2011年02月26日

「連続殺人鬼カエル男」(中山七里著、宝島社刊)

「連続殺人鬼カエル男」(中山七里著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

『さよならドビュッシー』の著者が描く戦慄のサイコ・サスペンス!

無差別殺人、狂的妄想、暴力衝動。
重層する悪意はメビウスの輪、すべては解剖台に戻っていく。
カエルの解剖台に――。     ……………作家 島田荘司

『このミス』大賞史上初!最終候補にダブルエントリーされ、「こっちを読みたい!」という声が続出した話題作。『このミス』ファン待望の作品が、満を持して登場!
マンションの13階からフックでぶら下げられた女性の全裸死体。傍らには子供が書いたような稚拙な犯行声明文。これが近隣住民を恐怖と混乱の渦に陥れる殺人鬼「カエル男」による最初の凶行だった。警察の捜査が進展しないなか、第二、第三と殺人事件が発生し、街中はパニックに……。無秩序に猟奇的な殺人を続けるカエル男の正体とは?どんでん返しにつぐどんでん返し。最後の一行まで目が離せない。

目次

一 吊るす
二 潰す
三 解剖する
四 焼く
五 告げる
解説 茶木則雄
(宝島社公式HPより)


<感想>

これは傑作です。
何か目新しいトリックを盛り込んでいるワケでも無く、基本は既存の合わせ技なのですが、その基本の使い方が上手い。
そして、全体的な完成度が高い。
しかも、文章に訴求力がある。
正直、第8回「このミス」大賞を受賞した同作者の「さよならドビュッシー」よりも琴線に触れました。
あちらもなかなかのものでしたが、こちらの方を個人的には評価します。
こっちなら本格ミステリ大賞も狙えますよ。
それだけ凄かった!!

序盤から中盤にかけてパニックサスペンスものっぽい雰囲気で展開し、読者をドギマギさせつつ、中盤から終盤にかけて本格サスペンステイストに。

管理人はそこに殊能将之先生の「ハサミ男」(過去記事に書評あり)的な雰囲気を見出し、「犯人はコイツだろう!!」と得意げに喜んでいたワケですが、最後の最後で大どんでん返しが待っており度肝を抜かれました。
これこそ、サプライズです!!
久しぶりに「これぞ直球のミステリ!!」を読んだ気になりました。

読後感はそんなに良くありませんが、それだけ物語世界に没入できるということだと思います。
さらに、ラストでのある人物のモノローグがその後の惨劇を予感させ読者を戦慄させる点もポイント高し。
海外大御所のあの作品を上手く作品の血肉に変えた点も評価のポイントです。

2011年刊行作品の中では必読の一冊だと思います。
かな〜〜〜り、オススメです!!

◆「中山七里先生」関連過去記事
「さよならドビュッシー」(中山七里著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

「おやすみラフマニノフ」(中山七里著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

・上記、感想中で触れた「ハサミ男」ネタバレ書評(レビュー)はこちら。
「ハサミ男」(殊能将之著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)

<ネタバレあらすじ>

登場人物一覧:
古手川:主人公、刑事
渡瀬:古手川の上司
御前崎:精神科の教授
有働さゆり:3番目の被害者の母親、保護司
有働真人:3番目の被害者、解剖されバラバラ死体で発見される
衛藤:4番目の被害者、人権派の弁護士
当真:元幼女殺害犯、更生中
ナツオ:父親の虐待を受けている子供、友達を殺害してしまう

マンションの13階からフックで吊り上げられた女性の全裸死体が発見された。
傍らには子供が書いたような稚拙な犯行声明文が。

フックで女性を13階に吊り上げるとの荒業から男性の犯行と思われ、マスコミは犯人を「カエル男」と名付ける。
これが近隣住民を恐怖と混乱の渦に陥れる殺人鬼「カエル男」による最初の凶行だった。

これといった手掛かりもなく一向に捜査が進展しない中、第2の潰された被害者、第3の解剖された被害者と、連続殺人事件へ発展する。

精神科の教授である御前崎は連日TVで「カエル男」の正体について意見を述べる。

刑事の古手川は上司の切れ者・渡瀬と共に捜査を続けるうちに、これらの犯行が被害者の名字をアイウエオ50音順に並べたものだと気付く。

ついに第4の被害者が発生。
焼かれた被害者は「エ」で始まる衛藤という名の人権派弁護士だった。
彼は以前に御前崎の家族が被害に遭った殺人犯を39条を用い弁護していた。
皮肉なことに弁護した事件と似たケースにおいて自身が被害者になってしまったのだ。

捜査線上に当真勝雄という更生中の元幼女殺害犯が浮上。
彼の保護司は3番目の被害者となった「ウ」で始まる有働真人の母・さゆりだった。
真面目に更生に励んでいるとされた当真に、古手川は彼の犯行を信じられない。

事此処に至り、街中はパニックに陥り自警団を結成。
しかも、一部の市民は犯人狩りを始める。
容疑者と思われる人物を捕まえ私的制裁を加え出したのだ。

それは犯人を捕まえられない警察も例外ではなく、容疑者とされる人物リストを渡すよう要求する市民により署が襲撃されるまでに発展する。
古手川たちは必死に防戦するものの、無抵抗のまま次々と倒れて行く。
一般市民を守ろうとした婦警が倒れた姿を目にした古手川はついに反撃を決意。
率先して暴徒と化した市民と闘うが、多勢に無勢。
ここまでか……と覚悟を決めたそのとき。
渡瀬のアイデアで火事騒ぎを演出。
署内のスプリンクラーから発する水を浴びた暴徒は我先に逃げ出すのだった。

しかし、肝心の事件はまだ終わっていない。
カエル男が逮捕されない限り、暴徒は尽きないのだ。
ついに当真のもとへ迫る暴徒。
駆け付けた古手川は暴徒を追い払うが、当真宅でノートを見つけ驚愕する。
そこには当真がカエル男として行った犯行や犯人しか知りえない事実が赤裸々に綴られていた。
ノートに気付いた古手川を目にした当真は豹変するや、古手川に襲い掛かる。
襲われた古手川は銃で反撃。
なんとか当真を取り押さえることに成功するも、重傷を負う。

後日、当真宅から凶器も発見された。
こうして当真がカエル男だと思われたが……。

昔、ナツオという子供がいた。
ナツオは父親から虐待を受けて育ち、親友だけが心の支えだった。
ある日、虐待の最中で父親が親友に興味を示し出す。
ナツオは父親を奪われることを怖れ、親友を殺害してしまうことに。
医療少年院に送られたナツオ。
そこへとある精神科の医師がやって来た。
彼はナツオに更生の道を指し示し、まずは名前を変えるように教えるのだった。

現在。
まだ傷の癒えない古手川だったが、事件解決の報告と様子見を兼ね有働宅を訪れる。
大会で賞をとったピアニストでもある有働さゆりにピアノをせがむ古手川。
その最中に、さゆりが指に怪我をしていることに気付く。
さゆりにカエル男との合致点を見出してしまう古手川。
当真では辻褄の合わなかった事さえ、さゆりならば合点がいったのだ。
例えば、真人の死体も当真では時間的に運び出せない。
だが、実の母親であるさゆりにならば時間はたっぷりとあった。
しかし、何故、実の息子を殺害しなければならないのか?

自身がカエル男であると見抜かれたさゆりは隠し持っていた果物ナイフで古手川に切りつける。
古手川は怪我の為に上手く動けず、更に酷い傷を負ってしまう。
何度も刺される古手川。
視界が霞むにも関わらず古手川はさゆりと対決する。

さゆりは自身の犯行動機について得々と語る。
それは家のローン返済の為だった。
真人の生命保険金に自身が受け取る被害者への見舞金を加えて返済に充てるつもりだったのだ。
だが、真人だけではすぐに動機がバレてしまう。
そこで、実際は自身で手を下しつつ、虚偽の犯人である当真の連続殺人を装うとしたのだ。

あまりと言えばあまりの犯行に呆然とする古手川。
しかし、朦朧とした頭の中でさゆりが最初の被害者を13階からフックで吊るせた理由を導き出す。
それは、13階では無くもうひとつ上の14階から吊り下げたというものだった。
そう、13階で吊り上げたのではない、14階から吊り下ろしたのだ。
この発想の転換で当真抜きの単独犯でも犯行可能になることを古手川は指摘。

さゆりは真人の遺体を解剖した際のみ当真を利用したが、それ以外は単独犯行であることを認める。
すべて、判断能力の無い当真を洗脳したさゆりの犯行だったのである。
そして、さゆりこそ名を変えたナツオだった。

真相を明かした理由が自身を生かして帰す気が無いからだと知っている古手川はさゆりを逃がさないように命を賭けた勝負に出る。
さゆりを半狂乱にさせる古手川。
大声を出しさゆりを懐へと導くとナイフによる一撃をわざと受ける。
その隙に手錠を自身とさゆりへかけたのだ。
手錠をかけられたさゆりは身動きできない。
念の為、さらにさゆりの足を銃で撃つ古手川。
その間も、さゆりのナイフは古手川の腹を穿つ。
しかし、失神寸前の古手川からは既に痛みは失われていた。
そんな古手川の耳に微かにパトカーのサイレンが鳴り響いた……。

渡瀬は御前崎の研究室を訪ねていた。
御前崎がナツオことさゆりの担当医師だったことを突き止め、責任を追及する渡瀬。
御前崎は、自身のいたらなさを口にしつつ、あくまで笑顔を崩さない。
平然とした御前崎の態度に苛立つ人物が渡瀬の隣に座っていた。
古手川である。

さゆりに刺され重篤状態にまで陥った古手川だったが、ギリギリで驚異の生命力を見せ生還していた。
何より、古手川の様子を心配していた渡瀬の配慮が彼の命を救ったのだ。

古手川は御前崎の責任を問うが、暖簾に腕押し程度でしかない。
御前崎は口では謝罪しつつ、余裕の態度を崩さない。

そんな御前崎に渡瀬はある爆弾をぶつける。
それは、今回のカエル男事件―――有働さゆりや当真の犯行、そのすべてが御前崎の計画だったのではというものだった。

一笑に伏す御前崎に推測を続ける渡瀬。
御前崎の真の狙いは衛藤ひとり。
御前崎は家族を奪った犯人やそれを庇った弁護士、メディアが許せなかった。
そこで、偶然街で衛藤を見かけたことで復讐心が燃え上がり、日頃から相談を受けていた昔の患者・さゆりを利用することを思いついたのだ。
そのさゆりを介し当真を利用することも計画に組み入れた。
さゆりか当真のどちらが犯人となっても御前崎には痛みはない。

そこで、さゆりにこの計画が自身の発案であると擦り込み、さゆりを介して当真を誘導しつつ、事件を起こしたのだった。

語り終えた渡瀬の推測を今度は認める御前崎。
だが、御前崎を捕まえるには証拠が無い。
渡瀬たちが自身を捕らえられないと知っている御前崎は、さゆりをコントロールした方法が幼児期と同じ性的虐待であったことを明かしひとり大笑いする。
怒りに燃えた古手川だったが、殴ったところで古手川が罰せられるだけのこととする渡瀬に止められその場を去る。

去り際、渡瀬は御前崎に問う。
「弁護士だけに復讐しても意味が無い。犯人自身やそれを擁護した他の人々にも復讐するつもりですか?」と。
「もちろんだ。この方法ならば絶対に捕まらないからね」と自信を持って答える御前崎。

部屋の外、渡瀬は古手川に告げる。
「神ならざる人の身で許されることではない。因果応報の意味を知ることになるだろう」と。

その頃、当真は弁護士と面会していた。
人権派を名乗るその弁護士の話を聞きながら当真は思う。

(弁護士によればここからすぐに出ることが出来るらしい。
その際はカエル男の名をもう一度、自身のもとに取り戻さなければならない。
その為には次のターゲットを狙うことだ)

そして、そのターゲットこそは……

(次のターゲット。
たしか、「オ」の御前崎だったな……)―――エンド。

「連続殺人鬼 カエル男 (宝島社文庫)」です!!
連続殺人鬼 カエル男 (宝島社文庫)



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