2011年06月10日

「ジウ 1〜3」(誉田哲也著、中央公論新社刊)

「ジウ 1〜3」(誉田哲也著、中央公論新社刊)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

・ジウT 警視庁特殊犯捜査係

都内で人質籠城事件が発生、警視庁の捜査一課特殊犯捜査係〈SIT〉も出動するが、それは巨大な事件の序章に過ぎなかった! 警察小説に新たなる二人のヒロイン誕生!!

・ジウU 警視庁特殊急襲部隊

誘拐事件は解決したかに見えたが、依然として黒幕・ジウの正体は掴めない。捜査本部で事件を追う美咲。一方、特進をはたした基子の前には謎の男が! シリーズ第二弾

・ジウV 新世界秩序

〈新世界秩序〉を唱えるミヤジと象徴の如く佇むジウ。彼らの狙いは何なのか? ジウを追う美咲と東は、想像を絶する基子の姿を目撃し……!? シリーズ完結篇。
(中央公論新社公式HPより)


<感想>

謎の男・ジウが関わる「新世界秩序」とそれを追う美咲&基子のダブルヒロインの活躍を描いた作品です。

「ストロベリーナイト」の誉田哲也先生による作品だけにストーリーは折り紙つきです。
読めます、読ませます。

ただ、当の「ストロベリーナイト」よりは弱いんだよなぁ……。

ダブルヒロインとはいえ、中盤はともかく、ラストを読めば分かるとおり実質ヒロインは美咲だけだと思うし。

ジウが不完全燃焼なのも問題かも。
「ストロベリーナイト」のエフみたいに最終的にアレしちゃうし。
まぁ、物語上必要な事ではあるのだろうけど、1巻、2巻と読み続けてちょっと肩透かし感があった。
新世界秩序が割とあっさり終わっちゃうのも原因かな。

とはいえ、3巻を読むまでのワクワク感は事実だし、3巻を読んで以降もこれ以外結論は無かっただろうなぁとの気もするし。
ちょっと悩むけど、歴史に残る名作では無くとも、良作ではあると思う。

なお、「ジウ」で東に興味を持たれた方は同じく東が登場する「国境事変」もチェック!!

ちなみに、「ジウ」はドラマ化されるそうです。

放送は、テレビ朝日系金曜ナイトドラマ枠にて7月からスタート。
キャストは、黒木メイサさん、多部未華子さんのW主演。
それぞれ黒木さんが伊崎基子役、多部さんが門倉美咲役とのこと。
こちらもチェック!!

誉田哲也先生原作「ジウ」がドラマ化!!

<ネタバレあらすじ>

警視庁捜査一課特殊犯捜査係に所属する門倉美咲と伊崎基子は対照的な2人だった。
美咲は大人しいが心優しく芯の強い女性。
一方、基子は負けず嫌いで誰にでも喰ってかかる実力至上主義者。

そんな2人をある事件が待っていた。
都内の住宅地で人質篭城事件が発生し、所轄署や機動隊とともに警視庁捜査一課特殊犯捜査係が出動することに。
この事件を契機に美咲と基子は対照的な結末へと突き進むことになる。
それぞれが異動させられることになったのだ。

異動先で雨宮と恋に落ちた基子は彼に自身の秘密を打ち明ける。
基子は過去に事故に見せかけ人を殺していた。
基子は裏切った相手をレスリング中に殺害していたのだ。
そんな基子を優しく包み込む雨宮。
雨宮と男女の仲となった基子は暫しの安らぎを得るのだった……。

一方、美咲は異動先の所轄署で東と出会っていた。
さらに、多発する誘拐事件の対処に奔走することに。

そこへまたも誘拐事件が発生。
人質を助けるべく突入することとなった基子と雨宮たち。
しかし、この突入で待ち構えていた犯人に狙われた雨宮は射殺されてしまう。

一連の事件の影にはジウという謎の人物の影が見え隠れしていた……。

東と美咲は捜査を進めるうちに「新世界秩序」という謎のキーワードを耳にする。

一方、単独捜査を行っていた基子は遂にジウと対決。
だが、どんなに攻めてもジウの前に手も足も出ず、敗北を喫してしまう。
しかも、事件の黒幕・ミヤジから雨宮しか知らない筈の基子の秘密を聞かされたことで雨宮がミヤジたちの仲間だったと信じ、協力することを約束してしまう。

ミヤジに内通した基子は街頭演説に赴いた大沼総理を拘束。
さらに、歌舞伎町を封鎖し立て籠もる。
そこにはミヤジとジウも居た。

ミヤジの狙い「新世界秩序」とは歌舞伎町を治外法権にし独立国とした上で、そこで生産した麻薬を販売しそれを独立国の主貿易品とすることだった。
麻薬売買の利益で独立国を運営しようと考えたのだ。
その要求を大沼を人質として為そうとしていた。

ミヤジからのこの要求を、大沼の代行となった船越は拒否。
投降することを呼びかけるが当然、ミヤジは応じない。

一方、美咲は基子の上司・小野と共に歌舞伎町に潜入し基子を捜す。
その頃、基子は自身の行動の正当性に悩み、姿を消したミヤジを捜してその部下たちを殺害していた。
部下の1人である白石と対決した基子は彼を倒し、基子を信じることに決めた美咲と合流。
基子に惹かれていた白石は自身の知るすべてを明かす。

基子の秘密をミヤジが知っていたのは雨宮を調べていた白石が報告したからだった。
当時、雨宮はミヤジの協力者であるジョーカーにより危険視されており、その行動を監視されていた。
結果、雨宮はジョーカーの罠にかかり殺害されてしまう。
そう、雨宮はミヤジの仲間でもなんでもなかった。

さらに、ミヤジの居場所を教えると白石は自決する。
基子と美咲は教えられた場所へと急ぐ。

捜査本部の動きがことごとく読まれていることからスパイがいると判断した東は、そのスパイ=ジョーカーを罠にかけて捕まえる。
ジョーカーの正体は松田だった。

一方、ミヤジの潜伏先へと辿り着いた基子と美咲。
そこにはジウも居た。
基子は1人、ジウへのリベンジを果たすべく戦いを挑む。

ジウと激闘を繰り広げる基子。
前回の反省点を踏まえ、守りに徹することで相手の隙を突く戦法で辛うじてジウを破る。

ジウを破った基子を再度、仲間に引き入れようとするミヤジだったが基子は拒否。
そこでミヤジは基子を射殺しようとする。
しかし、ここでジウが基子を庇い撃たれてしまう。
ジウは基子が妊娠3カ月であることを知り守ろうとしたのだ。

そのまま、ミヤジへと詰め寄るジウ。
その口は「我在這里」と呟いている。
焦ったミヤジは付近に仕掛けた爆薬を起爆させる。
爆煙の中へと消えゆくミヤジとジウ。
「俺が死んでも、ミヤジはまだまだ居る!!」ミヤジの最後の叫びである。

燃え盛る建物の中を傷ついた基子を抱え脱出する美咲。
「置いていけ」と訴える基子だが、美咲は聞かない。
結局、美咲を心配し駆け付けた東により救われるのだった。
こうして、「新世界秩序」事件は終結した。

事件には意外な後日談が伴われていた。

逮捕されたジョーカーこと松田が語ったところによれば、松田は新人時代からミヤジに懐柔され続けていたらしい。
それは今も続いていたが、松田はミヤジを疎んじるようになり排除を目論むように。
そこで、同じように大沼を排除したがっていた船越と手を組み、ミヤジに協力しつつ隙を窺っていたのだ。
最終的には制圧にかこつけてミヤジやその部下、大沼諸共に始末するつもりだったらしい。

ミヤジは消息不明。
爆発に巻き込まれており死亡したものと思われる。
なお、ミヤジの出自は謎に包まれており判明していない。

基子は逮捕されることになった。

美咲はと言えば、ジウの最後の言葉を気にかけていた。
「我在這里」、直訳すれば「私はここに居る」。
ジウは自身の存在意義を求めて犯罪に手を染めたのだ。

ジウは両親が不法入国者だったために国籍を持っていなかった。
しかも、幼い頃に誘拐されたが、折悪しく両親が強制帰国させられた為に助けに来る者もなく、誘拐犯にすら見捨てられることに。
そのまま、頼る者もなく生きていた。
ジウはその特異な生い立ちから感情を殺す術を体得し、無敵の暗殺者となった。
ミヤジに見出されたのはその頃である。

ジウが誘拐に拘ったのは、彼自身が親子関係に興味を持っており子供を助けに来る親の顔が見たかったから。
過去の自分が得られなかったものを追い求めたのだろう。
その延長で、基子を助けたのだ。

美咲はここでハッと気付く。
ジウの言葉「我在這里」。
ジウが「ここに居る」と呼びかけた相手は実の両親ではなかったか?
ジウの心情を想い胸を痛める美咲。

そんな美咲に恋の予感が。
相手は東である。
果たしてこの恋は実るのか―――エンド。

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【姫川玲子シリーズ】
・シリーズ1作目「ストロベリーナイト」はこちら。
「ストロベリーナイト」(誉田哲也著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)

・シリーズ2作目「ソウルケイジ」はこちら。
「ソウルケイジ」(誉田哲也著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)

・シリーズ3作目、短編集「シンメトリー」はこちら。
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・シリーズ4作目「インビジブルレイン」はこちら。
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・シリーズスピンオフ「感染遊戯」はこちら。
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土曜プレミアム ストロベリーナイト「大ベストセラー小説初ドラマ化!!連続猟奇殺人事件のカギを握る感染死体…真相に迫る孤高の女刑事悲しみの過去と驚愕の結末!!」(11月13日)ネタバレ批評(レビュー)

「ジウ〈1〉―警視庁特殊犯捜査係 (中公文庫)」です!!
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posted by 俺 at 12:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評(レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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