ネタバレあります、注意!!
<あらすじ>
夜見山北中学に転校してきた榊原恒一は、クラスの奇妙な雰囲気に違和感を覚える。孤高の美少女ミサキ・メイに惹かれ、接触を試みるが、謎は深まるばかり。そんな中、クラス委員長の桜木ゆかりが凄惨な死を遂げた!
(角川書店公式HPより)
<感想>
「このミス2010」3位、「本格ミステリ2010」3位、「ミステリが読みたい2011」1位を獲得した作品です。
・2010年ミステリ書籍ランキングまとめ!!
・【速報】「ミステリが読みたい2011年版」発表!!
コミックス、アニメ、映画とメディアミックス化も予定されています。
・綾辻行人さん原作「Another」が漫画化!!
・メディアミックス続く……綾辻行人先生原作「Another」アニメ化!!
・さらにメディアミックス続く……綾辻行人先生「Another」ついに映画化!!
綾辻行人先生と言えば「館シリーズ」が有名ですが、管理人的に綾辻先生の作品でトップを争うのは「十角館の殺人(館シリーズ1作目)」と「霧越邸殺人事件」の2つだと思っています。
中でも「霧越邸」と言えば、幻想小説と本格ミステリの折中に成功した傑作です。
つまり、綾辻先生の本領はそこにあると思うのです。
そう、幻想小説と本格小説の融合。
もともと「館シリーズ」自体が中村青司の手による幻想的な建築物群を舞台(ツール)にした本格ミステリである以上、常に綾辻先生の作品はこの両者を内包していました。
その意味で「館シリーズ」は、より本格ミステリに特化しているのでしょう。
その点、この「Another」は幾分幻想小説よりの位置づけになると思います。
とはいえ、本格ミステリのテイストも確実に息づいており「霧越邸」とは別の方向で両者の融合に成功している様に思われます。
作中で取り上げられたある事情による証拠の真偽が判定できない―――いわゆる「後期クイーン問題」についても、鳴の目により劇中でのルール付けを行うことで回避されています。
さらに、例のメイントリックは綾辻先生の十八番と言えるあのトリック。
これに、幻想的な舞台設定が加わる……これで、面白くならない筈がありません。
どうやら、綾辻行人先生の作品で人にオススメする作品がまたひとつ増えたようです。
それが、この「Another」!!
おそらく本格テイストが強くなるであろう次の「奇面館の殺人」にも充分期待できそうです。
ちなみにふと思ったんですが、恒一の叔母・玲子は「GS美神」の主人公から来ているのかな?
フルネームの読みが一緒なんだけど、偶然?
◆「綾辻行人先生」関連過去記事
・十角館の殺人(綾辻行人著、講談社刊)ネタバレ批評(レビュー)
・水車館の殺人(綾辻行人著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・綾辻行人先生次回作「奇面館の殺人」執筆好調!?
<ネタバレあらすじ>
夜見山北中学に転校してきた榊原恒一。
今は亡き母方の祖父母宅で生活することになった恒一は叔母の玲子に支えられながら学校に通うことに。
学校には、副担任の三神や新しい級友たちが居た。
中でも孤高の美少女ミサキ・メイに強く惹かれる恒一。
だが、恒一が通う夜見山北中学3年3組にはあるいわくがあった。
それが「もうひとり」の噂。
これは、死者が甦り、クラスに参加するとき、そのクラスの関係者2親等までに無作為に死亡者が出るとのもの。
甦った死者が誰かは記憶が改竄されてしまう為に分からないらしい。
そんな中、クラス委員長の桜木ゆかりが凄惨な死を遂げてしまう。
噂は始まってしまったのか?
しかし、生徒の机は生徒数分に足りており誰かが死者であるとは思えない。
混乱する中、次々と被害者が……。
15年前にも同じことがあり、その際には合宿に行ったことで終息していたことから三神と共に合宿を始める級友たち。
恒一は15年前のOBが残したテープを聞き衝撃の真実を知る。
それは、甦った死者を殺害することで事態が終息するとの恐ろしい事実だった。
誰が甦った死者が判別できない限り、誤って生者を殺害してしまう可能性もある。
躊躇する恒一にミサキ・メイ=見崎鳴は語る。
「わたしは見分けることが出来る」と。
鳴は「死を見分ける目」を持っていたのだ。
彼女によれば死者は分かっているらしいがどうしても誰か明かしてくれない。
そうこうするうちに合宿先で何者かによる連続殺人事件が発生。
しかも、放火騒ぎにまで発展する。
連続殺人については合宿先の管理人の妻が犯人だと判明。
後に分かることだが管理人夫婦も3年3組に在籍する生徒の2親等以内の親戚で関係者だった。
このままでは状況は悪化するばかりだ。
早く甦った死者を見つけなければ……気ばかり焦る恒一はその場に鳴が居ないことに気付き、彼女が甦った死者と決着をつけようとしていると知る。
慌てて鳴を捜す恒一。
彼の前に現れたのは、つるはしを構えた鳴と焼け落ちた柱に挟まれた人影だった。
人影こそが甦った死者だと考えた恒一は正体を確認し愕然とする。
その正体は副担任の三神だった。
つまり、恒一の叔母・三神玲子その人だったのである。
亡き母と重ね合わせて玲子を見ていた恒一に苦渋の決断の時が迫る。
鳴が事前に正体を知りながら伏せていた理由を知った恒一は、これ以上の惨劇の拡大を防ぐ為に鳴から借りたつるはしを振り下ろす……。
数日後、多大な被害を出した事件も終わりを告げていた。
級友誰もが玲子の事を覚えていない状態に玲子こそが甦った死者であるとの認識をはっきりさせた恒一。
だが、既に死亡していたとはいえ叔母をその手で殺害した罪の意識が拭い去られることはない。
いずれは級友たちのように忘れるとしても……。
そんな恒一を、鳴は彼女なりに精一杯の優しさで支えるのだった―――エンド。
2012年1月追記:
コミック版「Another」が4巻にて完結を迎えました。
基本ストーリーは原作と同じです。
ネタバレあらすじでもお分かりの1人2役の叙述トリックについては、コミック版は絵柄の雰囲気を変える人物の描き分けと眼鏡の有無にて見事に成立させていました。
内容的には、恒一がツルハシを振り上げるあのシーンは余計に胸に来ました。
そして、感動のラスト!!良かった〜〜〜。
ちなみに「ヤングエース 2012年2月号」から「Another0」が連載開始中。
こちらは玲子の学生時代が描かれています。
惨劇が既に始まり、玲子の友人・秋山さんが犠牲となっています。
この後、どうなるのか?要注目です!!
追記終わり
叔母・玲子とフルネームの読みが同じ主人公が活躍する「GS美神極楽大作戦!! 1 新装版 (少年サンデーコミックスワイド版)」です!!
GS美神極楽大作戦!! 1 新装版 (少年サンデーコミックスワイド版)
GS美神極楽大作戦!! 1 新装版 (少年サンデーコミックスワイド版)
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