ネタバレあります、注意!!
<あらすじ>
近年ようやく評価が進んだ「幻の探偵作家」天城一。残された長編2本に、未発表を含む短編を加え、最後の傑作集をお届けする。
目次
第1部 風の時/狼の時
風の時/狼の時
第2部 沈める濤
沈める濤
感傷的対話
クィーンのテンペスト
第3部 失われた秘宝
奇蹟の犯罪(初稿版)
メチール時代の一神話――あの世のどこかで
誤算
三つの扉
神の言葉
噂はそよ風のように
朧月夜
失われたアリバイ/時計塔
埋葬
失われた秘薬
失われた秘宝
失われた秘報
天城ミステリは永遠に/山沢晴雄
編者解題/日下三蔵
(日本評論社公式HPより)
<感想>
「天城一傑作集 4」にして傑作集完結編。
他に「天城一の密室犯罪学教程」、「島崎警部のアリバイ事件簿」、「宿命は待つことができる」がある。
2009年に出版された本作。
作者の天城一先生は2007年に亡くなっており、日下三蔵さんによる編纂となりました。
エラリー・クイーンの「九尾の猫」について触れ、探偵小説の終わりについて高らかと宣言した「クィーンのテンペスト」。
それぞれ2ページ前後の超短編「メチール時代の一神話――あの世のどこかで」や「誤算」。
ラジオドラマの犯人当てシナリオ「三つの扉」。
などなど、どれも切れ味鋭い作品ばかり。
シリーズ探偵(警官)・島崎の活躍が光る一冊です。
特に「風の時/狼の時」は島崎の意外な活躍や、それを上回る歴史を揺るがす真相もあり一見の価値アリ。
本格ミステリファンを自称するならば必読の書と言えるでしょう!!
<ネタバレあらすじ>
表題作「風の時/狼の時」、「メチール時代の一神話――あの世のどこかで」、「誤算」の3作をご紹介。
・「風の時/狼の時」
第2次大戦の空気が色濃くなったとある夜。
何者かによりユリが撃たれた。
彼女によれば犯人は分からないと言う。
そして、ユリはそのまま息を引き取ってしまった。
今度は、信義が死体で発見される。
こめかみを銃で撃ち抜いたものと思われた。
島崎は2件の犯行とも、女たらしの大将秘書・千手によるものと断定するが……当の千手が心中死体で発見されてしまう。
結局、千手が犯人だったのか?
第2次大戦が終わった頃、信義をよく知る友人たちは千手が犯人ではないと結論付ける。
それは戦後だからこそ明かされる事実。
実は千手の仕える大将は奇襲攻撃の作戦書を持っており、これが勝敗を分けるとみられていた。
信義とユリは開戦を未然に防ぐ為にこの作戦書を盗み出した。
ところが、ユリはこの計画自体の大きな陥穽(疑惑を向けられ拷問された場合、耐えきれない)に気付きいずれ破綻を迎えるならばと自身の身を呈して時間稼ぎを計画、自分を撃った。
狂言だったのである。
そして、パートナーであるユリを失った信義はショックのあまり自殺したのだった。
信義とユリの行動は歴史上から見れば水泡に帰した。
だが、彼らの行為を知っている人間も確かに存在する。
友人たちは信義を慰めるように演奏を始めるのだった―――エンド。
・「メチール時代の一神話――あの世のどこかで」
とある飲み会で仲間のひとりがメチール中毒で死亡。
同じだけ呑んだ筈の自身が無事だったことから耐性があると聞かされた男はこれを利用し憎むべき恋敵の排除を目論む。
恋敵を誘い出しメチールを共に摂取することで耐性のある自分だけ助かろうとしたのだ。
だが、耐性があると思っていたのは勘違いだった。
死んだ男はそれ以前にも多量のメチールを摂取しており、そもそも基本量が違っていたのだ。
決して耐性があったわけでは無かった。
こうして、誤った認識で殺人計画を実行した男はそのまま天に召されてしまうのであった。
自分の計画の大きなミスに気付かぬままに―――エンド。
・「誤算」
愛人殺害を目論んだある青年。
12歳の子供を連れ自身のアリバイを証言させようとする。
殺害は成功。
アリバイも完璧かと思われたが……。
だが、子供の身に着けていた時計は15分進んでいた。
こうして、アリバイが荒唐無稽なものとなった青年はあっさりと逮捕されてしまうのだった―――エンド。
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