2011年02月25日

「魔術はささやく」(宮部みゆき著、新潮社刊)

「魔術はささやく」(宮部みゆき著、新潮社刊)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

それは魔術師がみた暗い夢だった。無関係にしか見えない三つの事件の背後には……!? 日本推理サスペンス大賞受賞作!

それぞれは社会面のありふれた記事だった。一人めはマンションの屋上から飛び降りた。二人めは地下鉄に飛び込んだ。そして三人めはタクシーの前に。何人たりとも相互の関連など想像し得べくもなく仕組まれた三つの死。さらに魔の手は四人めに伸びていた……。だが、逮捕されたタクシー運転手の甥、守は知らず知らず事件の真相に迫っていたのだった。日本推理サスペンス大賞受賞作。

プロローグ
第一章 発端
第二章 不審
第三章 不安な女神たち
第四章 つながる鎖
第五章 見えない光
第六章 魔法の男
最終章 最後の一人
解説 北上次郎
(新潮社公式HPより)


<感想>

「恩義ある人を救う為に奔走する日下守。彼が最終的に救う者は一体誰なのか?」
そんな感じの本です。

ミステリ的に“催眠”は禁じ手の筈ですが、この物語はアリだと思います。
おそらくそれは、催眠がメイントリックでは無くストーリーを展開させる為のギミックに過ぎないからでしょう。
さらに、上記のあらすじだと連続殺人がメインのように見えますが実際は違います。

この物語の本質は催眠でも連続殺人でも無く、守少年の成長記にあると思うのです。
いわば、著者による後の「ブレイブ・ストーリー」に繋がる物語です。
あちらがファンタジー世界での冒険による成長ならば、こちらは現実社会で催眠という魔法を使う冒険による成長と言えるでしょう。
その意味で、作者の本質が窺える冒険譚として非常に高度な物語だと思います。

流石に作者の著作中では必読ほどのランクではないけれど、充分オススメの一冊です。

2011年9月9日追記:ドラマ版が放送されました。

金曜プレステージ「3週連続・罪と女とミステリー最終夜!宮部みゆきスペシャル 魔術はささやく〜大ヒット原作が今蘇る!大罪を犯した女を襲う復讐地獄…死の着信が私を今日殺す!姿なき悪魔は誰?」(9月9日放送)ネタバレ批評(レビュー)追加しました。リンクよりどうぞ!!

<ネタバレあらすじ>

3人の女性が次々と死亡していた。

1人目はマンションの屋上から飛び降りた。
2人目は地下鉄に飛び込んだ。
3人目はタクシーの前に飛び出した。

相互の関連性など一切無いかのように思われたこれらの事件。
実はある意志によって引き起こされた殺人だった!!
さらに何者かの意志は4人目の女性に迫る。

飛び出した3人目を轢いてしまい逮捕されたタクシー運転手。
その甥・日下守は窮地の叔父を助ける為に事件に迫ることに。
守には、過去に横領したまま姿を消した父がおり、母はその心労から早くに亡くなっていた。
叔父一家に引き取られて育っていたのである。

そんな中、新日本商事の副社長・吉武が守の叔父が故意に轢いたのではないことを証言した上に叔父の再就職先まで新日本商事内で用意してくれていた。
この厚遇に感謝する守は、何故か守に目をかける吉武との距離をじょじょに縮めて行く。

そんな中、謎の男が今回の事件の犯人であると分かる。
なんと、犯行方法は催眠だった!!
謎の男(魔術師)は被害者に催眠をかけるとキーワードにより暗示を発動し殺害していたのだ。
しかも、謎の男(魔術師)によれば本当の狙いは別に居り、その標的は女性らしい。

謎の男(魔術師)に導かれる内に4人目の被害者を助ける守。
守には分かっていた。
謎の男(魔術師)はもはや被害者では無く、仲間を欲しがっているのだ。
その為に、守が彼女を助けようとも気にしていないのだ。
つまり、謎の男(魔術師)が仲間として欲しているのは守自身なのだ……。

ついに、謎の男(魔術師)と会う守。
謎の男の正体は原沢という名の老人だった。
原沢は催眠を研究していた研究者らしい。
彼がこれまでの4人を葬ろうとしたのは弟子の復讐だった。
彼の弟子はデート商法に引っかかり、失恋。
しかも、当の相手にデート商法であることを雑誌の記事に暴露され自殺に追いやられていた。
そして、4人目の標的こそが弟子の命を奪った張本人。
殺害された3人は雑誌の対談に応じたその仲間だった。
研究成果である催眠の全てを受け継がせる筈だった弟子を失った原沢は激怒。
弟子の仇と研究成果の実験対象も含めて催眠により3人を殺害したのだった。

原沢を批難する守だったが、原沢は吉武のある秘密を持ち出し守の心を攻める。
吉武を失踪した父ではないかと疑っていた守。
だが、その推測は誤りだった。
真相はもっと苛酷だったのである。

実は吉武は守の父を事故で殺害していた。
守の父の素性を知った吉武は残された守と母親をこっそりと見守り続けた。
当初は贖罪の気持ちだったが、10年も過ぎる頃には守に愛情を感じていたのである。
そんなある日、守の叔父が殺人の疑惑で苦しんでいると知った吉武は偽証し叔父を助けた上で守に近付くことを考え、これを実行に移す。
そして、子供もおらず夫婦仲も冷めている自身の地位や財産すべてを守に引き継がせようと計画していたのだった……。

催眠により吉武から聞き出した真相を原沢から聞かされた守は激しく苦悩。
父の仇であり、自身に哀れみを向けた吉武を憎む。
それを見越した原沢は守に吉武殺害のキーワードを教える。
吉武にも死亡した3人のように催眠をかけていると言う。

こうして、復讐を考えた守は吉武にキーワードを行使する。
死に向かう吉武だったが、ギリギリで既に亡い父や母の想いを汲んだ守は吉武の催眠を解くのだった。

原沢に電話で吉武殺害失敗と絶交を伝える守。
原沢はそんな守の言葉を無言で聞くのだった。

後日、原沢は病気で死亡。
もともと余命が限られていたらしい。
原沢は死に際し事の顛末を記した遺書を用意していたらしく、警察側にも真相が伝わる。
だが、吉武に関しての事実だけは伏せられていた。

守の叔父は、とある女性から「あなたのタクシーのおかげで夫の命が救われました」との手紙を貰いタクシードライバーに復帰する覚悟を決める。

原沢に狙われた4人目の女性は、自身の罪を反省し生き方を変える努力を始めた。

そして、守はと言えば……あれから催眠について調べた結果、原沢の催眠が高度なモノであったと知った。
原沢は被害者の罪の意識に働きかけ逃げるように行動させる催眠をかけていたらしい。
その結果があの事故や自殺だったのだ。
守はこの催眠が効果を為したということは被害者たちにもどこかで罪の意識があった筈で全くの悪人では無かったのでは……と考える。

一方で、吉武が催眠で語ったと言う父の事故現場を訪ねる。
そこは警察署のすぐ近くだった。
守の父は横領したものの反省し自首するべく出頭途中で事故に遭ったのだ。
父の心を知った守は自身が手を下さなかったことに胸をほっと撫で下ろす。
だが、父の遺体の場所はついに分からず仕舞いだった。

数日後、守宛てに原沢から手紙が届く。
そこには原沢と守はどこか根底で繋がっていること。
自身の行動も間違っていたとは思わないが、守の行動も間違っていないこと。
そして、守の為にあるプレゼントを遺したらしい。

そのプレゼントとは吉武にかけた催眠。
とはいえ、今度は吉武がすべての真相を告白する類のものらしい。
要は自首を促す催眠である。
その催眠の発動に必要な動作とキーワードもそこには記されていた。

原沢の最後のメッセージにはこれを使おうが使うまいが君の自由だと書かれていた。
守はある決意を固める。

吉武を呼び出す守。
喜びやって来た吉武に別れを切り出した守は握手を求める。
それに応じた吉武に守はキーワードを囁く……。

催眠状態の吉武は警察へふらふらと向かう。
それを見送る守。
やがて、事件が表面化すれば守の父の遺体も発見されるのだろう―――エンド。

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