<あらすじ>
二宮早紀(名取裕子)は港南医大・法医学教室の准教授で、神奈川県警から監察医を委託されている。夫の一馬(宅麻伸)は横浜東署の警部で、2人の間には愛介(佐野和真)という大学生の息子がいる。また、一馬には七海(由紀さおり)という叔母がいて、時々二宮家に現れては引っ掻き回していくので、早紀にとってはありがたい相手ではない。
ある夜、愛介がひったくり犯を捕まえようとして、逆に腕を切りつけられる事件が起きた。幸い愛介は軽傷ですみ、知らせを受けて病院に駆けつけた早紀と一馬はホッとする。 犯人は逃走したままだったが、ひったくりに遭った被害者・相沢澄江(床嶋佳子)は「被害届も出さない、自分の名前も言いたくない」と警察への協力を拒否。愛介に対しても、感謝するどころか、「格好つけて犯人に立ち向かったりするものじゃない」と言い放ち、早紀を怒らせる。
実は、澄江は5年前、ひとり息子の佑一(載寧龍二)を殺して服役し、前日に仮出所したばかりだった。澄江は女手ひとつで祐一を育て上げたが、大企業に就職したにもかかわらず、すぐに仕事を辞めてダラダラ過ごす息子に愛想をつかし、手にかけてしまったらしい。
だが、それを聞いた愛介はなぜか彼女のことをかばい、「悪い人には思えない」と反発。さらに七海から「勇気ある行動だった」とほめられると、「勇気なんて関係ない!」と言い捨てて家を飛び出してしまう。いつもの愛介らしくない、何かを悩んでいるような態度に、早紀は驚き、心配する。
その翌日、横浜東署管内の廃工場の中にある倉庫で火災が発生、現場入り口のシャッターにもたれかかるように男性が死んでいるのが発見される。死因は、鈍器で頭部を殴られたことによる脳挫傷だったが、検視した早紀は、被害者が焼けたシャッターに接触して頬と肩に火傷を負ったこと、まぶたを二重に整形していること、ネコに手を咬まれて炎症を起こしていること、殺害される1時間ほど前にステーキを食べていたことを突き止める。
まもなく、被害者は樋口学(保科光志)という男だとわかるが、驚いたことに現場の倉庫の2階の窓から澄江の指紋が検出される…! さらに、愛介に確認したところ、前夜のひったくり犯は樋口であることが判明。しかも、樋口は、澄江の息子・佑一の中学時代の同級生だともわかった。
愛介が捕らえようとしたひったくりは、単なる窃盗犯ではなかったのか…。一馬たちの取り調べを受けた澄江は、犯行を否定。ひったくり犯に尾行され、廃工場に逃げ込み、あの倉庫に隠れたらシャッターを閉められ、ガソリンを流し込まれて火をつけられたが、窓から脱出しただけと言い張る。
しかし、彼女が2階の窓から脱出した後、樋口のいる入り口のほうに取って返したのを見たという、近所の住人の目撃証言もあった。
そんな中、なぜか澄江に肩入れする愛介は「あの人は絶対に犯人ではない!」と言い、早紀たちにだまって、釈放された澄江のもとを訪ねるが…!?
その後、澄江の動きを探っていた一馬たちは、彼女が大手商社“谷崎物産”の社長・谷崎貢(大浦龍宇一)に接近するのを確認。彼女は、5年前、貢の父・重松と義姉の和恵(渚あき)に宅配便を装った小包が送りつけられ殺された事件を探っている様子だった。
いったい澄江は何をしようとしているのか…!? そして愛介はなぜ彼女をかばい、何を悩んでいるのか…!? 早紀と一馬は手がかりを求め、貢の兄で、妻を殺された孝仁(榎木孝明)を訪ねるが…!?
(土曜ワイド劇場公式HPより)
では、続きから(一部、あらすじと重複あり)……
愛介は悩んでいた……その手に握られた携帯電話のディスプレイには「裏切者」と表示されている。
誰かから届いたメールのようだが……他にも悪口雑言が書き込まれているようだ。
疲れ果てた様子の愛介はそのまま携帯を閉じる。
直後、ひったくり犯に襲われていた澄江を助けることになる―――。
愛介を通じて澄江と出会った早紀は澄江の発言から反発を抱く。
ところが、愛介は澄江に何かを感じた様子……。
翌日、澄江の事件のひったくり犯と思われる樋口と言う名の男性が死体で発見される。
検視した早紀は、樋口が焼けたシャッターに接触して頬と肩に火傷を負ったこと、まぶたを二重に整形していること、ネコに手を咬まれてパスツレラ症という炎症を起こしていること、殺害される1時間ほど前にステーキを食べていたことを突き止める。
澄江の目撃者と樋口の顔にあった3度の火傷から、時間的に澄江の犯行では無いと確信した早紀。
一馬もそれに沿って捜査を展開する。
殺された樋口が何者かの指示で動いていたらしいことも判明する。
それに伴い、樋口が5年前に5千万円をどこからともなく入手し、それで生計をたてていたことも分かる。
一方で、早紀の検視結果とは反する事実ばかりが浮上。
樋口は猫嫌い、しかも、ステーキハウスに出入りした形跡も発見されない。
愛介の悩みの原因は、友人のマルチ商法だった。
友人が他の友人をマルチに誘っているのを知り大学の学事課に相談したところ、当の友人から「裏切者」呼ばわりされるようになったらしい。
愛介は澄江に相談することで少し悩みが軽くなる。
澄江は愛介から早紀の突き止めた情報を探る。
澄江と接触した早紀は「猫」と「ステーキ」の件だけ、洩らすが……。
直後、澄江は谷崎貢と接触する。
貢はステーキが好物、しかも、猫を飼っていた。
5年前の4月、「谷崎物産社長・谷崎重松」と「その長男である孝仁の妻・和恵」が小包爆弾で爆殺されていたことが判明。
主犯は玉置という男性と思われており、他に分かっていることと言えば、重松宅に爆弾を持ち込んだ人物の似顔絵ぐらいだった。
孝仁宅に爆弾を持ち込んだとされる女性さえ、正体不明とされていた。
この重松宅に爆弾を持ち込んだ容疑者と樋口の整形前の顔とが酷似する。
一馬は樋口がこの殺害の報酬として5千万円を受け取ったと推測。
さらに、澄江が服役中に孝仁宅の爆弾犯の情報を何らかの形で入手したのではと考える。
澄江が孝仁に接触していたことが明らかに。
なんでも、爆弾犯人を捜したいので協力してほしいと語っていたようだが……。
猫とステーキから谷崎貢に容疑が集中。
次いで、谷崎貢と樋口を結ぶ人物として谷崎物産で秘書をしていた水原好美が浮上。
澄江が服役中に一番親しくなっていた倉島留美も捜査対象に上がる。
留美は暴力夫を殺害した罪で捕まっており、服役中に娘を産んでいた。
その夜、愛介は一馬に悩みを打ち明ける。
一馬は愛介に友人と腹を割って話をすることを奨める。
一馬から間接的に事情を聞いた早紀はほっと一安心すると共に、澄江がなぜ息子を殺害したのか疑問に思う。
水原好美が澄江を襲撃する事件が発生。
偶然、現場に駆け付けた警官により助けられた澄江は軽傷、好美はそのまま逃亡する。
澄江は入院、そこへ出所した留美が訪ねて来る。
留美は「息子さんの復讐に協力させてください」と懇願する。
これを聞いた早紀は澄江の事件を調べる。
澄江が息子を殺したのは5年前の4月。
その3日前には、例の谷崎物産の爆弾事件が発生していた。
早紀は何らかの関連性を疑う。
澄江の息子・佑一が新東亜化学に勤めていたことが判明。
しかも、佑一が手先が器用で応用化学を得意としていたことも分かる。
早紀は、谷崎物産へ送り付けられた爆弾が佑一の手によるものと推理。
澄江がさらなる爆弾を爆破させようとした佑一を止めようとして殺害したと考える。
留美が澄江から店の権利書と鍵を貰ったことを知った早紀は澄江が死ぬ気であると看破する。
その頃、澄江は過去を思い返していた。
澄江に爆弾を気付かれた佑一は、口封じの為に澄江を殺そうとした結果、揉み合いとなり誤って佑一を殺してしまったのだった。
その夜遅く、澄江が行動開始。
一馬たちは尾行を開始する。
水原好美宅に消える澄江。
数分後、澄江が飛び出して来たことで中を確認したところ、好美が死亡していた。
容疑は澄江にかかるが……。
一馬は死体発見直後に猫の声と逃げ去る車の発進音を聞いたことと、死後硬直の具合から澄江は犯人ではないと判断する。
早紀による検死が開始。
好美の頬にシャンプーブラシと何らかの痕を発見。
次いで、好美は電撃性死体硬直であること、しかも、凶器が樋口と同じことも分かる。
さらに、口の中に血液が残されていなかったことから、犯人が好美の口中を洗った形跡も見つかる。
一方で、貢かと思われた猫の声と車の音だが、近所の住人だったと判明。
一馬は肩を落とす。
自宅に帰った早紀。
七海がシミを気にしていたことが契機となり、好美の頬の傷は「傷で傷を隠していたのでは?」と気付く。
早速、画像処理を駆使してシャンプーブラシの傷を消したところ、現れたのは何か「丸いもの」だった……。
早紀は、孝仁が使用していたヘッドフォンを思い出す……。
好美が犯人から奪ったヘッドフォンを頬に押しつけながら倒れたと推理する早紀。
犯人はヘッドフォンを取り返そうとして好美に噛まれたに違いない―――だから、証拠の残る好美の口を洗ったのだ。
孝仁を追う早紀と一馬。
その後ろを何者かが尾行する……。
孝仁宅に侵入した早紀。
孝仁は猫と共に優雅にステーキランチと洒落込んでいた。
樋口は此処で殺害されたのだ。
孝仁を追求する一馬たち。
孝仁の腕には好美に噛まれた傷口があった。
こうして、孝仁は逮捕されるが……そこへ澄江が現れる。
尾行者の正体は澄江だった。
澄江は佑一の遺した最後の爆弾を所持していた。
自分ごと孝仁を吹き飛ばすつもりだ。
過去の事件の真相を語りだす孝仁。
孝仁は会社を継ぐつもりはさらさらなく、自由に生きたがっていた。
ところが、重松から南米に仕事で行くよう指示された孝仁は絶望する。
海外に行けば数年帰って来られない。
このままでは自由に生きられないではないか!!
そこで、自身を縛る者を排除することを画策した。
玉置がひっそりと死亡したことを利用し、偶然知り合った佑一に爆弾作成を依頼することに。
こうして、5年前の爆破事件が行われたのだ。
妻・和恵に爆弾を届けた女性など最初から存在しなかったのだ。
そして現在、澄江が過去の事件を嗅ぎまわっていることを知り樋口に襲わせたのである。
ところが、樋口は失敗してしまう。
そこで、口封じもかねて樋口を殺害したのだった。
さらに、好美を利用するがこれも邪魔になったので殺害したのだ。
あくまで、孝仁を殺害しようとする澄江だが、早紀と一馬の命懸けの説得により諦める。
店の権利書を澄江に返却した留美は店の再開と自身を従業員として雇用するよう頼み込む。
愛介も店の再開を熱望し、澄江は新しい人生を生きることに。
こうして事件は解決した。
日常に戻る早紀と一馬の姿―――エンド。
<感想>
シリーズ33作目。
前回が2011年1月22日放送なので、大体半年ぶりかな。
過去作の批評(レビュー)は本記事下部にあるので、気になる方はどうぞ!!
では、ドラマの感想。
今回、かなりシナリオが酷いですね。
どうしちゃったのかな……。
ここからいつもの愚痴が始まります。
管理人がグダグダと続けるので注意!!
まず、投げっぱなしが多い。
前回、発覚した「愛介の恋人・くるみ」は無かったことにされたようです。
欠片も出てきませんでした。
潔いのやら、何なのやら……せめて、セリフででも去就について明かしてくれればいいのに。
今回登場のキャラクターでは、貢も見事に放置されてしまいました……。
ラストでなんらかのフォロー入れてくださいよ。
そういえば、七海もラストに出なかったな。
あと、愛介の悩みもどうなった……あれで、終わり?
それと、シリーズ自体の特徴としてミスリード用の情報量が多い点と後出し的な所がある点が挙げられますが、今回は特に酷かった。
たとえば、留美の存在。
澄江へのフォローなら愛介で充分でしょう。
澄江の情報入手先関連にも関わってないし。
あれなら、もっと孝仁をクローズアップした方がフェアだったような……。
そういえば、澄江が情報を仕入れた相手は誰?
分からん……。
それに今回、樋口の検死は貢へのミスリード以外の何物でもなかったのも問題。
犯人の絞り込みにも余り役立ちませんでした。
だって、猫とステーキでは孝仁でも貢でも通じるからね。
孝仁の場合、完全に後出しだし。
つまり、最初の1時間は不要……微妙です。
真犯人の独白も含めてラストを膨らませた方がよっぽど……。
正直、ミステリ部分は惨憺たるものだったと断言できます。
しかも、今回はこれまでのシリーズの常識を裏切ったことが逆に仇となった印象。
次の点が普段と違っていました。
結果、個性が失われたものと思われます。
@早紀と一馬で意見が対立しなかった。
A早紀が肩入れした人物は途中でだいたい真犯人に殺害されるが、今回は最後まで存命。
B真犯人が誰かに罪を着せようとしていない。
C早紀が襲撃されない。
Aはむしろあってもいいかと思うけど、それなりのシナリオでないとモヤモヤ。
Bは、真犯人の性格やパーソナリティを示すものとして好意的に解釈することも可能ですが。
ともかく、これらがあってこその「法医学教室の事件ファイル」シリーズだと思うけど。
もっとも致命的なのは犯人たちの行動に必然性がないことか……結末ありきか。
ただ、犯人の動機だけはミステリ的に目新しいもの(前例はあるが……)だったと思えます。
高等遊民っぽい動機と言えるでしょう。
この点は評価できるかも。
さらに、孝仁の動機は「人と人との繋がりこそが人を形作り、生きていくことの意味である」ことを否定している点で彼の人となりを雄弁に物語っており、彼のキャラクターにインパクトを与えている点で成功でしょう。
澄江と同じくらい孝仁のキャラを掘り下げた方が良かっただろうにね、過去エピソードを用意するとかで。
もっとも、孝仁の考えに賛同はできません。
「たまに息抜きしてもいいし、会社を辞めてもいいから、殺しちゃ駄目だよ」と視聴者全員がツッコミを入れたことでしょう。
良かった点はこの動機くらい。
今回、このドラマに何かあったのでしょうか?
そう思ってしまうくらいあんまりな出来でした。
シリーズものなので次回に期待できるのが救いです。
素直に次回を期待します。
◆関連過去記事
「法医学教室の事件ファイル」シリーズはこちら。
・土曜ワイド劇場「法医学教室の事件ファイル アラフォー同窓会に届いた冷凍遺体!女医vs元・女子高教師23年目の秘密?傷口のギザギザ線と歯の矯正具の謎!」(1月22日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・土曜ワイド劇場「法医学教室の事件ファイル 殺人犯は私の夫絶体絶命の女医vs疑惑の新妻!OKサインを出す死体…謎の爪痕と深さ=速度÷距離?の検証」(9月25日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・土曜ワイド劇場「法医学教室の事件ファイル 女医VS水曜日の絞殺魔!蟻の死体解剖が殺人トリックを暴く 砂糖+コーンスターチ殺意の合成」(1月9日放送)ネタバレ批評(レビュー)
【名取裕子さん出演作はこちら】
・パナソニックドラマシアター「ハンチョウ〜神南署安積班 シーズン2」1話「あのチームが帰って来た!涙…母の手錠」(1月11日放送)ネタバレ批評(レビュー)!!
・木曜ミステリー 京都地検の女スタートスペシャル「母を殺しにきた天才画家!上海〜京都、34年目の再会が招いた殺意!!二つの名を持つ女の謎」(10月14日放送)ネタバレ批評(レビュー)
<キャスト>
二宮早紀:名取裕子
二宮一馬:宅麻 伸
相沢澄江:床嶋佳子
谷崎孝仁:榎木孝明
谷崎 貢:大浦龍宇一
倉島留美:映美くらら
水原好美:三津谷葉子
相沢佑一:載寧龍二
村中検事:五十嵐めぐみ
二宮愛介:佐野和真 ほか
(敬称略、順不同、公式HPより)
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