2011年02月21日

「踊る大捜査線 THE MOVIE 3 ヤツらを解放せよ!」(2010年、日本)

「踊る大捜査線 THE MOVIE 3 ヤツらを解放せよ!」(2010年、日本)ネタバレ批評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

踊る大捜査線 THE MOVIE 3-1


湾岸署を襲った最悪の猟奇的連続殺人事件から7年。テロリスト対策のため、高度なセキュリティシステムが導入された新湾岸署へ引越すことになった湾岸署では、強行犯係係長に昇進した青島刑事が引越しを一任され、大張り切りで引越し作業に取り組んでいた。ところが、新湾岸署の開署式まで後3日になって、湾岸署管内で次々と事件が発生する。
(アマゾンドットコムさんより)


<ネタバレあらすじ>

係長となった青島。
ついに彼にも部下が出来た。
念願の刑事となった篠原や同じく刑事になった緒方、コンピュータおたくで今時の無気力な若者・栗山、研修生・王、和久さんの甥・和久進次郎である。
個性的な面々を抱えた青島の気苦労は絶えない。

そんな青島は旧湾岸署から新湾岸署への引越しの為に引越し本部長に任命され張り切っていた。
ちなみに新湾岸書には神田に代わる新署長が来るらしい。

矢先、銀行のシステムをクラックした不法侵入事件やバスジャック事件が発生。
どちらも5人組の犯行だったが、金銭的な被害らしい被害はない。
首を傾げる青島やすみれだが、引越しのどさくさに紛れ青島、すみれ、王の拳銃が盗まれてしまう。

一方で青島が健康診断の結果、余命幾許も無いと診断される。
この結果に青島は強いショックを受ける。
意気消沈する青島だったが、すみれや今は亡き和久の言葉を受けて奮起。
まさに命がけの捜査を開始する。

やがて、王の拳銃を使用した殺人事件が発生。
被害者は湾岸署の引越しに携わった1人だった。
捜査本部が置かれる中、さらにすみれの拳銃を使用した第2の犯行も発生。
今度の被害者は自宅に爆弾を製造していた。

謎が深まる中、「ノライヌ」を名乗る犯人からコンタクトが。
「ノライヌ」によれば「新湾岸署を襲撃する」と言う。
捜査本部の鳥飼はこの挑発に対応すべく、セキュリティを最高ランクにまで上げるよう指示するがこれはすべて犯人の罠だった。
マニュアルが細工されていたのだ。
セキュリティにセキュリティをかけることになり、新湾岸署は閉鎖状態に。
内部と外部が遮断され陸の孤島状態になってしまう……。
しかも、「ノライヌ」は0時を期限として署内にソマンガスを流し込むと言う。

「ノライヌ」の要求は、これまでに青島が逮捕して来た犯人9人の即時釈放。
この事態に官房審議官となった室井に判断が委ねられた。
こうして、室井は超法規的措置を取るかどうかギリギリまで悩む事に。

一方、鳥飼と青島は「ノライヌ」の正体が圭一だと突き止めていた。
圭一はソーシャルワーカーとして日向真奈美の担当をしていた。
しかも、書類を偽造して真奈美を無断外泊させていたことも判明。
犯人9人の中には真奈美ももちろん含まれている。
狙いは日向真奈美か?
そこに気付いた直後、鳥飼が圭一の残したトラップに触れ大怪我を負う。

盗まれた銃で殺害された被害者2人に圭一も含めた5人が犯行グループだったと判明。
彼等は日向真奈美の信奉者だった。
殺害された二人は用無しとみなされ殺害されたらしい。

超法規的措置に踏み込む事に抵抗を示す室井。
そこへ怪我を押し鳥飼が現われる。
鳥飼は釈放した上で犯人を射殺することを提案。
室井は反対するが、鳥飼は上層部の支持を取り付け決定してしまう。
こうして、釈放は決定事項に。
犯人の要求した9名のうち5名は既に刑期を終え出所。
残った4名も、鏡は贖罪を全うするとして拒否、野口は精神の均衡を崩しており意思確認が出来なかった為保留。
結果、真奈美と噛み付き魔・増田の2名が釈放対象に選ばれることに。
増田は射殺される運命も知らず自身の釈放を暢気に喜ぶが……。

こうして釈放準備が進む中、室井は一縷の望みを青島に託し真奈美説得にあたらせる。
ここで神田が登場。
青島の健康診断結果がミスであったと告げるのだった。

改めて気を引き締める青島に、真奈美はすべての犯行が自身の計画であることを認め、旧湾岸署へ向かうよう指示する。

その頃、遮断された新湾岸署では青島班で独り取り残された和久がソマンガス発生装置と格闘していた。
和久の努力は報われるのか?
同時に鳥飼は名うてのハッカーを呼び、新湾岸署のセキュリティ解放を求める。

一方、圭一ら真奈美の信奉者はネットカフェにて潜伏中。
真奈美自身からの連絡やテレビの報道を通じて状況を観察していた。
しかし、圭一が席を外した隙に仲間が掲示板に書き込みを行い所在を知られてしまう。

同じ頃、真奈美の信奉者を炙り出すべくあちこちで書き込みを続けていた栗山。
その甲斐あって圭一たちの所在を把握した彼は篠原、緒方、王と共に現場に急行。
王の活躍もあり、圭一たちを取り押さえることに成功する。

搬送中の増田はといえば、渋滞に巻き込まれ0時到着が不可能と判明。
釈放は取り止めとなり、知らずに命拾いしていた。

その頃、新湾岸署の和久はソマンガス解除に失敗。
署内にガスを溢れ出させてしまう。
ところが、ガスは無害。
犯人グループのブラフだったのだ。
さらに、電源を落とせばセキュリティは無効化するという至極もっともなハッカーの意見に従った結果、新湾岸署は解放。
すみれたちも無事救い出されるのだった。

真奈美の真の目的は旧湾岸署にあった。
新湾岸署の騒動はそちらへと目を引き付ける囮だったのだ。

旧湾岸書には爆弾が仕掛けられていた。
真奈美は派手な自殺を行うことで伝説となり、自身の思想を世界に拡散させようとしていた。
だが、青島から生きる誇りについて諭された真奈美はギリギリで自殺を取り止め再逮捕されるのだった。

事件は解決。
新湾岸署への移転を終えたその日、青島は鳥飼に「凶悪犯は更生しない、撲滅すべき」と告げられる。
鳥飼には深い闇があったのだ……。

室井と再会する青島。
「仕事は楽しいですか?」と問う青島に対し、
「へっちゃまげな(意訳:余計なお世話だ、こっちのことより自分のことを考えろ)」
と笑って返す室井だった。

その頃、移転式典の壇上には真下の姿があった。
噂の新署長は彼だったのである。

式典に背を向け、ひとり外へと出かけた青島。
生きていることへの感謝と幸せを噛み締め、充実感に浸るのだった―――エンド。

<感想>

結論から述べると、本作は「青島イズムを受け継ぐであろう青島チルドレン」VS「真奈美チルドレン」。
これ以上でも以下でもないのかなぁと……ちょっとモヤッとしますね。
後述しますが、シリーズを繋ぐ肝心な関係性(青島、室井、すみれなど)にも結論(あるいは進展)が出ていないのがモヤモヤする理由かも。

それ以外には、これまでのシリーズ同様、他のシリーズとの意外なリンクや関連性を捜すのが楽しみな映画かな……との印象です。
例えば、今回で3度目の登場となる圭一君の存在(圭一君はテレビシリーズ及び歳末特別警戒スペシャルに出演していた)とか。
ちなみに、圭一君は「あんまん」で分かりました。
他には室井の方言「へっちゃまげな」などかな。
ちなみに「へっちゃまげな」の意味は意訳すると「余計なお世話だ、こっちのことより自分のことを考えろ」になるそうな。

他には、こんな点が気になりました。

まず、シナリオが継ぎ接ぎな感じです。いろいろ縛りがあったのかもしれません。

次に、ある程度室井が出世してしまうとなかなか話に絡ませにくいのかメインからは外れた感じ。
やはり、室井が出世し過ぎると青島との約束を実現しなければならなくなり(これで実現できなければそもそも物語が成り立たなくなる)、そうなると最終回だからでしょうか?
結果、室井の代わりに鳥飼が投入されたのかなと思います。
ただし、鳥飼はああいった闇を抱えたキャラにして青島と絡ませるよりは、青島の次世代組に絡ませて青島&室井の関係を継ぐ者にした方が良かったかもしれません。
ただ、そうなると青島たちが和久さんの焼き直しに終わってしまうのですが……。

それと、青島とすみれの関係は今回も進展なしです。
これが時系列固定のドラマならいいけど、劇中でもきっちり時計を進めているのでなんだかなぁな感じ……両想いなんだろうに、ねぇ。
もっとも、青島とすみれの関係に結論が出たとき=最終回なのかもしれません。

以上のように「踊る大捜査線3」には、物語を進展させられないジレンマが表出化していたように思えます。
だからこそ打開策が次世代投入による若返りなのでしょうが、それだと「踊る大捜査線」の意味が無くなってしまい新たなジレンマが浮上してしまう……。
こればっかりは長く続く大型コンテンツの宿命でしょうか……。

「踊る大捜査線」については次の4が頑張りどころのような気がしますね。

いろいろ不満もありますが、それも「踊る大捜査線」という広く知られた大型コンテンツだからこそ。
期待値が高くなったので見る目も辛くなったようです。
もちろん、エンタメとしては充分楽しめました。
しかも、管理人を含む踊るシリーズファンには絶対オススメです。
必見!!

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