嫉妬と悪意の闇に笑う匿名の殺人鬼」(7月9日放送分)ネタバレ批評(レビュー)です。
<あらすじ>
ある日、信誠警備の契約者、田村久実(寺田千穂)が自宅で殺害される。警報を受け急行した五十嵐杜夫(小林稔侍)らは、途中、飛び出してきた男と接触しそうになりながらも、いち早く現場に到着。第一発見者となるが、現れた刑事の太田勝利(金田明夫)には、犯罪を防げなかった警備システムも警備員も「役立たず」だと切り捨てられてしまう。憤る黒崎主税(小泉孝太郎)たち。しかし、五十嵐は、犯人への怒りや守れなかった悔しさを口にしない若い隊員たちを、「警備員失格だ」と厳しい言葉でいさめる。
五十嵐の言葉を真摯に受け止めた黒崎らは、事件当夜の警備データをていねいに調べ始める。すると、警報機が作動する直前、田村家のインターフォンを押す若い男が映像に記録されていた。それは、田村家に向かう途中、車の前に飛び出してきた男だった!
事件翌日、信誠警備には契約解除の電話が相次ぐ。殺人を防げなかったことで、近所に悪い評判が出回っているらしい。手続きのため戸別訪問する五十嵐は途中、太田刑事に遭遇する。太田はこの住宅街に住んでいることから、事件の聞き込みを担当していた。しかし、この日の太田の目的は、所在の分からない一人息子を探すこと。太田は3年前、妻を自殺で亡くしていたが、以来、息子の航平(山口賢貴)と上手くいっていないのだ。五十嵐は、太田を心配する近所の主婦から、一緒に航平を探してあげてほしいと写真を渡される。それは、事件の夜、車の前に飛び出してきたあの男だった…。
一方、信用回復のため、航平を捜し出そうと田村家周辺を巡回していた黒崎は、先日、突然引っ越していった井上照美(大島蓉子)を目撃する。照美は原口家の戸口に立つと、いきなりゴミをばらまき出す。止めに入った黒崎に照美は、涙ながらにその訳を話し始める。照美は原口家の主婦、美紀子(比企理恵)から、陰湿ないじめを受けていたという。そのせいで引っ越しするはめになった照美は、久実ではなく美紀子が殺されれば良かったのにとまで口走る…。
その夜、再び田村家に不審者が侵入する。幸い、パトロール中の御子柴守(増田修一朗)らが駆け付け事なきを得るが、現場から逃げた男はなんと航平だった。そしてその直後、第2の殺人事件が発生。美紀子が刺殺体で発見され、その現場には航平が持ち歩いていた亡き母の形見が…!
その後、黒崎は田村家周辺の主婦たちで作る裏サイトを発見。サイトは、信誠警備の悪口はもちろん、近所の主婦たちの誹謗中傷であふれかえっていた。中には、久実に関する書き込みも。それは、近所に住む政治家の妻、高橋千晶(雛形あきこ)から、久実が大金を手にしたというものだった…。
(写真・あらすじ共に公式HPより)
では、続きから(一部、重複アリ)……。
田村家に侵入した不審者は航平だった。
航平は久美が死んだ直後にもかかわらず若い女と関係を持っていた田村を批難。
さらに久美殺害犯ではないかと考え、自白を迫ろうと襲ったのだ。
だが、警報装置によりパトロール中の御子柴らが駆け付け、事無きを得る。
その夜、近所の奥様方のリーダー・原口美紀子が刺殺体で発見される。
現場に落ちていたパワーストーンから大島は航平の犯行を疑う。
大島と航平の隔絶の原因となった大島の妻の自殺が裏サイトによるものと判明。
どうも、自転車の2人乗りを注意するなどしたことから反感を買い、あることないことを裏サイトに書き込まれ、イジメの標的にされたらしい。
警察は、これが原因で裏サイトに出入りしていた久美と美紀子を航平が殺害したと断定。
航平は容疑者として拘留されてしまう。
父である太田は当初こそ航平の犯行を信じていたものの、五十嵐に「子供を信じるよう」諭されたことから航平の無実を証明するために五十嵐と捜査を開始する。
航平が久美の死亡当日に田村家を訪ねたのは久美の夫である田村が若い女と不倫していることを知った航平が久美に知らせるためだったらしい。
裏サイトの情報から高橋千晶が久美に300万円という大金を手渡していたことが明らかになる。
太田は千晶を疑う。
千晶と殺された久美の郷里が甲府と判明。
甲府へと向かった五十嵐たちに千晶の父・仙道孝夫は娘の無実を主張する。
「お互いにそれぞれの事情で妻を亡くした身でしょう。子供は信じないと……」
その仙道の言葉がやけに胸に残る五十嵐だった……。
14年前、久美が指名手配中の連続婦女暴行犯の殺害事件で第一発見者になっていたことが分かる。
現場の状況から、襲われた被害者が身を守るためにそのまま加害者になったと思われたが、この事件の犯人は未だに捕まっていなかった。
当時の久美の証言によれば30代の女性が現場から逃げ去るのを見たらしいが……。
五十嵐はこの加害者こそが千晶なのではないかと考える。
久美が千晶の為に偽証したのではないかと推理したのだ。
いずれにしろ手掛かりがない。
そこで、五十嵐はインターホンが押されると玄関モニターに映像が録画される機能を利用することを思い立つ。
そこに久美殺害の犯人が映っているのではと考えたのだ。
こうして、同機能を利用している町内全域の家を訪ね、映像を回収することに。
その中から、久美殺害の事件当日、久美と共に歩き去る不審な人物の映像を発見した五十嵐。
五十嵐はその映像の人物の背中に蛍光素材が使われていることに気付く。
それは五十嵐が知るある人物が着用していたウインドブレーカーのものだった。
そこで五十嵐は、さらにもう1人殺される可能性があると気付く。
数時間後、美紀子と親しくしていた杉村妙子の家に忍び寄る影がひとつ。
その手には鋭く光るナイフが握られていた……。
影は妙子を殺害しようとするが……そこへ五十嵐たちが飛び込んで来る。
すべては五十嵐の罠だったのだ。
既に妙子は保護されているらしい。
五十嵐は影の人物の名前を呼ぶ、「仙道さん」と―――。
そう、久美と美紀子を殺害したのは千晶の父・仙道だったのだ。
仙道は五十嵐たちが甲府を訪ねた際に「それぞれの事情で妻を亡くした」と語っていた。
だが、五十嵐はともかく太田の妻が自殺したことを何故知っていたのか。
そこに気付いた五十嵐は仙道を疑っていた。
さらにウインドブレーカーが決め手となって仙道の犯行を確信したのだ。
では、仙道はどこで太田の妻の自殺を知ったのか?
それは例の裏サイトからだった。
嫁に出した娘・千晶の近況を気にかけていた仙道は裏サイトを覗き情報を得ていたのだ。
14年前、千晶は正当防衛で人を殺してしまった。
自首を主張する千晶を止めた仙道は、久美が偽証してくれていることを知りほっと胸を撫で下ろしていたが……。
最近になって、裏サイトの書き込みから千晶が久美に脅迫されていると知った。
そこで、久美の口を封じるべくこれを殺害。
さらに美紀子や妙子が千晶の弱味を握ろうとしていることを書き込みで知り、美紀子を殺害。
妙子も殺害しようとしたのだった。
美紀子の殺害現場に落ちていた航平のパワーストーンは久美殺害時に航平が落としたものを拾って利用したらしい。
「まさか、千晶とあの女(久美のこと)が近所になるなんて……」
運命を嘆く仙道。
「娘さんを助けようとしたことは分かりますが、方法が間違っていたんです」
そんな五十嵐の言葉を背に仙道は連行されて行く。
こうして、真犯人・仙道が捕まり事件は解決した。
航平は罪が晴れた為に自由に。
しかも、母の死の真相を知ったことで太田との溝を埋める。
一方、裏サイトに廃止の呼び掛けを書き込む黒崎。
そして、それを読む街の人々の姿があった。
街は変わることが出来るだろうか―――エンド。
<感想>
「炎の警備隊長・五十嵐杜夫」シリーズ第9弾。
前作が2010年1月16日の放送なので、実に1年6ヶ月ぶりの新作となりました。
前作はこちら。
・土曜ワイド劇場「炎の警備隊長・五十嵐杜夫8〜天下り官僚連続殺人!幼子の命を奪った13年前の欺瞞!突かれた個人警備の思わぬ盲点!?」(1月16日放送分)ネタバレ批評(レビュー)
では、ドラマの感想を。
今回はかなり高評価です。
内容は重く辛いものでしたが、シナリオ自体は伏線も上手く張られており良かったと思います。
伏線のうち、犯人断定がシンプルながら力強かったのもポイント。
視覚的には「ウインドブレーカー」が、論理的には「仙道が太田の妻の死因を何故知っていたのか」が効果的でした。
それと、テーマである「親子の繋がり」もきちんと描かれており好印象。
もう1つのテーマである「街の秘密=裏サイト」も、最後まで本筋と関わってました。
しかも、殺害の動機とも密接に関連しており上手く運ばれていたように思います。
ラストが問いかけで終わるのも良かった。
ストーリー自体も目が離せないものでしたし。
なんか、本当に凄いなぁ……。
個人的には2011年の2時間ドラマの中でも5本の指に入る出来だったのでは、と思います。
これは「管理人が選ぶ2時間ドラマアカデミー賞・2011」ノミネートは堅いな。
ちなみに2010年度の結果はこちら。
・【企画】2時間ドラマアカデミー賞&ラズベリー賞、ついに発表!!
<キャスト>
五十嵐杜夫:小林稔侍
黒崎主税:小泉孝太郎
坂本華:大島さと子
五十嵐雅子:加藤貴子
中島秀雄:小林健
御子柴守:増田修一朗
小松仁:六角慎司
仙道孝夫:中丸新将
高橋千晶:雛形あきこ
太田勝利:金田明夫 ほか
(公式HPより、敬称略)
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