日本で100番目に早い(たぶん)、「相棒season9」第17話「陣川警部補の活躍」(3月2日放送)ネタバレ批評(レビュー)。
<ネタバレあらすじ>
深夜、帰宅途中の捜査1課経理係・陣川(原田龍二)はコンビニへ立ち寄り、そこで挙動不審な男を見かける。
男は陣川の目の前で万引きすると逃走。
男を追いかけた陣川は遂に念願の現行犯逮捕を成し遂げる。
男を取り調べる陣川。
「取り返せない失敗なんてないんだ!!」
刑事ドラマの刑事よろしく情で説得する陣川に感激した男は余罪について語り出すのだった。
男の名前は門馬(中村靖日)。
1年前、資産家で杉並区に住む北薗興産社長・北薗(菅野菜保之)邸から500万円などを盗んだと言う。
当時、北薗の運転手をしていた門馬は、北薗邸の離れで生活しており、事件当夜、北薗や妻・摩耶子(霧島れいか)が寝室に引き取ったのを確認すると、書斎の金庫から現金、宝石類、オルゴールを盗み、窓ガラスを割って外から泥棒が入ったように偽装したらしい。
盗難事件後、北薗はショックから脳梗塞で倒れて今も療養を強いられていた。
門馬によれば、盗んだ貴金属等は見知らぬ男に売ったと言う。
さらに、北薗に謝罪したいと要望する門馬だが、当然、容れられるわけもなく……。
日頃の努力が実を結んだかのような思わぬ手柄に意気揚々とする陣川。
一方、陣川が奇跡を起こしたと角田課長から伝え聞き、窃盗事件を改めて調べた右京(水谷豊)と神戸(及川光博)は、なぜ門馬が自宅から離れている上に1年前の事件現場に近いコンビニで万引きしたのか疑問を抱く。
こうして門馬の謝罪の意志を伝えようとする陣川と共に北薗邸を訪ねることに。
金庫に貴金属だけでなくオルゴールが仕舞われていたことに注目した右京。
窃盗事件で脳梗塞に倒れ今も苦しむ夫を支える摩耶子は、奪われた思い出の品であるオルゴールが帰ってくれば夫の病状も快復するのでは……と胸の内を吐露。
その言葉に陣川はオルゴールを取り戻すと宣言してしまう。
門馬の部屋を調べる一行。
そこから骨董品店のリストを発見した陣川は、売買先を捜そうとしていたと考える神戸に対し、門馬が取り戻そうとしていたに違いないと断言するが……。
門馬に直接聴取する右京たち。
その結果、門馬が盗品を詐欺容疑で逮捕歴のある矢橋(國本鐘建)に売ったことが判明。
矢橋は元不動産経営者。
経営に失敗し不動産詐欺まで行い、組織犯罪対策課にも目をつけられていた。
右京は陣川と共に門馬を捕まえたコンビニに向かう。
コンビニの店長と親しげに話す陣川の姿に戸惑う神戸は「陣川さんにもシンパが居たのか」と洩らす。
一方の右京は、さりげなく陣川の生活パターンを確認。
判で押したように毎日同じ時間にこのコンビニに通っていたことが分かる。
しかも、門馬は陣川から逃げる際、わざわざ駅では無く行き止まりである住宅街に逃げ込んでいた。
門馬の万引き自体に作為を感じる右京。
罪とは云え微罪である万引きで捕まった門馬が何故、より罪の重い窃盗について告白したのか。
しかし、門馬の改心を信じる陣川にその理屈は通じない。
そんな陣川の純粋さを尊重しつつ今回の事件には裏があると指摘する右京だが、陣川は信念を曲げず、神戸をも巻き込み行動開始。
手始めに率直に門馬へと疑問をぶつける……が。
当然、門馬に一笑に付されてしまう。
さらに、矢橋が鬼神会と繋がっているらしいと新情報を明かす門馬。
その頃、北薗興産の小澤専務に接触する右京。
専務が北薗を背任横領で訴えようとしていることを知る。
これについては北薗の妻・摩耶子も了承していると言う。
最終的に北薗の資産はすべて差し押さえ対象となるらしいが……。
陣川は門馬の情報により、鬼神会を張り込むことに。
陣川に付き合わされる神戸は幾分呆れ気味。
「そんな上手く行くわけ……」と愚痴るが、そこへ目的の矢橋がやって来てしまう。
「嘘!!」と驚く神戸に、したり顔の陣川。
右京は米沢の情報により摩耶子の過去を洗うことに決める。
銀座のキャバレーで働いていた摩耶子。
同僚の客を寝取っていたなど、かなり評判は悪い。
しかも、十年前に矢橋が摩耶子と交際していたことを突き止める。
一方、矢橋を尾行し住居を発見した陣川&神戸。
右京に報告を入れる神戸の目を盗み陣川は勝手に矢橋に接触、矢橋を逃がしてしまう。
矢橋は摩耶子と密会。
オルゴールは矢橋が持っていた。
摩耶子は矢橋からオルゴールを回収しようとするが、摩耶子の態度に金の匂いを嗅ぎつけた矢橋はナイフを突き付け金を脅し取ろうとする。
そこへ摩耶子を尾行していた右京たちが登場。
陣川や神戸の活躍で矢橋は銃刀法違反で逮捕される。
矢橋のオルゴールは右京が預かることに。
翌日、一年前の通話記録から北薗摩耶子と矢橋が頻繁に連絡を取り合っていたことが判明。
さらに、矢橋宅からとある写真を発見。
それは事件の全貌を指し示すものだった。
その頃、陣川は証拠品のオルゴールを弄繰り回していた。
修理して摩耶子に返却しようとしているらしい。
手許を誤った陣川はオルゴールの中から数字が羅列されたメモを発見、右京はメモに大いに興味を持つ。
門馬の実況見分と称し、北薗邸に関係者を集めた右京。
「真相がすべて分かった」と断言する。
十年前、矢橋と交際していた摩耶子だが、矢橋が経営に失敗したのを機に矢橋を捨てた。
一年前、矢橋はある摩耶子の弱味を撮影した写真を使い、金品を要求。
摩耶子は仕方なく金庫から出した金品を矢橋に渡したが、金庫の中身が無くなれば当然騒ぎになる。
そこで、門馬を使い盗難事件に見せかけたのだ。
その後、ある事情でオルゴールが必要となった摩耶子は門馬と図って一芝居を打つことに。
陣川に目をつけた門馬はわざと万引きで捕まると、オルゴールを持つ矢橋の行方を追わせたのだ。
すべては、矢橋からオルゴールを取り戻す為だった。
門馬は「旦那さまを思う奥さま(摩耶子)の為に必要だったんです」と涙ながらに訴える。
「いい加減にしろ、まだ嘘を吐く気か!!」そんな門馬に憤りをぶつける陣川。
なんと、矢橋が摩耶子への脅迫材料に使用したのは門馬との不倫写真だった。
門馬と摩耶子は男女の仲だったのである。
陣川の態度にこれ以上騙すことは出来ないと見た門馬は豹変。
「それでも、俺の盗難の罪を否定は出来ないでしょう?
矢橋が自ら自身の罪を明かすワケがないんだから」と本性を露わにする。
彼の本性は冷徹なリアリストだった。
陣川を挑発し、自身の目的―――オルゴールの入手―――を遂行しようとする門馬。
右京はそんな門馬の意に沿うようにオルゴールを手渡す。
その場を離れる右京たち。
右京たちが姿を消した途端、オルゴールに飛びつく摩耶子と門馬。
中を覗き見た摩耶子は肝心のメモ用紙が無いことに気付き、激しく動揺。
「口座番号が無ければ意味が無い」と口走り、傍らの書類に目を落とす。
そこへ再び戻って来る右京たち。
摩耶子の手から書類を奪い取る。
そこには「メンゲラーホフアンドカンパニー」の名が記されていた。
スイスのプライベートバンクの名称である。
北薗はここにプライベート口座を持っていたのだ。
一年前、オルゴールが金庫から紛失していることに気付いた北薗。
北薗は倒れる直前、オルゴールの中にスイスのプライベート口座の番号を隠していることを摩耶子に教えた。
だが、北薗が倒れたことで、口座の現金を動かせる人間が居なくなってしまった。
代理人になるにしても肝心の口座番号が分からない。
そこで摩耶子はとりあえず北薗の快復を待つつもりだったが、今になって北薗が横領で告発されることを知り差し押さえを受ける前に今回の計画を実行に移したのだ。
あくまで摩耶子がオルゴールの正当な所有者であり口座番号も摩耶子のものだと主張する門馬。
だが、オルゴールは事件の証拠品であり渡せないことや、仮に摩耶子が口座番号を手に入れたとしても口座から現金を動かした途端、検察等の捜査対象として押さえられることを右京から聞かされ絶叫する。
門馬は、あくまで一年前の盗難事件の犯人であることを陣川に繰り返し訴えるが、神戸により別の刑事に引き渡される。
俺が犯人なんだぁぁぁぁぁぁ……門馬の叫びが屋外へと消えて行く。
その夜、花の里にて。
最後まで摩耶子を庇う門馬の姿に何かを想う神戸。
摩耶子にオルゴールを取り戻そうとする門馬の気持ちだけは本物だったと口にする右京。
その横では、陣川が酒に酔い潰れてクダを巻いていた。
そんな陣川に絡まれる神戸は呆れながらもどこか憎めない様子で付き合うのだった―――17話了。
<感想>
シーズン9第17話。
脚本はシーズン8で4、10、15話、シーズン9では1、2、9、12、16話を担当した戸田山雅司さん。
シーズン4以降に参加し、映画版にも関与された「相棒」を代表する脚本家のひとり。
シナリオの基本傾向としては、突拍子もない大テーマがメインに据えられるものの、真相は割と小さいところに落ち着くことが多い。
結果として、大山鳴動して鼠一匹なことも割とある……。
ただし、これが嵌まった時の爆発力は凄く、また、話の破綻も少ない。
そんな戸田山雅司さん担当作品のネタバレ批評(レビュー)はこちら。
・相棒season8 4話「錯覚の殺人」ネタバレ批評(レビュー)
・相棒season8 10話「特命係、西へ!死体が握っていた数字と、消えた、幻の茶器の謎 東京〜京都・連続殺人と420年前の千利休の死の秘密が繋がる!?」(1月1日放送分)ネタバレ批評(レビュー)
・相棒season8 15話「狙われた刑事」(2月10日放送分)ネタバレ批評(レビュー)
・「相棒season9」第1話「顔のない男」(10月20日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・「相棒season9」第2話「顔のない男〜贖罪」(10月27日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・「相棒season9」第9話「予兆」(12月22日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・「相棒season9」第12話「招かれざる客」(1月19日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・「相棒season9」第16話「監察対象 杉下右京」(2月23日放送)ネタバレ批評(レビュー)
さて、今回はというと……。
season9、2回目の陣川回です。
今回も面白かったですね。
殺人も無く、肩の力を抜いて視聴できました。
来週はもの凄く力の入った回っぽいのでメリハリを効かすためにも今回は必要な回でした。
そして、今回はあくまで「陣川君ありき」の回。
陣川君というキャラクターが存在しなければ門馬の計画も初手から頓挫していた筈でその意味でも陣川君あってのストーリー。
陣川君は自らストーリーを作れる貴重なキャラクターですね。
しかし、それゆえに陣川君はずっと陣川君のままと言う逆説……。
視聴者としては今のままで居て欲しいと思いつつも成長譚も必要かなぁと思ったり複雑。
そんな陣川君の印象が強すぎて、門馬と摩耶子についてはあんまり印象に残らなかったのは今回の弱点かもしれない。
門馬たちは動機や行動にもちょっと納得いかないし、その点でも陣川君が光ってたなぁ。
陣川君にぼやきつつも付き合う神戸にも注目したい回でした。
いよいよ来週は最終回。
来週も脚本は戸田山さん、3話連続ですね。
それと輿水泰弘さんです。
劇場版のコンビである以上、劇場版に関連した内容になることは想像に難くありません。
おそらく、シーズン9の秘密……小野田官房長の去就に触れることでしょう。
ご存知の方も多いと思いますが、秘密の詳細については本記事下部にヒントがあるのでそちらを。
ひとつ言えるのは、シーズン9の1話は劇場版よりも時系列的に後であること。
そして、シーズン9以降に小野田が登場していないこと。
これに、劇場版CMの右京の叫び「官房長ぉぉぉぉぉぉ」を加えると……。
その意味でも最終回は必見です!!
さらに、豪華ゲストが続々登場する模様。
これまた、必見!!
肝心の劇場版。
現在、映画版「相棒−劇場版U−警視庁占拠!特命係の一番長い夜」がロングラン上映中です。
本来は2月4日までの公開だったんですね。
そんな劇場ノベルス版のネタバレはこちら。
・「相棒 ―劇場版2―」(大石直紀著、小学館刊)ネタバレ書評(レビュー)
ノベルス版は劇場版とは異なるラストとのこと。
CMや予告を見るに途中まではほぼ同じらしいが、ある一点で違う。
それが小野田のこと。
なんでも、劇場版では小野田の身に重大なことが起こるらしいのだ。
シーズン9に小野田が登場しないのも伏線らしいが……。
これについては「粋ダネ 相棒」で検索すると詳細が分かる。
(「粋ダネ」とはBS11にて放送の「柳家喬太郎の粋ダネ!」のこと。
番組中で、あるゲストが内容に関わるネタバレをしたらしい)
気になる方は、上記ノベルス版ネタバレ書評(レビュー)にもそれについて補足しているのでどうぞ。
劇場版に関連して2010年12月26日には「相棒シリーズ 鑑識・米沢守の事件簿」が放送されました。
・「相棒シリーズ 鑑識・米沢守の事件簿」ネタバレ批評(レビュー)
他にもオリジナル小説も発売中。
ただ、こちらはオススメしかねるかも……。
・「杉下右京の事件簿」(碇卯人著、朝日新聞出版刊)ネタバレ書評(レビュー)
関連書籍も多数登場。
興味のある方はチェック!!
・「相棒」関連書籍続々発売!!あなたはどれを読む!?
<キャスト>
●杉下右京(水谷豊)
警視庁特命係・係長。あまりにも切れ過ぎる頭脳と、何を考えているのか判別できない素行から変人扱いされ、窓際部署の特命係に追いやられた経緯が。しかし、その人事すら本人はまったく気にしてない様子。常に冷静で、どんな相手でも論破できるが、論客が元妻のたまきだと、高確率で敗北。動揺することもしばしば。
●神戸尊(及川光博)
警視庁特命係員。警察庁上層部からの密命の真実を知り、自ら特命係に残ることを志願。
(MSNエンタメさんより)
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