<あらすじ>
新宿西署管内のマンションで、牧島良夫(浜田学)という商社マンが死体で発見された。牛尾刑事(片岡鶴太郎)たちが現場に急行すると、後頭部を一撃されてベランダに倒れている牧島の遺体があった。
凶器はかなり重い物体だと推測されたが、現場にそれらしきものは見当たらない。何より不思議なのは、その部屋が密室状態だったことだ。現場はマンションの5階の角部屋、状況からして上あるいは下からの侵入は不可能、また隣室からベランダを乗り越えて侵入した形跡もなかった。
凶器も侵入経路もわからない、厄介な事件…。捜査の糸口は犯行動機、つまり牧島の交友関係を当たっていくしかない。牛尾たちは、被害者の周囲にトラブルがなかったか徹底的に洗い出すため聞き込みを強化した。だが、牧島の評判はよく、恨みを持つ人物は浮かび上がってこなかった。
そんなある日、現場付近で聞き込みしていた牛尾に、ひとりの男が声をかけてきた。その初老の男・古木久俊(石橋蓮司)は、被害者に面識はないが、同じ商社マンだった経験から、牛尾にこう助言した。被害者には二面性があったのではないかと…。古木によると、若い商社マンは出世のために職場で“よい人間”に徹するため、自分より弱い立場にある者にストレスを爆発させることが多いというのだ。
調べてみると、確かに牧島には会社関係者に見せる顔とは別の、横暴な一面があったとわかる。隣人からも、1年ほど前、ひとりの男が訪ねてきて牧島と言い争っていたという証言が取れた。もめていた相手は、駅前の喫茶店の店主だという。
牛尾はさっそくその喫茶店を探し当てるが、店は長く休業状態らしく、しかも八王子に転居した店主の森岡治(石丸謙二郎)はつい先日病死し、今日が葬儀だとわかる。斎場を訪れた牛尾。弔問客も少なく、どこか寂しい葬儀の喪主を務めるのは、20歳ほど年齢の離れた妻・弓子(酒井美紀)だった。
そして、その斎場で牛尾は意外な人物と再会する。先日、現場付近で言葉を交わした古木だった。古木は、弓子が電車の中に置き忘れた本を届けたことがきっかけで、森岡夫婦とは親しくさせてもらっていたという。
森岡の身辺を探ったところ、彼は入院中、最後に1日だけ外泊許可をもらっていたことが判明。なんと、その日は牧島が殺された日だった――。さらに調べると、森岡夫妻にはつらい過去があることがわかり…!?
(土曜ワイド劇場公式HPより)
では、続きから……(一部、重複あり)
森岡夫妻の息子・竜彦が交通事故死していたことが判明。
なんでも、死んだ飼い犬・ルルに似た犬を見かけた竜彦が道路に飛び出したことが原因だったらしい。
その飼い犬の死に牧島が関与していたことが明らかに。
散歩中にリードを放してしまった竜彦。
自由になったルルははしゃぎ回り近くに居た牧島にじゃれつく。
ところが、これを鬱陶しく思った牧島はルルを蹴り殺してしまう。
目の前で愛犬を殺害された竜彦は心に傷を負い、この為に一家は引っ越すこととなった。
竜彦が事故死したのはこの引っ越し先の出来事である。
森岡には牧島殺害の動機があったことになる。
牛尾は牧島殺害に森岡夫妻が関与していたと確信し、調べることに。
牧島殺害時の森岡夫妻のアリバイを確認したところ、店でお客様にお別れした後に自宅へ戻り、親しくなった古木と共に居たと言う。
古木は森岡の妻・弓子の証言を認める。
さらに、店に行ったとの証言も3人の商店主、2人のサラリーマン、出入りの製氷業者、看護師の合計7人により立証されていた。
まさに鉄壁のアリバイである。
だが、牛尾は古木が嘘をついていると確信。
こうして、古木の周囲を調べ始めることに。
結果、古木には何らかの心残りがあったらしいことが分かる。
同時に、森岡が最後に店に出た際に語っていた話を突き止める。
森岡は妻・弓子が施設出身で天涯孤独の身の上であることを明かし、客に弓子のことを頼んだと言う。
森岡も心残りを口にしていたらしいが……。
牛尾は森岡と古木、2人の心残りについて考え始める。
さらに、森岡を担当していた看護師から、森岡が病気の為に指が痩せ指輪が抜け易くなっていたこと。
牧島殺害の翌日には指輪をしていなかったとの証言を得る。
牧島宅の近所の大学生が、事件の翌日に現場付近でしゃがみこんだまま動かない黒いパーカーの不審な人物を目撃していたことが判明。
捜査本部がそちらに注目する中、牛尾は古木を追う。
古木が女性物のバッグや時計を購入していたことが分かる。
そこから牛尾は古木が弓子に特別な感情を抱いていると推測。
嘘のアリバイ証言がそこから出て来たものと考える牛尾。
罪を償わなければ本人が苦しむだけだと添えて、それを古木にぶつけるが……。
直後に古木が転落死体で発見される。
目撃者によると、古木は強かに酩酊しており足元も覚束ない状態だったらしい。
所轄署は事故で終わらせようとするが……。
古木の息子から意外な情報が。
古木の遺品の中から妙な写真が出て来たというのだ。
その写真には若い女性と小さな少女が写っており、裏面に「昭和59年3月、奥多摩湖」と記されていた……。
写真の現地へと向かった牛尾。
若い女性が朝倉美子、少女が美雪だと突き止める。
美子が病死した後、父親が分からなかった美雪は行方不明になっていた。
牛尾は美雪こそが弓子ではないかと考え始める。
そして、古木の心残りが美雪=弓子にあると思い始めていた。
再び牧島殺害現場を訪れた牛尾はそこで犯人のトリックに気付く。
屋上から下に向けて何かを投げつけて牧島を殺害したと見抜いたのだ。
被害者の頭部に残された傷痕から板状で10キロ前後の物を投げ落としたと思われた。
ここで、当日、店に来ていた客の中に製氷業者が居たことを思い出した牛尾は凶器が氷であると辿り着く。
氷では溶けてしまって証拠は残らない。
だが、犯人と思しき黒いパーカーの人物は現場で何かを回収しようと危険を承知で行動していた。
ここから、犯行の際に誤って指輪を落としたと推理した牛尾は周辺を捜索。
そこから指輪を見つけ出す。
事情聴取に呼ばれる弓子。
当初こそ否認していた弓子だが、指輪に込められた夫婦の想い出について牛尾に語られたことで心が折れる。
森岡は竜彦の死の原因が牧島にあると思っていた。
復讐を決意した森岡に妻の弓子は協力を約束。
例のトリックで10キロの氷を牧島にぶつけて殺害する。
ところが、この際に誤って指輪を落としてしまう。
こうして、指輪が見つからずビクビク怯えていたところに古木が現れる。
古木は事件のことを匂わせつつ、弓子に接触。
アリバイまで偽証してくれると言う。
藁をも掴む気持ちで縋った弓子。
やがて、古木は弓子に高級品をプレゼントするようになる。
古木の真意が分からず、困惑する弓子。
ところがある晩、古木は温泉旅行に行こうと弓子を誘う。
古木の目的が下心にあると思い込んだ弓子はそれはそれでよいと従うつもりだったが……。
数日後、牛尾の説得を受け考え方を変えた古木から自首を勧められる。
事情を知らない弓子は自身の身体で古木を説得しようとするが、古木は拒否。
この揉み合いの果てに古木は土手に転落してしまう。
古木の真意を知らない弓子に、牛尾は古木の心残りについて語り始める。
古木には奥多摩に捨てた女性と娘が居た。
女性の名は美子、娘の名は美雪。
美子が死亡した後、美雪は施設に入った。
そこで、美雪は死亡してしまう。
そう、弓子は美雪ではなかった。
そして、古木は娘・美雪が死亡していたことを知っていた。
古木は弓子に亡き娘の姿を見ていたのだ。
弓子にあれだけ心配りを見せた理由はそれだった。
だからこそ、古木は歩いたのだ。
古木は弓子に突き飛ばされた時点では生きていた。
弓子を殺人犯にしないように転落した土手から移動し、別の場所で死亡したのだ。
古木の想いを知った弓子は涙する。
弓子は夫の復讐を止められなかったこと、古木を殺害してしまったことこそが心残りであると後悔を口にする。
古木の死亡現場を訪ねた牛尾は古木が必死で土手から移動したのは、美子と美雪への贖罪だったのではないかと考える。
そして、今こそ古木は2人に許されているのではないかと偲ぶのだった―――エンド。
<感想>
「終着駅シリーズ」最新作です。
「終着駅の牛尾刑事vs事件記者冴子」パターンを除いた「終着駅シリーズ」単独では今回で25作目となります。
過去作はこちらからどうぞ。
・土曜ワイド劇場「終着駅の牛尾刑事vs事件記者冴子・森村誠一の完全犯罪の使者!!富山八尾〜風の盆に始まる殺意の連鎖!!赤いルージュの伝言」(12月18日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・土曜ワイド劇場「森村誠一の終着駅〜新宿着あずさ22号の殺人同乗者・消えた姉と三千万の行方…顔のない脅迫者を追う!!」(7月31日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・土曜ワイド劇場「森村誠一の灯〜終着駅の牛尾刑事vs事件記者冴子!!バス事故から生還した3人新宿〜妙高高原に運命の連続殺人!?」(12月12日放送分)ネタバレ批評(レビュー)
では、ドラマの感想。
キャストが豪華でした。
さりげなく、三波豊和さんも巡査役で出演されていました。
トリック的には……ヤバいな、これは。
ベランダに誘き出して屋上から氷をぶつけたら、身を乗り出していた牧島はそのまま転落死するんじゃなかろうか。
ああも上手く、室内へと転がり込むだろうか?
というか、転落していた方が事件解決が困難だったような気がするのは気のせいだろうか?
それよりもまず、あんな風に標的の頭に当てることが出来るのか?
破壊力を持たせる為に距離を取れば取るほど難易度は上がる筈だが……。
……などなど、いろいろ気になった。
今回、人情ドラマとしても破綻していたような気がする。
森岡夫妻はアリだと思う……が、問題は古木だ。
古木は実の妻子よりも、美子と美雪を選んじゃうし。
さらに、実の妻子よりも弓子を選んだ理由がわからん。
本当に贖罪したいならば、やっぱり実の妻子の為に尽くすべきではなかろうか?
なんだか、二重の意味で実の妻子を裏切っている気がする。
気のせいだろうか?
どうにも、あの結末(古木が美子と美雪のもとへと向かった筈だ)に納得がいかない。
では、亡くなった古木の妻の立場はどうなるのだろうか?
その息子の立場は?
やっぱり、不満だ。
少なくとも「古木の自己満足かもしれない……」ぐらいは描写として入れるべきではなかったか?
「それでも……少なくとも古木にとっては正しいことだったのだ」ならまだ良かったかな。
どうにも不満だ。
そうそう、森村誠一先生のドラマ化といえば「正義の証明」がドラマ化されるそうです。
2011年9月26日放送予定。
原作は牛尾&棟居の豪華共演作。
・森村誠一先生「正義の証明」(幻冬舎刊)ドラマ化!!
このドラマにも期待です。
◆森村誠一先生関連過去記事
【棟居刑事シリーズ】
・土曜ワイド劇場「森村誠一の棟居刑事 目撃美女は二度死ぬ猫が運ぶ犯人!?悪い男vs手玉に取る女…愛と欲の背徳の詩集」(7月30日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・土曜ワイド劇場「森村誠一の棟居刑事 愛犬が暴く不倫四重奏!」(11月21日放送分)ネタバレ批評(レビュー)
【その他ドラマ】
・金曜プレステージ「3週連続・罪と女とミステリー第1夜! 森村誠一サスペンス・破婚の条件〜夫殺しを夢みた秘密の殺人日記 その夜、傲慢夫は既に殺されていた!追い詰められ墜ちてゆく女は極限の果てに!悲しい女の業を描いた本格サスペンス」(8月26日放送)ネタバレ批評(レビュー)
【アタミステリー紀行関連】
・「アタミステリー紀行2010」結果が発表される
・「熱海の靴屋」(森村誠一著、アタミステリー紀行2010より)3つのミスにチャレンジ!!
・近付く「アタミステリー紀行2010」の足音……
・アタミステリーへの誘い……
(アタミステリー紀行2009について触れた過去記事です)
【その他】
・森村誠一先生「義仲・巴ネットワークフォーラム・イン・富山」にて講演
・クリスマス(12月24日)の森村誠一さん!!
(「森村誠一 謎の奥の細道をたどる」についての過去記事です)
<キャスト>
牛尾正直:片岡鶴太郎
牛尾澄枝:岡江久美子
森岡弓子:酒井美紀
古木久俊:石橋蓮司
森岡 治:石丸謙二郎
坂本課長:秋野太作
大上刑事:東根作寿英
山路刑事:徳井 優
南 広子:大寶智子ほか
(順不同、敬称略、公式HPより)
◆森村誠一先生の作品はこちら。
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