2011年05月30日

「ある少女にまつわる殺人の告白」(佐藤青南著、宝島社刊)

「ある少女にまつわる殺人の告白」(佐藤青南著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

「亜紀ちゃんの話を、聞かせてください」
10年前に起きた、少女をめぐる忌まわしい事件。
児童相談所の元所長や小学校教師、小児科医、家族らの証言
を集める男の正体とは…。哀しくも恐ろしい結末が待ち受ける!

「今日的テーマを扱いつつ、難易度の高いテクニックを駆使し、着地の鮮やかさも一級品である」と『このミステリーがすごい!』大賞選考委員・茶木則雄が絶賛した2011年『このミス』大賞優秀賞受賞作です!
長崎県南児童相談所の元所長らが語る、ある少女をめぐる忌まわしい事件。10年前にいったい何が起きたのか。元所長、医師、教師、祖母……様々な証言が当時の状況を明らかにしていく。大ベストセラーとなった『告白』形式の語りに、大きな謎が加えられたミステリー。関係者を訪ねてまわる男の正体が明らかになるとき、哀しくも恐ろしいラストが待ち受ける!

目次

第一章 煉獄
第二章 暗闘
第三章 連鎖
解説 茶木則雄
(宝島社公式HPより)


<感想>

本作は第9回「このミス大賞」優秀賞受賞作品。
受賞時タイトルは「羽根と鎖」。
改題されて「ある少女にまつわる殺人の告白」となりました。

同じく第9回の大賞は「完全なる首長竜の日」。
優秀賞が「ラブ・ケミストリー」になります。

「完全なる首長竜の日」(乾緑郎著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

「ラブ・ケミストリー」(喜多喜久著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

第9回「このミステリーがすごい!」大賞が決定!!栄冠は「完全なる首長竜の日」に

では、感想から。

内容は「亜紀という少女が関わる殺人事件の真相を追う人物、何故調べるのか?その正体は?」というもの。
その過程で亜紀の関わった事件の真相が明らかになります。
章が進むごとに事件の見え方が変わって来るのもこの作品の仕掛けのひとつ。
とはいえ、メインは「現在、調査している人物の正体」に尽きるでしょう。
で、ラストで真相と同時に亜紀の現在が判明する。
この流れは結構、工夫されています。
ただ、弱いんだよなぁ……計算されてるんだけど、型に嵌まり過ぎてオチが弱い。

最近はこの傾向の作品が多いこともオチが弱く感じた原因かなぁ……。
ざっと挙げただけでも「愚行録」や「鬼畜の家」や「檻の中の少女」、本作のあとがきにもあった「告白」などがこれに近いでしょうか?
特に「愚行録」とは構成的にかなり近しい印象。
また、「檻の中の少女」を読んでいれば、本作の“毒”では些か物足りないか?

「檻の中の少女」(一田和樹著、原書房刊)ネタバレ書評(レビュー)

本作「ある少女にまつわる殺人の告白」は短編にした方が良かったのではないかと思う。
確かに、長編にしたことでキャラクター像は生きている。
しかし、反面、キャラクターの行動的必然性からラストについても想像がついてしまうのである。
そこらが惜しく感じた。

本作についての感想をまとめると「悪くはない作品」との印象。
良くも悪くも突き抜けた感じはしない。
次作以降に真価が問われそうかなぁ……。

<ネタバレあらすじ>

「亜紀ちゃんの話を、聞かせてください」
10年前に長崎で起きた、少女をめぐる忌まわしい事件。

その事件について証言を集める男は、児童相談所の元所長、小学校教師、小児科医、家族らに話を聞いてまわる。
そして浮かび上がる真相。

忌まわしい事件とは亜紀の妹が虐待死させられた事件だった。
犯人は亜紀の継父・杉本と亜紀の実母。

しかし、これは表層部分でしかなかったのである。
実は、亜紀が継父の杉本から虐待にあっており、そこから逃れる為に刑務所へ行こうと異父妹を殺害していたのだった。
しかし、そこまで亜紀を追い詰めた杉本を憎んだ児童相談所の担当者のはからいで杉本が虐待死させたことになっていた。

さらに、今より数年前、その杉本も亜紀の幼馴染みの男性により殺害されていた。
当の幼馴染みによれば、亜紀の近くをうろつく杉本が邪魔だったと言う。
どうやら、出所したら亜紀と結婚するつもりらしいが……最近、亜紀が面会に来なくなったと愚痴られてしまう。

こうして、真相を突き止めた男は東京に帰る。
東京では彼の妻が息子と共に待っていた。
彼の妻は過去を断ち切った女性、彼は彼女自身の口から過去を聞いた事が無かった。
妻は、「血の繋がりが無くても実子のように息子が可愛い」と語り、また、「息子が息子自身のミスで大怪我をしたこと」を夫へと語る。
それは男がここ数日で調べ上げた妻自身が過去に受けた虐待に似ていた―――エンド。

「ある少女にまつわる殺人の告白」です!!
ある少女にまつわる殺人の告白



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