<あらすじ>
1年前、小さな港町で誘拐事件が起きた。誘拐されたのは、母親と二人暮らしの少年、上杉光良(大和田健介)。警察は身代金の受け渡し場所で犯人の確保を狙うが、現場で指揮を執った県警の刑事、上條元(仲村トオル)の勇み足から失敗。以降、犯人からの連絡は途絶え、事件は未解決のまま上條は捜査本部から外される。
1年後、事件が動き出す。誘拐された光良が遺体となって発見されたのだ。県警にいた上條は事件を管轄する格下の北嶺署に異動を願い出、再び港町へと戻ってくる。そんな上條を出迎えたのは、緊張感を欠いた捜査本部の面々と、高校時代の同級生で自称実業家のヤクザ、小野里康永(杉本哲太)だった。
上條にとって北嶺は生まれ故郷。光良の母親、朋絵(有森也実)とは、かつての恋人という因縁があった。刑事としての責任か、それとも朋絵への贖罪か、捨てたはずの生まれ故郷に舞い戻った上條の事件解決にかける意気込みは怒りにも似ていた。誰とも馴染まず単独で行動する上條は、事件関係者への聞き込みを一からやり直す。
その晩、上條は立ち寄ったバー『オープン・オールナイト』で、少年同士の暴力事件に遭遇する。被害少年(浅利陽介)は、警察も病院も嫌だと言い残し意識を喪失。上條は仕方なくバーのマスター、萩原明浄(森本レオ)に少年の身柄を預ける。『オープン・オールナイト』は、今は亡き上條の父が残した店だ。萩原は上條の帰郷を喜び、店に住むよう勧めるが、父に対する憎悪から街を捨てて出て行った上條は、その言葉に耳を貸すこともなく署へと戻っていく。
翌日、上條は、光良が事件前、最後に目撃された書店で、『薬理学的 麻薬・ドラッグ大全』という毛色の違う本を購入していた新事実を突き止める。上條はすぐさま朋絵の家へ向かい、光良の部屋の捜索。当惑する朋絵の目の前で白い粉末を発見する。クスリにヤクザはつきものだ。朋絵が小野里と親しい関係にあると感じていた上條は、朋絵に二人の関係を問い質す。朋絵も否定はしなかった。だが、彼女は光良のことは驚くほど知らなかった。母親失格だと自らを責めながら。では、なぜ、光良はクスリを所持していたのだろう。
実は上條にも一人、顔も見たことのない息子がいた。妻は息子の出産時に死亡。捜査で出産はおろか、妻の最期にも立ち会えなかった上條は、妻の両親の言うがまま、生まれたばかりの我が子を妻の実家の養子に出したのだった。報道カメラマンとして世界中を飛び回っていた父親が、母親の死に目に間に合わなかったことを恨み続けていた上條なのに…。
バー『オープン・オールナイト』に預けられた少年は、意識は戻ったものの記憶が戻らない状態が続いていた。そんな少年の存在を頭の片隅におきながら、上條は精力的に捜査を続行。光良の部屋から見つかったクスリの線で聞き込みを続けると、ほどなく、ヤクザにも同じことを聞かれたという少年に行き当たる。やはり、小野里が絡んでいるのか。
そんな中、上條は、亡き妻の父から連絡を受ける。面会に臨んだ上條は、義父から息子に関する悩みを打ち明けられるが…。
(土曜ワイド劇場公式HPより)
では、続きから(一部、あらすじと重複あり)……
光良が「ホワイトスノウ」という名の薬物に関わっていたことが判明。
小野里たちが「ホワイトスノウ」を流通させたグループを潰すべく追っていたことも分かる。
そして、上条が保護した記憶喪失の少年こそ、上条の息子・正治だった。
そんな正治を追いかけて来る謎の若者グループ。
このグループこそ「ホワイトスノウ」を流通させた張本人だった。
正治を匿っていた「オープン・オールナイト」はグループに襲撃され、ボロボロにされる。
正治に自身が父親であることを知らせず、2人は別荘へと移り住むことに。
だがそれでも、若者グループは諦めていなかった。
「生きるか死ぬか」だと執拗に追跡をかける。
一方、上條は息子と水入らずの生活を初めて送ることに。
自身の心情をそれと知られぬように語る上條。
正治も上条に心を開いて行く。
ところが、別荘の場所をグループに知られてしまう。
逃げるグループのメンバーを追った上條は、グループのアジトで待ち伏せされリンチを受けることに。
グループは上条を殺そうとしていた。
死の危険を感じ薄れゆく意識の中で、何者かに助けられる上條。
上条を助けたのは小野里の部下・佐藤たちだった。
小野里は「ホワイトスノウ」のルートを潰すべく、グループを監視していたらしい。
そこで偶然、上条を助けることが出来たのだ。
小野里から上条の息子・正治もグループの当事者……しかも、「ホワイトスノウ」の元締めであることを教えられた上條は苦悩する。
グループとの対決を覚悟した上條はある準備をすることに。
だが、その前に正治との対決が待っていた。
実は、正治は記憶を失っていなかったし、上条を父とも知っていた。
正治はグループを抜けたがっており、上条を利用して抜けようとしていたのだ。
しかも、1年前の誘拐事件は正治のグループの犯行だったのだ。
グループに所属していた光良は抜けようとして、グループの1人である真人に殺されていた。
そこで、正治がアイデアを出し狂言誘拐を仕組んだのだった。
エンジン音が上条たちを取り囲む。
グループの追っ手だと慌てた正治は必死に脱出しようとする。
そんな正治の手を掴み、エンジン音の方へと進む上條。
待っていたのは―――グループでは無く、警察だった。
グループは倉庫に集結していたところを一網打尽にされたらしい。
上条は正治をその場で出頭させる。
警察を呼んだのも彼だった。
正治は裏切った父を罵りつつ、そのまま連行されて行く。
こうして、事件は解決した。
上条は県警へと戻ることに。
朋絵と小野里は結婚することになった―――エンド。
<感想>
「棘の街」(堂場瞬一著、幻冬舎刊)のドラマ化。
原作ネタバレ書評(レビュー)ありますね。
興味のある方はこちら。
・「棘の街」(堂場瞬一著、幻冬舎刊)ネタバレ書評(レビュー)
では、ドラマ版感想を。
豪華キャストに誤魔化された感がありますが、原作よりも面白く視聴できました……って、思ってたんだよ、ラストまでは!!
よもや、ラストであの失速ぶりとは……ありえん。
前半までは「おおっ、原作を超えた!!」と喜んでいたのに。
ラストの改変は明らかに改悪ですよ!!
ここから原作の結末に触れます、未読の方は注意!!
原作だと、グループに追い詰められた上條は森の中で対決。
アクションを織り交ぜつつ逃走劇を繰り広げ、ある程度逃げたところに待機していた同僚に息子を引き渡すと共に同僚たちを利用し、グループの主犯・真人を射殺させるんですよ。
しかも、引き渡した際の息子の絶望は深く、言葉もなく連れて行かれちゃうんです。
と・こ・ろ・が、ドラマ版は上条を正義として描く為に、息子は怒鳴り散らしながら退場、真人は人知れず逮捕されてしまうことに……。
上条が非情の決断を選び取りながら悩むところが「棘の街」の醍醐味なのに。
これでは「棘の街」である意味がないよ。
そもそも、街自体が軽んじられちゃってるし……原作ラストの上条の考察がないと「街」の意味無いんじゃないかな。
上条が街を嫌う理由も、もっとしつこいぐらいに描写すべきだっただろうに。
これらが無いと、たぶん何が何やら分からないと思う。
詳しいことをお知りになりたい方は、ネタバレ書評(レビュー)でもいいけど、原作に目を通されることをお奨めします。
かといって、原作を評価しているワケでもありません。
原作もかなり酷かったのですが、その原作を何故か骨抜きにするとは……。
原作は原作で「記憶喪失設定意味無いな……」と思ってたけど、ドラマ版は「棘の街」である意味が本当にない。
それと、サブタイトルにある「白骨死体は初恋の人の愛息!母親失格!帰郷刑事待つ同窓生の暗い秘密」のミスリードが凄い。
だって、本編にほとんど絡まないんだもの!!
特に「同窓生の暗い秘密」ってなんだよ!!
んなものは欠片も無ぇ……。
サブタイトルを見る限り朋絵がキーマンかと思う人は多いでしょう。
原作読んでて、内容知ってても戸惑ってしまったよ……。
これならサブタイトルは「捨てた街に潜む悪意とは?向き合うべき過去!記憶を失くした少年の秘密!」でも「名誉を取り戻すために捨てた街へと戻った刑事、そこで出会った少年の秘密とは?」でも良かったような……。
ただ、前半は面白かったんだ。
本当に原作より良かったんだ。
その理由は、原作よりもキャラクターに関して成功していたこと。
原作と比べて、キャラクター設定がマイルドになっているからでしょうね。
原作だともっとキャラが刺々しい感じがしてて、特に上条の傍若無人ぶりは凄くて……。
その点、ドラマ版ではキャラクターの個性として見ることが出来る範疇に収まっていたので良かった。
ここは評価ポイント。
とはいえ、この評価出来る点も結局はキャストの力ということになりそうだなぁ。
間違いなく豪華キャストは評価出来るドラマでした。
このキャストで別のドラマが視たかった……。
◆「堂場瞬一先生」関連過去記事
・金曜プレステージ「ミステリー特別企画!刑事・鳴沢了2〜偽りの聖母〜 美しすぎる女知事VS親子三代敏腕刑事!謎の連続殺人に秘められた女の愛憎劇死に彩られた闇の園」(5月20日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・土曜プレミアム 刑事・鳴沢了〜ベストセラー初映像化!東京テロ史上最悪の24時間「不死身の刑事VS青梅新宿…連続爆破テロ犯人質は都民1300万人!迫るタイムリミット」(5月29日)ネタバレ批評(レビュー)
・鳴沢了シリーズの1作「讐雨 刑事・鳴沢了」の書評です。
「讐雨 刑事・鳴沢了」(堂場瞬一著、中央公論新社刊)ネタバレ書評(レビュー)
<キャスト>
上條 元:仲村トオル
上杉朋絵:有森也実
記憶喪失の少年:浅利陽介
関谷 研:六角精児
太田黒警部補:渡辺いっけい
紅林刑事課長:西岡コ馬
萩原明浄:森本レオ
小野里康永:杉本哲太 ほか
(敬称略、順不同、公式HPより)
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