ネタバレあります、注意!!
<あらすじ>
犯人がいないのに殺人があった―。さまざまな欲望が交錯した殺人事件を描く表題作ほか六編を収録。人間の心理のドラマとミステリーの醍醐味が味わえる傑作。
(光文社公式HPより)
<感想>
短編集です。6編が収録されており、そのどれもが苦い結末となっています。
では、ここから各短編に短いながらも感想を。
・「小さな故意の物語」
恋だったのか憧れだったのか……それとも身勝手だったのか?
・「闇の中の二人」
加害者がもっとも被害者なんだよなぁ……。
・「踊り子」
これが一番切ない。
初恋ゆえに相手を……。
・「エンドレス・ナイト」
トラウマが招いた悲劇。
・「白い凶器」
非喫煙者ならこの怒りを理解できるところもあるからなぁ……歩き煙草とか、車から路上に灰を捨てる行為とか。
まぁ、マナーについてなら煙草に限ったことではないけどね。
・「さよならコーチ」
この結末しかなかったんだろうなぁ。
まさに無理心中。
・「犯人のいない殺人の夜」
う〜〜〜ん、因果応報なのかなぁ……。
犯人もいないけど善人もいない。
<ネタバレあらすじ>
・「小さな故意の物語」
サッカー部のエースである良は、親友・達也とその恋人・洋子のカップルを祝福していた。
数年前、良は洋子のことが好きだったが、優秀な洋子には同じく優秀な達也がお似合いだとして身を退き応援することにしていたのだ。
ところが現在、達也が校舎の屋上から転落死してしまう。
状況から自殺と思われた。
それを機に洋子と急接近した良は、そのまま洋子と付き合うように。
だが、良は達也の死に疑問を抱いていた。
やがて、達也が転落死した際に校舎の屋上の向かい側にある家庭科室に1人の女子生徒が居たことが明らかに。
そこから判明した事実は意外なものだった。
達也に交際を申し込み振られたその女子生徒は、達也が屋上に居る姿を見て復讐心から悪戯半分に大鏡を反射させたのだ。
その光を浴びてバランスを崩した為に達也は転落死したらしい。
だが、女子生徒に殺意は無かったと言う。
しかし、ここでふと新たな疑問を持つ良。
なぜ、達也は屋上に居たのか―――そこから真実に辿り着く。
達也と洋子はいつも2人一緒だった。
そんな2人があの日、あの時に限って別行動していたとは考えられない。
そう―――あの日も達也の傍には洋子が居たのだ。
達也と交際することに疲れていた洋子。
洋子は過去のギラギラした達也が守りに入ってしまったことから別れたがっていた。
達也よりもむしろ、サッカー部のエースである良に惹かれていたのである。
そこであの日、屋上から不意に大鏡の光に気付いた洋子は意図的に達也にそちらを見るよう促した。
結果、達也は転落死した。
すべては小さな故意に端を発していた。
良は達也の為にどうしても洋子を許すことが出来ず、別れを切り出すのだった―――エンド。
・木曜劇場「東野圭吾ミステリーズ」第8話「小さな故意の物語〜嘘(ウソ) 謎の死を遂げた親友…真実の裏の哀しい嘘」(8月30日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・「闇の中の二人」
教師の弘美は自身が担当する生徒・信二のことで悩んでいた。
信二は父親が再婚して以来、塞ぎがちになり不登校になったからだ。
そんな信二宅で事件が。
生まれたばかりの信二の異母弟が何者かにより殺害されたのだ。
当初は、信二の継母の浮気相手が犯人かと思われたが……。
ふと、弘美は信二宅で信二に襲われそうになったことを思い出す。
その際の信二は何かに苦しんでいる様子だった……。
やがて犯人が明らかになるが、それは意外な人物だった。
異母弟殺害の犯人は信二だったのである。
しかも、これには秘密があった……。
そう、浮気相手が居ることから分かるように信二の継母は素行が悪かった。
そして、信二と継母は折り合いが悪かった。
懐かない信二に業を煮やした継母は女の色香で信二をたぶらかしたのだ。
継母と関係を持ってしまった信二は悩み苦しむことに。
継母はこの弱味につけ込み、信二をコントロールしようとした。
ところがここで、継母も思ってもみなかったアクシデントが発生。
継母は信二の子供を妊娠してしまったのである。
生まれた子供の顔を見て信二は自身の子供であると確信する。
信二の苦悩はさらに深まった。
周囲から「御兄弟だけに似てますね」と声をかけられるたびに怯える日々。
精神的に追い詰められた信二は、笑顔の異母弟(実は息子)を見て殺意に駆られることに。
こうして、信二は異母弟と息子を同時に殺してしまった。
警察に連行されて行く信二だが、真相は明かせる筈もなかった……。
弘美は信二宅で嗅いだ信二の継母の香水が、襲われたあの日に自身が使用していた香水と同じであることに気づき、真相を察するのだった―――エンド。
・「踊り子」
学生である孝志の家庭教師をやっている主人公。
最近、孝志の様子がおかしいことに気付く。
尋ねてみると、とある少女に恋をしているとのこと。
深夜、人のいない体育館で新体操の練習を頑張っているという孝志のマドンナ。
そのマドンナの姿を急に見かけなくなったと言う。
詳しく聞いたところ、孝志が応援メッセージを添えたスポーツドリンクを体育館の出口に差し入れとして置いた翌日から見なくなったらしい。
孝志は嫌われてしまったのではないかとの不安から勉強も手に付かなかったのだ。
自身にも同様の覚えのあった主人公は、孝志が勉強に打ち込めるようにマドンナ=少女を捜す約束をする。
調べ始めたところ、意外な事実が判明。
少女は自殺していたのだ。
なんでも、少女は新体操に才能があったが家庭の事情で進学することが出来ず、中華料理屋で生計をたてつつ夜にこっそりと練習していたらしい。
孝志の気持ちを考えてどう伝えていいか悩む主人公。
とりあえず自殺の理由だけでも突き止めようと、さらに調べることに。
結果、とんでもない事実が明らかになる。
少女の自殺の動機は密かに練習していたことを新体操部に知られ吊し上げられたことからだった。
そして、新体操部に知られるようになった原因こそ、孝志の置いたメッセージとスポーツドリンクだった。
少女はその立場上、目立たない別の出入り口から出入りしており、孝志の差し入れに気付かなかった。
翌朝、正式な新体操部員がそれを発見し、少女の存在がバレてしまったのだ。
「また、少女に会えるかな」と無邪気な孝志。
そんな孝志に「君が踊り子を殺したのだ」とはどうしても言えない主人公なのだった―――エンド。
・「エンドレス・ナイト」
大阪で生活していた夫・洋一が殺された。
妻の厚子は大阪という街が夫を殺したと主張する。
厚子には大阪について苦い記憶があったのだ。
大阪府警の刑事・番場は厚子を連れて大阪の街を巡る。
厚子の苦い記憶とは、過去に商売に失敗した父親を失っていたことだった。
以来、大阪に憎悪を募らせ続けていた厚子。
洋一が大阪で生活し、街に馴染むにつれて恐怖を抱くように。
ある日、洋一の様子を見るべく家を訪ねた厚子は洋一が大阪弁を使ったことで恐慌状態に陥り洋一を殺害してしまう。
そう、洋一を殺した犯人は洋子だった。
番場にすべてを話すことでトラウマから救われた厚子は逮捕される。
厚子は洋一を愛していた為に大阪に夫を盗られることを恐れたのだ……。
・木曜劇場「東野圭吾ミステリーズ」第3話「エンドレス・ナイト〜哀(アイ) 哀しみのラスト…夫の死の謎に迫る女」(7月19日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・「白い凶器」
由希子は「白い凶器」により奪われた大切な人の復讐の為に職場の同僚に接近し殺害してしまう。
由希子の大切な人とは妊娠していた子供のこと。
彼女は子供を流産したのは受動喫煙のせいだと考え、職場のヘビースモーカーを仇と狙い殺害したのだ。
そう、由希子が語る「白い凶器」とは「煙草」のことだったのである―――エンド。
・木曜劇場「東野圭吾ミステリーズ」第7話「白い凶器〜悲(カナシミ) 女と相次ぐ不審死…動機無き殺人の謎」(8月23日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・「さよならコーチ」
アーチェリー選手の直美と不倫関係にあるコーチ。
彼は、妻と離婚し自分との結婚を求める直美が邪魔になり、その殺害を決意した。
直美は1年前に自殺未遂を企てており、その際に遺書代りのビデオテープを残していた。
このビデオテープの再利用を思いついたのだ。
殺害したとしても、テープがある限り自殺としか思われないに違いない。
早速、計画を実行に移すコーチ。
死の直前、直美は「さよならコーチ」と謎の言葉を残すのだった―――。
計画は完璧かと思われた。
ところが意外なところに穴があった。
警察に逮捕されるコーチ。
工作に利用した1年前のビデオテープに映る直美が包帯を巻いていたことが原因だった。
死体で発見された直美の身体にはどこにも包帯は巻かれていなかったのだ……。
しかし……と、思い返すコーチ。
計画立案にあたり、何度も何度も穴の開くほどビデオテープは確認したがそんな物は見つからなかった筈だが……。
そこで、ふと直美のあの言葉「さよならコーチ」を思い出す。
もしや、直美はすべてを知った上でわざと殺されたのではなかったか?
工作に利用したビデオテープは1年前の物では無く、最近、直美によって撮影された物だったのだ。
警察が再生すればすぐに工作に気付くよう、1年前の物と思われるよう包帯を巻いて……。
そして、道連れにする為に1年前のテープと撮影したテープを気付かれないようすり替えた。
直美の言葉の意味を知ったが、時既に遅しなのだった―――エンド。
・木曜劇場「東野圭吾ミステリーズ」第1話「さよならコーチ〜罠(ワナ)」(7月5日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・「犯人のいない殺人の夜」
岸田家で殺人事件が発生。
家庭教師の雅美が揉み合いとなり岸田家の二男に近くにあった果物ナイフで刺殺されたのだ。
困り果てた岸田に、雅美を紹介した拓也は犯行の隠蔽と死体の遺棄を提案。
岸田はそれを了承。気付け代りにと、ガムを拓也に手渡す。
そして翌日。
不思議なことに、岸田家には今日も雅美が家庭教師にやって来ていた。
これは……一体!?
一方、事件の数日前に拓也はその恋人・安藤由紀子に雅美になるよう持ちかけていた……。
実は、すべての黒幕は拓也だった。
拓也は安藤由紀子と交際していたが、彼女とは別に本命の恋人・河合雅美が居た。
そこで、金も稼げる一石二鳥の策としてあるアイデアを思いついた。
その為に、安藤由紀子に八木雅美の偽名を名乗らせ、岸田家に家庭教師として送り込んだ。
岸田の二男の性格を事前に知っていた彼は、雅美を名乗る由紀子にわざと怒らせるよう指示する。
案の定、怒りに我を忘れた二男は逆上。
そこで由紀子は拓也との打ち合わせ通り、刺されたふりをして倒れ込んだ。
こうして、「犯人のいない殺人」を演出したのである。
あとは、この殺人の隠蔽を行う代わりに岸田から報酬を受け取れば終わりの筈だった……由紀子の中では。
ところが、拓也はこれで終わらせるつもりはなかった。
本命の河合雅美と交際するために、本当に由紀子を殺害するつもりだったのである。
死体遺棄の為として由紀子を運び出すと、頃合いを見て殺害する拓也。
計画は上手くいったかに思えたが……ある落とし穴があった。
後日、拓也は警察に逮捕される。
決め手は岸田に貰ったガムだった……由紀子は死の直前、拓也が貰ったガムを噛んでおり、そのまま飲み込んでいた。
死んだ人間はガムを噛めない。
こうして、拓也の犯行を示す動かぬ証拠となったのだ―――エンド。
・木曜劇場「東野圭吾ミステリーズ」第2話「犯人のいない殺人の夜〜欺(アザムク) 完全犯罪殺人!予測不能の衝撃ラスト」(7月12日放送)ネタバレ批評(レビュー)
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