2011年10月04日

『世界が終わる灯』(月原渉著、東京創元社刊)

『世界が終わる灯』(月原渉著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

ニュージランドの山間を走る豪華寝台列車。ジュリアンとバーニィのふたりは、大学進学を前に、この列車に乗って旅に出た。しかし、豪華な旅を楽しんだのもつかの間、鍵のかかった客室で、凄惨な首なし死体が発見される。走行中という密室状態で、どうしてこんな殺人が? さらには列車から乗員の姿が次々と消え、怯える乗客に追い打ちをかけるように、第二の事件が起こり──。鮎川哲也賞受賞作家である期待の新人が描く本格ミステリ。
(東京創元社公式HPより)


<感想>

『太陽が死んだ夜』で「第20回鮎川哲也賞」を受賞した月原渉先生の受賞後第1作目です。
「第20回鮎川哲也賞」は安萬純一先生『ボディ・メッセージ』との同時受賞でした。

『太陽が死んだ夜』(月原渉著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『ボディ・メッセージ』(安萬純一著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)

その安萬純一先生は既に受賞後に『ガラスのターゲット』を出版されています。

・『ガラスのターゲット』ネタバレ書評(レビュー)はこちら。
『ガラスのターゲット』(安萬純一著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)

では、本作の感想を。
まず、あくまで個人的な感想であると前置きした上で。

あんまり、面白くなかった……。
次の点で失敗しているように思われます。

本作は古典ミステリを意識しているように思われるのですが、上手くいっているとは感じられない。
何よりツギハギっぽくってオリジナリティがあまり感じられなくなってしまっている。

トリックらしいトリックがひとつだけ。
他には、犯人役を読者に誤認させる構成があるにはあるが……。

前作に比べ、探偵役に魅力が無い。
ベルの方が良かったなぁ……。

そして、1番の難点がコレ。
あらすじにもある通り、舞台は走る密室「列車」。
この利点は閉鎖空間であることで緊迫感とリアルタイム感を作品に持たせることが出来る点。
ところが、犯人役を誤認させる為の過去回想を交えた結果、これが死んでいる。
中弛み感が出てるんだよなぁ……。
前作も過去と現代を交錯させていたのだけど、あちらの場合は過去の事件が現代の事件と密接にリンクしていたことが大きかった。
こちらは動機としては繋がっているのだが、それ以外は独立している印象。

前作の登場人物であるジュリアンとバーニィを再登場させたことも、本作では逆効果に。
むしろ、2人と全く関連性のない事件にした方が良かったような……。
なまじ、因縁を作ってしまったばかりに物語が小さく感じられる理由となっている。
犯人を誤認させるミスリードについても、第1作を読みキャラクターに対し先入観を持っていると効果が薄いと思われる。

正直、受賞後第1作どうしで比較すると『ガラスのターゲット』の方が上。
あちらが前作が好きな人には今作も好きであろうと思わせるのに対して、こちらは前作好きでも必ずしも今作が好きとは言えないように思われる。

前作『太陽が死んだ夜』が良かっただけに残念です。
次の作品に期待したいと思います。

<ネタバレあらすじ>

豪華寝台列車に乗って旅に出たジュリアンとバーニィ。
列車には、サラなど環境保護団体のメンバーや謎の紳士・デュナーも乗り込んでいた。
旅は快適に進むかと思われたが……。

矢先に、首なし死体が発見される。
現場は密室。
しかも、奇しくもジュリアン自身が出入りした人物が居ないことの目撃者になっていた。

走行中の列車内で発生した殺人事件。
怯える乗客たちだが……。

これに追い打ちをかけるように第2の殺人事件が発生。
被害者はデリンジャーで射殺されていたが、その容疑者はなんとバーニィ!?

実は第2の被害者は、過去の遭難事件でバーニィの妹を見殺しにしていたのだ。

遭難事件で漂流していた4人。
その中に居たバーニィの妹は他の3人から飲み水を与えられず衰弱死していた。

これは、バーニィによる復讐殺人なのか?
当のバーニィは姿を消していたが……。

バーニィの無実を信じるジュリアンだが、乗客の1人に人質にされてしまう。
実は彼こそは第2の被害者同様に遭難事件の当事者の1人だった。
彼は自身もバーニィに狙われると考え、ジュリアンを盾に取ろうとしたのだ。

そこへ現れるバーニィ。
さらにはデュナーやサラたち。

デュナーによれば事件の真相が判明したらしいが……。
早速、謎解きを始めるデュナー。

第1の被害者は犯人に呼び出され、窓から顔を覗かせた為に殺害されたらしい。
犯人は事前に窓の外にワイヤーを張り、時間を予測した上で呼び出した被害者に窓の外を覗くよう仕向けて殺害していた。

これを実行するには、列車に先行して罠を仕掛ける必要がある。
つまり、列車を乗り降りした人物が居るのだ。
それが出来るのはただ1人―――サラだけだ。
列車に乗った後、隠れて降りたサラは先行する列車に乗り換えた。
その後、罠を仕掛けると徐行した際に列車を再び乗り換えたのだ。
他の人物にはアリバイがあった。

サラには動機があった。
第1の被害者は環境団体の金銭の動きを掴もうとしていた政府の関係者だったのだ。
そして、第2の被害者を射殺したのもまたサラだった。

第2の被害者は自分が見殺しにした娘の姉がバーニィであることに気付いた。
そこで謝罪するべくバーニィを訪ねた。
そこへサラが来訪。
被害者を射殺したのだ。

バーニィは自分も狙われると考え、逃げ出したのだった。

では、サラが第2の被害者を殺害した理由は何か?
バーニィの妹が死亡した遭難事件。
その当事者4人の最期の1人こそがサラの妹だった。

サラの妹はバーニィの妹を見殺しにしたことを悔い死亡していた。
サラによれば今回の殺人はその仇討ちであり、正義を取り戻す為に必要なことだと言う。

こうして、サラは唯一生き残っている遭難事件の当事者である男をその場で射殺。
第3の被害者を作ってしまう。

バーニィと自分は同じ立場の筈だと語るサラだが、バーニィは親友・ジュリアンの言葉で自身を保つ。
バーニィの同意を得られないと知ったサラは、自身が正義を回復したと主張すると列車の窓から身を投げる。
後日、周辺を捜索したもののサラの死体は見つからなかった……。

だが、サラは実験の被害により余命幾許も無かったらしい。
逃げたとは思えなかった……。

妹の墓前へと事態の報告を行うバーニィ。
その傍らにはジュリアンが居た。
そう、ジュリアンの存在こそがバーニィの復讐を押し留めていたのだ―――エンド。

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『世界が終わる灯』です!!
世界が終わる灯





シリーズ前作『太陽が死んだ夜』です!!
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