<あらすじ>
猟銃の暴発事故が起きる。猟銃の持ち主、宮田慶吾(川野太郎)は弾丸が入っているとは知らず手入れをしていた際、あやまって銃を暴発してしまったという。その犠牲者となったのは宮田の家から1時間ほどもある成城に住む老人、榎木公太郎(山崎 満)。誰もが事故と疑わなかったが、検事、霞夕子(沢口靖子)だけは違った。検察事務官、桜木洋一(西村和彦)と共に現場に乗りこんだ夕子を警視庁捜査一課、占部明日香警部(神保悟志)はうらめしそうな視線で追う。
早速夕子は、発砲した宮田と被害者の榎木の因果関係を調べることに着手する。警視庁捜査一課、管理官の岩瀬厚一郎(石丸謙二郎)らは、粘り強く捜査を続ける夕子の動きを常に疎ましく思っていた。
捜査を続けるが、宮田と榎木の因果関係は見つからなかった。その頃、夕子の実家の寺を、安川初音(いしのようこ)という女性が訪れる。痴漢と間違い、宇野雄介という男性を高台から突き落とし殺してしまうという事件を起こしていた。
初音は一周忌を迎えた宇野の死を悼んで香典を寺に持ってきたのだった。香典を持ってきながら遺族に挨拶もせず帰ってしまった初音、さらに、初音が事故のあと引っ越していること、次第に夕子にとって引っかかる部分が見えてくる。そして、夕子はさらに、宇野の妻、宇野杏子(手塚理美)に話しを聞くことに。杏子とあった夕子は大きな勘違いをしていたと、捜査を洗い直すのだった。
女性たちの悲しい背景に夕子が気付きはじめたところから事態は大きく動き出す。
(金曜プレステージ公式HPより)
では、続きから……(一部、重複あり)。
榎木公太郎はNPO法人「若葉の会」に参加。
熱心に活動し、最近では財産の寄付も考えていたらしい。
調べたものの、宮田と被害者の接点が見つからなかったことから夕子は過失致死で送検し事件は終わったかに見えた。
そんな中、ひょんなことから初音と知り合った夕子。
初音が過去に宇野雄介という名の男性を過失致死で死亡させていたことを知る。
なんでも、マラソン中に宇野に遭遇した初音が驚いて突き飛ばしてしまったらしい。
しかも、初音は榎木公太郎の姪でその遺産を相続していた。
宇野の妻・杏子に話を聞いた夕子。
杏子は初音を激しく否定する。
宇野と榎木の死―――2つの事件に繋がりを感じた夕子は宮田と初音の調査を始める。
夕子は宮田と初音が交換殺人を行ったのではと考えたのだ。
宮田の評判を調べた夕子。
宮田は実母が入院した際に付き添い孝行息子として知られていた。
一方、初音は過去に夫と離婚していた。
しかし、交換殺人ならばある筈の宮田と初音の接点が全く出て来ない。
それでも夕子は粘り強く捜査を指示。
結果、物理的に宮田が榎木を故意に殺害可能だったことを突き止める。
だが、実行可能だとしても宮田も初音も既にそれぞれの事件で過失致死と認められている。
一事不再理の原則によれば、再度罪に問うことは出来ない。
これに対し、夕子は交換殺人だとすれば、それぞれの事件について被害者を交換することで罪に問えると判断。
交換殺人であれば、宮田を榎木殺害では裁けないが、宇野殺害では裁くことが出来る。
同時に、初音を宇野殺害では裁けないが、榎木殺害では裁くことが出来る。
確かに裁くことは出来るのだが、それは宮田の罪を過失致死として起訴した夕子の責任を問うことでもあった。
悩む夕子だったが、桜木や友行に励まされ自身の正義を貫くことにする。
そこへ、占部が新情報を持ち込んでくる。
殺された宇野が杏子に暴力を振るっていたのだ。
しかも、杏子は宮田が母に付き添っていた病院に夫からの暴力で入院していたことが明らかになる。
杏子には宇野殺害の動機があり、宮田との接点もあった。
次に夕子は杏子と初音の接点を追う。
キーワードは「DV」。
もしかして、初音もまた杏子と同じ経験をしているのでは……。
初音のブログに注目した夕子は、あるコメントから杏子の存在を感じ取る。
そのコメント主は宇野の死を境にピタリと書き込みを止めていた。
さらに、初音が離婚した夫に暴力を振るわれており榎木に助けを求めたこと。
ところが、初音は榎木にすげなく追い払われたこと。
最近も、初音は榎木に冷たくされており、遺産についても全額寄付すると宣言されていたことを知る。
初音には榎木を殺害する動機があった。
夕子はこれらの事実を武器に杏子に迫る。
夕子の推理はこうだ。
夫の暴力により入院した杏子は、そこで宮田と出会う。
その後も夫の暴力に苦しみ続けた杏子は、DV被害を通じてブログで初音と知り合う。
耐え切れなくなった杏子は初音に接触し夫の殺害を依頼。
同時に初音は榎木の殺害を杏子に依頼した。
ここに交換殺人が成立。
初音は宇野を殺害し、宮田は杏子の為に代わって殺害を実行した。
交換殺人は初音と宮田との間ではなく、初音と杏子の間に結ばれていたのだ。
そこに宮田が加わっていたことで事件が複雑化していたのだった。
宮田が榎木を呼び出した際の通信記録も見つかる。
宮田は自白。
ここに杏子も夕子に罪を認めることに。
結果、初音も逮捕される。
こうして事件は解決し、夕子は杏子が罪を償い戻って来ることを祈るのだった―――エンド。
<感想>
金曜プレステージ版「検事・霞夕子」シリーズ2作目です。
前作はこちら。
・金曜プレステージ 夏樹静子サスペンス・検事・霞夕子「首吊り死体が歩いた!悲劇の始まりは1年前の交通事故…歯科医の死体!残された親指の指紋の謎が解けた時…事件の真相が明らかになる(森を歩く死体)」(2月4日放送)ネタバレ批評(レビュー)
そんな2作目。
原作は夏樹静子先生「路上の奇禍」(徳間書店刊「死なれては困る」収録)。
あらすじはこちら。
<「死なれては困る」あらすじ>
ゴルフ場で倒れ、そのまま植物状態となった会社社長の病室に何者かが忍び込み殺害を図るが、発見されて逃亡。警察の執拗な捜査にもかかわらず、”死なれては困る”者はいても、”死んでもらいたい”者は皆無なのだ! 意表をつく結末の傑作集。
(徳間書店さんより)
2006年1月に文庫が発売されています。
「死なれては困る」についてはドラマ原作「路上の奇禍」も含めて、過去記事にネタバレ書評(レビュー)がありますね。
興味のある方はリンクよりどうぞ!!
・『死なれては困る』(夏樹静子著、徳間書店刊)ネタバレ書評(レビュー)
では、ドラマ版感想。
原作と比較すると序盤こそ忠実だったものの後半からラストにかけてが別物。
かなり現代風のアレンジが加えられていました。
変更点はざっと次の通り。
<原作> → <ドラマ>の順。
主人公は新聞記者・松尾から霞夕子に。
川辺が宮田に。
榎木が財産を寄付しようとしていたのが宗教法人からNPOに。
宇野の殺害方法がゴルフクラブから転落死に。
動機は不倫からドメスティック・バイオレンスに。
入院していたのが宇野本人から妻に。
宇野の妻(杏子)は事実を知らなかった筈が、むしろ首謀者に。
実質、ドラマ2時間のうち1時間こそ原作からでしたが、残り1時間はオリジナルでしたね。
原作では一事不再理が成立していたものの、交換殺人だった為に罪に問われる点や、川辺(ドラマでは宮田)の動機となっていた宇野の妻により罪が暴かれてしまう点が諧謔的な作品でしたが、ドラマ版はちょっとストレート過ぎた気がします。
この点は不満かも。
ただ、前作で明かされなかった夕子の家族が登場しました。
てっきり、コロンボのかみさんポジションだと思っていただけにビックリ!!
この点は前作に比較すると良かったですね。
合わせて功罪半ばで面白さとしては普通くらいかなぁ……。
次週(9月9日)は宮部みゆき先生原作『魔術はささやく』のドラマ版。
原作に比べると相当アレンジ加えられていてまるで別物のような……これが吉と出るか。
詳しくは下の過去記事よりどうぞ!!
・「魔術はささやく」(宮部みゆき著、新潮社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・金曜プレステージにて「3週連続 罪と女とミステリー」放送決定!!
◆夏樹静子先生関連過去記事
【書籍】
・「見えない貌」(夏樹静子著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・「てのひらのメモ」(夏樹静子著、文藝春秋社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・「天使が消えていく」(夏樹静子著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・「第三の女」(夏樹静子著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)
【ドラマ】
・月曜ゴールデン夏樹静子原作「Wの悲劇」(1月11日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・月曜ゴールデン 夏樹静子サスペンス「見えない貌〜イソ弁里村タマミの事件簿〜ダムに美しき水死体!出会い系美人妻の孤独と禁断愛…真相を追う母を襲う新たな殺人…真実のカギは親子愛」(6月7日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・NHKドラマスペシャル てのひらのメモ「あなたは本当にわが子を放置したの?裁判員に選ばれた一人の主婦がたどり着く真実」(10月23日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・土曜ワイド劇場「夏樹静子作家40年記念 天使が消えていく〜小さな命を守れ!欲望の街を走る女性記者!死者からの手紙!驚愕の結末とは!?」(10月30日放送)ネタバレなし感想
・金曜プレステージ「夏樹静子サスペンス弁護士・朝吹里矢子〜古都・おさない証言にゆらぐ老舗〜能登和倉温泉・目撃者は5才児金沢−東京繋ぐ犯行のシナリオ」(12月10日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・土曜ワイド劇場「女刑事・左近山響子 90便緊急待避せよ 復讐殺人フライト!!ハイジャック未遂の罠隣席は、連続殺人犯!?立ち聞きされた密会」(5月7日放送)ネタバレ批評(レビュー)
<キャスト>
沢口靖子:東京地検検事、霞 夕子
西村和彦:検察事務官、桜木洋一
神保悟志:警視庁捜査一課・警部。占部明日香
石丸謙二郎:警視庁捜査一課・管理官、岩瀬厚一郎
いしのようこ:セレクトショップ経営者、安川初音
川野太郎:猟銃暴発事故の加害者、宮田慶吾
ダンカン:夕子の夫、霞 友行
松原智恵子:夕子の母、霞 彩子
手塚理美:川崎の転落事故被害者の妻、宇野杏子 ほか
(順不同、敬称略、公式HPより)
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