2011年06月20日

「名を刻む死(ミステリーズ!vol.47掲載)」(米澤穂信著、東京創元社刊)

「名を刻む死(ミステリーズ!vol.47掲載)」(米澤穂信著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

■創刊8周年&『髑髏城の花嫁』脱稿記念対談。田中芳樹×後藤啓介■第64回日本推理作家協会賞受賞第一作「名を刻む死」米澤穂信、「北欧二題」深水黎一郎■第21回鮎川哲也賞&第2回創元SF短編賞決定■ファンタジーの女王の死を悼む。追悼 ダイアナ・ウィン・ジョーンズ。最新短編「サマンサの日記」掲載■新連載 石持浅海が贈る、驚愕の学園ミステリ長編■読切短編 秋梨惟嵩&フレドリック・ブラウン■連載最終回。大団円ホペイロ坂上最後の事件とは? 「恋のハットトリック」井上尚登ほか

[祝 第64回日本推理作家協会賞受賞]
受賞のことば
米澤穂信  名を刻む死
●ルポライター大刀洗万智が暴く、孤独死の裏の寒々しい真実。心理的病巣を抉り取る、異色シリーズ最新作
 
深水黎一郎 北欧二題
●世界を旅する日本人青年が北の果て出合った二つの“謎”。傑作『花窗玻璃』番外編

第64回日本推理作家協会賞決定レポート
(新潮社公式HPより)


<感想>

「さよなら妖精」に登場したルポライター・太刀洗万智が活躍する短編です。

「ミステリーズ!」の公式だと「太刀洗」の字が違ってますね。
「大刀洗」になっていますが、「太刀洗」が正しい筈です。

では、内容を。

やっぱりイイですね〜〜〜。
ラストの締め括り方といい、ストーリーの運びといい、上手いなぁ。
アンケート内容の羅列部分以外はテンポよく進んでおり、面白く読めました。

気になる点は、伏線を隠す為とはいえ上記羅列部分が冗長だったことぐらいかなぁ……。
とはいえ、受賞後、第一作に相応しい出来だったと思います。

それと、管理人は太刀洗万智の作品は「太刀洗シリーズ」、あるいは「tシリーズ」と呼んでいたのですが、調べてみたところ「ベルーフ(ドイツ語で職業、転じて天職の意)シリーズ」と呼ぶそうです。
なるほど、言われてみれば納得です。

ちなみに、過去記事で同シリーズの「ナイフを失われた思い出の中に」も書評(レビュー)してますね。

「蝦蟇倉市事件2」(東京創元社)
(ナイフを失われた思い出の中に)

<ネタバレあらすじ>

田上という老人が死亡した。
第一発見者は近所に住む自営業を営む一家の息子・京介。
定年を迎えた田上は生活に困窮しており、栄養失調による死亡だった。
田上自身はご近所トラブルが絶えず、知人からも疎まれていたらしい。

「名を刻む死を遂げたい」と常々語っていたらしい田上。
雑誌に元会社役員・田上として投稿するほどその想いは強かった。
太刀洗は彼の望みの意味を探るべく京介に話を聞く。

特に覚えはないと語る京介を連れ、太刀洗は田上宅で出されることのなかった歴史雑誌のアンケートハガキを見つける。
書きかけのハガキには無職・田上と記されていたが……。

さらに、田上の息子にインタビューする太刀洗。
彼は、父親である亡き田上をまるで親の仇のように貶し続けた。
それこそ、そばで聞いていた京介がその剣幕に怯えるほど。

インタビューの終りに取材費を渡し領収書を受け取る太刀洗。
車の中で京介にある事実を教える。

それは、あのアンケートハガキが田上の手によるものでは無く、田上の息子の手によるものだと言うことだった。
根拠は2つ。

1つ、アンケートハガキの数字が領収証の数字と同じ物だったこと。
2つ、田上はプライドが高かったために「無職」である自身を嫌っていたが、アンケートハガキには「無職」を名乗っていたこと。

田上は雑誌への投稿の際にでさえ「元会社役員」を名乗っていた。
そんな人物がアンケートハガキに事実を書くだろうか?

京介は、そこでハッと気付く。
何故、田上の息子がそんな偽装をしなければならなかったか?
ひょっとして、彼が田上を殺したのでは?

だが、そんな京介の疑問に太刀洗はそっと首を横に振る。
田上の息子は何かをしたわけでは無い……むしろ、何もしなかったのだ。
田上の死の数日前、その家を訪ね父が困窮し命も残りわずかと知った彼は、そのまま見捨てたのだ。
それを隠すべくアンケートハガキに工作した。
すべては、自身の来訪を悟られないようにする為だった。

しかし何故、田上はそこまで肩書きに拘るのか?
常識的に考えれば、定年退職した人間が「元」のついた肩書きを使うだろうか?

そう、田上の語っていた「名を刻む死」とは、「無職」ではなく、社会的に有為な存在として「肩書き」を持って死ぬことだったのだ。
田上が恐れていたのは、自身が名乗った肩書きがそのまま通る雑誌はともかく、訃報に肩書きが「無職」として記載されることだった。

そこで、生前に田上はある行動を取っていた。
結果、1人の青年を大きく傷つけた。
傷つけられたのは京介だった。

田上は死の数日前に、京介の父を訪ね雇い入れてくれるよう頼んでいた。
すべては肩書きを欲したゆえだ。

あまりにも突拍子のないこの依頼を、京介の父は断った。
それを傍で見ていた京介は父の行いに反発し、気にかけたが為に田上の死体の第一発見者となったのだ。
京介は自身が田上を殺したと罪の意識を持っていた。

太刀洗は言う。
それは仕方がなかったことなのだ、と。
実は、太刀洗は取材先で京介の父から京介のことについて頼まれていた。

もし仮に、そこで雇っていればどうなったか?
名義上だけの事とは言え、田上が死ねば、社員を死なせたとして京介の父は批難にさらされる。
もちろん、それは家族や会社全体にも及ぶだろう。
他にも何が起こるか分からない……大人として当然の対応だった。

だが、京介は納得できない。
理屈で理解できても、心が理解できていないのだ。
太刀洗はそんな京介に「田上は悪人だったからああなったのだ」と言い聞かせるのだった。

田上は京介の心に名を刻み込んでしまったのである―――エンド。

◆ネタバレ書評(レビュー)
「インシテミル」(文藝春秋社)

「儚い羊たちの祝宴」(新潮社)

「追想五断章」(集英社)

「折れた竜骨」(東京創元社)

「蝦蟇倉市事件2」(東京創元社)
(ナイフを失われた思い出の中に)

オール讀物増刊「オールスイリ」(文藝春秋社刊)を読んで(米澤穂信「軽い雨」&麻耶雄嵩「少年探偵団と神様」ネタバレ書評)

「満願(Story Seller 3収録)」(米澤穂信著、新潮社刊)ネタバレ書評(レビュー)

「万灯(小説新潮5月号 Story Seller 2011収録)」(米澤穂信著、新潮社刊)ネタバレ書評(レビュー)

[小市民シリーズ]
「夏期限定トロピカルパフェ事件」(東京創元社)

[古典部シリーズ]
「氷菓」(角川書店)

「愚者のエンドロール」(角川書店)

「クドリャフカの順番」(角川書店)

「遠まわりする雛」(角川書店)

「ふたりの距離の概算」(角川書店)

【その他】
探偵Xからの挑戦状!「怪盗Xからの挑戦状」(米澤穂信著)本放送(5月5日放送)ネタバレ批評(レビュー)

「名を刻む死」が掲載された「ミステリーズ! vol.47」です!!
ミステリーズ! vol.47





太刀洗が登場!!
「さよなら妖精 (創元推理文庫)」です!!
さよなら妖精 (創元推理文庫)





【関連する記事】
posted by 俺 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評(レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。