<あらすじ>
警視庁捜査一課刑事・本間俊介(上川隆也)は強盗犯逮捕の際に足を撃たれて負傷し、現在休職中。妻・千鶴子を交通事故で半年前に亡くし、9歳の息子・智と2人で暮らしている。
そんなある夜、千鶴子のいとこの息子で銀行に勤務する栗坂和也が「相談がある」といって訪ねてきた。和也は婚約者の“関根彰子”を捜してほしいという。
彰子は、銀行と取引きのある、事務機器販売会社の事務員。結婚を前に彼女にクレジットカードの作成を勧めたところ、カード会社のブラックリストに載っていることが判明。5年前に自己破産していたとわかったというのだ。債権者30人、負債総額1000万円…。どういうことなのかと問い詰めた直後、彰子は和也の前から姿を消してしまった。
「彼女が心配なんです」と土下座する和也を前に断りきれず、「あまり期待するなよ」といって調査を引き受けた本間。和也から借りた彰子の写真は、美しいが冷たく、悲しげな眼差しをたたえていた…。
杖をつきながら、彰子がつい先日まで勤めていた事務機器会社を訪ねた本間。社長の今井四郎は彰子のことを「モデル並みに背が高くて美人なのに、地味で控えめだった」と語る。しかし、今井が保管していた彰子の履歴書の職歴欄はまったくのデタラメだった。以前の勤め先として記載されていた会社は、どれも実在しないものだったのだ。
何かがおかしい…。次に、5年前に彰子の破産手続きをした弁護士の溝口悟郎のもとを訪れた本間。溝口は、彰子がクレジットカードのローンが発端で借金地獄に陥ったことを打ち明け、「髪を赤く染めていて小柄。はすっぱな物言いをするが、根は純朴な子だった」と振り返る。赤い髪? 小柄…? 嫌な予感を覚えた本間は、念のために、と関根彰子の写真を確認する。
少しの沈黙の後、溝口は言った。
「この女性は、関根彰子さんじゃない。あなたは別の人の話をしている」。
和也が婚約した女性は、“関根彰子”ではなかった。彰子を名乗り、和也と婚約までした女は、何者なのか。そして消えた女が彰子でないなら、本物の彰子はどうしているのか…。
痛む足を引きずり、捜査一課の刑事・碇貞夫(寺脇康文)の力を借りながら、2人の彰子が残したわずかな痕跡を、ひとつずつ調べていく本間。“本物の彰子”の故郷、栃木・宇都宮を訪ねたところ、彼女の幼なじみだという本多保から、3年前の彰子の母の法要の際、見慣れないサングラスの女がうろついていたことを聞く。いつしか事件の匂いを感じ、捜査に没頭していく本間の前に、やがて驚愕の真実が浮かび上がる…!
(公式HPより)
では、続きから(一部、重複アリ)……。
調べて行くうちに、彰子を名乗った女性が下着会社「ローズレイン」に勤めていたことが判明。
そこで女性の名前が“新城喬子”だと分かる。
喬子が彰子に目をつけたのは、顧客名簿から突き止めたものと思われた。
新城喬子は過去に結婚しており、3か月で離婚していた。
本間は過去を調べるべく三重県へと向かう。
三重で知った喬子の過去は壮絶なものだった。
喬子の元夫によれば、喬子の両親には借金があり一家離散。
喬子自身とは関係ないと結婚したものの、そこへも取り立て屋が現れてしまう。
こうして、家族に多大な負担がかかり始めることに。
喬子は父が死亡していれば、借金に追われることも無くなることから死亡公告を死に物狂いで調べた。
その鬼気迫る姿を浅ましいと感じてしまった為に離婚したらしい。
喬子は喬子として生きて行くことを否定されていたのだ。
こうして、新城喬子は彰子に成り代わったが当の彰子もカード破産していた。
「まるで共食いだ……」本間の報告を聞いた碇が呟く。
名古屋にいる喬子の友人を訪ねた本間。
友人によれば3年前に会ったのが最後だと言う。
その際の喬子はぶるぶると震え、腕に火傷していたらしい。
その後、1週間入院していた。
その1ヶ月後、彰子に接触、さらに1ヶ月後、彰子を名乗るようになった。
つまり、本物の彰子は既に殺害されている可能性が高い。
本間はここまでで2点疑問を抱いた。
ひとつ。どうやって、ローズレインの顧客名簿を手に入れたか?
ふたつ。腕の火傷の意味は何か?
悩む本間。
そこへ、彰子の幼馴染・保から思わぬ情報が寄せられる。
彰子の卒業アルバムが別の同級生のもとへ送り届けられていたらしい。
過去、彰子は死んだら校庭に埋めて欲しいと訴えていた。
もしも、それを犯人が知っておりアルバム同様に罪滅ぼしの意味で叶えようとしていたら。
彰子は校庭に埋められているのではないか?
保は校庭を掘り返すと本間に告げる。
入力したら原本は不要になる、そして保存義務。
本間は喬子が顧客情報を入手した方法に気付く。
それは、喬子と交際していた上司が喬子に頼まれ、入力済みのアンケートはがきを渡したものだった。
こうして、喬子が入手した情報と同じものを手に入れた本間。
リストを見たことで、標的が複数いた可能性に思い至る。
第1、第2と候補者が居たと考えたのだ。
喬子は腕に火傷を負っていた。
つまり、彰子の前に第1候補となる人間の身内を襲っていたのだ。
天涯孤独の身に追い込み、戸籍を奪う為である。
ところが、この襲撃に失敗。
そこへ、彰子の母の事故死を知り、天涯孤独となった彰子へと標的を切り替えたのだ。
喬子にとって彰子の仮面が剥がれた今、新たな仮面が必要だ。
だが、今更新たに標的を捜すのは難しい。
以前の第1候補者が狙われる可能性がある……。
リストを頼りに片っ端から確認を入れる本間と碇。
結果、3年前に姉が放火事件で重傷を負ったという女性が判明する。
その姉もつい最近死亡したと言う。
女性によれば、最近になって姉の友人を名乗る人物から連絡があり、今度会うらしい。
相手の名前は新城喬子だった……。
保は校庭を掘り返していた。
なんでも、事務員が喬子らしい女性を見かけたらしい。
その際に、喬子は死亡した友人の想い出を語ったそうだが……。
約束の日。
喬子を待つ女性の姿があった。
それを遠くから監視する本間と碇。
そこへ喬子がやって来る―――。
一方、校庭は本格的に掘り返されていた。
そして、彰子の遺体が発見された。
喬子は何も知らず、席に着くと目の前の女性に笑いかけた。
そこへ本間が近付く。
「新城喬子さんですね、あなたの話を聞かせてください」
本間が声をかける。
喬子は何かを応えようとして―――。
エピローグ
本間の息子が愛犬を見つけた。
1人と1匹は外へと飛び出していく―――エンド。
<感想>
ドラマ原作は宮部みゆき先生の「火車」(新潮社刊)。
韓国でも映画化されたそうです。
・宮部みゆき先生「火車」が韓国で映画化!!
過去記事にてネタバレ書評(レビュー)ありますね。
興味のある方はどうぞ!!
・『火車』(宮部みゆき著、新潮社刊)ネタバレ書評(レビュー)
では、ドラマの感想を。
ラストが改悪かなぁ……。
本間は実際に喬子に声をかけちゃ駄目だと思う。
あれなら、階段に足をかけてモノローグで良かった。
それと、本間の息子が愛犬を見つけるエピローグもどうか。
おそらく、本間の息子=本間、その愛犬=喬子で、闇を彷徨っていた喬子が本間と出会い救われた描写なんだろうけど明らかな蛇足。
そこは視聴者の想像に任せるべき。
あれでは、印象が途切れてしまう。
それと、実際に彰子の死体が見つかったのも印象を散漫にさせた原因。
『火車』はあくまで喬子の物語なのでそれで絞るべき。
あそこは原作同様に保もラストに立ち会わせるべきだった。
エピソードについても不満点が。
確かに原作に比べても、エピソードを丁寧に拾っていました。
ただ、余りにも拾い過ぎて、ひとつひとつのエピソードが薄くなってしまったような……。
もうちょっと、取捨選択してもいい気がする。
特に彰子よりは喬子のエピソードの方が重要な筈で、どちらかといえば三重県の元夫のエピソードを膨らませ、ピッピちゃんは削っても良かったかも。
あのラストだから残したのでしょうが、それならばあのラストにする必要はなかった筈。
いろいろ、不満が残るドラマ版でした。
ただ、喬子が父の死を確認する為に鬼気迫る表情になるエピソードを入れていたのは評価できる点かな。
◆宮部みゆき先生関連過去記事
【書評】
・「魔術はささやく」(宮部みゆき著、新潮社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・「パーフェクト・ブルー」(宮部みゆき著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・「燔祭(鳩笛草 燔祭/朽ちてゆくまでより)」&「クロスファイア(上・下巻)」(宮部みゆき著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)
【ドラマ】
・金曜プレステージ「3週連続・罪と女とミステリー最終夜!宮部みゆきスペシャル 魔術はささやく〜大ヒット原作が今蘇る!大罪を犯した女を襲う復讐地獄…死の着信が私を今日殺す!姿なき悪魔は誰?」(9月9日放送)ネタバレ批評(レビュー)
【その他】
・宮部みゆきさんの「パーフェクト・ブルー」ドラマ化!!
・宮部みゆきさん「パーフェクト・ブルー」ドラマ化・続報!!
・宮部みゆき原作「パーフェクト・ブルー」ドラマ版が劇場公開決定!!
・映画「パーフェクト・ブルー」2010年11月24日DVD発売決定!!
・柳家花緑さん、宮部みゆき先生「我らが隣人の犯罪」を演ずる!!
・宮部みゆき先生新作「ペテロの葬列」が岐阜新聞で6月21日より連載開始!!
<キャスト>
上川隆也
佐々木希
寺脇康文 ほか
(順不同、敬称略、公式HPより)
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このドラマは、先日の「砂の器」同様、原作に忠実たらんとするスタッフの努力は評価したいです。
ただ校庭に骨が埋まっていたのはどうかと思いました。保の慟哭を見せたかったのでしょうが、ちょっと現実離れしているかと。
いつも楽しく拝見させていただいてます
食わず嫌いのない、受け皿の広いレビューすばらしいです。
そんな管理人様にぜひぜひ知ってもらいたい作品があります。
「探偵・癸生川凌介事件譚 仮面幻影殺人事件」です。
知名度の低いDSのゲームなのですが子供向けに見せかけたキャラクターデザインに反して、シナリオが骨太でよくできてます。
なぜこんな書き込みをしたかと言うと、良くできた作品なのにあまり世で知られてないことが勿体なく感じられたからです。
ぜひぜひいつかレビューを拝見させていただければ光栄です。
駄文失礼しました。
いつもこっそりと読ませていただいております。
10年くらい前?に財前直見さんや三田村邦彦さんでドラマ化されたやつのほうが力が入り過ぎなくてよかったかな、なんて思っています。
今回のが出来が悪いというわけではありませんが。
制作費の問題なのかどうかはわかりませんが、通常の土曜ワイド枠で宮部作品が映像化されたなんて信じられない方がいらっしゃるかもしれませんね。
コメントありがとうございます!!
管理人の“俺”です(^O^)/。
同感です!!
ドラマ版は確かに原作に忠実でした。
でも、あのラストの校庭のくだりが原作と違うのが……。
何故、あそこを改変したのかなぁ……。
原作同様に保も喫茶店に同行させても充分だったと思います。
コメントありがとうございます!!
管理人の“俺”です(^O^)/。
ご紹介して頂いた「探偵・癸生川凌介事件譚 仮面幻影殺人事件」。
早速、調べてみました。
アプリのゲームがDSで発売されたものとのこと。
評判はなかなか硬派で面白いみたいですね。
仰られていたイラストについても、硬派な内容とのミスマッチが良いとの意見を見ました。
ただ、ラストに何かあるようですね。
ちらほら見たものをまとめると、ひょっとしてクリスティ作のあれのパターン!?
ゲーム批評(レビュー)は、これまでに「有罪×無罪」1本しかしていませんが、もしも手に入ればプレイしてみますね。
情報ありがとうございました(^O^)/。
コメントありがとうございます!!
管理人の“俺”です(^O^)/。
『火車』は以前にもドラマ化されていたんですよね。
管理人は残念ながらそちらは視たことが無いんです(泣)。
聞いたところによるとラストが良かったとか。
今回のドラマ版とも違っていたのでしょうか?
気なりますね……。
宮部先生作品で土曜ワイド劇場でのドラマ化といえば石黒賢さん主演『龍は眠る』を再放送で視たことがあります。
あれはなかなか良かった。
そう言えば、今はドラマ化されると通常枠ではなくスペシャル枠になってますね。