2011年08月15日

『ボクら星屑のダンス』(佐倉淳一著、角川書店刊)

『ボクら星屑のダンス』(佐倉淳一著、角川書店刊)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

身代金は100億! 冴えない中年男と若き天才が企てた、驚愕の偽装誘拐。横溝正史ミステリ大賞テレビ東京賞を受賞した、感動のミステリ!

前代未聞の身代金100億円の誘拐事件!
生きる勇気が湧いてくる感動のミステリ
――第30回 横溝正史ミステリ大賞 テレビ東京賞受賞作――

借金で浜名湖に入水しようとしていた浅井久平は、同じく自殺を図る不思議な子どもヒカリと出会った。ヒカリは最先端科学センターから逃げ出してきた天才だという。半信半疑ながらも一緒に逃避行を始めた久平。一方、内閣官房から指令を受けた警察はヒカリの捜索を開始。だが、ヒカリはネットを駆使して逆にみずから誘拐を装い、100億円を要求した。果たしてヒカリたちは現金を奪取し、偽装誘拐を完遂できるのか?
(角川書店公式HPより)


<感想>

「第30回横溝正史ミステリ大賞 テレビ東京賞」受賞作です。
なお、第30回の大賞受賞作は『お台場アイランドベイビー』でした。
詳しくはこちらの過去記事をどうぞ。

第30回横溝正史ミステリ大賞発表!!受賞作は「お台場アイランドベイビー」に!!

そんな本作ですが、個人的な感想では『お台場アイランドベイビー』よりもこちらの方が上だと思います。
こちらの方が面白かった。
ただ、これは「ミステリ」というよりは、ハートウォーミングな人情物語でしょう。

物語の内容としては、久平とヒカリの交流を通じて互いが絶望から希望を抱くよう成長する物語。
人と人との出会いの大切さに触れています、これが本テーマ。

ね、やっぱりミステリっぽくないでしょう。
あえて、ミステリでこれに近いものを上げれば、天藤真先生の『大誘拐』でしょうか?
構図的にも、似てますね。

@狂言誘拐である。
A大きな意味で被害者はいない(本当はいるけど……)。
B犯人は逃げることなく、前向きに新たな人生を歩む。
C身代金の受け渡しにトリックが用いられている。

けれど、『大誘拐』が誘拐の攻防それ自体をテーマとしているのに対し(もちろん、それだけではありません)、こちらは久平とヒカリの交流がテーマになってますからね。
ミステリっぽくない。

もっとも、身代金の受け渡し方法についてはこちらも負けていないトリックが用いられています。
ここにも是非、注目してもらいたいポイントです。

個人的には読んで損のない作品だとは思います。

ちなみに『ボクら星屑のダンス』はテレビ東京さんにてドラマ化が決定。
2011年秋放送予定とのこと。

2011年10月7日追記

第30回横溝正史ミステリ大賞 テレビ東京賞受賞作品「ボクら星屑のダンス(サスペンスドラマSP ボクら星屑のダンス 身代金100億の誘拐ダメ男と少女が警察に無謀な挑戦!亡き娘と別れた妻と夢みた約束壊れた家族の復活は!?横溝正史ミステリ大賞テレビ東京賞受賞作)」(10月6日放送)ネタバレ批評(レビュー)
追加しました。リンクよりどうぞ!!

<ネタバレあらすじ>

浅井久平は借金の為に浜名湖に入水しようとしていた。
そこで、同じく自殺を図っていた不思議な子供ヒカリを見つける。
自分はともかく、まだ若い子供が死を選ぶことに耐えかねた久平はヒカリの自殺を止める。
こうして、2人は出会った。

ヒカリは最先端科学研究所から逃げ出してきた天才だった。
事情を聞いた久平は、一緒に逃避行を始める。
ヒカリは造られた天才であり、それゆえに物として扱われ続けることを嫌い、1人の人間として周囲に認められることを望んでいたのだ。

一方、ヒカリを追うべく内閣官房から指令を受けた警察は捜索を開始。

だが、ヒカリはネットを駆使してみずから誘拐を装い、100億円を要求することに。
これが久平とヒカリを救う大作戦の始まりだった。

100億円の誘拐事件となったことで、研究所の人々はヒカリの安否を案じるようになる。
次第に不在のヒカリを1人の人格として認めて行く研究所の面々。

一方、誘拐計画の為に久平と仲間たちが集結。
ついに100億円の受け渡しが始まる。

100億円を現金で用意させ、段ボールに詰めさせた久平たち。
だが、100億円は嵩張る為に持ち出しづらい。
そこで、ヒカリの取った作戦は―――段ボールを各地に配達させることだった。

配達されて行く100億円。
捜査陣はこれを追うが、90億円分が寄付金として各地の施設に運び込まれていく。
唖然とする一同。

そして、残された10億円は届け先住所の不備で研究所へと戻されて来る。
ところが、中身は既に盗まれた後だった。

業者に化けた久平が予め用意した段ボールとすり替えたのだ。
100億全部を盗むことは出来ない。
もともと、久平は100億も使いきれない。

ヒカリの狙いは初めから10億円にあった。
その10億円を目立たずにすり替えさせる為に100億円を用意させたのだった。

こうして、10億円を手に入れた久平。
これで借金は返済できる。
だが、問題はヒカリだ。

久平はヒカリさえよければ研究所に帰らずともよいと思っていた。
だが、ヒカリは研究所の人々のヒカリへのメッセージを聞いて自分が人として認められたことに気付く。

こうして、ヒカリは研究所への帰還を決意。
久平に付き添われ、帰途に就く。

一方、研究所の人々はヒカリの苦悩を理解し、受け入れるべく待っていた。
そこへ影が2つやって来る。
もちろん、久平とヒカリであった。

ヒカリは今回の冒険を通じて、人としてかけがえのない仲間を手に入れたのだった―――エンド。

◆「横溝正史ミステリ大賞」関連過去記事

・第28回「テレビ東京賞」受賞作
第28回横溝正史ミステリ大賞 テレビ東京賞受賞作「テネシー・ワルツ」(望月武著、角川書店刊)ネタバレ書評(レビュー)

・第29回「横溝正史ミステリ大賞&テレビ東京賞」受賞作
「雪冤」(大門剛明著、角川書店刊)ネタバレ書評(レビュー)

・第31回「横溝正史ミステリ大賞」受賞作
『消失グラデーション』(長沢樹著、角川書店刊)ネタバレ書評(レビュー)

「第31回横溝正史ミステリ大賞」受賞の眼鏡もじゅ先生が読売新聞さんにてインタビューに応じられました。

「第31回横溝正史ミステリ大賞」決定!!大賞は眼鏡もじゅ先生「リストカット/グラデーション」に!!

第30回横溝正史ミステリ大賞発表!!受賞作は「お台場アイランドベイビー」に!!

【横溝正史大賞テレビ東京賞受賞作ドラマ化関連】
水曜シアター9 横溝正史ミステリ大賞テレビ東京賞受賞作「テネシーワルツ〜甦る昭和の名曲に隠された愛と憎しみの殺意!二つの戦争に翻弄された母と子の驚愕真実」(2月17日放送)ネタバレ批評(レビュー)

水曜シアター9 第29回横溝正史ミステリ大賞&テレビ東京賞 ダブル受賞作品 雪冤「あなたの息子は無実です〜死刑確定した息子の父に突然の告白電話 再審奔走する父の涙(ドラマスペシャル〜死刑囚の息子は無実だ冤罪を訴える父に届く密告電話!沈黙の15年に秘められた衝撃の真実!)」(9月29日放送)ネタバレ批評(レビュー)

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誘拐物の白眉『大誘拐―天藤真推理小説全集〈9〉 (創元推理文庫)』です!!
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【関連する記事】
posted by 俺 at 00:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 書評(レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ありがとうございます。

録画していたのですが、なんとハードディスクの容量不足で
身代金受け渡しの一番重要な部分を見逃してしまいました。
が、しかし、おかげですっきりです。

でも、こうしてすべてを知ってみると受け渡しは楽しいおまけでした。
心に喪失した物を抱えた久平とヒカリが
お互いにそれを補っていく過程こそが醍醐味の作品ですね。

私もドラマを観ていて、これは大誘拐に似ているぞと思ったのですが
当時はあまり面白く感じる事が出来ず斜め読みでした。
Posted by レイ at 2011年10月07日 19:06
Re:レイさん

管理人の“俺”です(^O^)/。

お役に立てたようで良かったです。
ドラマを視ていて再確認したのですが、本作はミステリ部分よりは人と人との繋がりをメインで描いた作品ですね。
個人的に本作は結構好きです。

それだけにドラマ化も期待半分、不安半分でしたが、なかなかだったと思います。
キャスティングも高橋さんで正解だったかな。
Posted by 俺 at 2011年10月07日 23:40
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