その先生が2003年より同じく小学館ビッグコミックにて連載していた「ダブル・フェイス」が遂に最終回を迎えました。
そこで完結を記念して最終話ネタバレ批評(レビュー)を行います。
これを機にご存知の方もご存知で無い方もこの作品に興味を持ち、書店にて手にとって下さればいいなぁ……と願いつつ、早速、開始!!
まずはこれまでのあらすじから。
月影ファイナンスに勤務する冴えない営業マン、春居筆美。
同僚たちにも軽く見られる彼だったが、弱きを助け、闇に蠢く悪を挫くDr.WHOOその人だった。
Dr.WHOOは得意のマジックを駆使して悪人を裁くのだ。
彼の正体を知る者は数少ない。
その1人が表向きは春居の上司である支店長・巣鴨。
実は春居の部下である。
さらに、春居の協力者・ロベール山田。
彼はバーのマスターを勤めながら春居を支えている。
そして、春居がDr.WHOOとして活躍する場を提供した黒淵機関のメンバーたち。
彼らと共に春居は今日も悪を撃つ。
一方で、そんな春居の正体に迫る人々もいる。
春居の職場の同僚のひとり・小泉じゅん。
騙され易い人柄の彼女だが、少しづつ春居に惹かれていくうちに、知らず知らず正体に近付いて行く。
さらにジャーナリスト・有坂。
彼は春居の過去を追い、春居が北大路冬彦であることを突き止めてしまう。
春居筆美は偽名だった。
実は、春居ことDr.WHOOには今は政界の大者となった柳原とその一派により横領という身に覚えのない罪に落とされ、家族と引き離された挙句、書類上死亡することで命を取り留めたとの過去があった。
事情を知らない妻・南丘静江や息子・夏彦は北大路亡き後に支援してくれた柳原に心酔。
特に静江は公私ともに柳原のパートナーとなり、その政治活動を支える大きな原動力となっていた。
ついに柳原と直接対決することになった春居。
それと知らぬ妻子を敵に回し苦悩しつつも暗闘を繰り広げる。
Dr.WHOOを怖れる柳原は月影ファイナンス襲撃を指示。
結果、月影ファイナンスは焼き討ちされ春居は居場所を失ってしまう。
だが、黒淵機関はこれをDr.WHOOと柳原の私闘とみなし、支援を拒否。
春居は孤独な戦いを余儀なくされる。
そんな春居に協力の手を差し伸べたのは、暗闘の過程で春居の正体を知った小泉じゅんと、じゅんに説得されたロベール山田だった。
一方、柳原はDr.WHOOのライバル・ハワード辰巳を雇い入れる。
そんな折、春居は柳原が当選するべく投票箱に細工したことを知り、イチかバチか投票箱の仕掛けを暴くことで柳原を追い詰めようとする。
そして、計画実行の日。
息子・夏彦の妨害を乗り越え、遂に仕掛けを暴くことに成功するのだった……。
では、最終話ネタバレあらすじです!!
<最終話ネタバレあらすじ>
Dr.WHOOの活躍により、投票箱の細工を暴露され追い込まれた宿敵・柳原。
Dr.WHOOはこの機を逃さず、ジャーナリスト・有坂に柳原の不正が記されたSDメモリを渡す。
すべての復讐を終えたDr.WHOOは春居筆美に戻り、崖から投身自殺を図る。
だが、そんな春居の前に小泉じゅんが現われ、彼を止めようとする。
じゅんを自身の業に巻き込む事を怖れる春居はじゅんを拒否、自殺を続行しようとするが……。
そんな春居の姿を見たじゅんはナイフで自身の首を刺してしまう。
じゅんの行動に取り乱す春居。
一方、柳原はSDメモリが公表されたことで自身を取り巻く環境の激変に対応できなくなっていた。
困り果てた柳原は、春居の元妻・南丘静江に泣きつく。
だが、北大路冬彦の死の真相を知った静江は柳原を軽蔑。
これまでの贖罪から、柳原を捨てないまでも真実を明らかにする道を選ぶ。
これまで行った不正が明らかになり柳原は罪に問われることに。
狼狽する柳原に対し静江は堂々と罪を認める。
ここに柳原の政治生命は絶たれた。
その頃、じゅんの行動に驚く春居は、じゅんのナイフで自身を刺すが痛みが無い。
そう、このナイフは殺傷能力の無いマジック用のナイフだった。
騙され易いじゅんに騙された春居は、「どこまでもついていく」と語るじゅんに説かれ生き永らえることに。
そして、春居の息子・夏彦はDr.WHOOこそが父・北大路冬彦その人であると確信。
父の生存を強く信じるように。
そんな夏彦のもとに、手紙が届く。
差出人はDr.WHOOのライバル・ハワード辰巳。
彼によれば近頃Dr.WHOOを名乗るマジシャンが台北に現れたらしい。
彼の傍らには1人のうら若き女性と2人の老人が付き添っていると言う。
その手紙を見て自身の祖父母(春居の両親)を連れ台北を訪れることを決める夏彦だった。
夏彦の想いの先―――そこには街の大通りにてチャイナドレスに身を包んだじゅんを空中浮遊させる春居と、横に控えるロベールたちの姿があった―――エンド。
<感想>
ビッグコミックスピリッツにて「電波の城」が好評連載中な細野先生の「ダブル・フェイス」も遂に完結。
連載開始は2003年からなので連載期間は8年に渡ります。
しかし、8年という長さを感じさせない面白さでした。
正義の味方が弱きを助け悪を挫く―――普遍的なテーマですが、本作では見事に機能していました。
しかも、正義の味方が正体不明の魔術師とくれば盛り上がらない筈がありません。
孤高を行く春居が最後に仲間に助けられる展開の妙味も良し。
ヒロイン・じゅんとのラブストーリーもハッピーエンドを迎えたので良し。
その他の味方や敵キャラクターも完全に自立していて良し。
ラストのヒトコマまで良し尽くしでした。
ひとつ気にかかるのは、じゅんが家族を置いて春居について行ってしまったこと。
じゅんの家族は心配しているんじゃないでしょうか。
野暮かもしれないけど、その辺りは大丈夫なのかな?
最終回は予想の範疇でしたが、このキャラクターならば当然の帰結であり、納得の出来。
むしろ、これ以外の最終回は考えられないものでした。
細野先生、お疲れさまでした。
「電波の城」も意外な展開を迎えているので期待しています!!
ちなみに収録内容から判断して、コミックスは24巻で最終巻となるのかな?
そちらも楽しみです。
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