<あらすじ>
タクシードライバーの夜明日出夫(渡瀬恒彦)は、元警視庁の敏腕刑事。ある日、夜明のタクシーに迎車の要請が入った。場所は、栃木刑務所、依頼人はなんと夜明の元同僚、警視庁の神谷警部(平田満)だという。その日出所する市川志穂(国生さゆり)を望みの場所まで送ってあげてほしいという依頼だった。
志穂は7年前に東京・台場で包丁を振り回す通り魔事件を起こし服役していたのだが、夜明は「罪はもう償われたのですから…」と何も聞こうとしない。夜明は、志穂が銀行の貸金庫に預けていた母の形見の人形を引き取ったり、書店に寄ったりするのにつきあい、最後にビジネスホテルまで送り届けた。
翌朝、神谷が夜明のもとに志穂の様子を聞きにやって来た。神谷は7年前の志穂の事件を担当したのだが、事件には納得できないものがあるという。そこへ、とあるマンションの非常用階段下で、男の死体が発見されたという事件の知らせが入った。夜明は、タクシーで神谷を現場に送ることに。
第一発見者は、今、大人気のSF作家・大島和樹(林泰文)で、死んでいたのは、和樹のマネージャーの竹村祐一(宮内敦士)だった。東山刑事(風見しんご)の話では、階段踊り場に複数の足跡があり、突き落とされて殺害された可能性が高いという。祐一は前夜11時ごろ出版社の担当編集者・陣内はるか(遠野なぎこ)にメールを送っており、その後に殺されたものと考えられた。奇しくも、はるかが勤めているのは、夜明の娘・あゆみ(林実穂)がアルバイトをしている出版社だった。
そんな中、死体が見つかった階段の踊り場で、長方形の紙片が落ちているのを所轄の馬場刑事(正名僕蔵)が発見した。その紙は万年筆のインクを吸い取る文房具“ブロッター”用の吸い取り紙で、中央に“♂(オス)”のような記号が残されていたが、そのマークがいったい何を意味するのかがわからない。
まもなく、その吸い取り紙に、被害者とは異なる血液型の血痕のほか、3人の指紋が残されていたことが発覚した。指紋のひとつは被害者、ひとつは不明、残るひとつはなんと、昨日出所したばかりの志穂のものだった。実は、幼い頃に養子に出され、苗字こそ違うが、和樹は志穂の弟だったのだ…!
罪を償ったばかりの志穂が、まさか殺人を犯すとは思えない夜明。志穂に淡い思いを抱く神谷もそう考えていたが、アリバイの微妙さや遺留品の指紋、状況としては志穂が最も疑わしかった。
その矢先、志穂が身を寄せている千葉・銚子で、今度は祐一の父親・英二(山本圭)が他殺死体として発見されて…!?
(土曜ワイド劇場公式HPより)
では、続きから……(一部、重複あり)
夜明は神谷の依頼で7年前に通り魔事件を起こし服役した志穂を出迎えることに。
通り魔事件の担当刑事が神谷だったのだ。
志穂は途中で光堂出版から発売された大島和樹の著作『さまようプラネット』を購入。
さらに、貸金庫に預けてあった人形を取り戻すと涙する。
そんな志穂の様子に強く心を動かされる夜明。
翌朝、大島和樹のマネージャー・竹村祐一が死体で発見される。
祐一は和樹の恩人・銚子科学センターの所長である竹村英二の息子だった。
現場近くからは「♂」マークが残ったブロッターが発見されたが……。
和樹とはるかは死亡推定時刻に会議室で打ち合わせしていたとアリバイを主張。
ブロッターから該当者不明の指紋と志穂の指紋が検出。
早速、志穂が事情を聞かれることに。
志穂によれば、祐一の死亡推定時刻には宿泊したホテル近くのバー「エリス」に居たと云う。
アリバイが成立した志穂を夜明は銚子まで送り届ける。
銚子では市川家を古くから知る古沢とその妻が志穂を待っていた。
古沢の紹介で志穂は土産物屋で働き出すことに。
翌日、和樹を銚子まで送ることになった夜明。
光堂でアルバイトしている夜明の娘・あゆみによれば、はるかの和樹にかける情熱には並々ならぬものがあるらしい……。
和樹ははるかには感謝しているが、志穂は軽蔑していると吐き捨てる。
困惑する夜明だったが、あゆみの持っていた『さまようプラネット』の表紙にブロッターにあったものと同じ「♂」マークを見つける。
ここで、「♂」マークが太陽系の8つの惑星のひとつ「火星」を示していると判明。
一方、ブロッターが古いものだったこと、英二が竹村祐一と揉めていたことなどから、英二に祐一殺害の容疑がかかる。
神谷は志穂と再会。
「7年前の通り魔事件が誰かを狙った犯行ではなかったか?」と疑問を口にする。
「祐一殺害も志穂の犯行ではないか?」と疑う神谷。
志穂のアリバイは祐一が携帯からメールを送信した為に死亡推定時刻がずれたことにより成立していた。
神谷はメール自体が偽装されたものではないかと考えたのだ。
夜明の同僚・野村が祐一殺害当日に英二を乗せていたことが判明。
ところが、野村の証言によれば英二は死亡推定時刻には既に銚子行きの電車に乗っていたことになる。
こうして、英二の容疑は晴れる。
夜明の提案で和樹を疑う神谷。
普段と違い素直に意見に耳を傾ける神谷に違和感を抱いた夜明は神谷に事情を尋ねる。
22年前、志穂は強盗殺人の被害に遭い両親を一度に失くしており、神谷は志穂に同情していた。
そんな神谷にそれは志穂への恋ではないかと指摘する夜明。
あゆみが和樹から預かった原稿から「♂」のマークが入った書類を見つける夜明。
それは英二の手によるもので、ブロッターに残されたものと合致していた。
1988年の原稿であることに気付いた夜明は22年も前のブロッターを保存していたことを疑問に思う。
22年前との共通項から志穂の両親殺害との関連を疑うが……。
古くから市川家と付き合いのある古沢から22年前の事件について聞く夜明と神谷。
なんでも、英二は志穂の祖父の代から寝屋子として市川家と縁があり、資金援助もして貰っていたらしい。
ところが、22年前に志穂の祖父が死亡する。
英二は遺言により遺産の半分を貰うことになり、それに反対した志穂の両親と対立。
強盗殺人事件直前には相当根深いものになっていたと云う。
当然、志穂の両親殺害後は英二に容疑がかかったらしい。
だが、22年前の事件当日、英二はプラネタリウムでナレーションしておりアリバイがあった。
その後、渡米した英二は成功すると帰国。
今度は過去の自分のように和樹を自身の寝屋子としたのだ。
志穂の通り魔事件当日に英二が事件現場に居たことが判明。
志穂の狙いは英二だったのだ。
神谷は志穂が英二と祐一を殺害したのではと疑う。
はるかと英二が対立関係にあったことが分かる。
はるかにも容疑が向かうが……。
野村が乗客の煙草と香水について夜明に愚痴をこぼす。
車内に匂いが残ることには同じだと云うのだ。
夜明はこの話をヒントに事件の真相に辿り着く―――。
神谷は最近になって祐一が携帯電話を購入したことに注目。
そこから、はるかが祐一殺害当日に和樹のアリバイを偽証したことを突き止める。
祐一は殺害された当日に携帯電話を購入していたのだ。
しかも、そこからは和樹の指紋が検出されていた。
つまり、殺害当日に和樹は祐一と会っていたことになる……。
一方、夜明は志穂と接触。
真犯人が分かったと告げるが……。
その頃、神谷は和樹に22年前の事件の犯人が英二だったとぶつける。
さらに祐一殺害時に和樹が祐一の部屋に居たことも指摘する。
そこへ夜明と志穂が現れる。
和樹は自分が祐一を殺害したと語るが、夜明はそれを否定する。
夜明は志穂もまた現場にいたと云うのだ!!
銀行の貸金庫に残された人形には保存の為に樟脳が必要だった。
その匂いが祐一の部屋で発見されたブロッターからも香ったのだ。
つまり、ブロッターも人形も保存していた人物は同じ志穂だったことになる。
祐一殺害を認める志穂。
志穂は真相を語り始める。
7年前、英二の原稿にブロッターと同じ「♂」マークを見つけた志穂。
志穂は両親殺害時の英二のアリバイがナレーションを録音したテープによるものと見抜き、彼を問い詰めた。
ところが、英二は和樹を寝屋子として可愛がっていることを盾にとる。
これにカッとなった志穂は英二を襲撃したのだ。
これが通り魔事件の真相だった。
そして、現在。
和樹の著書を目にした志穂は英二への復讐を捨て、英二に自首してもらう道を選ぶ。
英二に引き合わせてもらえるよう祐一に依頼しようとするが、そこで祐一に襲われる和樹を目撃。
助けるべく祐一を殺害してしまう。
志穂のアリバイは和樹がメールを偽装した為に成立していた。
この際、志穂は和樹に3日だけ待ってくれるよう頼み込む。
英二に真相を確認し、自首を促す為だった。
ところが、志穂の行動から和樹は英二が両親の仇と気付いてしまう。
志穂をそれとなく見張った和樹は、逆上した英二が志穂を殺害しようとする現場を見てしまい、咄嗟に英二を殺害してしまう。
これが事件の真相だった。
志穂がブロッターを祐一宅に残した理由は、英二が自首に応じる可能性が低いことを見越し、もし口封じに自分が殺害された場合に真相への手掛かりを神谷に残そうとしたものだった。
なぜ、7年前に真相を明かさなかったのか?
そう問う和樹。
志穂は答える。
純粋な性格の持ち主である和樹。
だが、その根底には激情が隠されていると志穂は思っていた。
仮に真相を知れば、和樹は英二を殺してしまう……それを避けるためだった。
志穂は和樹を見守り続けていた。
そして、和樹もまた小説の中で姉を思い続けていたのである……。
「祐一殺害も英二殺害も殺意はなかった筈です」と語る夜明。
その言葉を背に志穂と和樹は連行されて行く。
残された神谷は夜明にもう一度迎車を依頼する。
それは、未来の志穂のもの。
夜明は喜んで応じる。
後日、あゆみは次なるバイトを見つけていた。
水族館だそうである―――エンド。
<感想>
前回の2010年12月11日放送分(第28弾)に次ぐ第29弾です。
2011年3月19日には第26弾の再放送も行われています。
第28弾からは半年ぶり、再放送からは4ヶ月ぶりの新作放送となりました。
・第28弾はこちら。
土曜ワイド劇場「タクシードライバーの推理日誌 能登和倉〜午前3時の同乗者!!深夜ラジオに届いた殺人リクエスト!?」(12月11日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・再放送はこちら。
2011年3月19日(土)……今夜の土曜ワイド劇場は傑作選「タクシードライバーの推理日誌26 東京〜京都・琵琶湖、土地鑑のある乗客」です!!
さて、今回も前回同様“夜明の法則”は発動したのでしょうか?
この法則をいかにストーリーに放り込んで来るか(または捻ってくるか)が本シリーズの見所。
解説!!夜明の法則とは―――
土曜ワイド劇場「タクシードライバーの推理日誌」にて適用される法則。
犯人(女性)は夜明のタクシーに乗りアリバイを作る。
そして、最初に疑われる。
が、夜明が「あの人は犯人じゃない、だってアリバイあるし」と頑固に庇う。
別の容疑者浮上。
だが、急に夜明の気が変わる(偶然、何かに気付く)。
夜明アリバイ崩しに挑戦。
やっぱり、あの人が犯人でした。
―――完―――
のこと。
はい、発動しました。
もはや様式美ですね。
でも、今回は良かったような気がします。
気のせいかもしれませんが……。
とりあえず、今回で気にかかった点は次の通り。
・やっぱり、夜明よりも神谷の方が凄ぇ(肝心なところが全部当たってる)!!
・馬場刑事の存在意義は?匂いだけ?
・同じく東山たちの影が薄い……。
・夜明同様にあゆみもヤバいフラグを立て過ぎ(バイト先で必ず人が死ぬ……)。
・「♂」マークはあまり関係ないよね。別に他でもいいし。
あぁ……それと、視聴者に伝わりづらい匂いを伏線にしたのはちょっとどうかな……。
伏線にするのならば、それと描写を入れるべきでは?
まぁ、その描写が馬場刑事の参入なんだろうけど弱い……というか描写になっていないような。
でも、なんだか良かったような気がするんだ……なぜだろう?
ラストも良かったし。
本当に不思議と良かった。
そうそう、作中に出て来た「寝屋子」。
ウイキペディアによれば、「三重県鳥羽市の答志島答志町で古くからおこなわれている風習。一定年齢に達した男子を世話役の大人が預かって面倒を見る制度」のことだそうです。
たしか、薩摩でも似たような「郷中」という制度があった気がします。
「一人前の男子であると認められる為に必要だった」とかあった筈なので、全国にある制度なのかもしれませんね。
それと、寝屋子制度から米澤穂信先生のアノ作品を思い出しました。
気になる方は過去記事をどうぞ!!
・「満願(Story Seller 3収録)」(米澤穂信著、新潮社刊)ネタバレ書評(レビュー)
ちなみに「タクシードライバー」シリーズの原作は「木枯らし紋次郎」の著者で知られる笹沢左保先生の「タクシードライバーの推理日誌」シリーズ。
とはいえ、本作においてはモチーフというべきでしょう。
完全に別物なので、そこは注意。
◆関連過去記事
【シリーズはこちら】
・土曜ワイド劇場「タクシードライバーの推理日誌26 東京〜京都・琵琶湖、土地鑑のある乗客」(1月23日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・土曜ワイド劇場「タクシードライバーの推理日誌 甲州石和〜殺意の子守唄!!車内に赤ちゃんの忘れ物…!?密封された死体の謎」(10月9日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・土曜ワイド劇場「タクシードライバーの推理日誌 能登和倉〜午前3時の同乗者!!深夜ラジオに届いた殺人リクエスト!?」(12月11日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・2011年3月19日(土)……今夜の土曜ワイド劇場は傑作選「タクシードライバーの推理日誌26 東京〜京都・琵琶湖、土地鑑のある乗客」です!!
<キャスト>
夜明日出夫:渡瀬恒彦
神谷警部:平田 満
東山刑事:風見しんご
国代刑事:小林 健
西村あゆみ:林 美穂
橋本係長:佐藤二朗
馬場刑事:正名僕蔵
市川志穂:国生さゆり
大島和樹:林 泰文
陣内はるか:遠野なぎこ ほか
(順不同、敬称略、公式HPより)
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