<あらすじ>
ルポライターの浅見光彦(沢村一樹)は、旅雑誌「旅と歴史」で北前船の歴史を辿る取材で北海道へと向かうことになった。母・雪江(佐久間良子)から、くれぐれも「警察庁・刑事局長の兄・陽一郎(風間杜夫)に迷惑をかけるような事件にクビを突っ込まないこと」と念を押された光彦だが、訪れた北海道・余市で三井所園子(石橋杏奈)と再会したことで、雪江との約束は崩れてしまう。
再会とは、半年ほど前に光彦が取材で訪れた先の加賀からフェリー乗り場の港で、葬儀の帰りらしき母・節代(市毛良枝)と園子と出会っていたからだ。その時、園子が嗚咽を湛えながら「私のせいだ、私があんなことを言ったからお父さん・・・」と発した言葉が、光彦の脳裏には強く焼きついていた。
光彦は余市にある「北海洋酒」の蒸留所を訪れ、ガイド嬢として働いていた園子をみかけた。タイミングを見計らって光彦が声をかけようとすると、北陸中央新聞加賀通信局の記者・山科三郎(渡部豪太)が「彼女に何の用だ」と、割って入った。山科の話によると、園子の父・剛史(新井康弘)は、娘を大学に行かせるための金策に出かけ、その2日後に石川県・橋立で遺体となって発見されたという。しかも、なぜ縁もゆかりも無い橋立へ向かったのかは家族にもわからなかった為、警察の事件捜査も進展していないという。父は私の為に悪いことをしようとしていたのでは…と自責の念にかられる園子を前に、光彦は次第に事件の謎解明へと動き出すことになる。
光彦は剛史が節代と結婚したときに約束したという「いつか必ず船主になる」という言葉と、大切に保管されていた土人形を包んであった「引き札」(=チラシ広告)を手がかりに園子と石川県・橋立を訪ねた。北前船が隆盛を誇った江戸時代後半から明治時代の前半に橋立は「北前船」の寄港地として栄え「引き札」はその船主のものだった。
加賀・ひがし茶屋街で偶然にも母・雪江と遭遇した光彦と園子は、ここで重大なヒントを手に入れた。雪江の話によると、剛史が大切にしていた土人形は九州・福岡県の津屋崎人形だと判明する。
津屋崎に出向いた光彦は、老舗の人形店を訪れ古い顧客名簿から、人形を買った北前船の船主・宇戸という人物から、現在の宇戸水産へとたどり着く。宇戸水産社長の宇戸武三(竜雷太)と園子の父・剛史とは釣り仲間でもあった。
点が線となり繋がったが、社長の宇戸は津屋崎人形を知らないという。その謎の鍵は剛史のルーツにあると考えた光彦だが、たっての希望もあり、その調べを山科に任せた。しかし、山科が一つの確信に辿り着き「加賀に戻って確認したいことがある」と光彦に告げた後、遺体となって発見されてしまう。山科が確認したいこととは何だったのか?そして、剛史のルーツにどんな秘密が隠されていたのか?
光彦が事件の全容に触れたとき、悲しい運命に翻弄された家族たちと、一人の女性の人生が明らかになる。
(月曜ゴールデン公式HPより)
では、続きから……(一部、重複あり)。
三井所剛史がじっと石段を眺めていたとの情報が入る。
浅見は剛史のルーツにこそ、すべての秘密があると考える。
そんな浅見の推理を裏付けるように、三井所剛史が孤児だったことが判明。
過去に実母に棄てられていたらしい。
剛史は金策の為に実母に会ったことで殺害されたのではないか?
浅見の推理が冴えわたる。
三井所剛史が眺めていた石段は宇戸家のものだったことが判明。
剛史と宇戸家には関係があるに違いない。
確信を持った浅見から剛史について聞かされた宇戸佳代は表情を曇らせるが……。
1人調査を続けていた山科。
彼は「剛史を棄てた母親が女優・深草千尋である」ことを浅見に伝え、何かを確認すると述べた翌日に死体で発見されてしまう。
浅見は宇戸佳代に接触する。
剛史の実母・深草千尋の本名こそ宇戸佳代だったのだ。
剛史は記憶に残る石段を手掛かりに宇戸佳代を突き止めた。
これに焦りを感じたのは佳代の弟・宇戸武三である。
姉の実子が出て来たことで会社を乗っ取られるのではないかと考えたのだ。
それは武三の甥・島瀬も同じだった。
島瀬は剛史を殺害。
その後、真相に迫りつつあった山科も殺害した。
浅見が佳代へと真実を尋ねていた頃、武三と島瀬は逮捕されていた。
浅見は佳代がなぜ、剛史を棄てたのかを問い質す。
女優をしていた佳代はある男性を愛し妊娠。
ところが、相手の男は佳代を捨てて別の女性と結婚してしまう。
佳代は、それでも剛史を育てようとしたが、大きくなる剛史を見ているうちに裏切った男のことばかりを考えるように。
そんな姉の姿に武三は剛史を捨てることに決める。
剛史を捨てた佳代は女優業を再開。
しかし、剛史を忘れ去ることは出来ず、7年後に施設へと迎えに行くことに。
ところが、剛史は母を憎んでおり、共に生きることを拒んだ。
こうして、佳代は罪の念を抱き生きて行くことを選んだのだと言う。
そんな佳代に、節代と浅見は、剛史が佳代を憎んではいなかったことを伝える。
過去、剛史が佳代に対して口にした拒否の言葉。
それは、子供が愛情を求めての行動だった。
剛史は金策に来たのではなく、本当は母親に会いたかったのだ。
佳代はその言葉を聞き涙を流すのだった―――エンド。
<感想>
原作は内田康夫先生「化生の海」(新潮社刊)。
2003年に単行本が、2007年に文庫版が新潮社さんより刊行されています。
原作「化生の海」あらすじは―――
日本海から響く死霊の声――。北海道・北陸・北九州を結ぶシリーズ最大級の謎に浅見光彦が迫る。
加賀の海から水死体で発見された男。北海道・余市の自宅には、底に「卯」の字のある一体の古い素焼き人形が残されていた。事件から五年、かすかに残った男の足跡を辿る浅見光彦は、北九州・北陸・北海道を結ぶ長大なラインに行き当たる。それは江戸から明治期に栄華を極めた、北前船の航路と重なっていた。列島を縦断し歴史を遡る光彦の推理。ついに驚愕の真実が、日本海から姿を現す。
(新潮社公式HPより)
これのドラマ版にして、TBS版浅見光彦シリーズ30弾が本作。
前作(29弾)のネタバレ批評(レビュー)ありますね。
興味のある方はどうぞ!!
【浅見光彦シリーズ(TBS版)】
・月曜ゴールデン 内田康夫作家30周年 浅見光彦シリーズ29「菊池伝説殺人事件〜火の国熊本で出会った謎の美女と名門一族を襲う連続殺人!一門の掟と哀しき恋・光彦が見た血塗られた記憶」(2月7日放送)ネタバレ批評(レビュー)
ちなみフジテレビ版浅見光彦はこちら。
【浅見光彦シリーズ(フジテレビ版)】
・金曜プレステージ「浅見光彦シリーズ第36弾 鐘」(1月8日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・金曜プレステージ「浅見光彦シリーズ37・長崎殺人事件『肥前路島原・長崎〜父の殺人容疑の陰に悲恋の過去現場に残された短刀と蝶々夫人のロザリオに秘められた驚愕の真実とは?』」(4月30日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・金曜プレステージ 浅見光彦シリーズ38最新作・十三の冥府「呪われた津軽王朝〜古代史の謎を追う者は殺される!?20年前の産婦人科で何が起きた?連続殺人事件のカギは子守歌」(9月24日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・金曜プレステージ 浅見光彦シリーズ39 遺骨「淡路島の古寺に隠された骨つぼに巨悪の影!秘密を知った者は次々殺される!絶対に知られてはいけない黒い過去とは?遺骨に隠された驚愕の真実」(1月14日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・金曜プレステージ「内田康夫作家30周年2夜連続浅見光彦第1夜!!シリーズ第40弾『棄霊島』 廃墟に消えた連続殺人の謎〜誰かが血塗られた遺産を狙う呪われた一族の憎悪と殺意!浅見を狙う8人の女とは」(5月6日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・土曜プレミアム「内田康夫作家30周年2夜連続浅見光彦第2夜!!シリーズ第40弾『棄霊島』 父娘と娘孫・三代に渡る出生の秘密時代を超えて暴かれる驚愕の真相!事件の鍵を握る天才ピアニスト哀しみの鎮魂歌が軍艦島に響き渡る」(5月7日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・金曜プレステージ「浅見光彦シリーズ41 佐渡伝説殺人事件 鬼伝説に隠蔽された遍路殺し!地獄からの手紙復讐告げる数え唄の謎同級生を襲う死の連鎖恩讐の彼方から蘇った“願”に込めた親子の業は?」(9月16日放送)ネタバレ批評(レビュー)
では、ドラマの感想を。
今回はミステリでもサスペンスでもなく、人間ドラマがテーマでした。
謎らしい謎も無く、戸惑われた方も多かったかも。
ただ淡々と進んだ感じでしたが、これはこれで良かったような気もします。
かなり変則的な印象を受けましたが、視聴された方の印象は如何でしょうか?
ちなみに、公式のキャスト欄だと「宇戸(うど)」の読みが「うべ」になっていますね。
「うべ」だと思ってドラマを視ていたので「うど」と聞いて、ちょっとビックリしました。
内田康夫先生と言えば、2011年9月30日まで「北区内田康夫ミステリー文学賞」が作品募集中。
詳細は下の過去記事よりどうぞ。
・「第10回北区内田康夫ミステリー文学賞」作品募集中!!
さらに浅見光彦シリーズを2012年に完結する旨を宣言されています。
こちらの動向も注目です。
・内田康夫先生から浅見光彦シリーズ完結宣言が!!「最後の事件」は2012年に!!
<キャスト>
浅見光彦(あさみみつひこ):沢村一樹
浅見雪江(あさみゆきえ):佐久間良子
浅見陽一郎(あさみよういちろう):風間杜夫
○
宇戸佳代・深草千尋(うべかよ・ふかくさちひろ):藤村志保
三井所園子(みいしょそのこ):石橋杏奈
三井所節代(みいしょせつよ):市毛良枝
○
小林部長刑事(こばやしぶちょうけいじ):古田新太
山科三郎(やましなさぶろう):渡部豪太
横山警部(よこやまけいぶ):木村祐一
三井所剛史(みいしょたけし):新井康弘
○
宇戸武三(うべたけぞう):竜 雷太 ほか
(公式HPより、順不同、敬称略)
◆関連過去記事
・あなたに内田康夫先生の本に登場する権利を上げよう!!by大日本印刷&角川書店
・名探偵・浅見光彦さん、卒業証書授与される
【内田康夫先生著作関連記事】
・「死線上のアリア」より「死あわせなカップル」(内田康夫著、角川書店刊)ネタバレ書評(レビュー)
【福原警部シリーズ】
・土曜ワイド劇場「内田康夫の福原警部 フグハラ体型の警部と美人刑事の殺人捜査“幸せなカップル”の心中の理由」(6月5日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・土曜ワイド劇場「内田康夫サスペンス・福原警部 フグハラ体型の警部と美人刑事の殺人捜査 私の夫が連続殺人犯?レモンの匂いと消えたハーブ畑の謎」(4月23日放送)ネタバレ批評(レビュー)
【内田康夫先生原作ドラマ】
・金曜プレステージ 内田康夫ミステリー・湯布院殺人事件「遺産相続を巡る旧家の呪い霧の里で起こった骨肉争いに次々人が消える犯罪心理のプロ和泉が暴く悲しい家族の怨念待望の新シリーズ!」(11月19日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・金曜ブレステージ「内田康夫旅情サスペンス岡部警部シリーズ〜シーラカンス殺人事件〜幻の魚奇跡の捕獲に仕組まれた完全犯罪物言わぬ生きた化石のみが知る陰謀とは!?」 (11月27日放送分)ネタバレ批評(レビュー)
【その他関連過去記事】
・2010年6月12日、世田谷部文学館にて内田康夫先生講演会開催!!
・2010年5月30日まで開催されていました「ミステリーウォーク2010『記憶の中の公園』」についての記事です。
浅見光彦の住む町で推理に挑戦!?
・2011年3月5日「小説舞台を巡る“名探偵★浅見光彦ワールド!横浜ミステリーWalk”」開催!!
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