ネタバレあります、注意!!
<あらすじ>
部室で目覚めると、八年間の記憶が失われ高校時代に逆戻り。母校で教師をしているあたしの身に何があったの? しかも親友の実綺は高二の文化祭直前に亡くなっているなんて──。文化祭で念願の「眼鏡屋は消えた」を実演させるため、あたしは同級生に事件の真相を探ることを頼んだ。あたしがもっとも苦手とする、イケメン戸川涼介に。青春時代の甘く切ない事件を、リーダビリティ抜群の筆致で描く、第21回鮎川哲也賞受賞作。
(東京創元社公式HPより)
<感想>
第21回鮎川哲也賞受賞作です。
・「第21回鮎川哲也賞」遂に決定!!果たして栄冠は!?
早速、感想を。
あくまで個人的な感想と前置きした上で。
悪くは無いけど良くも無い感じかなぁ……。
設定は興味深いし、展開も面白かった。
でも、何か足りない……なんなんだろう。
良く分からないんだけど、読み終わって何かが残る作品ではない。
物語は計算されているし、巧緻に細部まで考え尽くされていると思う。
完成度は高い。
でも、読んで損したとは思わないけれど、読んで良かったとも思わない。
悪くは無いけど、間違いなく名作とも言えない感じ。
どこが悪いわけでもないし、捉えどころがないのかなぁ……。
少なくとも読んで心を動かされることは無かった。
個人的には受賞作とのことで期待していたんだけど、拍子抜けした感じかなぁ。
同じ演劇関連の青春ミステリならば、水生大海先生の『少女たちの羅針盤』かその続編『かいぶつのまち』を押す。
・「少女たちの羅針盤」(水生大海著、原書房刊)ネタバレ書評(レビュー)
・「かいぶつのまち」(水生大海著、原書房刊)ネタバレ書評(レビュー)
・「ムーンウォーク(少女たちの羅針盤 新装版収録)」(水生大海著、原書房刊)ネタバレ書評(レビュー)
<ネタバレあらすじ>
あたしは目覚めると、この8年間の記憶を失っていた。
高校時代の記憶を持っているあたしは、8年後の現在では母校で教師をしているらしい。
しかも、親友の実綺は高校時代に死亡してしまったと言う。
だが、あたしの記憶の中に実綺の死についてはない。
実綺とは演劇部の出し物「眼鏡屋は消えた」を上演しようと約束し合った仲だったのに!!
学校側から上演に反対されていたが、それが実綺の死と関係が?
当時、上演に賛成してくれていた教師・筑紫とも何か関係があるのか?
そして、現在になってあたしが執拗に「眼鏡屋は消えた」を上演しようとしていたことも判明。
一体、何がどうなっているのか?
混乱するあたしは、同級生・戸川涼介に助けを求めることに。
戸川が突き止めた真相は意外なものだった!!
実綺の死に筑紫が関わっていたのだ。
正確には、実綺の転落死体を筑紫が動かしていた。
筑紫はある電話の内容を聞かれたと思い、相手を追ったところ、階下に転落死体となっていた実綺を発見。
自身が追った所為で実綺が死亡したと考え、自殺に見せかけるよう工作していた。
実は、筑紫の電話を盗み聞きしてしまったのは実綺ではなく別の女生徒だったが、筑紫は勘違いしてしまったのだ。
盗み聞きした女生徒自身はその内容に恐れをなし、これまで沈黙を続けていた。
原因となった筑紫の電話の内容は「橋本を殺したのは俺だ」とのものだった。
実綺の死の3年前、橋本という生徒が事故死していた、
だが、この事故死は自殺だったのである。
それを筑紫が隠したのだ。
筑紫はとある事件の犯人の釈放運動に熱心だった。
結果、犯人は釈放されたが、その直後に橋本の家族を殺害してしまう。
家族を失った橋本は運動を主導した筑紫を責めた。
だが、筑紫は自己防衛の為に橋本を冷たく突き放した。
そこで、橋本は事の一部始終を遺書にしたため自殺したのだ。
困った筑紫は遺書を隠滅すると事故に見せかけるよう工作した。
筑紫は正義感ぶってはいるが、筋金入りのエゴイストだったのである。
8年前、「眼鏡屋は消えた」の上演に熱心だったのも、単に体制に歯向かう自分に酔っていたからであった。
戸川に「自身の正義を疑わないことは問題である」と指摘される筑紫だが、あくまで認めようとしない。
そのまま、去ってしまう。
残されたあたしと戸川。
そこで戸川はまたも意外な真実を口にする。
実綺殺害犯はあたしだと言うのだ。
戸川によれば、8年前のあたしは実綺の事件について非協力的だった。
だが、現在のあたしは寧ろ率先して協力している。
8年前と現在、この差は何か?
それは記憶があるかないかだった。
つまり、あたしは実綺殺害の記憶があったからこそ筑紫の工作に便乗し、知らないふりを決め込んだのだ。
証拠がない以上、告発する気はないと語る戸川。
数日後、あたしの記憶が甦り始める。
それは戸川の指摘通りだった。
当時、「眼鏡屋は消えた」を上演しようと拘っていた実綺。
あたしは実綺のために後輩を説得していた。
だが、そのうちに「無理をしてまで上演することに意味は無い」と主張する後輩の方が正しいのではないかと思い始めたのだ。
そこで、実綺とあたしは衝突してしまった。
結果、誤って実綺は事故死してしまう。
逃げ出したあたしは、翌日になって実綺が自殺したことになっていたことに驚きつつも安堵する。
きっと、事故後も実綺は生きていて、その後に自殺したのだろうと考えたからだ。
だが、真実は違っていた。
それは筑紫の工作だったのである。
あたしは、筑紫とは違う。
本当の正義を行わなければならない!!
あたしは決意を固めると歩き出した―――エンド。
◆関連過去記事
【第20回鮎川哲也賞関連】
・受賞作です。
『太陽が死んだ夜』(月原渉著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・上記と同時受賞でした。
『ボディ・メッセージ』(安萬純一著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『世界が終わる灯』(月原渉著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『ガラスのターゲット』(安萬純一著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)
【関連する記事】
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