小説も発売中。
ただ、こちらはオススメしかねるかも……。
・「杉下右京の事件簿」(碇卯人著、朝日新聞出版刊)ネタバレ書評(レビュー)
関連書籍も多数登場。
興味のある方はチェック!!
・「相棒」関連書籍続々発売!!あなたはどれを読む!?
<キャスト>
●杉下右京(水谷豊)
警視庁特命係・係長。あまりにも切れ過ぎる頭脳と、何を考えているのか判別できない素行から変人扱いされ、窓際部署の特命係に追いやられた経緯が。しかし、その人事すら本人はまったく気にしてない様子。常に冷静で、どんな相手でも論破できるが、論客が元妻のたまきだと、高確率で敗北。動揺することもしばしば。
●神戸尊(及川光博)
警視庁特命係員。警察庁上層部からの密命の真実を知り、自ら特命係に残ることを志願。
(MSNエンタメさんより)
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