<あらすじ>
三重県桑名の名家、六華(むつはな)家。その次女、六華此糸(むつはなこいと・国分佐智子)から、長女の冴穂(さえほ・清水美沙)の様子がおかしいので見に来てほしいという相談を受けた盆六(橋爪功)は、早速、六華家の人々が暮らす由緒ある洋館、六華苑(ろっかえん)を訪ねる。
六華家には長女で六華家四代目の冴穂と次女の此糸のほか、冴穂とは16歳も年の離れた三女の彩菜(あやな・垣内彩未)、そして、彼女たちの母親で認知症を患う蒼生(あおい・山本陽子)らが暮らしていた。
次女・此糸は、姉・冴穂の様子がおかしいのは何者かに脅されているからではないかという。というのも、最近、六華家の不動産が次々と人手に渡っており、現在残っているのはこの六華苑のみ。売却には昔から六華家の顧問弁護士を務める山ノ部浩介(やまのべこうすけ・鶴田忍)が関わっているはずなのだが、六華家には1円の金も入ってきていない。どうしてそんなことが?驚く盆六に此糸は言う。きっと山ノ部はこの六華家の秘密のようなものを握っていてそれで姉の冴穂を脅しているのではないか、と。六華家の秘密? 盆六は重ねて聞くが、それは此糸にも分からない。庭師の源三(げんぞう・渡辺哲)も先代が亡くなってからは主気取りの山ノ部に良い感情は抱いておらず、油断のならない男だと忠告する。
そんな中、山ノ部が洋館2階のサンルームで殺害される。山ノ部の左胸には半弓の矢が深々と刺さっていた。矢を放ち、山ノ部を絶命させたのは長女・冴穂。最近、冴穂の様子がおかしかった原因はすべてこの山ノ部にあった。もう一刻も我慢出来なかった。自分のためにも、六華家のためにもこれ以上生かしておくわけには行かなかった。彼女は一計を案じ、母の蒼生がいる2階の隠居部屋から同じく2階のサンルームにいる山ノ部に向け矢を放ったのだが、あたかも矢は庭園方向から飛んできたように工作した。うまくいったはずだった。しかし…。
いつまでもサンルームから降りてこない山ノ部をきづかって見に来た一同は変わり果てた山ノ部の姿を見て衝撃を受ける。だが、殺害現場を見て一番大きな衝撃を受けていたのは冴穂だった。殺害直後に施した工作が、あろうことか、ことごとく元に戻されていた。誰かが死体を動かした。そしてアリバイを無効にした。何の目的で!? 冴穂はひとり、恐怖におののく。
田能上(たのうえ・三浦浩一)ら県警の捜査で、矢が母・蒼生の部屋から放たれたことが判明し、盆六たちは事情を聞こうとするが、認知症のせいか、蒼生の口からは芳しい答えが得られない。弓についても、一家はもちろん、六華苑で働く者たちは皆、自前の弓を持っていることが判明する。
その頃、冴穂は何者かから、明朝9時までに三女の彩菜を殺すようにと書かれたメッセージを受け取っていた。いったい誰が!? ひとり悶々と苦しむ冴穂。そんな様子を垣間見た盆六は、冴穂を誘い出し、自らの推理を述べる。それは冴穂が山ノ部殺しの際に施そうとしたアリバイトリックそのものだった。そして、言う。あなたが山ノ部弁護士を殺したのではないか、と。冴穂は答えない。盆六はさらに言う。あなたはそのことで何者かに脅かされている。私はあなたを助けたいのだ、と。しかし、貝のように閉ざされた冴穂の口は開くことはなかった。
何者かに追いつめられ、盆六にも疑われる冴穂。脅迫メールの刻限9時が迫っている。彩菜を殺す? そんなことは考えられない。冴穂は強い拒否の姿勢を示す。しかし、その直後に彩菜は背中に矢を受け、病院へ運び込まれる。大事には至らず胸をなでおろしたものの、それもつかの間、また新たなメッセージメールが届く。次のターゲットは此糸。さらに、メールには家族のごく一部しか知らない事実が記されていた。
冴穂を脅すのは誰なのか!?そして、三姉妹に隠された六華家の秘密とは!?盆六が天才的な推理力を駆使し、名家に隠された哀しい真実を突き止める!
(公式HPより)
では、続きから……(一部、重複アリ)。
山ノ部を殺害した冴穂。
工作にも成功し完璧かと思われたが、意外な展開が待っていた。
別の人物により工作が悉く元に戻されていたのである。
山ノ部の死体の方向が変えられた上に、部屋の戸口に南京錠が施されていたのだ。
一体、誰が?何のために?
こうして、別の人物の影に怯えることとなった冴穂。
一見パッとしないが、実はやり手の刑事・野呂盆六も事件の捜査に乗り出したことで危惧を覚える。
その不安は的中する。
別の人物=ブルーキャットと名乗る何者かに脅迫されることとなったのだ。
ブルーキャットの要求は三女・彩菜を殺害すること。
脅された冴穂だったが、戸惑っているうちに当の彩菜が襲撃されてしまう。
彩菜は腕を負傷するも一命を取り留める。
冴穂がほっとしたのも束の間、今度は次女・此糸を襲撃するよう脅迫される。
もちろん、冴穂には実行できない。
ところが、またも別の人物により此糸が狙われる。
幸い此糸を狙った矢は標的を逸れ、此糸は無事に終わった。
しかし、要求は三度に及ぶ。
今度の標的は蒼生。
ブルーキャットの正体に思い当たった冴穂は蒼生の身代わりを買って出る。
一方、ブルーキャットの存在に気付いた野呂は、山ノ部殺害犯とブルーキャットが別であることを看破。
ブルーキャットの正体を見抜く。
凶行を止めるべく冴穂のもとへ。
その頃、冴穂はブルーキャットに襲撃されていた。
駆け付けた野呂が目にしたものは、座り込んだ冴穂とその隣に刺さる矢だった。
ブルーキャットはまたも殺害に失敗したらしい……。
翌朝、ついに野呂は関係者を集め、事件の真相を語り始める。
山ノ部殺害犯と彩菜、此糸、冴穂襲撃犯が別人であること。
三姉妹襲撃犯には強い殺意が無かったことを挙げる野呂。
さらに、ブルーキャットが此糸襲撃時にB型のDNAが検出されたハンカチを遺留品として現場に残していたことも明かす。
しかし、関係者の中にB型は居ない……。
これに、此糸を襲撃した人物が立っていたと思われる場所から犯人が片腕しか使えなかった人物であることを推理した野呂。
この2点によりブルーキャットの正体が彩菜であると指摘する。
ハンカチの持ち主であるB型の人物は、彩菜の入院先の看護師だったのである。
しかも、山ノ部殺害時に仕掛けられた南京錠が左利きの人間によるものであると結論付ける。
こうして、関係者唯一の左利きである彩菜こそがブルーキャットであると立証された。
では、彩菜がブルーキャットとなった理由は何か?
すべては、偶然にも彩菜が山ノ部殺害犯の姿を目撃してしまったことが発端だった。
その殺害にショックを受けた彩菜が工作を元に戻したのだ。
なぜなら、彩菜にとって被害者も加害者も肉親であったから。
そもそも、山ノ部が殺害された理由は何か?
彩菜はO型、蒼生はAB型であり母ではありえない。
彩菜の母は別人なのだ。
山ノ部はその秘密を握っており、脅迫していたらしい。
それもその筈、山ノ部こそは彩菜の実父だったのだ。
彩菜は冴穂と山ノ部の間の子供だったのである。
過去、冴穂は山ノ部に乱暴され妊娠してしまった。
そこで、蒼生を母とすることでこの秘密を隠し通そうとしたのである。
なぜ、彩菜が冴穂の子供と言えるのか?
秘密は姉妹の名前にあった。
冴穂は茶色、此糸は紫(此糸の縦書き)から名付けられていた。
そして、彩菜は音読みで「サイサイ」。
「サイサイ」といえば「お茶の子サイサイ」。
そう、「お茶の子=茶色の子」で冴穂の子供だったのである。
この事実に気付いた彩菜は、自分を騙していた家族に復讐しようとしたのである。
そこで、ブルーキャットを名乗り冴穂を脅迫し家族を襲うよう仕向けたのだ。
冴穂は彩菜が自分の娘であることを認めると共に、山ノ部殺害も自供。
蒼生は病気の演技をしていたが健康体であり、冴穂に責任を負わせてしまったことを悔やむ。
こうして事件は解決。
野呂は屋敷を後にするのだった―――エンド。
<感想>
「天才刑事・野呂盆六」シリーズ6作目。
シリーズ前作は2010年6月12日に放送されているので実に1年3か月ぶりの新作となりました。
前作(5作目)はこちら。
・土曜ワイド劇場「天才刑事・野呂盆六(5)〜いい死、旅立ち〜富山・宇奈月温泉復讐殺人!難病の娘と父を奪った男を殺せ!哀しき美女の挑戦状」(6月12日放送)ネタバレ批評(レビュー)
シリーズの生みの親だけに当然と言えば当然ですが、脚本は長坂秀佳先生。
長坂先生は「江戸川乱歩賞」を受賞したミステリ作家でもあります。
詳しくは下記過去記事をどうぞ!!
・「刑事・野呂盆六シリーズ」の脚本家・長坂秀佳先生がミステリ作家であることを知っていますか?
では、ドラマ感想。
相変わらずの名前ネタでしたが、今回はアリだったように思います。
なかなか面白かった。
前回よりは飛躍的に良かった。
伏線をある程度に絞り込んだのが良かったのかも。
個人的にはかなりの高評価です。
今回、特に印象に残ったシーンは次のワンシーン。
ブルーキャットの冴穂襲撃シーンの服装が猫耳付きのパジャマみたいでファンシーでした。
シリアスシーンの筈がちょっと和みました。
2011年9月19日追記:
此糸の名前の由来に間違いがあったので訂正しました。
ペロリさん、ご指摘ありがとうございました(^O^)/。
<キャスト>
野呂盆六:橋爪功
六華冴穂:清水美沙
六華蒼生:山本陽子
六華此糸:国分佐智子
六華彩菜:垣内彩未
石庫源三:渡辺哲
山ノ部浩介:鶴田忍
田能上七郎:三浦浩一
出川栄:川俣しのぶ
浅貝琴女:北原佐和子 ほか
(公式HPより、敬称略)
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縦書きすると「紫」になりますし。
私も、ブルーキャットの扮装には笑ってしまいました。
ちょっと前の渋谷ギャルが着ていた着ぐるみパジャマみたいに見えます。
まさか彩菜ちゃんは持ってた猫耳パジャマから「ブルーキャット」になることを思いついたわけではないでしょうね(笑)
こんばんわ、管理人の“俺”です(^O^)/。
ああっ、確かに「紫だから此糸」だ。
此糸自身の台詞「縦書きすると」のくだりで出てましたね。
ご指摘ありがとうございます<(_ _)>。
早速、訂正せねば。
やっぱり、あのブルーキャットの衣装はインパクト大ですよね。
山ノ部殺害後には盆六たちが居た筈で、あの衣装を後から用意できたとは思えないので、あれは彩菜の所持品でしょうね。
となると、ブルーキャットの由来は……。
そう思うとやっぱり和むなぁ。